4月20日、2015年のピュリッツァー賞が発表されました。
ピューリッツァー賞とは、新聞等の印刷報道に与えられる米国で最も権威ある賞であり、コロンビア大学ジャーナリズム大学院が、同賞の運営を行っています。
また、この賞は、ジャーナリストのジョセフ・ピュリッツァー(1847〜1911)の生前の意志に基づいて1917年に創設されました。(出典:Wikipedia)
ジョセフ・ピュリッツァーはハンガリー出身のユダヤ人です。1864年、17歳の時に軍人になることを決意し、アメリカに渡りました。
オーストリア軍やナポレオン軍、イギリス軍への入隊希望は、視力が低いことや体が弱いことを理由に受け入れられませんでした。
その後、南北戦争真っ只中(1861〜65)の頃に、アメリカ軍入隊が認められたのです。
彼はミズーリ州・セントルイスで働きながら英語を習得しました。そこで新聞社の編集者と出会い、4年間の下積みを経て、25歳で編集者になり、31歳でSt.Louis Post-Dispatchを立ち上げました。
ーーエボラ出血熱に感染した疑いのあるJames Dorbor(8歳)は医療スタッフによってモンロビアのエボラ出血熱治療センターへ搬送された。父親に運ばれてきたこの少年は見つかるまで少なくとも6時間に渡って治療所の外で横たわっていた。 −−Daniel Berehulak, The New York TimesーSept. 5, 2014
上の写真はジャーナリズム・特集写真部門(feature photography)の受賞作品です。
ニューヨークタイムズ紙のフォトジャーナリスト、デニエル・ベレフレク(Daniel Berehulak)(39)が昨年9月5日、リベリア共和国の首都・モンロビアで撮影しました。
リベリアはアフリカの西に位置し、コートジボワールとギニア、シエラレオネ、そして南大西洋に囲まれています。ギニア・シエラレオネ・リベリアは昨年のエボラ出血熱によって特に大きな被害を受けた地域です。
写真の中では8歳のJames Dorbor君がエボラ出血熱に感染している疑いで治療センターに運ばれています。
医療スタッフは全身防護服に身を包み、少年を服の上から掴んで(彼の肌に直接触れることなく)、自らが感染しないよう万全を期しています。彼らは土の上を歩き、その道の上にはプラスチックや髪のゴミが散乱しています。写真の右奥には現地の人と思われる方々が無防備な状態で立っています。
世界に衝撃を与えたこの1枚の写真が受賞作品となりました。
最後は、この賞の発案者であり、ジャーナリストとして活躍したジョセフ・ピュリッツァーが残した言葉で締めくくりたいと思います。
"Our Republic and its press will rise or fall together. An able, disinterested, public-spirited press, with trained intelligence to know the right and courage to do it, can preserve that public virtue without which popular government is a sham and a mockery. A cynical, mercenary, demagogic press will produce in time a people as base as itself. The power to mould(mold) the future of the Republic will be in the hands of the journalists of future generations."
我々の共和国と、その国の報道機関は栄枯盛衰を共にする。正義とそれを行う勇気を知っている、という鍛えられた知性を備え、素晴らしく、公正で、市民の精神に則った報道は、多くの支持を得る政府が見かけだおしであろうと偽物であろうとも関係なく、市民の美徳を守ることができる。冷淡で金目当て、そして扇動的な報道は、その時代、それを基礎とした人間を作り出す。国の未来を作る力は未来の世代のジャーナリストの手に委ねられている。
一橋大学社会学部の3年生です。 主にニュースでみる時事的なトピックを取り上げて、記事を書いていきます。好きな映画や本、服、ラジオ、テクノロジーなどの記事も書けたらいいな、と思っています。