人質にとった日本人2人を殺害し、その危険性をより強いものにしたISIL、いわゆる「イスラム国」。テロを身近に感じる今、何が必要なのか。4つのポイントから考えます。
「イスラム国」は、2014年6月にイラク・シリア地域でイスラーム国家の樹立を宣言しました。しかし、2015年1月現在も国際的承認はなく、国家ではありません。国際連合や日本政府などは「イスラム国」ではなく「ISIL」という名称を用いています。
昨年後半、ISILは現地の日本人ジャーナリスト2人を誘拐し、今年1月に人質として日本政府に2億ドルを要求しました。この身代金は安倍政権が2014年に難民救済などの目的で中東諸国へ行った支援と同額で、この一件もその報復とみられています。ISILは2月にかけて人質2人を殺害したことをインターネット上で発表し、その様子を映像で公開するという凶行に出ました。
ISILは、2009年頃から武力行使を続けていました。2013年にはイラク侵攻を開始し、大量虐殺や無差別誘拐などのテロ行為を実行。日本の学生がISILへの参加を表明、ナイジェリア北東部などで活動する武装勢力「ボコ・ハラム」が活動を模倣するなど他地域への影響も大きく、国際的に非常に危険視されています。
邦人殺害をうけ、在日イスラム教徒らでつくる「日本アハマディア・ムスリム協会」は2月1日に公式サイトで声明を発表。「彼ら(ISIL)は断じてイスラム教徒ではありえません」「人類の敵であり、またイスラムの敵であります」と強く非難しました。多数のイスラム教徒が住まう東南アジア諸国やシリア近辺のシーア派国家とも対立関係にあり、その名称と裏腹に「イスラム教徒の組織ではない」と認識されています。
邦人殺害を受け、ISILはもちろん、日本政府の中東諸国への支援や対応の遅れを批判、集団的自衛権の問題をあげる声も強まっています。しかし、今回の事件は「テロ行為」という国際犯罪であり、国家防衛と別問題として考える必要があります。また、ISILに引きずられたイスラム教全体のイメージ悪化も、宗教差別につながります。このような混乱こそ、ISILの働く本当のテロ行為と言えます。
これからのテロを防ぐためには、安易な非難を避け、ISILという組織を正しく把握することが必要です。