今回は地域創生にご尽力されている、株式会社日立製作所・清藤大介様にお話を伺いました。(インタビュアー:戸名康平・高橋利幸・山浦凜)
新卒でIT企業へ、そして日立コンサルティングへと転職
本日はよろしくお願いいたします。まず簡単に清藤様のキャリアについて、現在にいたるまでにどのような道を歩んでこられたのか、お聞かせください。
私はまず、新卒でIT系メガベンチャーに入社しました。そこでは、大学生の時に公認会計士の試験に合格していたこともあって、M&Aや新規事業の立ち上げに関わっていました。そこから日立コンサルティングを経て、現在は親会社である日立製作所に出向して、地域創生に関連する新規事業の立ち上げを担当しています。
日立コンサルティングに入社したのは、前職で働いている時に、新しい場所で自分自身の力を試してみたいと思ったことがきっかけです。コンサルティングは自分自身が資本となる世界で、クライアントが自分にコンサルティングを依頼したいかどうかによって自分の価値を測ることができるので、そんな世界に身を置いてみようと思いました。
ただ、コンサルティングという仕事は、絵に描いた餅ではないですが、検討した事業構想を綺麗な資料にまとめることは行っても、実際に事業を立ち上げる部分はクライアント次第というイメージが自分の中にありました。
そこでシステム開発や保守を含めた実装まで実現可能な日立製作所と連携している日立コンサルティングであれば、最初にどのようなビジネスが良いかの構想を描いた後に、必要なシステムの構築や、業務変革という実装まで日立グループで責任をもって推進できることから、自分たちの思い描いたものをサービスの形で世の中に届けられると思い、複数あるコンサルティング会社の中から日立コンサルティングを選びました。
ディベートを通じてロジカルシンキングとコミュニケーション能力を身につけた
公認会計士の資格を大学在学中にとったとおっしゃっていましたが、正直結構大変なイメージがあります…。ちなみに、大学在学中に力を入れて、今に生きていると感じることは他にもありますか?
一番力になっていると感じるのはディベートの経験ですね。中学生の頃からディベートを続けていたことで、ロジカルシンキングとコミュニケーション能力が身についたと思います。
どのようにロジックを組み立てれば、説得力のあるストーリーになるかを考えて議論を作っていく経験は、会議に向けての資料作成やプレゼンテーションの際に大きく役立っていると思います。また、実際に社会に出てからロジカルシンキングの鬼みたいな人たちとたくさん関わる機会がありましたが、そういった人たちとスムーズにディスカッションできるようになっていったのは、確実にディベートで論理的に話すことの下地が出来ていたからだと思います。
コミュニケーション能力に関しては、ディベートの試合の際に、審査員を説得する経験から学べたと思います。コンサルティングの仕事も、ただ論理的に話を進めるだけでなく、実際にクライアントや関係者を動かすところまでもっていかなければいけません。
そのためには、自分が話したいことを話すのではなく、相手に寄り添った話をする必要があります。今この人はどんなことを考えて話を聴いているのかを考えながら質問に回答していくことで、相手の理解の向上と、行動へ繋がっていきます。
日立グループの連携力で地域創生を推進
ありがとうございます。では現在のキャリアについてお伺いさせていただきたいです。
地域創生に注力されているとのことですが詳細を聞かせていただいてもいいですか?
地域が抱えている問題には、労働力不足や地域経済の衰退など様々なものがあります。そのような問題は1つのソリューションでは根本的な解決には繋がらないため、私たちは日立グループの様々なソリューションを持ち寄って、課題解決を目指しています。
本来各事業部は、自分たちの部署のソリューションの拡販がミッションになるのですが、本取り組みは1つの部署だけで対応できるものではないため、地域創生プロジェクトチームを新たに結成し、日立グループ各社が連携して取り組んでいます。
いくつか事例をご紹介します。1つは指静脈などの生体認証を活用し、生体認証での決済を行うというもので、福島県玉川村で実証実験を行っています。玉川村では、地域経済の活性化のために、キャッシュレス決済の普及などデジタル化を進めていました。しかし、高齢者も多いためデジタルディバイドの問題や、多様化する決済の種類が多いため既存のシステムでは対応が難しい人もいるという問題があり、うまく進んでいませんでした。
この状況に対して生体認証を活用し、指をかざすだけという簡単なアクションで、手ぶらで買い物ができる仕組みを構築し、高齢者にもデジタル技術に慣れ親しみつつ、キャッシャレスの利便性を実感していただき、課題解決を図りました。昨年度約500名、今年度約750名の方が活用し、今後の更なる拡大にも期待いただいています。
他のプロジェクトの一例としては、鉄道事業者と連携し、商業施設での無人店舗の実証実験を行いました。商業施設に出店したくても、店頭でお客様対応をするスタッフが足りないという理由で、テナント出店をためらっているテナント向けに、日立のソリューションを活用し無人店舗化することで、手軽にテナント出店できるようにするという取り組みです。化粧品の会社に出店いただいたのですが、人感センサーやAIアバター、リモート接客など複数のデジタル技術を活用することで新しい顧客体験を提供でき、お客様の満足度も9割以上という非常に有意義な実証実験になりました。
地域創生に取り組むチームを結成したとおっしゃっていましたが、一般的に日立様のような大企業では自分でプロジェクトを設立して実行するのがとても大変、というイメージがあります。実際のところどのような感じだったのでしょうか。
確かに、新しいプロジェクトを立ち上げるには、非常に多くの関係者を巻き込みながら検討を進めていくため、それなりに時間はかかります。その分実行する際には金銭面だけでなく、人材面でも十分なバックアップを得られるため、日立ならではの大きな規模でプロジェクトを推進することができます。また、社内的にも新規プロジェクトに次々取り組んでいこうという雰囲気があり、組織としても推奨されています。そのため、何か新しい取り組みを行う際には、「どうやったら成功するか」という前向きな観点で検討することができます。
なるほど…。大企業へのイメージが少し変わった気がします。
学生へメッセージ:やってみようか悩んだことがあったら挑戦してみてほしい
では最後に、今の高校生、大学生に向けてメッセージをお願いします。
一番伝えたいのは、特に”学生”のうちに、やってみようか悩んだことがあったら挑戦してみてほしいということです。
社会人になると、どうしてもやらないといけないことに追われてしまって、新しく何かに挑戦するということが時間的に難しくなってしまうように感じます。
だからこそ時間や心にゆとりのある学生のうちに、何かやってみるということが大切になってくると思います。
もちろん、やりたいことが1つに決まっていて、それに全力を注ぐことも素晴らしいことだと思います。ただ、もしまだ自分のやりたいことがはっきりと見つかっていない人は、是非挑戦を大切にしてみてください。私自身、学生時代にもう少し何かに挑戦していたら、今の人生がまったく違うものになっていたかもしれないと思うことがあります。
たまたまやってみたことから、自分の人生が開けることは往々にしてあることです。繰り返しになりますが、学生である”今”こそ色々なことに挑戦してみてください。
公開日:2023-11-22