「ORの抑圧」/「ANDの才能」という言葉をご存知ですか?“企業人のバイブル”と称される不朽の名著『ビジョナリー・カンパニー』に登場する言葉で、前者は「変化か安定か」といった二者択一で物事を考えることを、後者は両方を同時に実現させようとする発想を意味しています。
大学生になると、学校の授業、サークル活動、アルバイト…と選択肢の数が増えたがゆえに、「何をすべきか」に迷うことがあると思います。そして多くの学生は「OR」の考え方で、世界を狭めてしまいます。
しかし、頭ひとつ抜けだす人材たちは、「AND」の考え方を持っています。「ORの抑圧」をはねのけ、「ANDの才能」を活かすことで、限られた時間の中で自分の価値を最大化しているのです。
今回編集部が注目したのは、株式会社FinTと株式会社ネットマーケティングの2社でインターンをされている三橋侑里さん。
三橋さんは、FinTが運営するウェブメディア「Sucle」のインスタグラムのフォロワーを、0人から18,000人にまで伸ばした実力の持ち主です。しかしそんな彼女も、最初はSNSマーケティングの「S」の字も知らない普通の女子大生。今の実績を手に入れるまでには地道な努力の積み重ねだったようです。凄腕インターン生の三橋さんに、不安を誤魔化していた大学生活や、インターンを選ぶコツなどを伺いました。
—— 現在、ウェブメディア「Sucle」を運営する株式会社FinTと、広告・メディア事業を展開している株式会社ネットマーケティングの2社でインターンをされている三橋さん。インターンを始める前はどのような学生でしたか?
三橋 侑里(以下、三橋さん):授業が終わればとサークルかバイトに足を運び、夜は飲み会に参加する、典型的な大学生でした。当時は毎日が楽しくて仕方なく、学生生活を満喫していましたね。
—— 学生生活を満喫しながら、なぜインターンに挑戦しようと思ったのですか?
三橋さん:就活に対して不安があったからです。
そうした不安は入学当初からあったのですが、「周りの人と同じことをしていれば大丈夫だろう」と誤魔化していました。ただ、とある先輩との出会いで、考えが変わることになります。
彼女は、当時2年生でありながら、すでに2社で長期インターン経験がありました。意識の高い先輩と話していると、誤魔化し続けていた就活に対する不安が一気に顕在化。
「私はこれまでの大学で、何をしてきたんだろう」と、これまでの学生生活を悔いました。また同時に、残された時間で就活の“武器”を身に付ける必要があると強く感じたんです。
そして、社会経験やスキルを身につけられる長期インターンに挑戦しようと決めました。
—— 意識の高い先輩に出会い、感化されたことで、インターンという選択肢に巡り合ったんですね。インターンを探す際に、大切にしていた観点や条件はありますか?
三橋さん:ふたつあります。ひとつ目は「自分の興味がある分野・業界であること」です。どうせ働くなら、楽しくて自分の好きなことを仕事にしたいじゃないですか。
ふたつ目は「スタートアップの企業」です。自分の力を試すためには、大企業より与えられる裁量が大きく、自分がやりたいことに挑戦しやすいスタートアップが良いと思っていました。
—— 条件を満たす企業がFinTだった....?
三橋さん:そうですね。FinTは2017年設立のベンチャー企業ですし、何よりファッションが好きな私にとって「女子向けメディアを運営するインターン生を募集」という言葉は魅力的に映りました。
—— 株式会社ネットマーケティングでもインターンを始めたのは、なぜでしょう?
三橋さん:FinTでベンチャー企業のスピード感や仕事の仕方を学ぶうちに、より大きな企業で力を試したいと思うようになりました。そんなとき、インターン求人サイトでネットマーケティングからスカウトが届き、良い機会だと思い働くことを決めました。
—— インターン先ではどのような業務を担当されていますか?
三橋さん:FinTではSNSマーケティング部長として、女子向けメディア「Sucle」のインスタグラム運用をしています。他にもインスタ運用の代行やコンサルティング業務、後輩の採用にも取り組んでいます。
ネットマーケティングでは、広告画像の作成や数値分析など、SNS広告に関する業務を担当しています。
—— どちらもSNSに関する仕事なんですね。インターンを2社並行して取り組むことは大変ではないですか?
三橋さん:インターンを掛け持つことに苦労はありませんが、学業との両立には苦労しました。
インターンを始めた当初は、インターンを優先しすぎて大学に行けないことも多かったです。結局、2年生前期はたくさん単位を落としました。しかし、ここ数ヶ月は要領を掴めてきたので、学業にもあまり支障が出なくなってきました。
—— 最初はリズムを掴むのに苦労しますよね。 他にもインターンで苦労したことや、辛かったことはありますか?
三橋さん:フォロワーが伸び悩んだ時期が一番辛かったです。
SNS運用を任され1、2ヶ月経った頃、フォロワーが突然18,000人から増えなくなったんです。ハッシュタグや画像の加工方法を変えても効果はなく、前提から見直す必要があると思いました。
そしてターゲット層である女子大生の活動時間や、よく使うハッシュタグを分析し、リーチが多く見込める時間帯や投稿内容を見つけだしました。あとは、Sucleのタグが付いている投稿を見つけては、毎日祈りながらいいねをつけましたね。
このような小さな努力の甲斐があり、伸び悩みの時期を乗り越えられましたが、成果が出ない日々は辛かったです。
—— 今ではフォロワー10万人ですが、その裏にはこのような地道な努力があったんですね。逆に、インターンで嬉しかったことや成功体験はありますか?
三橋さん:以前ハンドメイドの方とコラボし、sucleオリジナルのiPhoneケースを販売したところ、たった15分で30個完売させることができたんです。企画やデザイン、価格交渉まで全て私が担当したので、その成果が目に見えてとても嬉しかったです。
また、インスタグラムが成長したことも私の成功体験です。インスタグラムの運用方法やノウハウなどが全くない状態から運用していたので、まさかこんなに伸びるとは思ってもいませんでした。
—— インスタグラムの運用やiPhoneケースの販売など、裁量の大きい仕事を任されているんですね。プレッシャーで押しつぶされそうになることはありませんか?
三橋さん:仕事の成果が数字で明確に現れるのでプレッシャーはあります。しかし楽しさが勝り、辛いと思うことはあまりありません。
誰しも、バイトやインターン中に「早く終わらないかなま」と終業時間を気にしてしまうことってありますよね。でも、FinTでのインターンは楽しく、無我夢中で取り組むので時計を気にすることがないんです。逆に時間が足りず、焦るほど。自分の好きなことだから、時間も忘れて取り組めるんだと思います。
—— インターンで変化したことを教えてください。
三橋さん:課題解決力が身についたと思います。
SNSマーケティングは施策→実践→検証→改善の繰り返しです。たとえばハッシュタグからの流入を増やすために、タグの内容を変え、流入数やいいね数の変化を繰り返し観察し、適切なタグの特徴を導き出します。
このように、日常業務でPDCAを回すことを求められるので、自然と課題解決力を高めることができました。
—— では、入学当初抱いていた就活に対する不安は解消されましたか?
三橋さん:だいぶ解消されたと思います。
入学当初は働くことの意味や、就活の進め方があまりにも漠然としていたため、不安を感じていました。今ではインターンを通して実務経験やスキルを身につけ、自分の“軸”を明確にすることができました。
就活とはつまり、軸を元に、働きたい企業を探すだけ。なので、以前に比べると就活に対するハードルが下がりました。
—— 就活を控える学生の多くは「やりたいことが見つからない」と嘆いています。そうしたなかで、2年生で自分の“軸”を見つけいるのは素晴らしいと思います。先々の目標なども見つかりましたか?
三橋さん:将来、ファッションブランドをプロデュースしたいです。
もともとファッションが好きで、ファッションに関わる仕事をしたいと考えていたのですが、漠然としており、具体的に何をしたいのか分かりませんでした。
しかし、インターンでコラボグッズやオリジナルグッズの販売を経験したことで、企画し、価格を決め、ファンに届けるというプロデュースの楽しさや、やりがいを知りました。
「ファッションに関わる仕事をしたい」という夢が「ファッションブランドをプロデュースしたい」という明確な目標に変わったんです。
今はプロデュース力を磨く第一段階として、Sucleをブランドとして確立するために尽力しています。
—— 多くの学生にとってインターンへの挑戦はハードルの高いものです。まだ一歩を踏み出せない学生たちに向けてメッセージをお願いします。
三橋さん:「何ができるかではなく、何をしたいか」でインターンを選んでほしいです。
自分の好きなこと・興味のある仕事であれば、多少辛いことがあっても乗り越えられますし、楽しんで取り組むことができます。逆に知名度などで選んでしまうと長続きせず、インターンの意味がありません。
好きなこと・興味のあることが分からない人は、まず自己分析をしてみてください。たとえば「普段何に時間を割いているか」など、自分の生活を客観的に分析すると見えてくると思います。
インターンという選択をした過去の自分に感謝する日が必ず来るので、ぜひみなさんも挑戦してみてください。
早稲田大学商学部学2年、来春から同志社大学文学部美学芸術学科。株式会社Traimmuで「co-media」のライターと広報のインターン。