今回は、第二外国語(初修外国語)について、それぞれの言語の特徴・選び方などを解説します。
日本においては、高校まで英語しか外国語を学んだことがないという人がほとんどなので、第二外国語をどのように選べばよいか迷っている人も多いでしょう。そこで、今回はこれらについて解説して、読者の皆さんが効率よく大学を卒業できるように手助けしたいと思います。
第二外国語は略して二外と呼ばれることも多いです。第二外国語(以下、二外)と呼ばれているのは英語を第一外国語と考えたときに、2つ目の外国語となることからです。
二外として履修が認められている言語は大学によって異なりますが、主な言語としては中国語、朝鮮語、スペイン語、ドイツ語、フランス語が挙げられます。
一部の大学では、これに加えてイタリア語やアラビア語、ロシア語などの履修が認められています。今回は中国語、朝鮮語、スペイン語、ドイツ語、フランス語について解説していきます。
単位を取るのが簡単な言語の選び方は……ずばり大学の先輩に聞くべしです。
いかに学習が簡単な言語でも、担当の先生の成績のつけ方が厳しい場合はもちろん単位を取りにくいですし、逆に学習が難しい言語でも成績のつけ方が甘ければ単位が取りやすいこともあります。
しかし、二外の選択を入学前に決定しなければならない大学がほとんどですので、先輩から情報を聞いて選択するというのは難しいかもしれません。
そういう人向けに前述した言語の難易度を簡単な方から難しい方へ向かって並べると、
朝鮮語 < スペイン語 < 中国語 < ドイツ語 = フランス語
という順になると個人的に思います。
それでは、この順に各言語について解説していきます。
朝鮮語は名前の通り朝鮮半島で使用されている言語です。
文字は訓民正音(ハングル)を使用します。
※ 訓民正音:朝鮮王朝時代の世宗が15世紀に公布した文字
ハングルは母音と子音の組み合わせを一文字で表現した文字です。音に対応する文字のパーツが決まっている表音文字なので、パーツさえ覚えてしまえば簡単に読めてしまいます。
朝鮮語の文法は日本語に似ている部分があり、そこまで難しくはありません。
例えば、朝鮮語は日本語と同じく動詞の前に目的語を置く言語(SOV型の言語)であるため、英語や中国語などの動詞の後に目的語を置く言語(SVO型の言語)に比べると、日本人の感覚に馴染みやすいといえます。
また日本語と同様に、朝鮮語にも助詞の概念が存在します。このように日本語と朝鮮語には共通点が多いため、朝鮮語の文法は比較的簡単だといえます。
※ 言語学において日本語と朝鮮語は膠着語(名詞や動詞などの単語に接頭辞や接尾辞、助詞などの付属語を組み合わせるという言語)に分類されます。言語学に興味がある方はぜひ調べてみてください。
朝鮮語の発音はやや難しいです。朝鮮語の母音は21種類(基本母音10種類・複合母音11種類)存在しており、日本語の母音に比べると非常に数が多いです。また朝鮮語には連音などの特殊な規則が存在しています。
全体的に見ると、朝鮮語は、文法の学習が楽なので学習しやすいといえるでしょう。しかし、最近ではK-POPなど韓国のコンテンツが流行しており、朝鮮語を選択する人が増加することが予想されるため、大学内で朝鮮語において良い成績を取るのは難しいかもしれません。
スペイン語は世界で2番目に話者が多い言語であり、話者の数は英語を上回っています。
これは現在でもラテンアメリカで広くスペイン語が用いられていることが一因となっています。
文字は他のヨーロッパ言語の大半と同様にラテン文字を使用しています。
※アルファベットという単語はある言語を記すのに使用する表音文字を伝統で決まっている順に並べたものという定義なので、今回は使用しないことにしました。この定義に則れば、例えばアラビア語にもアルファベットは存在するということになります。
ラテン文字は、英語のシンプルな文字とは異なり、ñという特殊文字やá, é, í, ó, úのように文字の上にアクセント記号が付くことがあります。
スペイン語の文法はヨーロッパ言語の中ではかなり簡単な方です。
簡単な点としては、英語と似ている単語が多い点や、普段使用する語彙数が少ない点が挙げられます。単語の暗記にそこまで困らないというのは言語学習において非常にプラスになります。
難しい点としては、
● 名詞に性別があり、それに合わせて冠詞を変えたり形容詞を活用させたりしなければならない点
● 人称代名詞が6種類(一人称二人称三人称・単数複数の組み合わせ)あり、これに合わせて動詞を活用させる必要がある点
● 時制が難しい点
などが挙げられます。
しかし、スペイン語は例外が少ない言語なので一度規則を覚えてしまえば楽だと言えるでしょう。
したがって、スペイン語の文法は、英語と異なり名詞に男性名詞女性名詞の区別があることさえ気を付ければ、学習しやすいといえます。
スペイン語は発音も簡単です。
例えば、フランス語由来で英語ではレストランと発音される「restaurante」という単語は「レスタウランテ」と発音されます。このようにスペイン語では単語をそのままローマ字読みすれば正しい発音になることがほとんどです。
唯一難しいのはrの音が巻き舌になることがある点です。
日本語には巻き舌の音が存在しないので、人によってはなかなか習得できないこともあります。
これらの点を踏まえるとスペイン語はかなり簡単な言語といえるでしょう。スペインのサッカーを見るのが好きな人は大学入学を機にスペイン語を勉強してみるのも一興かもしれませんね。
文字
文字は漢字を使用しています。漢字には中国本土で使用されている簡体字と香港・台湾で使用されている繁体字の2種類があります。
※ 細かく言えば、香港で使用されている繁体字と台湾で使用されている繁体字は異なるため、文字は3種類存在しているといえます。台湾で使用されている繁体字のほうが日本の漢字に近いです。
簡体字は昔と比べてかなり簡略化された漢字であり、中国語を全く知らない日本人が見てもあまり意味が分かりません。一方で、繁体字は簡略化されておらず日本の旧字体に近いため、中国語を全く知らなくてもそれなりに意味を理解することができます。
また、中国は国土が広大なので地域によって話されている言葉が全く異なり、主に「北京語」「上海語」「広東語」の3種類に分類されます。筆者の中国人の友人に聞いたところ、異なる地域出身の人が会った時、相手が中国人ということは分かるが、何を言っているかはあまりわからないというレベルで言葉が違うらしいです。
大学で学ぶのは、主に首都である北京で話されている北京語です。
中国語の文法は日本語とは異なりますが、時制が存在せず単語の活用もありません。そのため、外国語の中ではかなり簡単な部類に入ると思います。
文の構造がSVO型であることにさえ気を付ければ比較的スムーズに文法の学習を進められるでしょう。
中国語の発音はかなり難しいです。
中国語には発音を示したピンインと呼ばれるローマ字があるのですが、ピンインの母音の上には記号が付いていることがあります。これは声調記号と呼ばれており、4種類の声調が存在しています。
日本語でもイントネーションの違いで異なる単語を区別していることがありますが、中国語でも同様に、発音のイントネーションの高低で単語を区別していることが多いので、聞き取るのも発音するのも難しい(母語のイントネーションの違いは聞き取れても、外国語のイントネーションの違いを聞き取るのは難しい)です。つまり、中国語の発音をマスターするにはかなりの慣れが必要でしょう。
さらに中国語は単語をたくさん覚える必要があります。
漢字を見ればなんとなく単語の意味が推測できそうだと思うかもしれませんが、実はこの先入観が厄介です。
そもそも簡体字は日本の漢字と形が違うことが多いので意味を推測することが難しいですし、漢字が似ていて意味が推測できたとしても、その推測は必ずしも的中するとは言えません。したがって、勘に頼らずに丁寧に単語を覚えていく必要があります。
私も中国語を履修している友人に中国語の単語帳を見せてもらったことがあります。その際も、漢字の意味から単語の意味を推測すると全く違う意味になるということは少なかったのですが、完全に同じ意味になるということも少なかったので勘を過信してはいけません。
全体的にみると、中国語はやや難しいといえます。日本にいると英語の次に触れる機会が多い言語が中国語であるので、中国語を履修して街中を歩いている中国人観光客の会話に耳を傾けてみるのもおもしろいかもしれませんね。
ドイツ語は英語と同じゲルマン系に属する言語です。
文字はラテン文字を使用しており、英語の26文字に加えてウムラウトと呼ばれるä, ö, üという3文字とエスツェットと呼ばれるßという文字の全30文字が使用されます。
ドイツ語の文法はかなり難しいです。
男性名詞と女性名詞に加えて中性名詞が存在し、それに合わせて冠詞や形容詞を活用させなければなりません。
また、ドイツ語では冠詞が格変化します。
定冠詞は、4種類の名詞 (男性、女性、中性、複数) と4種類の格の組み合わせで16種類あり、不定冠詞は3種類の名詞と4種類の格の組み合わせで12種類あるため、計28種類の冠詞を使い分けなければならない点が非常に難しいです。
さらに、スペイン語と同様に人称代名詞が6種類あり、それに合わせて動詞を活用させなければいけません。それに加えて、スペイン語に比べて不規則な変化をする不規則動詞の数が多いため、覚えることがより多くなります。
また前置詞は特定の格と結びついているので、意味と合わせて覚える必要があります。
ドイツ語の発音は単語をそのままローマ字読みすればいいことが多いので、英語よりも簡単であるとも言われています。
しかし一部の子音は発音が独特であり、しっかり覚える必要があります。例えば、ドイツ語においてLとRの音は英語のそれよりも明確に異なるのできちんと区別して発音する必要があります。この2つを区別せずに日本語の「ら」行の音で発音してもほとんど聞き取ってもらえません。
単語はそれなりに覚えるのが面倒です。英語と似ている単語もありますが、それは一部にすぎないので一つ一つ覚えていく必要があります。
このように、ドイツ語は比較的難しい言語であるといえます。
しかし、ドイツはカントやヘーゲル、ニーチェなどの有名哲学者の出身国です。あり、彼らの著作はドイツ語で書かれているので、哲学に興味がある人やゲーテなどのドイツ文学に興味がある人は履修してみるのも良いと思います。
最後にフランス語を紹介します。
筆者も大学でフランス語を履修しているので他の言語より詳しく書いていきます。フランス語はラテン語系であるので英語と異なる点が多く、割と難しい言語だと思います。
文字はラテン文字を使用しています。
英語で使用されている26文字に加えてœという合字が使用されます。
また、フランス語では文字の上下に様々な記号が付くことがあります。
これらの記号を順番に紹介します。
● 文字の上につく記号
まずは文字の上につくアクサン(accentのフランス語発音)記号を紹介します。
アクサングラーブと呼ばれるアクサン記号は、左上から右下に向かって線を書いたもので、è, à, ùのように、e, a, uの3文字の上につきます。
eについた場合とa, uについた場合とで用途が異なります。
eにアクサングラーブがつくと、元々のeの発音である「ウ」から、「エ」に近い音に変化します。
aとuにアクサングラーブがついた場合、発音は変化しません。アクサングラーブの有無によって綴りが同じ単語の意味を区別するためです。例えば、ouと書くと英語のorの意味になりますが、oùと書くと英語のwhereの意味になります。
アクサンテーギュと呼ばれるアクサン記号は、これは右上から左下に向かって線を引いたもので、éのみ存在します。
これはアクサングラーブと同様に、発音がエに近い音になることを示す記号です。
他にもアクサン記号が存在しますが、この2つと比較すると使用頻度がかなり低いので紹介しないことにします。
● 文字の下につく記号
文字の下につく記号としては、セディーユと呼ばれるものがあります。
これは発音が変わることを示した記号で、çのみ存在します。
フランス語でca, ci, cu, ce, coと書くと発音はカ、スィ、キュ、ス、コとなりますが、ça, ci, çu, ce, çoと書くと発音はサ、スィ、スュ、ス、ソになります。このように、セディーユはcをサ行の音で読むという印の役割を果たしています。
文法は難しいですが、個人的にはドイツ語ほど難しくはないと思います。
フランス語には中性名詞が存在せず、男性名詞と女性名詞の2種類しか存在しません。これに合わせて冠詞や形容詞を変化させます。
※ 紹介が遅れましたが、男性名詞と女性名詞を見分けるコツは存在しています。スペイン語では、女性名詞はaで終わっていることが多く、ドイツ語とフランス語なら女性名詞はeで終わっていることが多いです。これはラテン語由来の特徴だそうです。
フランス語の冠詞は名詞の性や単複によって変化しますが、格変化は存在しません。そのため、ドイツ語と比べると冠詞の数は少ないです。
フランス語には定冠詞、不定冠詞の他に部分冠詞というものが存在しています。部分冠詞の意味は、日本語では言語化しにくいのですが、英語で言うところの「some+不可算名詞」に似た概念を表します。例えば、「私は肉を食べます。」という文の「肉」には部分冠詞がつきます。この3種類の冠詞の使い分けが、英語のそれとは異なっていて、筆者もまだ完全には理解できていません。
人称代名詞はスペイン語やドイツ語と同様に6種類あり、それに合わせて動詞を活用させる必要があります。
また、基本的で使用頻度の高い動詞に不規則動詞が多いので、活用を丸暗記する必要があります。
フランス語は発音が難しいです。
フランス語の発音の特徴としては、「発音しない文字がある」ということと、「音が繋がる」ということが挙げられます。
● 発音しない文字がある
フランス語では語尾の子音(c,f,r,lを除く)とアクサン記号なしのeを発音しません。
また、スペイン語と同様にhを発音しません。
もちろん例外もたくさん存在するので単語ごとにしっかりと発音を覚える必要があります。その点は英語と似ているかもしれません。
● 音が繋がる
次に音の繋がりに関してですが、これがかなり厄介で、慣れないと咄嗟に発音できません。
リエゾン、エリジヨン、アンシェヌマンの3種類の規則が存在しています。
リエゾンとは、語尾の子音を発音しない単語の次に母音から始まる単語が来た場合、その子音と母音を繫げて発音するというものです。
例えば、小さいという意味を表す「petit」(発音はプティ)と、友達という意味を表す「ami」(発音はアミ)が並ぶと、恋人という意味を表すpetit amiという言葉になり、発音はプティタミになります。tとaの音を繋げて発音しなければならないのです。
次にエリジヨンです。これは発音だけでなく綴りにも変化が起こります。
「語尾」が母音である単語と、「語頭」が母音である単語が並んだ場合に変化が起きます。
例を紹介したほうが簡単に説明できるので1つご紹介します。
女性定冠詞「la」と大学という意味を表す「université」という単語が並ぶと、「l’univerisité」になります。前にある単語の語尾の母音が消失し、’を書いて後の単語と繋げるのです。
発音は残った子音と次の単語の母音を繫げて読みます。
アンシェヌマンはリエゾンとほぼ同じで、違いは前にある単語がもともと語尾の子音を発音する単語であるという点だけです。綴りにも変化はありません。
これらの規則は非常に習得が難しいです。特にエリジヨンは綴りにも変化が起こるので忘れがちです。
例えるなら英語で三人称単数のsをつけ忘れるのと同じような感覚で、ペーパーテストにおいてエリジヨンを忘れてしまうこともよく聞きます。発音する際にも、常に後ろの単語に気を配って、これらの音の繋がりが発生するか意識しなければなりません。
しかし、これこそがフランス語の発音がかっこいいと言われている原因なので、マスターできれば本当にかっこいいです。
また、発音が難しい点は他にもあります。
「ai」で「エ」と読んだり、「oi」で「オワ」と読んだりするなど、ローマ字読みとはかけ離れた読み方に慣れる必要もあるのです。音が繋がるという点を除けば、単語自体の発音の難しさは英語と同じくらいだと思います。
フランス語の単語はそこそこ難しいです。
形容詞には英語と似ている単語も多いのですが、名詞や動詞は英語とかなり異なるので一つ一つ暗記しなければなりません。
ドイツ語もフランス語も、英語と共通している単語は全体の3割ほどと言われています。ドイツ語もフランス語も英語ほど日本語に浸透していないのでなじみが薄く、単語を覚えるのは大変な作業となります。
このように、全体的にフランス語は難しい言語であるといえます。しかし、フランス語は現在でもアフリカなどで使用されており、国連の公用語でもあるので、将来国際的な場で働きたいと思っている人はフランス語を履修してみるのもありだと思います。
ドイツ語とフランス語のどちらを履修するべきかという疑問がよく聞かれますが、私はドイツとフランスとで少しでも国や文化に興味を持てる方を選んだ方がいいと思います。
「哲学に興味がある」「将来国連で働きたい」などの明確な理由がある場合は例外ですが、そうでない場合は少しでも自分のモチベーションが保てる方を選ぶべきだと思います。
ここまで5つの言語を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
最近では二外は負担が重すぎるし必要ないという意見もよく聞かれます。しかし、私は大学に入ってまた改めて英語以外の外国語をゼロから学習するというのもなかなか面白いなと感じています。皆さんもぜひ頑張って二外を学習してほしいなと思います。
(執筆:河井僚吾 編集:山浦凜)
公開日:2023-10-23