・木下慶彦(きのした よしひこ)さん [写真右 Twitter(@kinoshitay)] 2012年8月(当時26歳)にSkyland Venturesをスタートし、八面六臂、トランスリミット(BrainWars)、カウモ、LAUGH TECH(CuRAZY)、nanamue(Lily)などに投資しています。スタートアップメンバー1000人計画と言うものを掲げておりまして、3年でSkyland Ventures経由でスタートアップで働くキッカケを得る仲間が1000人生まれることを目指しています。ぜひTwitterをフォローしてください。
ーーベンチャーキャピタルという仕事は学生にとってはあまりイメージがつきにくいと思うのですが、どういった職業なのでしょうか?
松山:「足りない資本を提供する」という仕事です。味方のいない創業者の「最初の仲間」になることですね。知名度がないときに応援をする仕事とも言えます。投資のステージとしてはアーリーステージが多いですが、ミドルステージ、レイターステージと最近では幅広く範囲で投資しています。
木下:最近強く注力しているのは創業メンバーを集めることです。Twitterで主に集めていますね。もちろん投資家として投資応援するのも役割ですが、資金は人材に使われますし、スタートアップの資産は人です。
ーー最近ではどんな会社に投資されたのでしょうか?
木下:ショッピングメディアとして数百万人が見に来るメディア・カウモです。これは社長の太田さんがSEOオタクだなと思って投資しました。(笑) 同じWEBサイトをみて暮らしているとは思えないほど彼なりにインサイトを持っていることに日々驚かされています。創業当初は、「チームにしていけるのか」ということに関して課題も多かったのですが、今では良い仲間が日々増えていて、仲間に恵まれている会社に成長しました。そういった成長を見る事ができると嬉しいですね。
松山:私が投資したところで言うとメルカリです。2年ほどのお付き合いです。CtoCのフリーマーケットアプリですね。最も早く、最も広く成長しているサービスなので、そこに関われたのは僕としても非常に大きな経験です。メルカリCEOの山田進太郎さんとは、十数年の付き合いです。そういった信頼関係があるところに投資することが多いですね。彼が本気でやるなら「投資するしかないな」ということで投資しました。 大きな変化が起きる、大きく動く市場はどこなのか、という点と、もう一つは大きな市場に対して、素晴らしい人が関わっているかどうかという点を見て投資を行っています。
ーー今までの最大の失敗は何でしたか?
松山:後悔ばかりですね。今まで投資してこなかった会社の中でも多くの会社が成長しています。1つの時間軸でサービスを見てはいけないと思いました。時代とともに人もサービスも変わるので、時間軸的な制約を考えずにサービスを見る事が重要だと気づきました。
木下:ベンチャーキャピタリストは仕事柄、特定の会社の組織をみることが少ないです。しかし、現在投資先であり脳トレゲームBrainWarsを展開するトランスリミットと同じオフィスにいることで、社長や経営幹部の仕事はメンバーと向き合って行くところに大きなウェイトがあるポジションだと今更ながら強く学ばせてもらいました。ベンチャーキャピタリストとして、投資先とそういった気持ちを共有するため今は創業期を渋谷で一緒に過ごさせてもらっています。
ーー松山さんが、なぜ投資家になられたのかをお聞かせください。松山:ネットエイジでは最初は事業を進めながら、投資もしていました。そこから投資の比重をどんどん高めていったという感覚ですね。アーリーステージの投資家と起業家の垣根はほとんどありません。かなり近い存在だと思っています。ですので、「投資家だから」という気持ちで仕事はしていないですし、常に起業家目線を持つようにしています。
ーー20代でVCで独立される方は多くはないと思うのですが、なぜVCを自分で作ろうと思われたのですか?
木下:学生時代にDeNAへの投資で著名なNTVPの村口さんと出会ったことがとても大きかったです。当時のDeNA南場さんの講演では、「村口さんのおかげで会社を大きく成長させて行くことができた。」という話がとても印象的でした。Skyland Venturesの立ち上げ前に、2社のベンチャーキャピタルでの仕事を経験しましたが、26歳の頃にMUGENUPという自分と同世代の社長が経営するスタートアップとの出会いがきっかけとなり意識が変わりました。その会社の創業メンバー達もまた同世代であり、彼らに負けないチャレンジをしていく必要性を感じ、自分がチャレンジするキッカケを貰いました。
ーー就職活動で大企業から内定をもらうことに美学を感じている学生が多いと思うのですが、この点に関して起業意識のある学生をたくさん見られてきたお二方はどう思われますか?
松山:アメリカのスタンフォード大学ですと、一番優秀な層は起業する傾向が強いです。ただ、日本が遅れているというわけではなくて、日本でも最近はその傾向が見え始めているという印象を受けています。優秀な学生が起業を意識する流れになっています。ですが、私は全員が起業すべきだとは思っていません。能力があってガッツのある人が起業するべきだと思っています。何社も立ち上げればいいというわけではないですし、1つの大きい会社を作っていけばいいと考えています。そこで大きな雇用が生まれると思っています。そういうエコシステムが大切なのではないかと感じます。 ただ、商社などの大企業だと権限をを与えられるのは40-50代くらいからです。若い人が活躍できる分野はスタートアップ企業やアジアしか残されていないのかなと思っています。
ーー 一方、木下さんはみんな起業するべきだというお考えのようですが、いかがでしょうか?木下:時代背景もありますが、すごく起業のチャンスがあります。学生には、起業家や投資家に会いに来て欲しいと思っています。まずはスタートアップのイベントに参加するのが一番近道ではないかと思います。スタートアップはイメージが大事です。若い人たちがまず、成長期のスタートアップに入りその成長感を肌で感じ取ると良いと思っています。ここで特に大事なことは伸びている市場やサービスの会社の中にいることです。
ーーIT業界はこれから伸びていくと言われていますが、まだまだ多くの学生にとっては魅力的な選択に映っていないというのが現状です(参考:IT業界の雄であるサイバーエージェントですら学生の知名度は23%)。今後どのようにこの業界を改善していけばいいと思われますか?
松山:資本は流れるようになりました。資本以外でも、ロールモデルとなる成功事例を作っていくことが重要です。これからの日本は経済的に20~30年と厳しい時代になっていくと思われます。そういった中で、これからどういうキャリアを歩むのかはとても重要です。起業家のリアルな話を聞く場所として、イベントの開催は大事になってきます。スタートアップスクールはその一環ですね。
ーー自身の活動を通してどういった世界観を創っていきたいと思われていますか?
松山:起業家こそが世界を変えられると思います。10~20年後を見据えるとやはり自分で事業を起こす人が求められる気がします。僕自身としては、自分の会社の仲間や若い人たちの幸せに繋がれば、社会に対していい結果が出すことができれば、と思っています。幸せを考えるときに、日本人だけを考えるのは良くないとも思っています。日本人だけでなく、世界について考えないといけません。世界に目を向けることが、日本の成長に結びつくと考えています。
木下:孫泰蔵さんは、バンドをやるようにスタートアップしようとよく言っています。そんな世界観に近いです。バンドをやるように若い時みんなが憧れ仲間を作り始めるスタートアップが増えることを目指してスタートアップ創業メンバーのコミュニティ作りをしていきたいと思っています。
ーーお二方と直接お話したいという学生は多いと思いますが、どういった方法でコミュニケーションを取れば良いでしょうか?
木下:スタートアップスクールを開催します。起業家や投資家が集まって、若手向けにもう少しコアな話をします。そこに是非お越し頂きたいと思います。 また、Twitter(@kinoshitay)でコミュニケーションをして欲しいと思っています。メッセージを頂ければすべて返信します。ぜひ連絡ください。