モンゴル遊牧民の暮らしとは?【ホームステイ体験記】

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 私は昨夏、3週間に渡りモンゴルへ旅行に行ってきました。そのうち1週間ほど、遊牧民のゲル(移動式家屋)でホームステイを体験しました。

 モンゴルといえば、ドラマ「VIVANT」を観て興味を持った方もいるのではないでしょうか?

 何もない草原での暮らしには、不便で過酷なイメージがあるかもしれません。私も渡航前は不安でしたが、いざ行ってみると、豊かな自然と遊牧民の暮らしの知恵にすっかり魅了されてしまいました。

 本記事では、遊牧民と生活をともにして分かった、彼らの暮らしや考え方を紹介します!


この記事を書いた人

青島百花(ライター)

慶應義塾大学法学部2年生。医療系の学生団体での活動後、co-mediaライターを務めています。


遊牧民の1日 〜 仕事は生活の延長?

 ホームステイ中は、遊牧民の方の仕事を見学したり、手伝ったりして過ごしました。

 遊牧民の1日は、朝起きてすぐに仕事をすることから始まります。夜のあいだ柵に入れていた羊を外に追い出したり、牛や馬の乳搾りをしたりします。(モンゴルでは、馬の乳で馬乳酒を作ります)

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 ひと仕事終えると、各々のタイミングでスーテーツァイ(ミルク入りのお茶)を飲んで、パンやお菓子をつまみます。火を使って麺料理などを作るのは夕食だけで、日中はスーテーツァイと保存食を仕事の合間にとるそうです。(私たち日本人が訪れている際はお気遣いいただいて、昼もスープなどを振る舞って下さりました。)


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↑お茶菓子と、ゲルの中でくつろぐホストファミリー


 お茶を飲んだらまた家畜の世話をして、今度は料理をして…と、流れるように遊牧の仕事や家事、食事などの生活をこなしています。遊牧は自然を相手にした仕事のため、何時から何時まで働いてそれ以外は自分の時間、という区切り方はできません。

 ホームステイを手配してくれたコーディネーターさんが仰っていた、「遊牧は、職業ではなく生き方だ」という言葉に納得しました。仕事とプライベートとを明確に分けるというよりも、仕事が自身の生活と一続きになっているように感じました。


簡単には真似できない伝統技術

 遊牧の仕事を手伝ってみて、その難しさに驚きました。遊牧民の方が実演する様子を見ていると簡単そうに見えることも、いざやってみると上手くできません。

 例えば羊の解体では、皮を剥ぐ手の動きを真似できず、なかなか剥げません。暖炉に使う薪を割る際も、私たち大学生4人がかりで、遊牧民1人の半分にも満たない量しか割れませんでした。

 遊牧の仕事は、技術的にも体力的にもすぐに習得できるものではないようです。

 一方、ステイ先のたった8歳の女の子も、羊を追いかけて運動させたり柵に戻したりする仕事を見事にこなしていました。大人が乳搾りをする様子を熱心に見る姿もあり、幼い頃から仕事を教わって技術を受け継いでいるのだと感じました。

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時代とともに変わる暮らし

 遊牧は伝統的な暮らしといえど、時代とともに変化している部分もありました。かつての遊牧生活になかったものが、いくつも取り入れられています。例えばゲルの外にはアンテナやソーラーパネルを備え付けており、テレビを見たり、携帯で通信できたりします。

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 食事についても、乳製品と家畜の肉だけではありません。車やバイクで都市部へ行き、野菜や果物、小麦粉、お菓子などを調達しています。

 ホストファミリーに、草原での暮らしは不便ではないか、都市に住みたいと思わないのか尋ねてみました。

 すると「必要なものはウランバートルに行けば手に入るから、何も欠けているものはない。むしろ、都市は人が多くて空気も悪いので住みたいと思わない」と答えてくれました。

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↑ホストマザーの作る、じゃがいもと羊肉のうどん


 ゲルの中は物が少なく、それでも豊かに暮らしている姿に私は感動しました。持ち物が少ないのは、住まいを移動する生活のためです。

 かつては電子機器や調味料、バイクのヘルメットなどもなく、さらに少ない道具で生活していたのでしょう。当時を想像すると一層驚くとともに、暮らしが変わりつつあることを感じました。


人間より、自然を軸とした考え方

 私たち都市の人々が自然を支配できるとする一方、遊牧民は自然が人間を支配していると考えます。そのため彼らにとって、土地も資源も自分たちのものではありません。「大いなる天」のものなので、独り占めせず大切に使います。

 例えば羊を囲う柵を移動して立て直すとき、細い紐も切らずに、丁寧にほどいて再利用していました。

 こうした「自然の恵みを頂く立場」という意識は、他の場面でも見られました。例えば、毎朝スーテーツァイを空に投げて、天への感謝を示します。また、羊をと殺する際は天に気づかれないように、羊が声を上げない方法を取っています。


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↑馬を捕らえておく紐が細いのは、馬が本気を出せば逃げられるようにするため。馬は人間のものではないので、完全に自由を奪ってはいけないと考えるのです。


 ともに生活する中で、こうした考え方が理解できた部分もあります。

 遊牧地を訪れて最も印象的だったのは、どこまでも続く草原と、空の広さです。大自然を前に、自分という存在の小ささを実感します。

 また遊牧生活では、家畜の世話という仕事も、歯磨きや洗濯などの生活も外で行います。1日のほとんどを壮大な自然の中で過ごすのです。人間社会よりも自然の方が身近な中で、自然を軸とした発想になるのも納得だと感じました。

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まとめ 失われてほしくない遊牧文化

 遊牧の仕事には技術や体力、自然の変化を見て判断する経験的な力が必要で、容易に真似できるものではありません。生活そのものが自然に左右される大変さもあります。

 数日間の滞在ではそれらの厳しさを体験できませんでしたが、少なくとも滞在中に不便さや不足を感じることはありませんでした。あたたかい人々に囲まれて、ホームステイが終わる頃には日本に帰りたくないと感じていました。

 また、自然や時間を管理していると傲慢にならず、自然に身を任せるゆったりとした態度には、見習うところもあります。再びこの場所を訪れたいと思いました。

 モンゴルでは首都・ウランバートルへの人口集中が進み、遊牧民の数が減りつつあります。彼らの知恵と技術にあふれた暮らしが、この先も残り続けることを望みます。


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↑若い馬に、どこの家の馬か分かるように焼印をつける儀式がありました。お祝いに近所の方が集まって宴会が開かれ、人々の笑顔にあたたかさを感じました。


公開日:2024-04-01



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