こんにちは。co-mediaの山浦です。
今回は、株式会社キッズコーポレーション人事部長の中村亮一さんに、人事のお仕事についてお話を伺いました。
人事の方が実際どんなお仕事をしているのか、学生にはなかなかイメージがつきづらい部分もあると思います。人事ってどんな仕事をするんだろう?と気になっている人はぜひ読んでみてください!
山浦凜 co-media編集長。慶應義塾大学在学。高校時代は少林寺拳法部に所属しており、大学では慶應塾生新聞にて記者として活動。 |
ー中村さんの働いている株式会社キッズコーポレーションとはどのような会社なのですか。
中村 ー 創業者の大塚が「キッズファースト」という方針のもと、自らが保育士として働いた経験を活かして会社を立ち上げたのが始まりです。
現在会社の規模は3000名くらいで、主に企業内や病院内でやっている企業内保育の受託の事業をしています。他にも、保育士向けのメディアの事業もあります。
ー中村さんは、就活の際に人事のお仕事を希望されたのですよね。どうして人事職に興味を持ったのですか?
中村 ー 私はもともと警察官になりたいと思っていたのですが、4年生の6月くらいに警察官になるための試験が終わったとき、色弱が理由で警察官の仕事の大部分ができないということが分かったんです。例えば犯人の服や車の色が判別できなかったら困りますよね(笑) そこで一般企業への就職というように進路を切り替えたのですが、その時点まで就活をほとんどしていなかったので、「就職」と読んで字のごとく「職に就く」ことだと解釈して、「会社」で選ぶのではなくて「職種」で選んでいました。
そして、もともと人を助けられる仕事がしたいと思って警察官を志望していたので、職種を選ぶ際にも「人を助ける仕事ができるのはどこだろう」と考え、人事とMR(製薬会社の営業職。医師や薬剤師に医薬品情報を提供する仕事)を受けていました。
就活を始めてからは、会社というのがどんなものなのかよくわからなかったので、一か月半で120社くらい見に行きました。色々な会社を見る中で、「無料で会社や業界のことをこんなに教えてくれるなんて、就活ってすごいな」とか思っていましたね(笑)
結局、業種は絞らずに、医療系の会社からラーメン屋・サーカスまで幅広い会社を受け、最終的に人事職として受け入れてくれると約束してくれた日立製作所へ入社しました。
ー就活といえば、まず自己分析して業種を絞り込むイメージがあったので、業種を問わず就活活動を進めたというのは意外に感じました。
実際に人事部ではどんなお仕事をされているんでしょうか。
中村 ー 人事部の役割としては、社員の採用から退職までのライフサイクルを担っています。
具体的に言うと、人材の採用・育成・評価・異動・退職、給与の支払いなどです。
さらに最近では後継者育成や組織開発、エンゲージメントの向上や人的資本経営、テクノロジーなども人事部の仕事です。今の時代は昔よりできることが増えているので、人事の仕事の内容も多様化していると感じています。
ー実際に仕事をしてみて、想像した仕事とのギャップは感じましたか。
中村 ー 私は性格的に元々あまり事前に妄想を膨らませるタイプではないんですよ(笑)
そのため、あまり物事に期待することがないので、そういった意味では特に大きなギャップというのは感じず、与えられた仕事をちゃんとやろうと思っていました。
ギャップといえるかはわかりませんが、新卒で入って最初に労務を担当した時は少し驚きがありました。人事の仕事として学生の皆さんがイメージしやすいのは採用担当だと思うのですが、私ははじめに労務担当として社員の評価や待遇決定に関する仕事を行っていました。その部署ではセンシティブな情報に触れることが多いのですが、多くの情報や噂に惑わされず、公平に人を見たり評価したりする重要性を学びました。
ー中村さんはこれまで人事のお仕事をされてきたと思うのですが、これからのキャリアについてはどうお考えですか?
中村 ー 最終的にはプロのCHRO(人事の最高責任者)になりたいと考えています。ただ、人事や労務のスキルを身に着けていけばCHROにつながるわけではなくて、CHROになるためには経営側から人事を見る視点が必要だと思っているので、人事の仕事だけでなく経営企画や営業・事業企画なども役員として経験しています。前職はベンチャー企業で経営企画の仕事なども経験したのですが、今後のキャリアに活きる良い経験ができたと思っています。
また、自分がつとめている企業でCHROができるということだけでなく、どの会社・どの業種においてもCHROをつとめられるということが必要だと思っています。プロのCHROになるというのは、そういうことだと捉えています。
ー経営側から採用を考えると、どんな人に入ってほしいと感じますか?
中村 ー まず、会社に入った後の社員に対する行動の評価というのは、基本的にその会社のミッション、ポリシー、バリューに基づいてなされます。ミッションはその会社の存在意義、ポリシーは行動する時の指針、バリューは社員が大切にすべきことですね。ですが、なぜか新卒採用ではその3つと関係ない部分を見ていることが多いです。たとえばコミュニケーション能力などですね。新卒の時に見るポイントとしてコミュニケーション能力って本当に大切なことなの?というのは再考する必要があると思っています。
ーたしかに、コミュニケーション能力が結局のところ大事だというのは一般論としてよく言われていますよね。
中村 ー そういうものは入ってから訓練すればいいと思っています。私は採用をする時には、コミュニケーションなどの変わりやすい能力よりも、その人自身の過去の経験を通じて、ミッション・ポリシー・バリューと合致しているかという観点を見ています。
実際の面接でも、志望動機よりも過去にどのように行動したかを深堀りしていました。過去の行動から、会社のバリューを体現できる人かどうかを判断していました。
なぜ私が志望動機よりも過去を重視するかというと、志望動機というのはつまり、「うちの会社の何がいいの?」って聞いてるわけですよね。恋愛に例えたら、「俺のどこがいいの?なんで俺と付き合いたいの?」って聞いてるっていうことじゃないですか。それって少し傲慢に感じるところもあるんですよね。御社はそんなにイケメンなんですかということです(笑)
会社にできることと言えば、候補者の話をきちんと聞いた上で、こっちから来てほしい人にお願いする立場だと思っています。言ってみればこちらがプロポーズする側ということですね(笑)
ーバリューを体現できるかどうかというのは、面接で判断できるものなんですか?
中村 ー 基本的には時間をかけて過去の行動を聞いていくので、判断できると思います。逆に、人事職も含めた面接官の中にも、自分は最初の5分で判断できると豪語する人がいますが、それだけでは学生のことは深く分からないと思います。きちんと候補者の話を聞く、過去の行動を深掘りする、それに尽きると思います。
ー学生からしても、面接官に5分で判断されたら嫌ですね…(笑)
ー採用から退職まで幅広い役割を担う人事の仕事ですが、魅力ややりがいはどんなところにあると思いますか。
中村 ー どんな会社でも、事業を実際に動かしていくのは人です。いくら経営側がいいサービスや商品を作ったり、社内のルールなどを作ったとしても、結局現場の人がやってくれなかったら意味がありません。AIなどに仕事が代替されるといった話が出てきてはいますが、AIは最適解をリコメンドができても、結局最後は人が判断するというのが続いていくのであれば、その分野でのプロフェッショナル、責任者になるというのはすごく面白いし楽しいと思います。
ーありがとうございました。学生ではなかなか知ることができない仕事内容についてもお話いただき、人事の仕事に対する解像度が高まりました。ありがとうございました!
いかがでしたでしょうか。
採用面接に関してのお話もあり、学生の皆さんには参考になる部分がたくさんあったのではないでしょうか。
ジョブ型雇用が進みつつある今、業種を絞って選択肢を狭めるのではなく、職種に着目して幅広く進路を考えるのもいいかもしれません。