こんにちは。co-media編集部の岡田です。今回は作曲家の石井伸昂さんへ「作曲家という仕事」と言うテーマでインタビュー取材をさせていただきました。
さまざまな有名アーティストへ楽曲を提供した実績のある石井さんですが、どうしてこの仕事についたのか、どのように有名アーティストへ楽曲提供したのかということについて質問していきたいと思います。
作曲家志望の方はもちろん、音楽業界やエンタメ業界志望の方も必見の記事です!
石井伸昂さん 音楽専門学校を卒業後、音楽事務所メロネストの専属作家として活動。アイドル(乃木坂46など)、 アニメ主題歌 (デート・ア・ライブ/ストライクウィッチーズなど) を中心に楽曲提供を行う。 現在はフリーの作曲家として幅広く活動している。 |
インタビュアー
岡田元 高校在学時よりフリーランスのウェブデザイナーとして活動。co-mediaではビジネス系の記事を担当。金沢大学在学。 |
クリエイティブ好きだったことから音楽の道へ
本日はよろしくお願いいたします。
まず、作曲家とはどんな仕事なのか教えてください。
石井 ー ずばり”曲を作る”仕事です。具体的には、曲の構成要素であるメロディやコード進行を組み上げていくイメージです。
私は主にJ-POPというポップスのジャンルの曲を作っており、TVアニメに使用される曲やアイドルグループの曲などを作っています。ポップスの場合、作詞家(歌詞を書く人)、編曲家(楽器の構成を考える人)などと協力して曲を作っていきます。
石井さんはどうして作曲家を目指されたのでしょうか?
石井 ー 私は子供の頃からクリエイティブなことが楽しいな、好きだなと思う性格だったんですよね。また、趣味として音楽を聴くことがとても好きだったので、高校生になり進路を選ぶとき「自分が一番楽しめることを仕事にしたい」という考えのもと、音楽の専門学校へ進学しました。
弾ける楽器としては家でちょろっとギターを弾く程度だったのですが、専門学校で音楽理論やDTM※を学んでいくうちにオリジナルの曲を作るようになりました。そこからは作ることに夢中になり今に至る、という感じですね。
「作るのが好き」という性格なので、作曲家でも料理人でも、何かを作る仕事だったら性に合っていると思います(笑)
※ DTM:デスクトップ・ミュージックの略。DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)と呼ばれるソフトを使い、録音や音源打ち込みにより音楽を作ること。コンピュータ一台のみで曲を完成させることができるまでになった。
↑ DAWを使って曲を作っている様子
根っからクリエイティブな方なんですね。音楽以外の分野でも何か作られた経験はありますか。
石井 ー 覚えている範囲で言うと、中学生の頃からHTMLというプログラミング言語を使い自作のホームページを作っていました。
趣味で素材屋さん(グラフィック素材などを配布するサイト)や掲示板のような色々なサイトを作って遊んでいました。自分で手を動かすことで何かが出来上がっていくということが本当に楽しかったです。
こんな具合でコンピュータを使って何かを作るのが好きなので、仕事として毎日DTMをするようになっても楽しく続けることができていると思います。
有名アーティストへ楽曲を提供する方法とは?!
では、次に音楽・エンタメ業界についてお聞きしたいと思います。
まず、作曲家がメジャーレーベルのアーティストや誰しもが知っているようなアーティストに曲を提供するにはどうすれば良いのでしょうか。
石井 ー 一般論として誰かから仕事をもらうためには、仕事を頼んでくれる人(作曲家の場合はアーティストやレコード会社)と繋がる必要があります。
しかし、何の実績もない人がレコード会社などといきなり繋がることはあり得なく、いくら実力があれども無名な個人に仕事が降ってくるわけではありません。
では、今活躍している作曲家たちは、どのように作曲家になっているのか。
多くのプロの作曲家は、以下の2つの方法でなる人が多い印象です。
① 自分の名前を自分で高め、仕事を貰う
・・・ライブに出演したりYouTubeなどで発信活動を行うことにより自分の名前を高め、「この人に曲を書いてほしい」という指名を貰う形です。バンドのメンバーやボカロPから作曲家に転向される方はこのパターンが多いです。
② 作家事務所に所属し、コンペなどで実績を作る。
・・・タレント・歌手などの芸能人の多くは「芸能事務所」と呼ばれる会社に所属していることが多いです。それと同様に、作曲家や作詞家にも同様に事務所はあり、一般に「作家事務所」と呼ばれています。このような信頼のおける作家事務所に所属することで、コンペと呼ばれる作曲コンテストへ参加することができるようになります。コンペでは有名アーティストの案件も見かけますし、見事曲が採用されると、自分の実績を伸ばすことができます。
ほとんどのコンペは誰しもが参加できるわけではなく、レコード会社やアーティストが信用している事務所の所属作家のみが参加することができます。
他には、ゲーム会社に作曲家として就職し、その会社の作品制作に関わる方もいます。
ありがとうございます。現在石井さんはフリーランスとして活動されているとのことですが、どうしてフリーランスになられたかを教えていただいてもよろしいでしょうか。
石井 ー フリーランスの利点として、自由に色々な活動に参加できる点が挙げられます。私は元々作家事務所に所属して作曲家をやっていたのですが、現在は独立し、フリーの作曲家をやっています。
作家事務所に所属して良かったことは、前も述べた通りコンペなどへの参加機会があること、自身の信用が高まることがあります。しかし、私は時間やタスクに縛られることなく自由に音楽をやっていきたいと思い独立し、数年間活動してきてとても良かったと思っています。
フリーランスの大変な点として、自分自身をマネジメントする必要性が出てくることです。自分から動いてさまざまな繋がり・人間関係を作っていくことも必要となってきます。ここで大事になってくるのはコミュニケーション力だと思うので、人と話すことが好きな人はフリーランスに向いていると思います。
作曲家の仕事を深掘り!1日の仕事内容は?
作曲家の1日を教えてください。
石井 ー 仕事の内容が決まっているわけではないので、「大体こんな感じ」と一言では語れないです(笑)
ですが曲を書くことが仕事なので、起きてからほとんどの時間パソコンに向かって曲を書いています。
今日はメロディを書こう、今日はリズムを作ろう、今日は歌録りというように1日1日仕事の内容は変わってきます。
↑ 都内にある石井さんのプライベートスタジオ
パソコンで音楽を作る時、どのような機材やソフトを使って行われるか教えていただけますか。
石井 ー パソコンで音楽を作る時、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)と呼ばれるさまざまな楽器・音を並べるソフトを中心に行います。有名なDAWとして、私の使っているCubaseやLogic、Ableton Live、Studio Oneなどがあります。
DAWを操作して音を重ねて並べていくのですが、ギターや歌など録音した音や、ソフトウェア音源※など、どんな音でも並べることができます。
※ソフトウェア音源:コンピューター上で鳴らす音源。シンセサイザー、ピアノ、ドラム、ベースなど様々な楽器を再現できるソフトが普及している。DAW上で開くことができるプラグインの形で使われており、プロは有料の音源を多数保有している。
◆ 石井さんの機材の詳細
PCはMacbook Pro、オーディオインターフェースはAntelope Audioのものを使っています。キーボードはNative InstrumentsのKOMPLETE KONTROL A61、スピーカー・ヘッドフォンはFOCAL社のものを使っています。
ソフトウェアは、DAWはCubase Pro、よく使うソフトウェア音源はOmnisphereなどです。
未来のクリエイターたちへのメッセージ
では最後にクリエイターを目指す人たちに一言メッセージをお願いします。
石井 ー どの業界で働く時にも言えることですが、私は「情熱」と「責任感」を持つことが大事だと思っています。もちろんセンスや技術は大事ですが、この二つがないと信頼も信用もされなくなってしまいます。
情熱は「人に感動を与えたい」でも「自分を知って欲しい」でもいいと思います。その情熱と、物事に関わる責任を忘れずに、是非楽しみながら作品を作ってみてください。
本日はありがとうございました。
こちらこそ取材へのご協力ありがとうございました!
公開日:2024-02-01