「正解をつくるのは、子どもたち自身」——キッズプラザ大阪が提供するクリエイティブリユースプログラム

Infra新卒 キャリア面談
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「クリエイティブリユース」という言葉をご存知でしょうか?創造性を使って廃材を素敵なモノに生まれ変わらせる取り組みを指しており、環境意識の高まりつつある近年、注目が集まっています。

「『もったいない』の意識を子どもたちと共有するために、クリエイティブリユースを生かすことができないか」——「そんな想いから、プログラムに導入した」と語るのはチルドレンズミュージアム*・キッズプラザ大阪でミュージアムエデュケーターを務める岡田可斗子(おかだ・かとこ)さん。岡田さんはキッズプラザ大阪内で担当するコーナー「創作工房」で、身近な材料を利用した創作プログラムを企画し、多くの子どもたちに学びと発見を提供してきました。(*体験型展示・プログラムの提供を中心とする、子どものための教育施設)

岡田さんが様々なプログラムを運営するなかで最も重視するのは「自分で生み出し、乗り越える力」。環境意識の高まる時代の潮流に適応しつつ、子どもたちの可能性を伸ばす方法を模索してきた岡田さんが発信するメッセージは、目まぐるしく変化する社会に飛び出していく我々若者の心にも響くものでした。


成果物ではなく、プロセスにこそ学びと発見がある


——まずはじめに、キッズプラザ大阪や創作工房の概要についてお教えいただけますか。


岡田可斗子さん(以下、岡田):キッズプラザ大阪は、1997年に大阪・扇町に開館したこどもたちのための博物館です。開館から23年、五感を刺激する体験型展示やプログラムを提供し、子どもたちが遊びながら学べる環境を整備しています。

科学・自然・国際理解・障碍者理解・芸術・映像・デジタル・食育等々、多様なコーナーがあり、子どもたちそれぞれの興味・関心に合わせて楽しく遊ぶことができます。近畿圏を中心に全国から子どもたちが集まりますが、近年は海外からの来館者も増加中です。

創作工房はキッズプラザ大阪内の1コーナーで、表現・創作活動をテーマとしたものづくりを中心としたプログラムを提供しています。紙や石、木などの身近な材料を使う点、工作が好きな子だけでなく苦手意識のある子にも広く開かれた場である点、そして何より、成果物ではなく「モノをつくるプロセスにおける学びや発見」を重視している点が特徴です。


「正解をつくるのは、子どもたち自身」——キッズプラザ大阪が提供するクリエイティブリユースプログラム

創作工房の過去のプログラム「足アートつくリズム」実演中の写真。時には全身の感覚を駆使しながら、子どもたちがのびのびと表現・創作活動を楽しめるプログラム企画・運営を心がけているそう。


「企業との連携」が再チャレンジのヒントに


——では、これまでも身近な材料を使ったさまざまななプログラムを展開してきた創作工房で、なぜクリエイティブリユースを導入することになったのでしょうか。


「正解をつくるのは、子どもたち自身」——キッズプラザ大阪が提供するクリエイティブリユースプログラム

廃材置き場に集まった子どもたち。何百種類もの廃材のなかからどれを作品に使うか、選ぶこどもたちの表情は真剣そのもの。日常生活ではあまり目にしない廃材も多く、「これはなに?」と保護者の方と語り合う場面も多く見られたそうです。


岡田:もったいない運動が盛んになった2006年頃に、一度古着のリメイクや電化製品を解体し部品を使って創作をするプログラムを開催したことがありました。しかし衛生面や子どもたちの安全の確保が厳しかったり、準備量があまりにも膨大で長続きはしませんでした。

転機は数年前です。岡山でクリエイティブリユースの活動をされている大月ヒロ子さんの書籍『クリエイティブリユースー廃材と循環するモノ・ヒト・コト』に出会って「企業との連携」というヒントをいただき、状況が変化しました。

大阪は古くからものづくりの街で、小さな町工場がたくさんあるし、企業にも協力を申し込んで廃材を提供していただくことで、「もう一度クリエイティブリユースがキッズプラザ大阪でもできないだろうか」と思ったんです。

現在はSDGsもしばしば話題になりますし、子どもたちが「もったいない」の意識を楽しく学べる機会を作りたいと思い、プログラムを企画しました。また現代では手順に従えばつくりたいものが完成するキットが簡単に手に入りますが、自分の手で材料を選び取り、自身のアイデアで素敵なモノを生み出す体験を子どもたちにぜひしてもらいたかったという背景もあります。


廃材の分類・分解でものづくりの本質を見直した


——たしかに、近年環境意識の高まりの中で、クリエイティブリユースも少しずつ注目されてきていますよね。ではクリエイティブリユースを導入する際、創作工房ならではの工夫などはなされたのでしょうか。


「正解をつくるのは、子どもたち自身」——キッズプラザ大阪が提供するクリエイティブリユースプログラム

実際のプログラムで利用された廃材(一部)。府内の企業や館内のボランティアなどから提供された廃材は色や材質等によって細かく分類されました。「子どもたちの目に楽しく映るよう、配置の仕方にも工夫した」と岡田さんは語ります。


岡田:「創造性を培うためのしかけ」としてクリエイティブリユースを活用することを意識しました。「○○を使って△△を作ろう」と手段と目的を縛り過ぎず、「遊び方は子どもたちの数だけある」という設計にした点は創作工房の他のプログラムと同様です。

また、事前準備の段階では、集めてきた材料をとにかく丁寧に分解・分類し、廃材を魅力的に見せるようにも工夫しました。分解・分類作業を担当したのは、指導員という、ワークショップを運営し、最も身近な立場でこどもたちの創作をサポートしてくださる方たちです。作業を通じて指導員の皆さん自身が材料について深く理解し、ものづくりの本質を見直せたことで、廃材一つひとつにより向き合ったプログラムを子どもたちに届けられたと思います。

加えて、今回は企業からも廃材を提供していただき、普段は目にしないような廃材も並べたことで、参加した子どもたちが「この切れ端って本来○○になるはずのものだったのか…!」と新しい発見ができるようにも配慮しましたね。


子どもたちのフィルターがモノの魅力を再発見してくれた


——実際にこのプログラムを運営し、どのような反響や発見がありましたか?


岡田:一つは廃材の提供者が気づかなかったモノの魅力を、子どもたちが発見してくれたことです。具体的なエピソードを挙げると、当館のボランティアの方の一人がずっと捨てずに集めて取っておいた、スーパーのお刺身についてくるプラスチックの菊の飾りを今回のプログラムに提供してくださったんですね。それをプログラムに参加したシリア出身の子が自分のつくったポシェットの飾りに使っていて。その子本人はまさかそれがお刺身の飾りだとは知らないけど、でもその子にはとても魅力的に見えたんですよね。子どもたちそれぞれが持つオリジナルのフィルターで廃材を観察して、モノの魅力を教えてくれた顕著な例だと思います。


もう一つは、ワークショップがきっかけとなり他団体でも廃材活用の動きが出てきたことです。材料集めに悩んでいらっしゃった福祉系の作業所の方が、私たちの活動にヒントを見出されて、企業の廃材を材料として活用することを検討されているそうです。こうした廃材活用の動きはこれからも出てくると思いますし、海外では盛んになりつつある「アップサイクルセンター*」の設置のように、行政などのサポートが手厚くなって企業との連携がよりスムーズになる仕組みが整ってほしいと思います。

(*一般に、工場等で出た廃材を収集・管理し、市民等に提供する施設。クリエイティブリユースをテーマとした展覧会やワークショップ、商品の販売などが実施されている場合もある。)


「正解をつくるのは、子どもたち自身」——キッズプラザ大阪が提供するクリエイティブリユースプログラム

実際に作られたポシェット。菊飾りだけでなくプラスチック製の葉も使い、ポシェットを素敵に飾っています。


——最初にお話しされていた通り、キッズプラザ大阪は近年国内のみならず海外の子どもたちにも人気を集めるスポットとなりつつありますよね。「クリエイティブリユース」も、世界各国で環境意識が高まるなかで、どんなバックグラウンドを抱える子どもたちでも楽しく環境活動に触れられる取り組みだったのではないかと僭越ながら推察いたします。


最後になりますが、岡田さんは、キッズプラザ大阪のミュージアムエデュケーターとして、様々な社会問題・環境問題が複雑に絡み合う現代を生きていく子どもたちに対しどのようなメッセージを発信していきたいとお考えですか。


岡田:「自ら生み出し、乗り越えて解決できる力を身に着けてほしい」ということです。大人の社会でも言えることですが、私たちは心のどこかで「誰かがやってくれる」と他者に期待しがちです。でも、想像しているよりも遥かに、社会は正解を用意してくれていませんよね。

これからの社会は科学技術の進歩のスピードもより高まるでしょうし、一歩先の未来が全く予測できないという傾向は強まっていきます。程度の大小の差はあれど、大変なことが起こらない人生なんて、きっとありません。だからこそ、自ら作り出す力、自分の頭で考え乗り越える力を養ってほしいし、子どもたちがそれらの力を身に着けるのに重要でかつ格好の機会が「遊び」だと思うんです。

キッズプラザ大阪は開館当初から「子どもたちが 楽しい遊びや体験を通して学び、創造性を培い、可能性や個性を伸ばす」という理念を一貫して掲げてきました。のびのびと遊ぶうちに全身でたくさんのことを実感し、考え、獲得していけるような場を用意し、一人でも多くのこどもたちに提供するのが、私たちの役目だと考えています。


この記事を書いた学生ライター

Yuko Obara
Yuko Obara
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1995年生まれ、東京都出身。ご連絡はTwitter(@komugi_no_ane)よりお願いします。

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