藤原 彪人(ふじわら あやと)
一般社団法人e-donuts 代表理事
1999年生まれ、23歳。
京都大学経済学部経済経営学科 出身
2022年にA.T.カーニーに新卒入社し、国内通信メーカーの新規事業立案や大手飲料メーカーの事業戦略立案、海外企業買収案件などに従事
2023年に同社を退職し、一般社団法人e-donutsを創業
現在は、一般社団法人e-donutsにて主に中高公教育の支援を行う。探究学習という生徒が自らテーマを設定し取り組むプロジェクト型学習において、中高生の「やってみたい」挑戦を背中押しするためのプラットフォームを展開。
まず、藤原さんが代表を務める団体「e-donuts」の活動について教えてください。
私たち一般社団法人e-donutsは、公教育の探究学習を支援する教育支援団体です。「生徒一人ひとりが課題を設定し、追究する学び(=探究学習)」を公教育で広め、未来を担う世代が「知りたいこと」や「やってみたいこと」を育める環境を作ることを目標に活動しています。
一般社団法人e-donutsのホームページ:https://www.e-donuts.com/
なぜ藤原さんは教育支援団体を立ち上げたのですか。
私が教育支援団体を立ち上げたのは、単純に子どもたちが好きだったこともありますが、一番は自分自身のバックグラウンドに起因していると思います。
母子家庭育ちということもあり、周りの人たちと比べると「塾にいけない」「留学にいけない」といった教育機会の不平等を自分ゴトとして体感することが多くありました。
大学に進学したころから、自然と「日本の教育に対し何かしたい」という思いが募っていきました。
それから、学生時代に各地の学校を回ったり、教育ベンチャーでインターンをしたりと日本の教育市場に触れるにつれ、「公教育の支援をしたい」と意を固めることになりました。
「公教育」というところに、やはりこだわりがあるのでしょうか。
そうですね。なかでも特に、当時の自分と同じような立場の子たちが多く通う公立学校に対して支援したい思いが強いです。
日本は特に塾業界の市場規模が大きく、他方で公教育への予算は相対的に少ない傾向にあります。特に探究学習のような領域は、国語・数学といった教科学習に比べてもまだまだ予算が不十分で、支援が行き届いていない印象があります。
「探究学習」というのは具体的にどういった授業なのでしょうか。また、そこに注目されている理由があれば教えてください。
探究学習というのは、生徒自らが課題を設定し、解決に向けて調査・議論をしながら進めていく学びです。高等学校では主に「総合的な探究の時間」という科目として、2022年度から全国で必修化しています。
私はこの探究学習に、日本の公教育をより良いものにする大きなポテンシャルを感じています。
不確実性の高い現代を生きるいまの中高生にとって、特に必要なのは「能力開発」ではなく「興味開発」だと思うんですよね。
つまり、知りたい情報にすぐアクセスできる今の時代、「知りたい」「やってみたい」と思うことこそが何より重要なのではないかと考え、このような教育支援の活動を行なっています。
新卒でA.T.カーニーに入社されたとのことですが、教育業界ではなく戦略コンサルティングの企業に入られたのは何か理由があるのでしょうか。
学生時代から今の今まで「教育支援がしたい」という自分の意志はずっと変わっていないのですが、就活していた頃、漠然と「教育業界以外の世界を見ておくべきだ」という感覚がありました。
学生時代、教育業界の中に関わって感じたのは、「学校や教育企業にいる多くの人はずっと教育ドメインにいる人だ」ということでした。もちろんそれは素晴らしいことで、だからこそ見えるものもあるとは思いますが、天邪鬼な私は、今の教育業界が抱えている課題の突破口は、教育業界に居続けていても見えないのかもしれない、と考えました。
とはいえ、出来るだけ早く教育業界には戻りたい。なので、短期間で多様な業界に密度高く触れることのできる仕事はどこか?という問いを立て、結果的に戦略コンサルティングファームを選び、自分の中で期限を立てて入社しました。
実際に戦略コンサル業界に入ってみてどうでしたか?
「入ってよかった」の一言につきますね。たった一年間弱ではありましたが、4種類程の全く異なる業界の案件に従事できましたし、案件外で他にも多様な業界の情報を密度高く得ることができました。
特に、A.T.カーニーは少数精鋭型のファームで、クライアントとの距離も近いため、一年目の若手でもかなり濃密な経験をさせていただいたと思っています。
教育以外の業界のことを知っても教育にはあまり役立たないのでは?と感じる方もいると思うのですが、実際教育団体をやられている今、どうお感じでしょうか?
そうですね、確かに他業種の知識が直接今の教育事業に役立つことはあまりないかもしれないです。どちらかというと、複数業種に関わる中で見えてきた共通のモノの見方とか、日本の市場構造のような、一段抽象化した視点が非常に役立っている感覚です。
日々解きたいのは教育領域の課題なのですが、この課題を分解したり、解決策を考えたりするのに、これまで培ったモノの見方やフレームワークが有意に働くことは結構あります。
藤原さんのように、「やりたいこと」が明確な学生ばかりではないと思うのですが、そうした学生はどのように就職先を選んだらいいのでしょうか?
私自身、学生当時は今お話したほど明確なストーリーを描いていたわけではなかったと思います。
先ほど語った話に嘘は一切ないですが、多少かっこよく綺麗なストーリーに整理している節はあります(笑)。
ただ、自分のやりたいことを深く自問自答していたことと、それを中長期で実現するためにどういったパスを描くべきかを自分なりに考え抜いていたことは事実です。
「やりたいこと」を自問自答してもなかなか出てこない方ももちろんいると思いますが、まずは自分にとことん素直になり、自分の中で大事な要素を書き出してみるといいのではないでしょうか。
その時、「給料はこれくらいほしい」「あまりハードなワークスタイルは合わない」など素直な欲求・要件も自分に正直に可視化した方がいいと思います。
その上で、「自分が積極的に時間を使っていることって何かな」「ノーリスク・ノーコストで半年間自由に時間を使えるとしたら何をするかな」と「やりたいこと」を探す問いを立ててみると良いと思います。
一般社団法人e-donutsは、現在中高生の「やってみたい」挑戦を背中押しするためのプラットフォーム構築に向け、クラウドファンディングを実施しています。
https://camp-fire.jp/projects/view/658658
公開日:2023-10-12