教師になりたい!だけじゃない 〜 武器としての「教員免許」

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おはようございます。co-mediaライターの成川です。この記事を書いている現在、北海道では雪虫と呼ばれる羽虫がたくさん舞い始め、紅葉も盛りを過ぎました。早くも厳寒が迫りくるようで、今から戦々恐々としています...。

さて、唐突ですがみなさんにとって「学校」はどんな場所でしょうか?中高生の方ならば今通っている学校は想像に難くないはずです。それ以上の世代の方であれば、大学や専門学校、予備校、夜間学校などになるでしょうか。もちろんいろんな意見があるかと思いますが、今回はとくに「教師」にフォーカスをしてお話を進めていきたいと思います。というのも、学校にはいろんな種類も性質もありますが、それらにほとんどの場合共通するのは「教師」の存在です。各科目に担当の教師がいて、授業をする。または、担任制度があって生徒指導をする。

しかし彼らが教師になるためにどんな能力を磨き、また免許を持っているのか、明確に知っている方は少ないのではないでしょうか。今回の記事では「教師の資格」に焦点を当てて、その取得方法についても見ていきます。

この記事を書いた人

成川航斗(ライター)

北海道大学2年生。人類学を専攻しており、アイヌ・民俗風習・博物館などについて研究している。


そもそも教師とは?

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「教師」という職業

「教師」にもいろいろありますが、基本的に素人ではいけません。詳しくはまたのちほど述べますが、教師業を営むためには教育システムについて、また自分の教科について正しい知識を持っている必要があります。そのためには大学などの高等機関で正確な指導方法と専門性を担保されなければなりません。それらの証左となるのが、単位であり免許であるというわけです。

ちなみに教員免許の取得に必要な単位数としては、科目や小中高の資格によっても変わりますがおよそ60~70程度です。これは担当科目や教育学を専門にしていない限り専攻とは別で獲得する必要があります。卒業に必要な単位が120~150程度であることを考えると、なかなか馬鹿にならない分量です(ちなみに1時間半×15回(半年)の授業ひとつで2単位となることが多いです)。そのため、昨今の教員の激務を学生の間に経験しておくのが教員免許の真の価値だ、と冗談交じりに述べる学生らもいます(笑)


資格の不要な教師

ここでひとつ押さえておきたいのが、教員免許の不要な教師も存在するということです。例えば、「大学教員」です。幼稚園教諭から高校教員まできっちりと資格が必要であるにもかかわらず、大学の先生に教員免許が不要なのは意外かと思います。むろん大学院(修士・博士)を卒業しているべきだという条件はありますが、最低限そうした研究者としての資格さえあれば仕事ができるということです。また、予備校などのいわゆる「塾講師」にも資格は不要です。

そのため、もし自分の教わっている(特に大学院博士課程以上の)先生について、気になった場合には調べてみると良いと思います。特に研究者ならば、経歴や実績はResearchmapというサイトで調べると一発で分かります。


キャリアデザインの中での教員免許

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「キャリア(Career)」とは

最近「キャリアデザイン」や「キャリアプラン」という言葉をよく聞きます。流行りでしょうか。たしかに自らの将来を考える上でこんなことをしておきたい、これを実現するためにはこれだけの時間が要る、といったことを理解しておくのはすごく有意義なことです。

ですが実は、「キャリア(Career)」の本来の意味を辿ってみると、現在我々がイメージする意味と異なることが分かります。英語の’Career’はフランス語の‘Carriere’(道路、競馬場)、もっと遡ればラテン語の’Carrus’や’Cararia’(轍、車軸の道)からきており、「将来」というよりもむしろ「過去」にこそ主眼が置かれていることが分かります。高村光太郎の『道程』という詩に「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」というフレーズがありますが、まさしくこんなイメージですね。

つまり、われわれの目の前に定まった道があり、そこからプランを選ぶ、というような選択がそもそも大きな倒錯であると言えそうです。偶然性の高い未来において、狙ってキャリアプランを当てに行くというのは難しいことです。であれば、まずはこれまで自分や歴史上の先人らが何を為してきたのか、「轍」を辿ってみることもアリではないでしょうか。


教育現場を批評するための教職課程

日本国憲法第26条にある通り、すべての日本国民は教育を受ける「権利」を持っており、また同時に自分の子に普通教育を受けさせる「義務」を負っています。したがって、日本に住んでいる限り教育は必ず通らねばならない道です。ですが、その教育のシステムを熟知しているという人は多くないでしょう。

たとえば、近年中高の教育で進む「探求」の授業や、受験における推薦制度、2021年開始の共通テストのように「思考力」を鍛えるための教育が掲げられています。学生のみなさんは(筆者も含めて)実際に経験しているでしょうからよく知っているかと思います。しかし、いざ学校を出て働き始めたらどうでしょう。教育に携わる仕事にでも就かなければ、今行われている教育施策の意図や時代背景を知らないまま過ごすことになるでしょう。言い換えれば、どれだけ俗悪な教育システムであってもまかり通る状況になるということです。

ここで教職課程(教員免許の取得に必要な科目を設置した課程)の勉強をしておくことで、教育の原理を知ることができます。そうすることではじめて現状の制度が抱える問題点を捉えることができます。正しく意見を述べるために、教職の要諦を知っておく必要があるのです。


別のキャリアに活かせる教員免許

「とりあえず」で教員免許を取ることに意味がないとおっしゃる先生もおられます。しかし、教員免許に意味を見出すのは結局自分なので、自分なりに目的がはっきりすれば問題ないと筆者は考えています。また、先ほど述べた通り我々がまったくもって想定通りのキャリア(轍)を得られるとは限りません。であれば、つねに自分の知見を広げ多種多様なプランを描けるための武器を持っておくことが重要です。その際、教員免許は非常に汎用性の高いものと言えます。なぜなら「教育」はすべての業界において先達から知識と智慧を継承するものにほかならないためです。企業やその他組織でする勉強を学校でする勉強とわざわざ分ける必要はないのです。そもそも社会人に対しての学生といった認識が定着していますが、学校も十分に社会であり、学生がする勉学も社会人のそれと相違ありません。

ですから、最も多くの人間が経験し、そのノウハウも太古より研磨されてきた学校教育の中身を理解しておくことで、広く世間で通用する教育の神髄を得ることができると思います。たとえば一般企業で働く場合では、教わったことをこれまで学校教育で知ってきた学問の体系と結びつけることが可能となり、また後輩教育の際にも最も効果的な指導方法が見つかりやすくなります。あるいは研究職に就く場合でも、研究内容が教育の成果として生まれたものや教育学の考え方をなぞったものであることはしばしばあります。研究の世界も既存の論文などを踏まえて新たな言説を「継承」してゆくという点で教育の所産と言えます。

また少し生々しい話をすると、日本各地で現在教員不足が深刻になっています。なので、教員免許はもし食い扶持に困ったとき働き口が見つかる契機にもなるのです。この意味でも教員免許は武器として機能するわけです。


必要な単位について

教師になりたい!だけじゃない 〜 武器としての『教員免許』

ここまで教員免許を「取るかどうか」に焦点を当ててきましたが、次に教員免許を「取るためにはどうするか」を考えていきましょう。

教員免許が認められるためには、基本的には必要な単位を取るだけでOKです。ただし好き勝手な授業を取れば良いというわけではなく、取るべき科目がある程度定まっています。それらを足し合わせると前述のような60~70単位となるわけです。それでは、中学校・高等学校の教員になるための資格について、どのような科目があるのかをここで軽く確認しておきます。


● 教科及び教科の指導法に関する科目

こちらは専ら自分が専門で教える科目についてがほとんどです。国語の教員免許なら日本文学や音声学など、社会科の教員免許なら西洋史学や地理学など、といったように決まっています。こちらは28単位以上必要です(中学)。


● 教育の基礎的理解に関する科目/道徳、総合的な学習の時間等の指導法及び生徒指導、教育相談等に関する科目/教育実践等に関する科目

こちらは教員免許を取る全員に必要な科目です。教育制度論や教育心理学といった教育学の基礎から進路指導、教育実習の授業までここに含まれます。こちらは27単位以上必要です(中学)。


● 大学が独自に設定する科目

こちらも基本的に全員に必要な科目です。介護等体験実習、特別支援教育概論などが含まれます。こちらは4単位以上必要です(中学)。


● 免許法施行規則第66条の6に定める科目

こちらも全員に必要な科目ですが、1年生時点で取れるものがほとんどです。体育学、日本国憲法などが含まれます。こちらは8単位以上必要です(中学)。

ただし、このほかに必要な単位がある場合もあるので、詳しくは文科省のサイトを確認してみてください。


【参考】教員免許状取得に必要な科目の単位数・内訳(文部科学省)

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1337063.htm

このように、なかなか複雑に単位の計算をしなければならないのできっちりおさえておく必要があります。


教員免許を取得する際の注意点

大学ごとにシステムがけっこう違う

筆者の通う大学では、教職課程に必要な単位取得は、ほとんど2年次からスタートという感じです。ですから先ほどから登場する煩雑な単位は、2~4年次の3年間で取り切らねばなりません(必要単位数を3年で割ると1年あたり約20単位強と、なかなか重たいですね)。しかし、友人の通う大学では1年次から教職課程の科目が開講されており、けっこうスムーズに進んでいるという話を聞きました。羨ましいですね。

また、大学・学部によっては、そもそも小学校教諭資格が取れない、などといった縛りがあることもしばしばです。これらについては志望校にいる先輩から事前に話を聞いておくことを強くお薦めします。大学の制度によって自分の学生生活に対するプランも変わりうると言っても過言ではないと思います。


他の資格

筆者は現在教職課程のほか、学芸員資格取得の講座を取っています。幸い学芸員資格の授業は教職課程の授業とほとんど被らないため事なきを得ていますが、大学をはじめとした機関にはほかにも社会調査士、公認心理師など多くの資格が存在します。それらの授業が教職課程のそれといつバッティングしてもおかしくはありません。

また、他資格の実習は教育実習と被るため時期をずらす必要もあります。そうでなくとも4年時には教育実習が就活や院試、卒論準備と被るなど、地獄を現出することも珍しくありません。くれぐれも、計画はお早めに。


集中講義として開講される科目

悲報なのですが、すべての教職科目がちゃんと前期・後期に開講されるわけではありません。夏休みや春休みに開講する、なんていうアウトレイジな代物もあったりします。すると当然旅行に行けなくなったり、帰省をずらしたりなんてことにも...(筆者自身、今年は国際インターンシップと被ったために2講座取り逃してしまいました)。これは絶対に注意しておくべき点です。


まとめ

以上、教職課程・教員免許についてでした。ここまででお気づきになるように、大学に入ってから考えるにはあまりに考えることが多すぎますし、余裕も少ないです。なので、既に大学などにいる方はもちろん、現在中学高校にいるみなさんも今のうちから考えておいて全然損はありません!とりあえず様子を見ておくために教職入門を入れるのは大アリです。「資格として武器になるか」という道具主義的な考えを抜きにしても、筆者は十分学びのある資格だと思います。ぜひ、門をたたいてみてはいかがでしょうか。

それでは、またどこかの記事でお会いしましょう。


公開日:2023-11-15

この記事を書いた学生ライター

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