みなさんこんにちは。co-media編集部の高橋利幸です。今回は、ドローン技術とクラウドサービスを組み合わせて、インフラ産業の効率化に取り組むエアロセンス株式会社の嶋田様にインタビューをさせていただきました。
インタビュアー
嶋田 悟様
エアロセンス株式会社取締役
高橋利幸
東京大学1年生。大学入学後、ウェブメディアの企画・編集や、教育系の学生団体にて広報を担う。宇宙工学やAIに興味あり
インフラ産業の効率化を国産ドローンで実現する
ー嶋田様、本日はよろしくお願いいたします。
はじめに、エアロセンス様がどのようなことをされている会社なのか教えてください。
我々は、インフラ産業の現場を効率化したいと考えています。
日本では少子高齢化が進んでいます。特に我々の生活を支えるインフラ業界では、働き手の高齢化が進み、現場は人手不足に悩まされています。我々は、ドローン技術とクラウドでのデータ処理を組み合わせて使いやすい形で提供し、現場の人がボタン一つ押すだけで仕事をこなせる”one push solution”をつくることで、インフラ産業の現場の効率化に貢献しています。
また、一般的なドローンの課題として、飛行距離が短い点や、ドローンを操縦するパイロットが確保できない点があげられます。それに対して、我々の提供するドローンは飛行距離が長く、全自動であるためパイロットを必要としないという特徴があります。また、エアロセンスのドローンを一つ買っていただくとツールがすべて揃うので、誰でも簡単に使うことができます。
ーありがとうございます。現在、エアロセンス様のドローンは具体的にどのような場面で活用されているのでしょうか。
ドローンは、何かあったときに、素早く安全に、かつ自動的に現場に駆け付けて対応することができるので、災害対応に適しています。
我々の提供するドローンは、災害が発生した際に、すぐに上空から状況をリアルタイムで把握することができます。また上空から撮影した画像を処理することによって、被災地域の状況を3Dモデル化することができます。
実際に、宇和島市役所の危機対策課さんは、南海トラフ地震を想定し、今年度ドローンを活用したシステムを導入しました。ドローンの飛行ルートをあらかじめ設定しておくことで、地震の際にもすぐにドローンを飛ばすことができるので、罹災証明を迅速かつ効率的に発行することができます。
※宇和島市は、平成30年の西日本豪雨で大きな被害を受けました。その際、被災状況の確認に人手と時間がかかったことから、迅速な罹災証明の発行のためにシステムを効率化する必要性を感じ、今回ドローンの導入に至ったそうです
ーありがとうございます。私の地元が愛知県の沿岸沿いで、南海トラフ地震が不安な地域なので、是非私の地元にも導入してほしいです。
日本のドローン産業の今:着々と進む法整備
では次の質問に移ります。日本のドローン産業は、海外と比べてどういった状況なのでしょうか。
これは世界的に言えることなのですが、DJIという中国製のドローンがコストパフォーマンスの面では圧倒的に強いです。そのため、小型ドローンの市場で、国内メーカーがDJIと戦うことは非常に難しい状況だと思います。一方、エアロセンスが提供する「VTOL」や有線給電型ドローンは、DJIが手を付けていない領域なので、DJIと差別化できています。
また、ドローン関連の法律に関しては、日本は法整備がしっかりしていて、かつ規制緩和がいち早く進んでいます。世界で一番と言ってもいいほどだと思います。
ーなるほど。法整備の面では課題が比較的少ないのですね。
そうですね。また、現在はレベル3飛行(人が立ち入る可能性のある場所の飛行)には補助員が必要なのですが、ドローンを社会実装する際には補助員を立てるわけではないですよね。したがって社会実装に向けて、年内にはレベル3.5が新設されて、一定条件下で補助員が不要になるので、よりドローンを活用しやすくなります。
ー日本の法整備がしっかりしていたり、規制緩和が進んでいるというのは意外ですね。
ドローンに関しては、日本の法規制は図などを使っていてわかりやすいですし、条件分岐も明確に示されていると感じます。
また、日本の法規制では、アメリカなどと異なり、LTE(携帯電話の通信規格)の上空利用を認めているので、携帯電話の通信圏内ならばどこでも通信することができるという特徴があります。
ーありがとうございます。
日本のドローン産業では、海外に日本のドローンを売り込んでいこうという動きはあるのでしょうか。
日本だけだと市場が小さいので、海外に売っていく必要性は感じていますね。私としては、アメリカやフィリピン、マレーシア、太平洋島嶼国などを狙っています。
ーありがとうございます。
嶋田様の考えるドローン業界の魅力とはどのようなものなのでしょうか。
ドローンは林業、農業、土木測量、物流、点検など、社会インフラの様々なところで役に立つ存在なので、ドローンに関わると社会インフラ産業全体にアンテナを張ることになります。大変だと思うときもありますが、そこが非常に大きな魅力だと思います。営業として関わるのであれば、それぞれの業界の現場を見ることができますし、エンジニアとして関わるのであれば、自分の仕事が幅広く役に立っていると実感できるはずです。要するに、視野が広がるといえますね。
ー私たちのメディアも「学生の視野を広げるメディア」というのを掲げているので、視野を広げるという言葉が出てきてなんだかうれしいです。
コンサル業界からドローン業界へ 〜 ビジネスを俯瞰したのち、空と関わる産業へ
ー嶋田様ご自身のキャリアについてもお聞きしていきたいと思います。
嶋田様はどういったきっかけでドローン業界に携わるようになったのでしょうか。
もともと、ビジネスという領域に関わりたいというのは決まっていました。
ただ、その中で自分がどのようにmake a differenceしていけるか、つまり他の人と比べてどんな違いを出していけるか、ということを見つける前に大企業に就職しても、歯車の一つになってしまう。それは嫌だと思っていました。
そこで、短期間で様々なことを経験したいと考え、ビジネス全体を俯瞰して分析して行動することが求められる経営戦略コンサルティングという分野を選びました。
そして、おこがましい話なのですが(笑)、しばらくコンサルにいていろいろ経験し、こんなもんかという感じになってきたので、そろそろ自分で事業を回していきたいと思っていたときにエアロセンスという会社に巡り合いました。あとは、これは半分冗談ですが、人類の活動は宇宙に広がっていくべきだと私は思うので、空に関わるドローン産業に携わることで宇宙に少し近づいたのはうれしいですね(笑)
ーそうなんですね。
実は私もこのままなんとなく就職するのではなく、たくさんの方々に話を聞くことでいろいろな業界を知って、自分が行きたい業界を見つけたい、という思いでライターの活動をしているというところもあるので、非常に共感しました。
ー最後に、嶋田様が将来について考える際に大切にしている考え方などがございましたら教えてください。
ー人生という限られた時間の中で、いったい自分は何がしたいのかということを考え続けてほしいです。
仕事は自分の時間の大部分を占めるものなので、そこで経験することが自分にとって意味があると思えなかったら、不幸ですよね。したがって、他人にどう見られるか、社会がどう評価するかではなく、自分自身にとって意味のあることを仕事にするべきです。自分にとって意味のあることはなにかというのを常に考えて何事も選択するようにしています。
公開日:2023-12-17