今年1月30日、小保方晴子氏らが「STAP細胞」発見を論文で発表してから、1年が経ちました。昨年12月に調査委員会によって論文は否定されましたが、検証の1年では同時に、理化学研究所という組織の問題も明らかになりました。
論文発表直後から疑いが続出し、著者らは昨年7月に論文を撤回しました。検証を続けていた理研は、STAP細胞は確認できなかったとして12月19日に実験を打ち切り。同月25日に「研究論文に関する調査委員会」の発表した調査報告書は、論文中に挙げられたサンプルはすべてES細胞(胚性幹細胞)の混入によって説明できるとし、論文はほぼすべて否定されたと結論付けました。
「STAP細胞」をめぐる騒動により、理化学系の権威とも言える組織の多くが体制の見直しを迫られました。世界で最も権威ある科学誌のひとつで、論文を最初に掲載したイギリス科学誌の「ネイチャー」は、論文撤回と同時にチェック態勢の硬直化を謝罪、見直しの方針を発表しました。
一方、理研は「STAP細胞」の検証実験を昨年4月に始めました。同時に研究不正の再発を防ぐため、大学教員や研究者などの第三者を招き「改革委員会」を設置し、体制の見直しを進めました。しかし、信頼回復をいまだ険しい道のりとなっています。
論文の真偽解明が1年という長期に及んだ一因に、理研が解析作業に消極的だったことが挙げられます。ES細胞との混同は発表直後から指摘が相次ぎましたが、理研本部などは「STAP細胞」を新たに作製する検証実験にこだわり、不正の由来を解析する作業は後回しに。理研は当時、高額な年俸や優遇が見込める特定国立研究法人への指定を間近に控えていました。「STAP細胞」を宣伝材料にしようとするあまり、根本であるはずの研究の公正性を欠いたと言わざるを得ません。
理研の設置した調査委は、ES細胞がなぜ混入したか、誰が混入させたかなどの要点には答えを出していません。1月26日には小保方氏がES細胞の窃盗容疑で、兵庫県警に告発状を提出されましたが、2月6日現在、理研本部はコメントなどを発表していません。
調査委は報告書で「関係者全員が故意や過失の混入を全面否定したので、誰が混入に関わったのかは特定できない」と述べましたが、そこは研究不正の発端となる部分です。あいまいな幕引きは決して許されず、速やかな調査を続ける必要があります。また「STAP細胞」の騒動に端を発した他論文の検証では、大小の不正が相次いで明らかになるなど、日本の理化学研究における正確性の軽視が明らかになりました。論文発表から1年の契機に、理研をはじめとする各研究所や研究者個人が、根本的な正確性を取り戻す必要があります。