「ファーストキャリアの選択によって社会人としての基準値が決まる」起業家・竹之下裕之の仕事への想いと就活論とは

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「ファーストキャリアの選択によって社会人としての基準値が決まる」起業家・竹之下裕之の仕事への想いと就活論とは

竹之下裕之(たけのした ひろゆき) Twiter
1979年大阪府生まれ。学生時代は本人曰く「可もなく不可もない少年」だった。決して目立つタイプでもなければ、クラスを率いるようなタイプでもなかった。中学校からラグビーにのめり込むが、厚い選手層の中で高校では三軍となり、それが現実と悟った。この経験が「人生で最も大きな挫折だった」と後に語っている。高校卒業後は大手建設会社に就職し、4年間現場監督業務に従事する。22歳で大手人材サービス会社に転職し、3年半勤務する。管理職を歴任し、2004年に25歳で建設業界に特化した現場監督の人材派遣会社TS工建を設立する。看護師向け人材紹介の医療WORKERを立ち上げ、その後は様々な業界に特化した人材サービスを立ち上げた。設立から15年で売上280億円、従業員数1217名の規模まで成長させ、それぞれの人材サービスをトップシェアまで押し上げる。

 

ファーストキャリアの選択によって社会人としての基準値が決まる



――売上280億円、社員1200名以上の会社を0から起業し作り上げた竹之下さんの、ファーストキャリアはどのようなものだったのでしょうか?


竹之下裕之:高校卒業後の数年間は現場監督の仕事をしていたのですが、僕にとっての本当の意味でのファーストキャリアは、そのあと転職した人材サービスの会社ですね。その会社を選んだ理由は、大阪支社の立ち上げに携われること。ただそれだけの理由です。面接で初めて詳しい事業内容を知ったくらいです。


――具体的には、どんな会社だったのですか?


竹之下裕之:業界は人材派遣業です。社風は「売り上げを出せない奴は人間じゃない」そんな社風でしたね。いわゆるスーパーブラック企業でした(笑)。僕は当時、その会社が嫌いでもあり、好きでもありました。人をあまり大切にしないところは嫌いだったけど、結果を出せばその分評価してくれる社風は大好きでした。

だからこそ、徹底的に結果を追求して働きましたよ。


――その経験が、今につながっているのですね。


竹之下裕之:その通りです。

当時勤めていた会社は、毎年200%で会社が成長していたこともあって、個人としても200%の売り上げを出さないと人間扱いして貰えなかったんです。売り上げを倍にすることが僕の中での当たり前の基準になったので、TSグループが毎年140%の成長をしている時も、周りから「すごいですね」って言われても、「別に…」って感じでしたね。140%なんて200%に比べたら、大したものじゃないですから。

そんな風に、ファーストキャリアで植え付けられた価値観というのは、社会人としての絶対的な基準になるんですよ。


――そう考えると、ファーストキャリアって本当に大切ですね。


竹之下裕之:めちゃめちゃ大切ですよ!だって、高卒ならまだしも、大学卒業する歳って22でしょ?そこから3年働いたら、もう25ですよ。その3年間で何も身につかなかったら、将来だいぶ厳しいと思います。


――竹之下さん自身のファーストキャリアを振り返るとどうですか?


竹之下裕之:僕にとってのファーストキャリアである人材会社は、今思うとめちゃめちゃ良かったですよ。ものすごいブラックで、嫌いなところもあったけど、売り上げに対する価値観だったり、売り上げを絶対に上げなきゃいけないという気持ち、会社の本質は売上を上げる事。この価値観を徹底的に叩き込まれたのが本当に良かったと思います。

あの経験がなきゃ、今はないでしょうね。ファーストキャリアは良くも悪くも社会人として働く上での基準値となるので、本当に「大切」です。だからこそ、しっかりと最初の一社を選択する必要がある。

「ファーストキャリアの選択によって社会人としての基準値が決まる」起業家・竹之下裕之の仕事への想いと就活論とは

転職前提だからこそ、最初から裁量のある仕事をするべき


――多くの就活生の相談に乗り、『折れない就活』を出版されている竹之下さんですが、今就活をしている学生はどのようなファーストキャリアを築くべきでしょうか


竹之下裕之:いまどき、多くの学生が最初に入った会社で一生働くとは考えていないでしょ。転職が珍しくなくなった今、企業側も終身雇用を前提に考えてはいないのでは無いでしょうか。数年で辞める人が大半なのに、のんびりした会社で貴重な若い時間を無駄にしてしまうと後が大変です。だから個人的には、最初はベンチャーで経験を積んだ方がいいと思いますね。どうせ辞めるんだったら最初からガンガン仕事を任せられる会社のほうがいいですよ。

超大手の会社に行けるなら話は別ですけど、中途半端な中小に行くなら裁量権のあるベンチャーがいいと思っています。


――職種別採用をする会社が増えていますが、竹之下さん的にファーストキャリアで経験しておくべき職種ってなんですか。


竹之下裕之:人によりますが、大多数は営業でしょうね。会社の本質は、売り上げを上げることなので。営業がそのことを一番間近で体験できますよ。


新卒にとっての「良い会社」とは、当たり前を徹底している会社


――ちなみに、もし今竹之下さんが学生の立場で就活をするとしたら、どんな会社を選びますか?


竹之下裕之:今の知識を持って学生に戻れたらってことですよね?なら、僕は人材業界を選ぶでしょうね。そもそも、人材業界しか知らないので(笑)。

ただ同じ人材会社でも、めちゃくちゃ売上が伸びてるところにしますね。


――それは、自分の成長のための機会が多くあるからですか?


竹之下裕之:売り上げが伸びてるってことは、勢いがある会社ってことでしょ。売り上げが伸びている会社に入れば、その勢いを体感できるってのがデカイ。例えば、僕がサラリーマンとして働いていた人材会社では、200%の売り上げを出すのが当たり前だった。そんな風に勢いのある会社に入れば、その勢いが自分の中での基準になる。逆に、勢いのない会社に入っちゃうと、自分の中の基準値が低くなっちゃうんで、良くないですよね。

あとは、利益を出している会社っていうのは、社員1人1人の生産性が超高いです。どれだけ立派な理念を掲げている見栄えのいい会社でも、社員の生産性が低いとダメです。その中に入ったら、低い生産性が自分の中の基準値になってしまう。会社として売上が伸びていても1人あたりの利益率が低かったら、個人としてあまり成長が見込めない。


――自分に合う仕事を探すのに苦労している就活生が多くいますが、自分に合ってる仕事の見つけ方ってありますか。


竹之下裕之:正直、合ってるか合ってないかって関係ないと思います。大多数は、与えられた環境で頑張るのが一番ですよ。あとは、職種や業界で決めると言うよりも、なによりも大切なのが職場の人間関係です。どんなに行きたい会社に受かっても、人間関係が悪かったら最悪だし、逆にそこまで行きたくなかった会社でも人間関係が良ければ楽しく働けますよね。


――確かに、人間関係って本当に大切だと感じます。ただ、就活生が会社の人間関係を見極めるのってかなり難しいですよね。


竹之下裕之:そうなんですよ!しかも、学生が接する社員の大半が、人事部ですからね。そりゃあ、普通は学生にいい顔をしますよ(笑)

ただ、人間の質というのは、細部に現れます。例えば、学生が来ているのに目を見て挨拶をしない、面接時間が遅れても謝罪しない、忙しいのを理由にしてレスポンスが悪いなど…そんな社員がいる会社はどんなにそれっぽい理念を掲げていようとダメですね。


――お話を伺っていて、竹之下さんは仕事や対人に関する基準値が高いと感じました。


竹之下裕之:えっ?全然そんなことないですよ!むしろ低くないですか?だって、僕が言っているのは、人として当たり前のことだけです。就活生が来たら挨拶する、受付で就活生に会ったら「これから面接?頑張ってね」と笑顔で声を掛ける。そんなの、別に誰にだってできますよ。


――でもその「誰にでもできる当たり前のこと」をやるかやらないかで、会社への印象って大きく変わりますよね。


竹之下裕之:ガラッと変わります。そういう細かいことを、会社全体で徹底しているかしていないかで、やっぱり変わりますよね。だから僕はそういった当たり前の事はめちゃくちゃ徹底していたんです。


――要するに、誰にでもできることを全社員が徹底しているような会社こそ、新卒にとって良い会社だと言うことですね。


竹之下裕之:その通りです。就活生には是非社員1人1人が当たり前のことを当たり前にして、勢いがあって、かつ人を大切にする会社を選んで欲しいと思います。

「ファーストキャリアの選択によって社会人としての基準値が決まる」起業家・竹之下裕之の仕事への想いと就活論とは


仕事の価値とは「成長の楽しさ」と「一生の感謝」


ーー竹之下さんは、新CEOに経営をバトンタッチされたとのことですが、今後はどのようにお過ごしになるご予定なのですか?


竹之下裕之:僕はこれからまた、新しく事業会社を立ち上げます。


――再び起業をされるのですね。竹之下さんはどのような想いで、二度目の起業をされるのでしょうか。


竹之下裕之:「現状維持は衰退の始まり」という言葉があるじゃないですか。本当にこの言葉の通りで、人も企業も常に走り続けないと、衰退していくと思うんです。だから僕は、常に会社を成長させ続けたし、自分自身を成長させる努力も惜しまなかった。それは、今後においても同じことなんですよ。

どんなに会社を成功させても、どんなに生活が豊かになったとしても、僕は「現状維持」に留まりたくはないんです。常に走り続けていないと、衰退してしまうし、何より楽しくないですよ。TSグループ(現トライトグループ)を創業した当時、「会社を大きくしたい!業界NO.1になりたい」と未来を見据えて、ずっとずっと走り続けました。そうやって、ときには大変な想いをしながらも走り続けたからこそ、得られた楽しさや価値があるんです。

会社や、一緒に働く仲間が成長していく姿を見るのは本当に楽しかったです。仕事は僕の生きがいであり、何物にも変えられない、楽しいものです。


――自分で0から作った会社で、竹之下さん自身や、共に頑張る仲間が成長して行く姿を見るのが楽しかったんですね。


竹之下裕之:そうそう。でもその他にも仕事をしたい理由はあります。

会社を立ち上げて、新しく出会った仲間を僕が1から育成する。仕事の指導はもちろんのこと、毎週ご飯に連れて行ったりなんかもしてね。その子たちが今、僕に凄く感謝してくれているのが伝わるんです。

その場限りの感謝ではなく、人生の中で活きていく価値に対する心からの感謝。そういう「一生の感謝」は、僕にとってかけがえのない宝物です。仕事がなかったら、得られなかったものです。そういう「一生の感謝」をもっともっと増やしたいなっていうのがあるから、もう一度会社を作りたいんですよ。


――仕事を通じて得られた人からの一生の感謝に、大きな魅力を感じられているんですね。


竹之下裕之:そうですね。お金のためというよりも、仕事からしか得られない楽しさを、もう一度経験するために、会社をまた創りたいです。ある程度出来上がった会社をより成長させるよりも、0から新しく業界NO.1を本気で取りに行く会社を創るほうが楽しいと思いませんか?

IPOを目指す中で、新CEOへバトンタッチし経営の最前線から退きましたが、僕は、もう一度あの楽しさを仲間と味わいたい。もっと一生の感謝を増やしたい。私が見てきたあの最高の景色を、もっとたくさんの仲間と共有したい!

だからもう一度人材サービスの会社を起業して、業界NO.1を目指します。


ーーー最後に竹之下さんに質問です。竹之下さんにとって仕事とはなんですか?


竹之下裕之:仕事より楽しい事はないですし、仕事は私にとって生き甲斐ですね。

「ファーストキャリアの選択によって社会人としての基準値が決まる」起業家・竹之下裕之の仕事への想いと就活論とは


この記事を書いた学生ライター

竹原ふうか
竹原ふうか
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1997年生まれの24歳。埼玉県出身。教育業界、求人広告業界を経て現在はフリーライターとして活動しています。

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