近年、教育界の中で一際注目を浴びている「ミネルバ大学」。その名を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
この大学は、その驚異的な合格率1%ということで、日本のメディアからは「世界最難関の大学」とも称されています。
しかし、その背後には従来の教育システムを根本から変える革命的な教育方法が隠されています。
今回は、ミネルバ大学を受験しVSY生として合格した筆者が、大学の魅力や、日本人がこの大学に合格するための方法について詳しく解説します。
ダース・ディベーター(編集部・ライター) Twitter
東大受験に失敗したことがきっかけでミネルバ大学を受験し、VSY (Visiting Scholars Year) 生として合格。高校時代は県の代表として英語ディベートの全国大会に出場するなど。趣味はサッカー。
2012年に設立されたミネルバ大学の学生は、学生は4年間で7つの異なる都市(サンフランシスコ・台北・ソウル・ブエノスアイレス・ハイデラバード・ベルリン・ロンドン*)を訪れ、現地での学びを経験します。
伝統的な大学教育の枠を超え、授業はオンラインのディスカッション形式で行っています。また、学生は各都市での企業や教育機関などと協力してプロジェクトを進めています。
この独自の教育スタイルが、世界の革命的な大学ランキング(WURI)で1位を獲得するなど、多くの評価を受けています。
*2023年度入学組からロンドンが除かれ、生徒は5または6都市を回ることになる
また、学生の多様性もミネルバ大学の特徴の一つです。
1学年に200人前後が在籍しており、その中には国連の職員や、プロのチェリストから高校を卒業したばかりの人など、さまざまなバックグラウンドを持つ学生が集まっています。
ちなみに2023年度の日本人入学者は6人であり、数年前に比べて僅かながら増加傾向にあります。
ミネルバ大学のオンラインでの授業は、20人以下で行われます。
また教授は10分以上話してはならず、学生同士のディスカッションがメインとなるため、生徒は事前課題をやらなければなりません。
授業は、「フォーラム」という独自に開発されたオンラインプラットフォームで行われ、生徒達の意見をグラフとしてまとめたり、個人が発言した時間を可視化したりし、授業内でのコミュニケーションを促進しています。しかも授業は録画され、何度でも見返すことができます。
授業内容としては、例えば数学の場合、事前課題では方程式の解き方や公式についてを学び、授業内では例えば、都市の渋滞を解消するためにはどうしたらよいかなどを統計学を利用して分析し議論したりします。
1年目は教養課程で、これからの大学生活や社会に出てから重要になってくるコミュニケーションやクリティカルシンキングを養います。
また、一年を通して行われるCivic Projectsというものがあり、移動都市において企業や団体と協力してプロジェクトを完成させます。
2年目以降は主専攻と副専攻を「芸術・人文科学、ビジネス、コンピュータサイエンス、自然科学、社会科学」の5分野から選び、3、4年次からは専門分野から「何か新しいものを生み出す」という課題が与えられ、学生たちは多くの時間を自分の卒業プロジェクトに費やします。
参考:https://www.minerva.edu/undergraduate/4-year-curriculum/
ミネルバ大学では、就職支援も充実しており、学生は初年度から専任のコーチと連携しながら、自分の興味や価値観などを理解し、将来の目標などを明確にします。
そして、それぞれの学生のニーズに合うようキャリアプランを作成し、就職活動を成功させるためサポートします。また、大学側は学生達に豊富なインターンシップの機会を提供しており、ほとんどの学生は卒業するまでにインターンを経験します。
ミネルバ大学は、Google、Tesla、McKinsey & Companyなどの企業や、ハーバード大学、オックスフォード大学、カリフォルニア工科大学などの大学と提携しています。
卒業生はこれらの有名大学院や有名企業、またはスタートアップに籍を置いたり、自ら起業したりしてそれぞれが輝かしい未来を歩んでいます。
参考:https://www.minerva.edu/undergraduate/career-development/#professional
ミネルバ大学の合格率の低さは、その独自の選考基準に起因しています。従来の試験や面接だけでなく、クリティカルシンキングやコミュニケーション能力を重視した選考が行われています。
2022年度では20,816人が出願し、わずか208人が合格、合格率は1%となっています**。この数字を、例えばアメリカの名門ハーバード大学の合格率5%と比較すると、その厳しさが伺えます。
また、ミネルバ大学への出願から審査まですべてオンライン上で無料でできることが出願者が多い理由のひとつです。
**2023年度の合格率は出願人数の縮小などにより3.5%となっている。
ミネルバ大学の選考は、TOEFLやSATなどの外部の試験は必要としていないため、出願のハードルは低く、日本の大学と簡単に併願することができます。
しかし合格するためには、質問されたらすぐに流暢な英語で返答できるレベルは必要です。日頃から英語に触れられるような環境に身を置くことが重要です。入試の内容は、リーディング、ライティング、数学、IQテスト、想像力、ビデオ面接の6つからなります。また、過去4年間で達成したことを6つ書いて提出するという、エッセイの代わりになる段階もあります。
ミネルバ大学への出願は、今すぐにでもホームページから登録することで始めることができます。
ミネルバ大学ホームページ:https://www.minerva.edu/
ミネルバ大学の創設者であるベン・ネルソン氏は、2016年のインタビューで、ミネルバ大学の理念や求める学生像について次のように述べています。
「車で例えると……キャデラックとテスラどっちか?という選択肢があったらテスラを選ぶような人物がミネルバ大学に合っていると思います。どちらが優れているかということではなく、革新性を好むセンスのある人ですね。」
この言葉からも分かるように、ミネルバ大学は伝統的な価値観や方法に固執するのではなく、新しい方法や考え方を受け入れることのできる学生を求めています。
現在、テスラは世界有数の大企業として知られていますが、ネルソン氏がこの例えを使ったのは、ミネルバ大学の革新的な側面を考えてのことでしょう。
ハーバード大学やMITなどの名門アメリカ大学は、課外活動で国際大会や全国大会での実績を重要視する傾向があります。しかし、ミネルバ大学は大規模な実績は合格には必ずしも必要ではないと明言しています。
受験者たちは、今まで自分が置かれた環境で何を考え、どのように周りに影響を与えてきたのか。地域コミュニティへの貢献や、運動や芸術活動でどのように周りを巻き込み、変えていったのか。
大学側は、このような受験者自身が誇りに思っている事柄に基づき、彼らのリーダーシップを評価します。
ミネルバ大学は、従来の大学教育の枠を超えた新しい形の教育を提供しています。
このような革新的な教育環境に身を置くことは、一般的な大学生活とは異なる経験をもたらします。
そのため、ミネルバ大学には、新しいことに挑戦する勇気や、未知の環境に飛び込む冒険心を持った学生が求められます。
また、世界最難関と称されている大学に挑戦するのにも当然ながら大きな勇気がいります。審査は出願する前から始まっているのかもしれません。
初代の学部長であるステファン・コスリン氏は言います。
「多くの大学は、現在存在している仕事に関連するスキルを教えるべきだという考えを持っているようです。しかし、私たちはそのようなことはしません。我々は、学生に『思考習慣』や『基礎理念』を教えることで、 生涯にわたって役立つ学習基盤を作り、まだ存在しない仕事にも適応して成功できるようにします。」
ミネルバ大学は、その独自の教育方法や厳しい選考基準で知られていますが、それ以上に、学生一人ひとりの成長や可能性を最大限に引き出すことを目指しています。
日本からの学生も、この大学での経験を通じて、自分自身の可能性を広げ、世界に貢献することができるでしょう。
ミネルバ大学への挑戦は決して簡単ではありませんが、その先に待つ経験や学びは、他のどの大学でも得られないものです。この記事を読んで興味を持った方は、ぜひこの革新的な大学を進路の選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。
アイキャッチ画像の出典:https://medium.com/minerva-university/minerva-delivers-more-effective-learning-test-results-prove-it-dfdbec6e04a6
公開日:2023-08-25