ーー小山さんは海外経験も豊富で非常に活動的だと思うのですが、その原動力について教えてください。
私は「活発だね」と周りの人から言われる割に実は病弱なんです。バセドウ病を持っていて、高校生の頃、自宅で療養生活をしていました。何も考えてないし、どこにも行かないという生活で、思考が停止している期間でしたね。生きている実感はあまり無かったです。 大学生になってからこそ好きな事をしていますが、高校生の間は半年くらい寝たきりの生活だったので、進級が厳しくとても苦労しました。入学してみると案外つまらなくて ガッカリすることがあったものの、高校で苦労している分、大学生活で頑張りたい気持ちは人一倍強かったのかもしれないです。 あとは、好奇心ですね。行動を起こすときはいつも「怖さ」よりも「好奇心」の方が勝ります。動かず後悔するよりは、動いて後悔した方が絶対いいと思っています。だけど、「ボリビアに行きました!」とか、「ピースボートに乗りました!」と言うからといって、私のことを「自分と違うな」と学生の皆さんには思って欲しくないんです。海外旅行も、少しずつステップを踏んで行けば、思ってもみなかった所に行けるようになると思います。
ーーモンゴルでのワークキャンプではどのようなことをされて、どんなことを感じられましたか?
モンゴルの大草原で、子供と一緒に生活しながら農作業を手伝ったり、遊んだりしていました。ワークキャンプ自体はとてもグローバルで、ヨーロッパやアジアの人たちとも遊んだりしましたね。色んな人が居る多様性もそうですし、初めて見た途上国の光景もそうですし、モンゴルが初めての「外国」だったこともあって、すごく大きなインパクトがありました。新鮮で斬新で楽しかったです。そこから海外の虜になって、「次はどこに行こう!?モンゴルはモンゴルで感じる事があったから、他の国は他の国で感じられる事があるな」と思うようになりました。この経験が、ピースボートに乗船するキッカケの一つです。
ーーいざ乗ったピースボートでの生活では、どのようなことを感じられましたか?
事前に知っていたことなんですが、3分の2が船の上で、しかも80日間で18ヶ国も回るので1つの国に8時間程しか滞在しないんです。昨日までアラブにいたのに、今日はヨーロッパにいる、そんな毎日で目まぐるしかったです。よく分からないままに次の国に下ろされるので、インプットばかりでしたけど、それはそれで新鮮で楽しかったです。例えば、ニカラグア、パナマなど、個人旅行では行きにくい国にも行けて、現地の先住民や裸族に会えたり、キューバではフィデル・カストロ氏の講演を実際に聴けたりしました。普通の旅行だと確かにもっと長く滞在は出来ますけど、こんな機会は他にないですね。 また、ピースボートでは約1000人が1隻の船に乗り一緒に旅をするのですが、乗船者は20代の人たちと定年後のシニア層が多かったんです。20代の乗船者は仕事をやって辞めてきた人や大学に行ってない人がほとんどでした。その人たちは船内でもお酒を飲んでばかりで、世界遺産も写真撮るだけで、最初はその人たちに対してあまりいい印象を持っていなかったんです。 だけど、きちんと話をしてみたら、仕事辞めるにしても大学に行かないにしても、それぞれに家庭環境などのバックグラウンドがあることを知りました。そして、そういう選択肢を取ることが、その人にとって当たり前だったということを知って、私はすごく狭い世界にいたんだということに、船上の生活でも気づかされました。
ーー海外インターンはどこでどのようなことをされたのですか?
「AIESEC(アイセック)」という、海外インターン斡旋の学生団体を利用して、最初は大学のリサーチ業務の補助を名目にしてボリビアへ行きました。ボリビアを選んだ理由は、ボリビアの方に日本人に来て欲しいと言って頂いた御縁からです。
具体的には、高校で進路調査をして、どうすれば高校生に大学に来てもらえるかに関するニーズ調査をする予定でした。その予定だったのですが、ボリビアに到着した初日に挨拶をしに行ったら、「まあ落ち着け、日本人。まずはボリビアの生活を謳歌してね!」って言われて。1年間大学を休んでボリビアまで来た意味を初日で無くしました。「落ち着くんだよって何!?」って思いました(笑)
それで、スペイン語圏だったので、現地でスペイン語学校に通いました。何もしないのは罪悪感もあったので、個人でボランティアをしていましたね。そして、ホストシスターに誘われてバレーボールもしていました(笑)
旅中でもインターン中でも、まさか自分がこんなところでこんなことしているって思わないような予想外のことばかりで、行動することで自分が変わっていることが感じられました。高校生の頃、病気で本当に何もしていなかったけれど、経験を経て前の方へ、次の方へって進んで行くときに、生きているなって感じました。
ーー海外から帰国した後の就職活動の流れについて教えてください。
11月末に就活に合わせて海外インターンから帰ってきたのですが、適応できなかったんです。「スーツ着るのなんて無理!説明会も、胡散臭い!」って思ってしまって(笑) 結局、TABIPPOのイベントスタッフを2月中旬ごろまでやって、就活から逃げました(笑) それも終わっていよいよ就活となった時に、最初はどこで働けばいいのかも、自分の適正も、やりたいことも分からなかったんです。とりあえず、色んな業界の大手企業を「まずは受けてみる」という就活のやり方をしてしまいました。でも、準備しないとやっぱり受からないですよね。 ただ、学生が自分についてプレゼンして、気になった学生に人事がそのまま声をかけるという形式の逆求人という就活のやり方があって、そこで声をかけてもらったのが、ある大手百貨店でした。本当に人がすごくいい会社でそこに惹かれて、「入ってからどうするかでしょ!」と思って、内定を承諾しました。これが1回目の就活です。
ーー大手企業の内定を断ってまで、なぜ就職活動をやり直したのですか?
大学生活の中で、日本や海外で色んなものを見てきました。色んな国で幸せな人、貧しい人、色々な人を目にしました。 ボリビアでのインターンを終えた後、 グラミン銀行にインターンをしに行きました。グラミン銀行では農村の女性にお金を貸して、仕事をしてもらい、コミュニティや仕事、社会保障などを包括的に与えて、自立してもらうんです。そうやって人が変わっていく様子にすごく感動しました。それ以来、仕組みや機会、環境で人が頑張れるようになるキッカケを作りたいと思っていたんです。 そこで、ソーシャルビジネスに興味があったので、内定をもらった後に認定NPO法人フローレンスでインターンを始めました。大変だったのですが、そこで自分には少人数の組織が合っているなと気づきました。また、TABIPPOの本を書く機会があったのですが、書きながら、「自分の気持ち」と「卒業後の進路」にギャップがあるなという想いが湧いてきたことがありました。 そういった経緯があり、結局、11月頃に再就活を始めました。そのときに、ベンチャー企業を扱う人材紹介会社から、紹介されて出会ったのが今の会社です。そのまま面接をして、インターンをしてそのまま内定をもらいました。5年生の12月のタイミングでしたね(笑)
ーークラウドワークスさんで働いてみた感想をお聞かせください。
忙しいのですが、ここを選んで良かったと思っています。朝、仕事に行くときも辛くないですし、今日も頑張ろうって思います。しんどい時もありますが、人が困っているのを解決して「ありがとうございました」と言われるのは嬉しいです。 この会社で働く私には、事業に共感していて、さらにその事業に関れるという幸福があります。クラウドワークスでは「21世紀の新しいワークスタイルを提供する」というミッションに向かって、インターネットで仕事をしたい人と仕事を任せたい人を結ぶプラットフォームを提供しています。例えば、育児中のお母さんが、在宅でお仕事をすることができますし、プログラミングができるが親の家業を継がないといけないという農村に住む人が、農業をやりながら空いた時間でシステム開発の仕事を請けることもできます。場所や時間に捉われずに、ひとりひとりが自分らしい働き方ができるというのはすごく素敵だと思っています。働く場所や時間に縛られず、もっと自分らしく生きる人が増えればいいなと思いますし、そういう世界の実現を目指したいです。
ーー具体的にどのような業務をされているのですか?
ユーザーサポートの仕事をしていて、ユーザー様のクラウドワークスに対する疑問やトラブルなどをどうすれば解決していけるかを考えることが日々の業務です。クラウドソーシングは「新しい働き方」を実現させる仕組みですが、時にはトラブルも発生します。今、その部分を整えているところなんです。 ベンチャー企業でも、色々な人が必要です。ベンチャー企業での働き方というとスタンドプレーを想像する人が多いと思いますし、実際にそういう人も必要なのですが、そういう人ばかりだと組織がうまく回らないんです。営業やマーケティングといったキラキラした職種に学生は集まりやすいのですが、空気を読める人や面倒くさいことをやれる人、空いた穴を補う人もいないと会社は回らないです。なかなかそういう役割ができる人ってベンチャーに行かないんですよね。 自分の価値は、空いたところにフォーカスしてそこを埋められることだと思います。ゼロからプラスにするのではなくて、マイナスをいかにゼロに持っていくかというのは、負の感情もすごく使うんです。私はそういう役割が周りの人に比べたら比較的得意で、それが務まる人はあまり居ないと思っています。そこが自分の特徴であり自分を生かせるところだと思っています。
ーー最後に、学生の読者に向けてメッセージをお願いします。
約20年間生きてきたバックグラウンドを振り返って、どういう時に自分のテンションが上がるか、どういう時が幸せなのかを掘り下げて考えるといいと思います。具体的な会社の業務ときちんと一致するかというところまで考えることが必要です。社会人になると、仕事にある程度時間を割いて会社に貢献していくわけなので、一致しないと辛いと思うんです。本当に自分が働きたいと思う会社を選ぶといいと思います。その会社の人や理念に本当に共感している様子は面接でも伝わりますし、ES(エントリーシート)を書いていても、その気持ちが文章に乗ってくると思います。 周りがどうこうとか、こうあるべきとかは、どうでもいいんです。自分が”こうありたい”っていう気持ちと合うところを探せばいいと思います。 でも、就活をやりたくないと思ったら、やらなくてもいいと思います。海外の大学に行ってもいいですし、また別の選択肢もあるので。一度しかない人生だから、やりたいことやればいいじゃん、と思います。