2015年10月からマイナンバーの送付が始まり、来年の1月からは利用がスタートする。
国民ひとりひとりが固有の番号を持つようになるこの制度は何のために作られたのだろうか。
社会保障は「個人のリスクを社会全体で保障しよう」という考え方である。年金、生活保護、介護保険制度などはこの考え方に基づいた諸制度のひとつだ。
例えば、2007年に発覚した「年金記録問題」を覚えている人は少なくないだろう。また、生活保護の不正受給は今でもよく聞く話ではないだろうか。介護報酬の改定や消費増税の時に話題となった軽減税率など、これらのトピックはすべて社会保障に関わっている。
これら社会保障に関わる、特にお金に関わる問題の根底には、国民の所得把握ができていない、という課題がある。社会保障の費用にも使われる「税金」を徴収し、それを再分配するためには国民の所得に関わる正しい情報が不可欠なのだ。
私たちはすでに所得に関わる情報をいくつか持っているし、今後それは増えていく。基礎年金番号、雇用被保険者番号、納税者番号などがその例だ。
現在これらの番号はそれぞれ独立しているが、マイナンバー制度ではそれらの情報がひとまとめになり、個人に紐付けられる。
では、どうしてマイナンバーで個人の所得が明確に分かるのか。例えば、とあるAさんが一般企業に就職して、給料をもらうとする。
Aさんは就職した企業にマイナンバーを告知する。
企業はAさんのマイナンバー付きの支払調書を、Aさんは同じくマイナンバー付きの納税申告書を、それぞれ国税庁に提出する。
国税庁は支払調書と納税申告書の番号を突き合わせることでAさんの所得がはっきり分かるようになる。
こうして所得が分かるようになると生活保護の不正受給者は減るだろう。
一方で、所得によって縛りがある、社会保障給付(医療給付、生活保護など)や、税額控除(一定の条件を満たす場合に税額から直接一定の金額を差し引くことができる制度)などの施策に取り組みやすくなる。これまで必要だった所得に関わる様々な資料がマイナンバーの提示だけで済ませることが出来るようになるからだ。
こういう意味で、マイナンバー制度は行政の効率化、国民の利便性の向上、公平•公正な社会を実現する社会基盤になる、と言えるかもしれない。
しかし、この制度にはすでに様々な問題が指摘されている。 その諸課題については次回でお伝えしたい。
一橋大学社会学部の3年生です。 主にニュースでみる時事的なトピックを取り上げて、記事を書いていきます。好きな映画や本、服、ラジオ、テクノロジーなどの記事も書けたらいいな、と思っています。