こんにちは。
お茶の水女子大学4年生の塩満理恵です。
前回の記事では、私が休学をしてアラブ首長国連邦(以下UAE)で働くことになった経緯や現地での業務内容等についてお伝えしました。
【コロナ禍で休学し中東へ】ドバイ万博の日本館アテンダントとして働いた大学生
今回の記事では、「実際に中東・ドバイに住んでみたらどんな感じ?」をテーマに、現地での生活に焦点を当てて書かせていただきます!
塩満理恵 お茶の水女子大学文教育学部に在学中。社会言語学や中東地域研究に興味がある。 |
中東は治安が悪いって本当?ドバイはどうなの?
中東に住むことになったことを周囲の人に話したとき、最も多かった反応が
「テロとか大丈夫なの?」「物騒なイメージがあるし、危ないんじゃない?」
といった治安の悪さを心配するものでした。
中東に含まれる国や地域の数はとても多く、その中にテロや紛争が頻繁に起きている場所があるのも事実です。
例えば、2023年10月に勃発したパレスチナとイスラエル間の武力紛争は、未だに収束する気配がありません。
だからといって中東のすべての国や地域で治安が悪いわけではなく、比較的安全に旅行や滞在を満喫できる国や地域もたくさんあります。
私が住んでいたUAEのドバイは、中東の中でも最も治安が安定している地域の一つとして有名で、一人旅で来ている女性の観光客も珍しくありませんでした。
ショッピングモールやメトロ、職場だった万博会場では、至るところに警備員が配置されていました上に(「こんなに警備員って必要?」と思ってしまうくらいあちこちにいました笑)、荷物検査に協力しないと入れない施設も多かったです。
日本円で20万円分くらいの現金が入ったお財布をバスに置き忘れた友人がいましたが、何も盗られることなく警察に届けられていたそうです。
とはいえ、外国人の労働者が集住している地域など、女性が一人で歩くには落ち着かない雰囲気の場所もありました。
「危ない場所には近付かない」「持ち物から目を離さない」「夜間は極力出歩かない」といった基本的なことに気を配ってさえいれば、より安全に過ごすことができると思います。
↑ 外国人労働者が集住している地域
中東の食生活ってどんな感じ?
いざ現地で生活をするとなると、気になるのが食事。
イスラーム教徒が多い中東の食文化は、日本の食文化とは大きく異なります。
個人的に感じた日本の食文化との違いは以下の通りです。
イスラームの教えでは豚肉を食べてはいけないことになっているので、基本的に食べられる肉は羊肉と鶏肉です。
牛肉料理もあることにはあるのですが、中東の気候的に飼育が難しいらしく、羊肉と鶏肉に比べると見かける機会は少ないです。
しかし、全く豚肉が食べられないわけではありません。
大きなスーパーマーケットだと「ノン・ムスリム・コーナー」という隠し部屋のような場所があり、中では豚肉などが売られています。
価格は、日本よりも少し高めに設定されているようでした。
ホテルに併設された日本食レストランでも、トンカツなどの豚肉が使われているメニューが提供されていることがあります。
多文化共生が根付いているドバイでは豚肉を入手することができますが、よりイスラーム色が濃い国や地域だと豚肉の流通自体が禁止されていることもあるので、注意が必要です。
マクドナルドのアラブ圏限定メニュー、「マックアラビア」は鶏肉を使ったメニューで、とても美味しいです!
日本では食べられないので、中東に行く機会があればぜひ試してみてください。
↑ レバノン料理店で食べた羊肉ケバブ、ピタパン、オリーブ
豚肉と並んでイスラームの禁忌とされているのが、飲酒です。
厳格なイスラーム国家であるサウジアラビアでは、お酒の購入も飲酒も一切できませんし、市販されている消毒液にもアルコールが入っていません。
ドバイはというと、住民の8割以上を外国人が占めているということもあり、ルールを守りさえすればお酒を飲むことができます。
一部のホテルに併設されている観光客向けのレストランやバーではお酒が提供されていますし、ライセンスを取得すれば酒類販売店でお酒を購入できます。
ただし、ムスリムたちに配慮して飲酒をするために、以下のルールを守る必要があります。
・酔っぱらった状態で外出してはいけない
・飲酒は21歳から
・お酒を購入したら、中身が見えないように持ち運ぶ
・決められたレストラン、バー以外で飲酒をしない
ドバイでは、これらのルールを破るとすぐに逮捕されてしまったり、国外退去になったりしてしまいます。
実際に私の周囲で飲酒をしていた日本人たちも、外出先で酩酊することがないように最大限の注意を払っていました。
バーレーン人の友人から、
「飲酒が厳しく禁止されているサウジアラビア人は、どうしてもお酒が飲みたい時にこっそりバーレーン(イスラーム色が薄い)まで車を走らせて、飲酒をすることがある」
という噂話を聞いたことがあります。
本当かどうかはわかりませんが、ムスリムたちにもお酒が飲みたくなる時はあるよなあ…と思ってしまいました笑
ラグジュアリーなホテルではお酒が飲めることが多いようです。
ドバイに行って驚いたことの一つが、やたらとインド料理店が多かったことです。
先述したように、人口の8割以上が外国人であるドバイ。
外国人労働者の中でも大きな割合を占めるのが、インドやバングラデシュ、パキスタンからの出稼ぎ労働者です。
彼らが集まって住む地域にはインド料理店が立ち並び、美味しいカレーやビリヤニを安価に食べることができます。
インド料理店では、他のレストランよりも安い値段でお腹いっぱいご飯を食べることができました!
断食をする時期があるって本当?
イスラームでは、「ラマダーン」という時期に断食をすることが五行(ムスリムの5つの義務)の1つとして定められています。
ラマダーンの時期は年によって異なり、1ヶ月ほど続きます。
この時期、ムスリムたちは日の出から日没まで断食をし、日没と同時に「イフタール」と呼ばれる豪華な食事をします。
断食中のムスリムたちは、食べ物を口にしないだけではなく、水も飲まず、唾ですらも飲みこまないようにするそうです。
イスラム教徒以外は断食をする必要はありませんが、日中に公共の場で飲食、喫煙をすることを避けることが暗黙の了解となっています。
通常通り営業しているレストランもありますが、ムスリムに配慮して、仕切りなどで見えないように隠されている場合が多いです。
ラマダーンと聞くと、「断食をしなくてはならない可哀想な時期」だと感じる人もいるかもしれません。
しかし実際は、街中が飾り付けられ、「ラマダーン・カリーム(=ラマダーンおめでとう)」という言葉が飛び交う、お祝いムードに包まれる時期です。
↑ ラマダーンを祝うプレート
ドバイは物価が高い?
ドバイといえば、物価がとても高そうだという印象を持っている人も多いと思います。
私も現地に住むまではそう思っていました。
結論から言うと、ドバイの物価は、そこまで高いわけではありません。
旅行で行ったヨーロッパ諸国とアメリカの方が、ドバイよりも物価は高いと感じました。
参考までに、ドバイの物価の例を紹介します。
・ペットボトルの水 500ml:1本 1~2AED(約30~60円)
・スマホのsimカード 8GB:1ヶ月 35AED(約1,050円)
・ドバイメトロの運賃:どこまで乗っても7.5AED(約225円)
・タクシーの初乗り:5~7AED(約150~210円)
・ビッグマック:30AED(約900円)
・レストランでのランチ:75~100AED(約2,250円~3,000円)
・遊園地の入園料:300AED~(約9,000円~)
・アフタヌーンティー:1人前 175~360AED(約5,250~10,800円)
これだけ見ると、とても物価が高いというわけではないことがお分かりいただけるのではないかと思います。
中東に住むと石油王と友達になれる?
中東に住んでいたことを告げると、多くの人に聞かれることが
「え、じゃあ石油王と友達なの!?」ということです。
確かに中東=石油王っぽい人がその辺をうろついていそう、というイメージはありますよね。
私自身も、ドバイ国際空港に降り立って一番最初に出会った現地人である入国審査官がカンドゥーラを身にまとっていたので、まさか石油王!?とビックリした記憶があります。
残念ながらこのカンドゥーラという民族衣装、中東では身分に関係なく比較的誰でも着るものなのです。
中には中東で実際に石油王と知り合いになれる人もいるかもしれませんが、私は石油王と出会う機会自体がありませんでした…。
イギリスにいるからといってロイヤルファミリーのメンバーと知り合えるわけではないのと同じように、ドバイにいるから必ず石油王と知り合えるわけではなさそうです。
石油王とは知り合えませんでしたが、石油王っぽい格好をした友人ができました!
UAEの公用語がアラビア語ということもあり、アラビア語が出来ない自分が現地で意思疎通を取ることができるのか心配でした。
実際、少なくともUAE内では、アラビア語ができなくても生活できます。
やはり人口の8割以上を外国人が占めているということもあって、看板や案内標識ではアラビア語と英語が併記されています。
また、現地のアラブ人も本当に英語が上手なので、最低限の英語が理解できれば、普通に生活していく上では困りません。
外国人が増えて英語が事実上の公用語になってしまったことで、現地ではアラブ人の若者のアラビア語離れが進んでいることが懸念されているそうです。
(この辺は自分の研究テーマとも直結するので、いつか記事にできたら嬉しいなと思っています。)
↑ UAE国内の道路標識
ドバイで暮らす上で驚いたことは?
これまでの内容から伝わっているとは思いますが、ドバイは本当に外国人が住みやすい都市です。
外国人が住みやすいとはいえ、日本とは違うルールがたくさんあるのもまた事実。
ドバイで生活をしていて、驚いたことは以下の通りです。
ドバイで移動をする上では欠かせない市民の足、ドバイメトロ。
そんなドバイメトロには、乗っている時に居眠りをしてはいけないというルールがあります。
電車内には見回りの職員さんがいて、うとうとしていると注意されることもあるとかないとか…。
日本の電車ではついつい寝てしまう私も、メトロに乗るときは目を見開いて頑張って起きるようにしていました笑
他にも、メトロ内では飲食が完全に禁止(ガムをかんでいたり、一口水を飲んだりしただけで注意されるようです)、席に足を置いてはいけない、などたくさんのルールがあります。
違反すると罰金をとられるみたいなので、気をつけましょう。
居眠りをすると、1万円近く罰金をとられるようです…。
実はドバイメトロ、三菱重工業、大林組、鹿島建設など、多くの日系企業の協力によって作られたものなんですよ!
初めてそのことを知ったときは、日本の技術力がドバイのインフラを支えているんだなあと感動しました。
↑ ドバイメトロ車内からの眺め
メトロという名前がついていながら、実際はモノレールのような乗り物なのです!
イスラームの教えでは、恋愛関係になくとも、未婚の男女が行動を共にすることは良いこととはされていません。
他の中東諸国と比較して宗教色が薄いドバイでも、異性の友人と外出をする際には極力配偶者か家族のフリをするように言われた記憶があります。
さらに、公共の場であまりにも過激なスキンシップをすると、逮捕されることもあるらしいので、男女で観光に行く際は気を付けてください。
元々砂漠だったドバイには、最近まで住所という概念が浸透していなかったそうです。
私が住んでいた万博の従業員向け集合住宅は、新しく開発された地域にあったため住所もあったのですが、現地の伝統的な住宅の多くは住所を持たないのだとか。
荷物や手紙を届けるときには、どの地域にあるのか、どの通りにあるのか、目印にある建物からどれくらい離れているのかなどを、住所としてではなく、あくまで「住んでいる場所を説明するための情報」として伝えるそうです。
元は砂漠で住所という概念が意味をなさなかったとはいえ、今でもあまり住所というものが定着していないことは、日本人からすれば衝撃ですよね。
↑ 住所のないドバイの街並み
中東の暑さは過酷?
私が滞在していた時期は夏の終わりから春にかけてだったのですが、UAEはとにかく時期に関係なく暑かったです。
9月頃は気温が40度ほどあり、数分歩いているだけで汗が吹き出すような暑さでした。
同僚の中には、熱中症対策のために数分の距離でもタクシーを使う人もいたほどです。
(タクシーの初乗りが150円程度とかなり安いので、みんな頻繁に使っていました)
真冬でも最高気温は20度を超えていて、薄手のワンピースでオールシーズンを乗り切れるような気候でした。
私自身も熱中症で病院に搬送されたり、食糧を腐らせたりしたことがあったので、暑さ対策として1日に3回屋外プールで泳ぐ日もありました笑
日差しも強いので、行く際にはありったけの日除けアイテムと日焼け止めを持っていくことをおすすめします。
おわりに
最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。
この記事を読んで中東での生活に興味を持ってくださった方は、ぜひ実際に足を運んでみてくださいね!
(文責:塩満理恵)
公開日:2024-01-24