ーー一橋大学は露出が少ない大学というイメージがあるのですが、実際にはどういった大学なのでしょうか?また、どういった学生が多いのでしょうか?
良くも悪くも真面目な学生が多く、良いヤツが多いです。大学が東京西部の辺鄙な場所にあります。キャンパスは綺麗なので、一橋大生はみんな誇りを持っていますね(笑) 主張はあまり強くないですが、周りに求められるような存在の人が多い気がします。1つの学年に1000人もいないので、見渡せば知り合いだらけというアットホームな大学でもあります。僕の通う商学部は特に優秀な人が多く、「みんな凄いなあ」と思っています。就活もみんなちゃっかり成功させますね(笑)
ーー東京大学や京都大学との違いは何でしょうか?
上位校にはあまりない「商学部」という切り口で言えば、日本で最高峰の教授陣と環境が揃っていて、1年生からゼミに打ち込むこともあり、楽しんで勉強している人が多いです。東大や京大には商学部が無いために、一橋大学を選んだという学生もちらほらいます。僕自身、企業の経営に興味があったので、来てみて大正解だったなと思います。 ざっくりとした校風の話で言えば、放任主義でなく、教授との密接なコミュニケーションがあり、また学生もそれを好んでいる点が他の大学と違うような気がします。東大や京大では伸び伸びと大学以外で時間を費やす人の割合が多い気がしています。また、プライドは低い人が多く、大学の看板などに頼ろうという人が少ない印象です。一橋大学ってテレビにもあまり出ませんし、そんなに有名じゃないじゃないですしね(笑)
ーー麻生さん自身は、なぜ一橋大学に進学しようと思われたのでしょうか?
幼い頃に堀江貴文さんがテレビで活躍しているのを見て、こういう経営者としての生き方もあるのだと感銘を受けました。会社を成功させるための方法論についてアプローチしている学問があると知りました。そういう切り口で大学を探したところ、一橋大学という大学と出会いました。学ぶ上で経営を実践していきたいと思いましたし、会社の経営も面白いと思うようになりました。ただ、いつかやろうという漠然とした気持ちでした。そういう漠然とした気持ちを持った中で、IVSに参加しました。
(*日刊工業新聞社様提供)
ーー現在運営されているヒカカクさんを立ち上げようと思われたきっかけを教えてください。
大学のビジネスプランコンテストの賞金が賞金15万円+ベトナムへの出張渡航費30万円となかなか魅力的だったんですよね。そこでゼミの友達と2人で「何か考えよう!」という流れになり、コンテストにエントリーしたんですよね。アイデアに自信はあったのですが、予選で落ちてしまって、納得できない気持ちがありました。 ビジネスの立ち上げに興味のある人は、IVSに行ったり、色々とサービスを作ったりしているじゃないですか。そういった方々を見たときに、自分で何か事業を起こすことやサービスを作ることがこんなにもありふれるているんだなと思っていました。それに加えて、自分の中の気持ちとして何かやりたいという気持ちはあったのですが、一歩踏み出せていませんでした。 こんなにも普通の事としてビジネスをしている人たちがいると気付いた時に、自分の中での「普通」の認識が変わって、「じゃあやってみよう」と思ったんです。その時には法人化するところまでは全然考えていませんでした。まず事業としての体を成すためにやっていこうと思っていましたね。 コンテストで予選落ちを経験して、「納得がいかない」という気持ちもあったので、実際に僕らが出したアイデアを形にして「価値があるぞ」ということを証明し、自分でも納得できたらいいなと思ったのもきっかけの1つです。
ーーヒカカクさんのアイデアを思い付かれた経緯を教えてください。
僕の相方がとてもモノを売るタイプの人なんですよね。ブックオフで本を売るような経験は皆さんあると思うんですけど、それ以外にモノを売るという経験はあまりしてない人が多いと思うんですよね。彼は、服とか靴とか楽器とか身の回りのものを結構売っていたんです。買っては売っているという感じですね。 彼は、なるべく高く売りたいという思いから、お店を色々回って売値を比較していたという話を聞いていたんです。そこから事業のコンセプトを発想して、価格.comのようなサイトがあるんだから、売却のサイトがあってもいいのではないかと思いました。それがこのサービスを思いつくきっかけになりました。
ーーどういった流れで事業を始められたのですか?
友人のツテでメンバーを探して、実際にどう作るかを話しながら、同時に開発を進めて、リリースにこぎつけたのが今年の9月ですね。現在メンバーは4人です。構想から2か月くらいでサービスのリリースまで到達しているので、かなりのスピードで進めています。時間をかけて完成させてからサービスを出す人が多いと思うのですが、僕らは中途半端な状態でも出してましたね。そこからユーザーの反応を見ながら改善していくというスタンスをとっています。リーンスタートアップの方式ですね。 事業を作ることや起業することって、「覚悟をして一世一代の大勝負をする」という認識が世の中に溢れていると思うのですが、もっと自然に「やりたい」と思った時に手を動かし始めて、形が先に出来上がっていてもいいのではないかと思います。
ーーヒカカクさんが現在行われている事業の内容について教えてください。
CtoBの事業ですね。買い取りサービスをされている企業さんとユーザーさんをマッチングする情報サイトを作っています。ユーザーさんが自分の売りたいものをヒカカクで検索すると、その商品を買い取ってくれるお店が価格順に一覧化されます。 一番高い価格を出している業者さんから順番に見ることができて、その中でユーザーさんが自分の売りたいお店というのを探して、実際に売ってもらう情報サイトを作っています。 価格以外にも、取引のスピードや取引の安全性といった指標があります。売る時に価格以外にも重要なポイントはあるので、その色んな情報を比較できるサイトを作っていこうと思っています。まず僕たちはパソコン、スマートフォンといった電子機器に焦点を当てています。その先として他の色んな商品の売却先を提案できるプラットフォームにしていきたいと考えています。現時点では買い取りサービスを行っている企業さんの情報を載せています。 最近よく見かけるネットオークションやフリマアプリといった売却なども色々と存在していると思っていまして、その売却先を比較検討できるプラットフォームは世の中にはないので、そういったものを目指していこうと考えている次第です。
ーー具体的にはどういった業務をされているのですか? 現在はユーザーを集めていく段階になってきています。少しずつ広告を打ち始めていますね。 あとは、ユーザーさんに実際に売って頂く経路というのを考えていまして、ガジェット解説というものを行っています。最新のウェアラブル端末などを一般の方にもっと分かりやすく解説して、「こういう端末とかもあるんだ」と紹介するようなコンテンツです。さらに、新たな端末を買ってみたいと思った方が、今の端末を売ることができるような流れも作っています。 最近では、キャンパスベンチャーグランプリという国内最大規模のビジネスプランコンテストで、日刊工業新聞社賞を受賞する事ができました。今までの自分たちのやってきたことの一つの妥当性を確かめられたと思っています。 また、最近はスマホ版のヒカカク!を作ったり、サイトの構造を改善したりしようと思っていて、ユーザーの行動フローを調べてユーザーがストレスを感じずに検索できるようにしたいと思っています。検索に関してもどういう検索フォームが便利かを日々研究しています。 まずは価値のあるサービスを作ってユーザーさんを集めていきたいと考えています。その先はしっかりと企業さんと提携していきたいと思います。
ーー企業のインターンシップに5社参加されていると思うのですが、その経験は現在事業を運営する上で生かされていますか?
インターンの経験はすごく効いていると思っています。特にIPパートナーズさんのインターンです。 自分が事業を回して、チームをリードしていく形のインターンがあったのですが、その時の経験が一番生きていると思います。そのインターンでは実際に社長がいて、その社長から事業を引き受けて、その事業を伸ばしていくという内容でした。つまり、事業経験者という役割を経験できるわけなんですよね。その経験というのは、立ち上げるという経験とは異なるところもあります。ただ、目標を持って「やらなきゃいけないことって何だろう」という部分をブレイクダウンして、計画的に一個一個進めていく経験であったり、チームの方々に手伝ってもらう経験であったり、事業としてのビジョンを共有してやる気を出してもらったりというのは、基本的に事業を作り始める時と同じことなんですよね。 コンテンツを作って人に知らせる事であったり、企業に営業することだったりとか、本当に色んなことをやらせてもらっていたのですが、それは実際に事業をやる際に生きてます。「あの時こういう失敗をしたな」という経験が一つ一つ記憶に残っているので、インターンでの経験は非常に大きかったですね。
ーー学生のスタートアップは一般論として99%が失敗すると言われていますが、その事実についてはどう捉えていらっしゃいますか?
学生でなくても成功するのは難しいことですよね。その一方で上手くいかれている方もいて、リブセンスの村上太一さんや元ライブドアの堀江貴文さんは学生時代に立ち上げられて、成功した例ですよね。やはり学生だからとか、学生じゃないからというのは重要ではないと思います。 重要なのは、実際にチームを作るメンバーの意識であったり、視線の高さなのかなと思っています。 ただ、学生である以上、この先どうしようとか、授業どうしようとか、考えることが非常に多いので、事業だけに集中できる人は少ないとは思います。 リスクという観点でいうと、社会人になってから事業を起こして失敗してしまうと、かなり世間的な目や風当たりは厳しいわけですよね。学生という身分だと、「学生だししょうがないな」と思われてしまう面はありますが、こけたところでそんなにリスクは高くないんですよね。もし将来的に何か事業をやりたいと思っている人であれば、絶対に一度経験しておいたほうが後に生きるんです。 例えばアメリカでも、VCは一度起業に失敗した人に投資する傾向にあるという話があります。2回目の起業というのは成功確率は上がるので、その意味でも1度はやってみたほうがいいのではないかと思います。
ーーヒカカクさんのサービスの展望、ビジョンがあれば教えてください。
まず、人がモノを売るという行動自体があまり浸透していないと思っていまして、「売る」ことはオークションの世界くらいしかなかったと思うんです。ただネット買取サービスであるとか、最近では多様な売り先が存在しています。その認知をもっと一般化させたいという思いがあります。ユーザーさんにこういう「売り手」がいて、こういう「売り方」があるということをなるべく丁寧に提示していきたいです。 最終的な世界観としては、人がモノを買うときに、「売る」ことを視野に入れるようになること、「所有」の概念を「シェア」の概念に覆していくことを狙っています。人とモノの付き合い方を変えていくような、そんなサービスを目指しています。