高校生まで母親に服を買ってもらっていたダサ男が、ファッションメディアを立ち上げた理由

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「したい人、10000人。始める人、100人。続ける人1人。」——作家・中谷彰宏さんの言葉です。

「やりたいことが見つかりません」と能天気に過ごす学生が多くいる一方で、何かをやりたいと考えている人は山ほどいて、さらに始める人も、継続する人もいます。

もしあなたが大学生で、何事に挑戦することもなく毎日を過ごしても、いずれ挑戦を続けた人たちと同じように卒業の時期を迎えます。しかしその卒業のときに「学生生活に後悔はありません」と胸を張って言えるでしょうか?

本連載では、 学生生活を“自分の価値最大化”に費やした学生起業家たちへのインタビューを通じ、本当に有意義なキャンパスライフについて考えていきます。

今回編集部が注目したのは、ファッションジャーナル「SHALE」を立ち上げた慶應大学の岡本啓太郎さん。

岡本さんは「なんとなく」の意思決定で毎日を過ごすことに嫌気がさし、誰もがこだわりを持った人生を生きるために起業という選択肢を選びました。

事業を展開する領域は、自分がもともと「大嫌いだった」ファッションです。立ち上げに至る背景と、目指す世界観についてお話を伺いました。



「ダサすぎでしょ」——“自称ファッショニスタ”にバカにされた経験が原点

大学在学中に


—— まずは、ファッションジャーナル「SHALE」を立ち上げた理由について、教えてください。

岡本啓太郎(以下、岡本):ファッションを通じて自己肯定感が高まり、自分に自信が持てるようになったことがきっかけです。もともと僕は、高校生まで母親に服を選んでもらっていました。なので、ファッションには全く興味がなかったんです。

高校生まで母親に服を買ってもらっていたダサ男が、ファッションメディアを立ち上げた理由

「当時はオシャレだと思っていたんです」と恥ずかしそうに見せてくれた以前の岡本さん


岡本:大学生になり、自分がオシャレだと思う服を買うようになりましたが、周囲から「ダサすぎる」とバカにされました。

でも、それはそうですよね。オシャレの基準も知らないですし、服の種類も知らないので(笑)。僕は典型的な、ダサ男でした。

—— そこで本腰を入れて、オシャレをしようと。

岡本:そうです。あまりにもダサいと言われるので(笑)、とにかく服について調べました。友達が着ている服もくまなくチェックしましたし、ブランドのルーツや、製法まで、ありとあらゆる情報を集めましたね。

すると、服について誰よりも詳しくなったんです。そこで僕に「ダサい」といった友人たちに、服選びの参考になると思い、「なぜその服を選んだのか」を聞いてみました。

—— 友人は、その服を着ている理由をどのように話していましたか?

岡本:それが、「みんなが着ているし、流行っているから」と。そこで僕は、それが最もダサい服の選び方なのではないかと感じました。だって、「みんなが着ている」という理由だけで、自分が着る服を決めているんですよ。

僕の服をダサいと言っていた友人たちは、自分の価値観も持っていないのに、とりあえず鹿や馬のロゴがついた服を買う。それも、みんな色が多少違うだけで、ほとんど同じです。

そこで僕は、本当のオシャレをするために、心から自分がいいと思った服しか着ないと決めました。それでみんなに認めてもらおうと考えたのです。

—— 実際に、認めてもらうことはできましたか?

岡本:初めて「オシャレだね」と声をかけてもらうことができました。当時アルバイトの給料が5万円でしたが、4万6,000円のデニムを買ったんです。それから、そのデニムに合うアイテムを調べ、トータルでコーディネートしたところ、「センスいいね」って。

「ダサすぎでしょ」——“自称ファッショニスタ”にバカにされた経験が原点


岡本:その経験を通じて気付いたことがあります。オシャレになれたことよりも、「オシャレだね」と言ってもらえたことで、自分に自信が持てたことが嬉しかったのです。

ファッションには、人の考え方を変える凄まじい力があると感じました。この経験を、みんなにも届けたくなったのです。

365日の1日だけでも「こうなりたい!」に出会ってほしい


—— 自分に自信を持てたたことが、「SHALE」の立ち上げ背景であると。


岡本:おっしゃる通りです。もう一点理由があるとすれば、僕はずっと、「好きを見つける」とか「夢に出会う」ことを大切にしていました。


目標がある人生は、目標のない人生よりずっと豊かだと思うからです。SHALEは、目標を持ったり、自分の人生を豊かにするためのきっかけになれると思いました。

「ダサすぎでしょ」——“自称ファッショニスタ”にバカにされた経験が原点


岡本:僕はずっと、いわゆる既定路線というか、狭い世界観で過ごしていました。小学校から中学校まで附属校に在学していたので、付き合う人たちが変わる経験をあまりしてきていません。


当然考え方も似てくるので、突拍子も無い目標を持つ知人や、本当に憧れている夢に向かう人に会う経験がなかったのです。ただ、高校生のときに人生を変える出会いがありました。

—— 詳しく教えてもらえますか?

岡本:学校祭に招待した年下のミュージシャンとの出会いです。「彼女はギターと歌が大好きだから、将来は絶対ミュージシャンになる」といつも口にしていました。


一方、僕はテニスが好きで、ずっとテニスをしてきているのに、将来の目標は「大企業に入る」。どうして僕は、好きなことや大切にしていることを、将来の目標にしていないのだろうと考えるようになりました。

そこで、大学生の先輩たちに、どのような学生生活を過ごしているか質問しにいきました。大学というより広いコミュニティに属している人たちなら、狭い視野で過ごす僕とは違う価値観を持っていると思ったからです。

—— 先輩たちはどのような意見を持っていましたか?


岡本:それが、思っていたこととは全く違う意見が帰ってきました。サークルに入っている理由は「就活のため」。夢中になっているわけではなく、全ての意思決定が「なんとなく」や「先輩がそうしているから」というものでした。

「ダサすぎでしょ」——“自称ファッショニスタ”にバカにされた経験が原点


岡本:各地から人が集まる大学というコミュニティでさえ、ほとんどの人が夢中になれることや、夢を持っていない。でも僕は、夢を持っている人生の方が豊かだと思っています。そこで、その提供者になろうと思ったのです。その想いと、僕の原体験が重なった部分が、ファッションでした。

SHALEのコンセプトは、「こうなりたい!に出会える場所」。ファッションを愛するメンバーの発信を見て、「こんなにも日常のファッションにこだわっている人がいるんだ!」ということを知ってほしい。


そして、「自分はどうなりたいんだろう?」と考えてもらい、ファッションを通じて自分で意思決定する機会を提供したいのです。

—— ファッションは誰もが日常的に意思決定するもの。だからこそ、そこにこだわりを持つことで、自分の人生を豊かにするきっかけにしてほしいと。

岡本:まさに、おっしゃる通りです。365日のうち、たった1日だけでもいい。誰の意見にも左右されず、単なる“トレンド”に流されることなく、明確な意思を持って「今日の私」をデザインしてほしいのです。

すると、ファッションだけでなく、趣味や仕事、ひいては生き方だって、自分なりにデザインできるようになると本気で信じています。

そのファッションが、アパレル業界をダメにする

「ダサすぎでしょ」——“自称ファッショニスタ”にバカにされた経験が原点


—— あえて「起業」という選択肢を選んだ理由も気になります。


岡本:たしかに、SHALEを立ち上げる以前に就職活動を終えているので、起業しないといけない理由はありませんでした。趣味としてでも、継続できるので。


でも、アパレル業界には企業が山積みです。どうせやるのなら、社会的意義のある活動をしたいとも思っているので、起業することを決めました。

衣料品は1年間でおよそ80億トン生産されていますが、そのうち60億トンは捨てられてしまいます。誰かが袖を通すこともなく廃棄される服が、世界には山ほどあるのです。つまり、必要以上に服が作られすぎている。

でも、もし世界中の人がこだわりを持って服を選び、長くずっと着ていたい服を買うようになれば、この現状を改善できます。

—— ファストファッションを敵対視している…?

岡本:一概に「ファストファッションは悪だ」と言いたいわけではありません。でも、ファストファッションが流行することによって、服を作る工場の利率が下がるし、服を売る店舗もロスのコストを背負うし、服を買う僕たちも原価率が低いアイテムを買うことになる。これって、“三方悪し”ですよね。

僕たちのゴールとして、ファッション業界におけるこの問題を解決することも掲げています。余るほど生産して、こだわりも育たない。——コモディティ化や表現の画一化を推進するファッションは、敵として捉えないとけないと思っています。

極論ですが、将来的には、誰もが自分の好きな服をつくって、1人1着くらいになる世界観が来ると思っています。そのためには、今から「私はこんな価値観で、この服を選びます」というこだわりを養わないといけない。SHALEは、その足がかりになります。

—— 最後に、読者の皆さんに伝えたいことはありますか?

岡本:こだわりもなく「流行っている」服を着て、人のファッションにとやかく言う姿勢が「ダサい」ことだと思っています。肌感覚ですが、彼らは、やりたいことも目標も夢もないけど「なんとなく」で毎日の意思決定をしている層でもある。僕は、この人たちを変えていきたい。

「ダサすぎでしょ」——“自称ファッショニスタ”にバカにされた経験が原点


岡本:また、僕らが発信する情報は、あくまでも主観として受け取ってほしいです。ファッションに正解はありませんが、一方、自分で「今日はこの服が着たい」と本気で考え抜いたファッションは正解です。その結果、徹底してコストカットをしたファストファッションのコーディネートになっても、問題ない。

たった1日であっても、こだわりを持って過ごすことが、ワクワクする人生につながると言うことを知ってもらえたら、嬉しいです。


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