こんにちは!co-media編集部です。
今回は、12/22(金)にエプソンスクエア丸の内にて開催された、Epson Nature Idea Award の最終審査会にお邪魔させていただきました。全国の大学生・大学院生を対象に行った本アワードの最終審査会では、10組のファイナリストの方々の独創的な作品や、それぞれに対する審査員の方々からの講評・質疑応答まで盛りだくさんな内容となっていました。今回は編集部より山浦と岡田が取材班として参加させていただき、全国の大学生たちの独創的な作品から刺激をいただきました。
山浦凜 co-media編集長。慶應義塾大学在学。高校時代は少林寺拳法部に所属しており、大学では慶應塾生新聞にて記者として活動。 |
岡田元 高校在学時よりフリーランスのウェブデザイナーとして活動。co-mediaではビジネス系の記事を担当。金沢大学在学。 |
Epson Nature Idea Awardは、自然からヒントを得たアイデアを募集するコンテストで、今回が記念すべき第一回目の開催となりました。
プリンター、映像機器などを幅広く手がけるセイコーエプソン株式会社 (以下、エプソン) は、自然豊かな信州で創業し、地域に根差した「ものづくり企業」として、自然との調和を目指してきました。
学生の皆さんがアイデアを考えたり、ものづくりを楽しんだりすることを応援したい、という想いからスタートし、今回このアワードの開催に至ったそうです。
最終審査会では、10組のファイナリストが4人の審査員の前でプレゼンを行い、グランプリ・エプソン賞・審査員賞・優秀賞が決定しました。
詳細情報はこちら:Epson Nature Idea Award (セイコーエプソン株式会社)
Epson Nature Idea Awardのテーマは「自然からヒントを得たアイデア」です。このテーマに沿った新しいモノのアイデア、それらを活用したサービスのアイデアが日本全国の大学生・大学院生を対象に募集され、多数のアイデアが集まりました。大自然から発想を広げるというユニークな本アワードには、学生の皆さんがアイデアを考えたり、ものづくりを楽しんだりすることを支援したい、というエプソンの想いが詰まっています。
エプソンは2023年の調査で、学生たちがものづくりや発想力に関して、ポジティブな意識を持っていることを明らかにしました。大学生・大学院生400名に対しての調査で、約77%がアイデアを生み出すことが好き、約60%がアイデアやスキルを磨く場に参加したいと望んでいるという結果が得られたそうです。学生たちのこの想いを汲み取るべくして、本アワードは企画されました。
↑エプソン本社にほど近い諏訪湖
また、エプソンは、自然との調和を目指し、ものづくりを続けてきた企業です。
自然に囲まれた信州・諏訪で事業を営むために、諏訪湖や周辺地域に環境負荷を与えないという、創業時からの強い思いから、自然環境の保護と事業活動の両立を経営の中心としています。
製造業としてただ新しいものを作るだけでは、環境へ悪影響を及ぼしてしまいます。そのため、工場から発生する排水の処理では、法律・条例の規制値よりも厳しい自主的な環境基準を設定し、また、1980年代には世界に先駆けてフロンレスへの挑戦を宣言したそうです。
参考:自然と共生し、ものづくりをする使命。- セイコーエプソン株式会社
また、2021年には「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」を同社が追求する”ありたい姿”とし、より自然と共生した事業活動を目指しています。このような想いを持った企業であるため、本アワードでは大自然からインスピレーションを受けたアイデアを募り、学生の皆さんに大自然の可能性や価値をともに見出していただきたいと考えたそうです。
最終審査会の会場となったエプソンスクエア丸の内は、企業やパートナーとともに新しいビジネスの共創を目指すエプソンの総合ショールームです。
「社会課題解決に向けたお客様との共創の場」というコンセプトのもと、取り組んでいる社会課題や共創のもととなるエプソンの技術が多数紹介されていました。当日は12月下旬だったこともありクリスマスツリーが飾られており、とても素敵な空間でした。
<タイムスケジュール>
13:00-14:00 : オープニング & ファイナリストたちのプレゼン(5組)
14:00-14:20 : 休憩
14:20-15:10 : ファイナリストたちのプレゼン(5組)
15:10-15:55 : 審査
15:55-16:25 : 授賞式
16:25-16:35 : フォトセッション
16:35-17:05 : 個別取材
↑ファイナリストのプレゼンの様子(写真はグランプリ受賞の釜田さん)
どのプレゼンも発表者たちの作品にかける想いが伝わる素晴らしいもので、取材班も沢山の刺激と学びをいただきました。ファイナリストの皆さん、本当にお疲れ様でした!
審査委員長を務めたのは、ソーシャルデザインファーム「NOSIGNER」代表、JIDA(公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会)理事長などを務める、進化思考提唱者・デザインストラテジストの太刀川英輔さんです。
最終審査会のオープニングでは、「このコンテストを通じて、たくさん学んでほしい。審査員として評価する立場ではなく、皆さんのアイデアをよりよくできるようにアドバイスする立場でプレゼンを見たい」と話していました。
ゲスト審査員は、頭の中に浮かんだ不必要なものを何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とする、コンテンツクリエイターの藤原麻里菜さんです。「役に立つかわからないけど、なんだかおもしろい、みたいな思い付きから、いろいろなものが生まれるのだと思う。役に立つかわからないけどわくわくするようなアイデアが楽しみ」とお話しされていました。
エプソンからは、代表取締役社長の小川恭範さん、執行役員/技術開発本部長 地球環境戦略推進室長の市川和弘さんが審査員を務めました。
コンテストの審査基準は、テーマとの親和性・独創性・社会への貢献度・実現可能性・表現力の5つです。今回は、ファイナリストに選ばれた10組の作品を紹介していきます。
またコンテストのホームページにて、ファイナリストに選ばれた10組の作品が3DCGモデルとともに紹介されているので、是非そちらも合わせてご覧ください。
詳細情報はこちら:受賞作品 - Epson Nature Idea Award
受賞者:釜田陽光さん(京都大学)
本アワードで見事グランプリに輝いたのは、京都大学農学部に在学中の釜田陽光さんの「植物の腺鱗を利用した虫除けストラップ」です。植物が香り成分などを蓄える特別な器官「腺鱗」をヒントに考案された作品です。このストラップを身につけた人は、歩行の際の振動やストラップを刺激することにより、虫除け成分を放出させることができます。釜田さんは、東南アジアを旅行している際に虫刺されに悩まされた経験から、旅行者が気軽に使える虫除けストラップというコンセプトで考案されたそうです。蚊などの虫が媒介する感染症にはデング熱やマラリアなど致命的なものも多いので、実用化された際にはぜひ使ってみたいアイテムですね。
受賞者:藤原聡実さん(岩手大学)
続いて、エプソン賞に選ばれたのは、岩手大学の藤原聡実さんの「見守りコウモリ君」という作品です。コウモリが超音波で獲物を認識するように人の行動を探知し、人の生活を見守る装置で、主に認知症の方やその介護者の方を対象として制作されました。見守る対象である認知症の方が屋外へ出るときはGPSクリップを物理的に衣類に取り付けることもできるそうです。コウモリを模したとても可愛らしいデザインとなっており、利用する人の生活にも溶け込みやすい素晴らしい作品だな、と感じました。
受賞者:中野和真さん(東京大学)
1つ目の審査員賞を受賞したのは、東京大学の中野和真さんの「生物を模した物質回収装置」です。審査委員長である太刀川英輔さんによって選ばれました。この作品を制作した中野さんは大の”カニ”好き。カニが食性によってハサミの形を変えているというポイントから、選択的に物質を取り込める物質回収装置を考えついたそうです。また、本作品のアイデアはヤコウチュウやメダカなど他の生き物たちを模した装置にも使える、応用性のあるものです。中野さんのカニへの愛が伝わる、聞いていてワクワクするようなプレゼンでした。
受賞者:樅山大耀さん(芝浦工業大学)
2つ目の審査員賞を受賞したのは、芝浦工業大学の樅山大耀さんの「無数の情報から心を守る −食虫植物より−」です。ゲスト審査員である藤原麻里菜さんにより選ばれました。食虫植物“ハエトリソウ”が虫を素早く捕まえる光景からヒントを得て制作された帽子型の作品です。この帽子を被ることでSNS上での映画や小説などのネタバレ情報・誹謗中傷の言葉・センシティブなコンテンツを見ないようにすることができます。帽子についているAI付きのカメラが気持ちがマイナスになる情報をキャッチすると、0.2秒以内に自動的に帽子が閉じるというユニークな仕組みです。情報化社会により”見たくない”情報が溢れかえるこの時代、いま必要なものは情報を”与える”だけではない装置なのではないでしょうか。
受賞者:森本志音さん(中央大学)
こちらは、中央大学の森本志音さんの「空気を見える化」という作品です。この作品はブナに着生する菌類や藻類が環境によってその模様を変える、という性質からインスピレーションを受けて制作されたそうです。このランプを使うことで、空気の綺麗さを可視化することができ、空気の入れ替えなどの行動喚起を人間に対して行うそうです。
受賞者:菅谷百花さん、菅谷栞奈さん - チーム清々しい(慶應義塾大学)
こちらの作品は、菅谷百花さんと菅谷栞奈さんの発表された、PUFFBAGというバッグです。ハリセンボンなどのフグや蛸足類からヒントを得て考案され、海外滞在中などのスリ被害を防止する機能を持っています。このバッグを持っている人が危険を察知した際に紐を引っ張ることで、トゲが外側に立ち上がり、スリから身を守るバリアを作ることができます。
受賞者:進聡一郎さん(九州大学)
こちらは、九州大学の進聡一郎さんの発表された「ダンゴムシベッド」です。ダンゴムシが身を守るために体を丸める性質からインスピレーションを受け、制作されました。このベッドの特徴は、何と言ってもその収納性の高さです。ベッドは通常家具の中でも大きなものに分類され、収納・移動などが困難と考えられてきました。しかし、ダンゴムシベッドは球体状に丸めることで簡易に移動させることができ、省スペース化の実現や、掃除をしやすくする効果もあるそうです。
受賞者:江端翔子さん(長岡造形大学)
続いては、長岡造形大学の江端翔子さんの発表された「おくるみベッド」です。日中は開いており夕方には閉まるというリンドウの花びらの性質を模してデザインされました。夜寝たい時間を設定すると、その1時間前から徐々に閉じていく機能を持っています。自然を模したやわらかいデザインによって現代人の乱れがちな生活習慣を改善することができる斬新な作品です。
受賞者:大山優さん(東京理科大学大学院)
次に紹介するのは、東京理科大学大学院の大山優さんの「落ち着クライト」です。ライトという言葉は空間を”明るく”するイメージが強いですが、大山さんの作品は”暗闇”を作ることを目的としています。月が太陽を隠す皆既日食からヒントを得て作られた本作品は、あえて暗い空間を作り出すことで落ち着く空間を生み出す効果があるそうです。
受賞者:古屋明日菜さん、北澤のどかさん - チームよーそろー(信州大学)
最後に紹介するのは、古屋明日菜さん、北澤のどかさんによる「イキイキにっ木」という作品です。現在大学1年生だという古屋さんと北澤さん。自分たちの通う大学の敷地にある美しい木々からヒントを得て、この作品を作ったそうです。木のオブジェのようなこの作品は、日記として使用できます。使用方法としては、まずその日の心情に合わせた色の葉に日記を書き、木に取り付けます。その後、好きなタイミングで木の葉を"落とす"ことで、色づいて蓄積していく木の葉を再現することができます。また、従来の表紙に覆われた日記帳とは違い、日記のページが覆われていないため、すぐに見返すことができるという利点もあるそうです。
いかがでしたでしょうか?Epson Nature Idea Awardの概要と受賞された素晴らしい作品の数々を紹介しましたが、「こんな面白い発想を持った10代・20代がいるんだ!」という感想が生まれるのではないでしょうか。皆さんも「大自然」に目を向け、その可能性や価値を考えてみてはいかがでしょうか。
(公開日:2023-12-28)