はじめまして、国際基督教大学3年の中村つむきです。現在、南仏の街トゥールーズで1年間の交換留学をしています。フランスとは思えない気候、フランスだからこその価値観、様々な要素が重なりあって生まれる独特の環境での生活も、そろそろ折り返し地点を迎えます。フランスへの留学を考えておられる方、留学にちょっとでも興味のある方に、新しいフランスをお伝えできればと思います。
よろしくお願いします。
では早速トゥールーズの紹介を少しだけ。
まず……どこ?
そうですよね、フランス=パリ。そんな概念が定着している中、フランス第4の都市、トゥールーズなんて知名度は無いに等しい。
ということで、これを機に知ってください!笑トゥールーズは、スペインを目と鼻の先に臨む南部に位置しています。パリからはTGV(日本で言う新幹線)で約6時間。スペインとの国境であるピレネー山脈まで車で2時間半もあれば着きます。この位置関係により、スペインやアフリカからの移民の方がとても多く、ごちゃ混ぜ感があるため、皆さんのイメージする「フランス」とは少し違う街かもしれません。緯度は北海道と同じぐらいですが、偏西風の影響で温暖な気候です。冬まっただ中の現在でも、パリなどに比べて晴れる日が多く、コートが暑いぐらいの日もしばしばです。
そしてこの街の別名が、La ville rose バラ色の街。その名の通り、建物にはヨーロッパと聞いてイメージする石ではなく、赤レンガが多く用いられ、屋根は赤い瓦で覆われています。
理由は単に近くで石がとれなかったからだそう。パステルブルーの窓枠がよく映えます。人口100万人のうち一割が学生と言われており、私が通うトゥールーズ大学を中心に、いくつかの大学があります。なんとなくのイメージを持っていただけましたでしょうか。トゥールーズの詳しい紹介はまたの機会に。 というのは、初回ながらどうしても書きたいことがあるのです。
現在、日本でもイスラム国のことが大きく扱われていますね。そして今フランスと聞いて皆さんが思い浮かべるのは、恐らくパリで起きた銃撃事件ではないでしょうか。1月7日水曜日、過激な風刺で物議をかもしていた週刊誌「シャルリー・エブドー」が襲撃され、12名が亡くなりました。トゥールーズでもこの事件に対する大きな運動が起こりました。
次の日、1月8日の夕方には大きな集会が開かれ、1万人以上が集まって広場を埋め尽くし、黙祷を捧げました。私は、普段、ここまで働かないかと思うこともしばしばのこの国で、これだけ多くの人がこんなにも早く動いたことに感動しました。
それもつかの間、その週の土曜日には20万人が参加した大規模なデモが行われました。他の大きな街では大統領の号令通り日曜日だったのですが、なぜトゥールーズだけ土曜日だったのかは不明です。笑 そう、私がお伝えしたいのはこのデモなのです。「沈黙の行進」と謳ったトゥールーズのデモに参加した感想をお伝えします。当日、スタート地点に向かうバスは参加者で超満員。このバスも交通規制で途中で降ろされます。後から聞けばメトロも手前の駅までしか動かなかったそう。歩いて向かう横を何台かの救急車が通っていきます。さぞかし張りつめた空気が漂っているのだろうと怖じ気づいた私は早速拍子を抜かれました。
いざ始まってみると、どうやら思っていたのとは雰囲気が違うらしい。確かに上のような写真も撮れました。でもこれだけじゃないんです。ケータイで写真を撮る人もパラパラ。
子どもを肩車したお父さんもちらほら。
ついにはお菓子をつまみながら歩く家族もいます。
中学生か高校生が友人達と並んで歩く姿もありました。
特別にデモに集まったと言うよりは、休日のピクニックがデモに変わったような…。世間話をしながら、わいわいがやがや…。時折起こる拍手の波に乗っかります。
私のデモのイメージは、警察がデモ隊の両側を警備をする物々しい雰囲気の中、参加者が主張を叫びながら歩く、あのテレビのイメージでした。しかし、今回は、警官は参加者が暴徒化した時の為だけに所々に集まって待機はしていましたが、物々しい雰囲気は全くありません。想像していたデモとの違いに、呆気に取られてしまいました。
そこで考えます。なぜか。たどり着いた結果は、表現することの身近さでした。確かに、この半年であったストライキは数知れず、毎週のように何かしらのデモがあります。学校が閉鎖になったこともありました。今回のデモを通して、表現すること、デモに参加することが日常の一部としていかにフランス人の生活に根付いているかを、改めて感じました。彼らにとっては、これだけ大きなデモも、やっていることは普段と変わらないのです。小さいころから家族と一緒にデモに参加し、社会に対して自分の意思を表明することが当たり前の習慣として身に付いている。その習慣こそが、トップに立つ人が下手なことができない環境を作るのではないでしょうか。市民の目が常に向けられ、何かあればすぐに見える形で反応が返ってくる。自分も含め、日本が見習わなければいけないところだと思いました。政府に国民の声を聞けと言うなら、声を伝える努力をしているか、その努力は十分か。胸を張って答えられるようになりたいと思いました。
さてさて、今回は真面目なお話でした。
次回は、あまりお伝えできなかったトゥールーズの街を詳しくお伝えします!
co-mediaで編集をしています。 フランス・トゥールーズに留学し、現在は都内の大学に通っています。 よろしくお願いします。