はじめまして。英国イーストアングリア大学国際開発学部1年の的場優季(まとば ゆき)と申します。
イギリス生活は2年目になりました。イングランド北東部に位置するNorwichという街に住んでいます。-初めてのフォーマルパーティは学部に入ってから。イギリス人特有の皮肉なジョークや料理への無頓着さを楽しめるようになったのも今年からです。
湘南高校でたっぷり青春を満喫し、卒業後までの19年間は神奈川で育ちました。日本の高校を卒業しただけではイギリスの大学に直接入ることはできないので、8か月間ファウンデーションコースで英語と学部科目の基礎を学びます(例外もあるようです)。私はコースの始まった2013年9月に渡英し、国際関係、法、社会学と数学を勉強しました。イギリスの大学は基本は3年で卒業なので、トータルで4年間。2017年6月卒業予定です。
高校ではみんな当たり前のように大学生になる流れだったので、わたしも深い考えはなく、大学に行って特別勉強したいこともありませんでしたが、その流れに逆らうほど強い別の選択肢があるわけでもありませんでした。本来なら「勉強したいから大学に行く」べきだと思うので、「大学に行くから勉強したいことを探す」という状況に疑問がなくはなかったのですが、言語、国際とつくものに興味があるくらいでした。 2つ年上に1人アメリカの大学に行った優秀な先輩がいるというのを高2の初めに知ったときも、「海外の大学に出願するなんて手続きとかめんどくさそう」と感じ、他人事だったのです。
海外に行くことを決意するきっかけはその秋、留学が必須であるという理由で早稲田大学の国際教養学部に行きたいと父に話したことでした。「留学は1年でいいのか?」という父の言葉から始まって「じゃあ4年行ってもいいの?」「やりたいことがあるならいいんじゃない。」という、人生を変えるやりとりになりました。機会を与えてくれたことには感謝しきれません。海外の大学が選択肢になりえると決まった途端、その道はとても魅力的に思えてもう戻れなくなりました。高校生のときは受験も勉強もする意味がわからず、使える英語を1年間勉強する方がよっぽど人生に役立つと思ったんです。(このときもう少し勉強が好きで賢かったら今のわたしはないかもしれません。自分の浅はかさに気付いたのはこの一年後。)
とにかく、人の流れではなく、自分の意思のある方に私は動き出しました。そうなったらもう母に何を言われてもぐいぐいでした。めんどくさいと思っていた英語の大学のサイトも読み、いくつかの大学に資料請求もしました。高1の頃に国連職員に興味があったことももう一度思い出しました。環境学を学びたいと思っていましたが、日本人国連職員の方々のお話を読んでいるときに、自分が将来やりたいことはこういうことだと思い、開発学という分野を知ってからは大学探しのリサーチを方向転換しました。「開発学って何?」とは高校の先生にさえ度々聞かれましたが、途上国の開発、発展について経済、環境、社会学など様々なアプローチで考えていく学問です。学部レベルで開発学を専門に勉強できるところは日本にはなかなかありません。開発学といったらアメリカよりも、発祥の地イギリス、イギリスで開発学といったらイーストアングリア大学かサセックス大学、と絞っていき、開発学と環境学をリンクして勉強できる学部があるのはここだけだ、と出願を決めたのは高3の冬頃です。
そういえば、私を含め真面目な日本人はファウンデーションコースで成績が良かったので、大学1年次の学費半額免除の懸かったエッセイを与えられ、自分の場合は「私に一番適しているのは世界中でこの大学のこの学部だけなんです!」と書いたら120万円オフになりました。
この前エッセイを書くために本を積み上げていたら、あぁ高3の時決めたところに今いて勉強してるんだなぁと過去の自分に感謝したといいますか、少し感慨深い気分になりました。ちなみに今は国連職員を目指しているわけではなく、人生の後半で挑戦することになってもいいんじゃないか、くらいの考えです。
イギリスでお会いする日本人のバックグラウンドは様々です。院生だと青年海外協力隊の経験を既にお持ちの方や、学部生で日本の大学を辞めてきている方も少なからずいます。もし「自分を変えたい」という思いで留学への迷いがある人にとっては、背中を押される存在ではないでしょうか(留学が自分を変えるかどうかはまた別の話です)。イーストアングリアは開発学専攻の日本人が多いのですが、もちろんそれだけではありませんし、大学ごとに強い分野にはそれなりに日本人はいると思います。イギリスにとどまらず交換留学や語学留学などで英語圏以外の国に行く人も多いでしょう。だから自分が海外にいることが特別だとは思いませんが、イギリスの大学生ならではのお話や、わたし自身で考えていることを発信できたらと思っています。以上がわたしのイギリスに来た経緯でした。-スコーンでアフタヌーンティー・2014年5月
ここでは少しゆるいお話を。 こちらに来て空をよく見るようになりました。
イギリスはよく雨が降ると言いますが、雨というか曇り空が多いかもしれません。日本で布団を外に干して取り込むときの、太陽の香りがとても懐かしいです。
留学生に向けたイギリス紹介のプレゼンテーションで、あるスペイン人が天気のマークのイラストを指し示しながら、「晴れ、曇り、雨、また晴れ、雪、イギリスではこれが一日に全て起こります」と言って笑いをとっていましたが、まさにその通りです。一日雨ということはほとんどないですし、傘を使うこともあまりありません。ちょっぴりお腹の気になるイギリス人は、「ジョギングをしようと思っても、イングランドはいつも雨だからできないんだ。オーストラリアに住んでれば毎日走るさ!」と言い訳していました。
数年にわたって描かれるあのハリー・ポッターの超長編の第1ページでさえ、灰色の曇った火曜日から始まりますよね。小学生のときはこのいきなりの夢のない描写に違和感を覚えましたが、イギリス人の作者からすると、「こんなに普通の日」にこの物語は始まりますよということだったんでしょう。-国会議事堂、ビッグベンとテムズ川・2013年10月
ロンドンってやっぱりこんなイメージ…でも運が良いときもあります。
曇り空が多いから、青空を見ると深呼吸したくなるのかもしれません。日本に住んでいるときは建物がひしめき電線に邪魔されて見ていなかったけれど、広々したキャンパスを歩いていると目の前に空しかないと感じるからかもしれません。歩いていると、図書館で座っていると、決してイギリスの空だけがきれいなのではなくて、空が目に入る空間のゆとりと心のゆとりがあるからかなと、ときどき考えます(しょっちゅう一人だからかも)。
イギリス人はLovelyという形容詞をよく使います。 「ラブリー」からイメージされるピンクのふわふわした感じではなく、すっと晴れた青い空と流れていく穏やかな白い雲のコントラストが、わたしのイメージするところのLovely dayです。
雨が多いので虹も多いし、晴れると飛行機雲もきれいにのびるし、夕陽は湖の向こうに沈む、まさに多彩な空模様。灰色だけではないんです。-キャンパスにて・2013年12月。いちばんきれいで心に残っている、あるテスト後の冬の夕陽です。
かための話とゆるめの話ひとつずつ、イギリスとわたしの話を紹介できたところで、初回は終わりにしたいと思います。イギリス2年目に入って感じているファウンデーションと学部の違い、バングラデシュでのインターン体験、勉強について思うこと、ヨーロッパ旅行など、シェアしたいお話がたくさんあるのでぜひまたチェックして頂けたらと思います。 興味を持って読んで頂けるよう丁寧に書いていくつもりですので、これからよろしくお願いいたします。読んでいただきありがとうございました!