貧困層向けのマイクロファイナンス。その実態を現地フィリピンよりレポート。

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今月でフィリピン6か月目に突入しました!

マニラでの留学生活を終え、オロンガポでインターン中の楢府奈緒子です。フィリピン人主体のNGOでSocial Justice(社会的正義)実現のためにどのような活動が行われているのか、人権侵害に対してどのような法的救済が実現できるのか等々を働きつつ、勉強できればと思っています。

さすがに6か月もいるとサバイバル術も身についてきます。嘘を上手につけるようになったのが今のところ最大の収穫です(笑)。

私が一番苦手な「お金は持っている人が払うべきだ」というフィリピン人の考え方・・・。例えば、家族で食事に行ったときは海外に出稼ぎに行っている人がすべて支払います。

大体、1家族は子どもが5人前後と両親、兄弟・・・と凄まじい数になりますが。タクシーの運転手も、そのような態度なので、外国人は多く払うべきだと考えています。そのため、タガログ語が分からないと気づいたらすぐに”extra 50pessos”か”extra 100pessos”と言われてしまいます。

実際のところ150-300円程度なのですが、そもそものタクシー代が600円程度なので2.5-5割増料金ということになります。それに対抗すべく、フィリピン人顔(らしい・・・)なのを利用し、アメリカ育ちのタガログ語が得意ではない帰国子女を演じています(笑)。信ぴょう性を高めるために、ガイドブックで適当に見つけた場所を両親の出身地にしています。こんな無茶苦茶な設定を信じてもらえるなんてさすが出稼ぎ大国!多民族国家!という感じです。

さて、今回はフィリピンに来てずーっとしたかったことについて書きたいと思います。

それは、

・地方に行くこと ・マイクロファイナンスの現場を見ること

です。

この2つをネグロス島という砂糖の生産で有名な島(マニラがあるルソン島という一番大きな島の南、セブ島の西隣の島)で実現してきました!!ここでマイクロファイナンス事業を行っているPSHF(Philippine Self Help Foundation)というNGOを訪問してきました。楢府4月5-001ー 島の様子

訪問の話の前に、なぜ私がこの2つをしたいと思っていたか少しだけ書きたいと思います。

まず、地方に行きたかった理由は「都市部のスラムの原因が地方にあるのではないか」と思っているからです。以前のコラムにも書いたスモーキーマウンテンをはじめとしたスラムでは、ほとんどが地方からの移住者でもともとスラムの土地に住んでいた人は少数派です。その人々はスラムという劣悪な環境ですら「マシ」と思えるから地方から移り住んでいるはずです。そのため、地方の生活・実態を知りたい!とスラムを訪問するたびに思っていました。楢府4月1-001ー この地域の一般的な家

 そして、マイクロファイナンスの現場を見たいと思ったのは、この国に来てからマイクロファイナンスへの考え方が変わったからです。もともと、教育をきちんと受けられなかった人にお金を貸して「起業」させるのは大きなリスク・負担を伴うのではないか、ビジネスが格差を生んできたのだからビジネスで貧困削減は難しいのではないか、とマイクロファイナンスには懐疑的でした。

しかし、フィリピンで生活をして、貧しい人は「稼げないから貧しい」のではなく「多くのコストを払わなくてはいけない」ために貧しいままであることに気づきました。例えば、タクシー等のboundary system、シャンプー・リンスの個包装の販売などなど日本ではないシステムが存在します。

タクシー、バス、ジープニー、トライシクルなどのboundary systemは、毎日乗り物の使用料をオーナーに払うシステムで、タクシーの場合大体1日1000ペソ(3000円、現地の感覚では1万円近い)です。つまり、運転手は車を購入できないために1か月あたり9万円を払わなくてはいけないことになります。単純計算すれば1年で100万円を超えるので中古車であれば購入できますが、まとまった額を用意できないがために毎日その金額を払い続けなくてはいけません。

そして、シャンプーの個包装。サリサリというミニストアでよく見かけるものですが、1回分(10ml)が大体10ペソ。多くの低~中所得者が購入しているのですが、大きなボトルの値段(350mlで100-120ペソ)と比較すると同じ量を使うのに3倍近く払わなくてはいけません。楢府4月9-001ー シャンプーの個包装

ちなみに、歯磨き粉にも同じような個別包装の製品があり、逆に単価の安い石鹸はそのようなものはありません。

また、伝統的な5/6systemという借金システムを利用して資本金を得るという手段もありますが、これは28日以内に2割の利子を含め返済するという仕組みでビジネスの資本金として利用するのは現実的ではありません。

そのような現実を見聞きする中で、「まとまったお金を長期的に借りられれば、生活が改善するのではないか」ということに気づき、マイクロファイナンスの現場を見てみたいと思い始めていました。このような理由から、留学生活とインターンが始まる間の期間に思い切って、飛行機に乗って訪問してきました!

観光地以外での初地方訪問の感想は、想像以上に豊かで貧しいということでした。豊かというのは、生活が豊かでした。殺伐としたマニラに比べて時間がゆっくりと流れ、治安もよく町全体が穏やかな雰囲気でした。物乞いや盗みをする人・子どもはほとんどいなく、子どもたちの体格はマニラの貧困層の子どもたちよりは恵まれているかなという感じです。楢府4月8-002ー この島の子どもたち

一方で、金銭的な意味で全体的に貧しいのも事実です。町にタクシーはなく、マニラにあるような大きなモールはありません。一番驚いたのは新品の服を売るお店と、シャンプー/リンスのフルボトル(日本でよく売っているもの)を売るお店を見かけなかったことです。言い換えれば、新品の服やシャンプーの大きなボトルを買えないほどの収入しか得ていない人が多い町だということです。また、竹やバナナの皮で作られた伝統的な家も多く、コンクリートとそれらを組み合わせた丈夫な家を作るには出稼ぎに行かなくてはいけないほど、収入は都市部と比べて明らかに低くかったです。訪問した家庭では収入が1日300ペソ(900円)程度で高校生を含む子ども2人と母親の一家3人が生活できていました。(ちなみに最低日給はP466です)楢府4月6-001ー ウカイウカイと呼ばれる古着屋

 マイクロファイナンスについては、この団体は、「貧しい人に夢を叶える機会を与える」ことを目標に、1987年から貧困家庭に教育ローン、治療費用のローン、そのほかのローンの3種類を提供するチャリティー活動を行っています。そのため、マイクロファイナンスを実施している銀行よりも利子が低く(何年経っても最高20%のみ)、ローンを使って得た収益のみを回収しています。スタッフの給料は寄付から成り立っており、収益は次の貸し出しのみに使われます。また、この団体はグループ制度はなく、フィールドワーカー呼ばれる人が1軒1軒訪問し、各家庭の事情に耳を傾け、少しでも彼らの生活が改善するようにローンの返済のみならず、生活費の使い方を含めアドバイスをしています。

私がこの団体の訪問を通じて感じたのは、「自立する喜び」でした。一部の「支援」は、「貧困層」を「先進国の生活に近づける」ために「与える」ことが中心になっており自発性が欠けていると感じることが少なくありませんでした。今回の訪問でも、一番中心地から離れた山奥になる家に、1本の水道が引いてありました。サン・ミゲル(飲料メーカー)のCSRの一環で設置されたそうですが、長い間彼らが望んでいたのは「いつでも手に入る水」ではなく「生きていくための収入源」でした。楢府4月3-001ー CSRによって設置された水道

もちろんタダで水道が手に入るのであれば誰も断りもしないし、喜んだはずです。ただ、目に障害がある子どもを抱え大黒柱であった父親が失踪してしまった、この家族が本当に望んでいたものは生計を立てる手段だったと話を聞きながら感じました。

楢府4月4-001ー 戸別訪問の様子。このように人がほとんどいないような場所まで出向いています。

戸別訪問に連れて行って頂いて、インタビューを聞いていると、それぞれに事情を抱えつつも

「ミシンを買って、シャツを作り、売ることで家計をよくしたい」 「サトウキビ畑を広げることで、収入を増やして子どもを大学に行かせたい」 「オーブンを買ってピザを売って、家計を支えたい」 「冷蔵庫を買って、氷や冷たい飲み物を売って収入を増やしたい」

と自ら何のために、どのように、どうしたいかを考え、イキイキと語っている姿が印象的でした。楢府4月2-001ー マイクロファイナンスでオーブンを買って収入を向上させた家族

また、支援を得て収入を向上させた家族の笑顔は本当に誇らしげで、嬉しそうでした。「支援」という形で学費やビジネスのための家電など彼らが望むものを提供することも可能ですが、そのような方法ではなく、数百円の少額であっても自力で稼いで自分で使い道を決めて生計を立てられるようになった彼らは、収入以上のものを得られていると感じました。「夢を叶えられた喜び」や「実現できたことによる自信」は、彼らの人生を大きく変えたはずです。

また、どれだけ遠くても、どれだけ不便でも、毎月1軒1軒戸別訪問をし、各家庭の事情について顔を合わせて話し合うフィールドワーカーをはじめとしたスタッフの真摯な姿勢も、このマイクロファイナンスの魅力だと感じました。戸別訪問を行った2日間、正直に言えば回収できた金額よりも交通費の方が高かったです。スタッフ4人で訪問し、1軒当たり15分から30分ちかく時間をかけるのは決して効率的だとは言えません。ただ、「効率」や「利益」ではなく、1人1人の生活や人生の話を丁寧に聞き、一緒に考えることが、彼らの生活を改善するには大切なのだと感じました。返済が何年も滞っている人に対しても、必要以上の利子は課さずに、何故返済できないのか、いつになれば返済できるのか、どうしたら返済できるのか、穏やかな口調で質問し、一緒に考える姿勢は、訪問前の「お金を借りる=負担になる」というイメージとは正反対のものでした。

訪問した中で、新しいビジネスのためにお金を借りたものの出産費用に充ててしまい、収入が向上せず、返済の見込みが立たない一家がありました。それでも、粘り強く毎日の出費を聞き、子どもの食費を減らす工夫をするようにアドバイスしていました。この家の母親が与えている子ども用のインスタントミールは1つ11ペソ(30円)と決して高いわけではないのですが、これを1日3食毎日与えるために、月に900ペソ(2700円)、この家族の月収の25%を占めるほどになっていました。このアドバイスのために、他の家庭を訪問している時に、手作りで離乳食を作る方法はないか、節約する方法がないか等、大きな子どものいる母親に質問し、レシピを聞いているスタッフの姿がとても印象的でした。だからこそ、貸付の説明会にも8人が口コミで集まり、一部の人はバイクで20分ちかくかけて参加し、また、オフィスとしてスペースを貸してくれる家の子どもは、スタッフのことを “daddy”や “ate”(お姉さん), “tita”(親戚のおばさん)と呼んでなついていたのだと思います。この様子を見て、本当に現地の人に必要とされている支援なんだと感じました。楢府4月7-001ー 説明会の様子

今回の訪問を通じて、もともとの目的であった地方を見ることとマイクロファイナンスについて知ることだけでなく、「人に寄り添う支援の在り方」について学ぶことができました。そして、改めて「物理的」な支援だけでなく、「精神的」な支援の必要性を感じました。

もしこの団体に興味がありましたら、英語のみですが、シンプルに簡単な英語で読みやすいのでぜひこちらをみてください。団体の概要のみならず、今までこの団体が支援した家庭のストーリーも書いてあります。

最後まで読んで頂いてありがとうございました!

この記事を書いた学生ライター

楢府 奈緒子
楢府 奈緒子
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2014年10月からフィリピンに滞在中。11月から3月までのアテネオ・デ・マニラ大学の交換留学を終え、現在はオロンガポ(マニラから北に4時間)でPREDA FoundationというNGOでインターン中。フィリピンの色々な側面を知りたいと、現地の人に交じって生活しています。 (※Facebookでの目的が曖昧なコンタクトや友達申請は控えて頂けると幸いです。)

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