「成長できるインターン」と聞いて、どんなイメージが湧くでしょうか?
実戦経験を積めるベンチャー企業でのインターン、世界を股にかけて活躍している大企業のエース社員の話が聞けるワークショップ…そんな光景を思い浮かべる方も多いかもしれません。
そうしたイメージとは一味違った「成長」が得られるインターンがあります。明日すぐに役立つスキルが得られ、5年10年のスパンで見て、とても有意義な経験が積めるプログラム–––全国約3,000名の社員を束ねる、アデコ株式会社のCEO業務を1ヶ月体験できる「CEO for One Month」です。
アデコは、人財関連領域で複数の事業を展開し、母体であるAdecco Group(アデコグループ)は全世界60を超える国と地域に拠点を持つ、グローバル企業。
「CEO for One Month」は、アデコジャパンCEOの実業務を1カ月日間体験し、グローバル企業の経営者の視座とマインドセットを徹底的に学べるインターンシッププログラムです。
プログラム終了時には、アデコグループ全体を統括するグローバルCEOにビジネスについての提言を行い、世界各国の選び抜かれたインターン体験者たちと、グループCEOの業務体験プログラムへの参加権を競います。
2017年に同プログラムでアデコジャパンのCEO業務を体験した土井晧介さんは、「経営者のビジョナリーな視点を間近で徹底的に学べるインターンは、他にはない」と語ります。
東京大学教育学部に在学中の土井さんは、同プログラムに参加したのち、合同会社NEXCITEを起業。現在は自身もCEOとして、「夢」と「好奇心」を伸ばす「異才」の家庭教師マッチングサービス「DREE」を運営中です。本記事では土井さんにインタビューし、CEO for One Monthの全貌と魅力に迫ります。
——「CEOの業務を体験できる」と聞いてもあまりイメージが湧かないのですが、「CEO for One Month」はどういったプログラムなのでしょうか?
土井晧介(以下、土井):一言でいうと、「全世界規模でビジネスを展開している会社の、CEOの視座を知るプログラム」です。期間中はほぼ毎日、アデコジャパンのCEOの側につき、その業務を間近で体験します。たとえば経営会議に出席し、各部署の本部長や部長が行うプレゼンに対して意見を求められたりします。
あとは営業に同行したり、プロモーション用の展示会に連れて行ってもらったり、取材に対応したり…。
でも、そもそもインターンの業務内容が明確に定められているわけではないんです。いわばCEOという肩書きをもらって、自分のやりたいと思うことができるインターン。過ごし方を柔軟に決められるからこそ、きちんと計画を練って参加しないと、時間を無駄にしてしまうかもしれません。
僕自身、こうすれば良かったと思う部分が多くあります。今参加すれば、また別のものが得られることは間違いありません。
——プログラム終了後、グローバルCEOへの提言を行うとのことですが、土井さんはどういった提案をされたのでしょう?
土井:僕の年のお題は「2030年のアデコグループの戦略を考える」だったのですが、定年退職後の人びとのスキルや経験を活用する仕組みを提案しました。特定の産業で長年勤めてきた人は、相当な知見や人脈を蓄積されているはずです。その点に着目し、定年退職後の方々と、そうした人びとの力を借りたい企業や個人をマッチングさせる仕組みを考案しました。
——そこまで広い視野を持って事業戦略を考えるのは、なかなかハードルが高そうです。
土井:僕も事業戦略を考えるのははじめてだったので、相当苦労しました。何日も徹夜した記憶があります…(笑)。基本的に、すべて自分次第なので、こちらからアドバイスを求めたり行動しない限り、特に周囲が何かをしてくれるわけではありません。週に1〜2回、社長との1on1の時間を取れるのですが、その時間の使い方も本人に委ねられています。
——なるほど…。かなり自由度が高いんですね。
土井:「取るべきアクションを決める立場であるCEOの業務体験プログラムだからこそ、“CEOの目線で自ら考え行動する”ということです。普通のインターンは「与えられた課題にチャレンジする」ものだと思うのですが、CEO for One Monthは「自ら問い、課題を探す」インターンだといえます。
経営会議や1on1の場でも、答えを教えてもらえるわけではなくて、「あなたはどう思うか?」を徹底して問われていました。そうした意味で、普段から自分は「決定する」という行為を避けていて、他人の意見をうかがう傾向にあると感じました。
「自分が決める」1ヶ月ですが、CEOの視座を得たことで、そういったマインドセットに触れ、意識することができたことは、大きな収穫でした。
——噂には、100万円の報酬がもらえると聞いています。本当ですか?
土井:はい、事実です(笑)。ですがその分、本気でコミットすることが求められます。グループCEOに提言しなければいけないプレッシャーもありますし、経営会議などで意見を求められる際も、他の参加者と同等に扱われるんです。
——いま振り返ってみて、「CEO for One Month」の魅力は何だとと思いますか?
土井:一番大きかったのは、経営者のビジョナリーな視座を間近でじっくりと学べる点です。すぐに使えるビジネススキルが身につくというよりも、マクロな社会状況から未来の姿を考え、ミッション・ビジョンやカルチャーに落とし込んでいくという視点が学べます。
たとえば法律が改正されたら、ただのニュースとして消費するのではなく、その変化を敏感に察知し、アデコがむこう10年で取るべきアクションを全力で考える。そうしたビジョナリーなマインドセットを、間近で徹底的にインストールできるんです。
——たしかにビジョナリーな視点を身につけられるインターンは、他にはあまりないかもしれません。
土井:現場で実戦経験を積んでいくベンチャー企業のインターンでは、ビジネススキルは身につきますが、ビジョナリーな視点はなかなか学べません。またワークショップ主体の大企業の短期インターンでは、日常的な業務の様子は分からない。
対してCEO for One Monthでは、日常的な業務を通じて、ビジョナリーな視座を身につけられるんです。
多くのインターンは、「アルバイトとして戦力になってほしい」または「職場を体験して入社してほしい」という目的。
一方、「CEO for One Month」は、これからのキャリアのステップにしてほしいという考えのもと、行なわれています。だからこそ、自由に多くのことができます。
——土井さんはインターン終了後、合同会社NEXCITEを起業されていますが、ご自身が経営していくうえでもこのプログラムの経験は役立っていますか?
土井:会社のビジョン・ミッションを考えるためのマインドセットが身につきましたし、カルチャーの作り方も大いに参考にしています。
何より、誰もが「自分の人生のCEO」じゃないですか。未来に向けた指針をもとに、取るべきアクションの戦略を立てていく。起業するしないに関わらず、自身のキャリア設計を考えていくうえで、このプログラムで身につけたものの見方は役に立つと思います。
——他にはどういった魅力がありますか?
土井:経営会議や食事の機会を通して、さまざまな立場の社員と触れ合える点も魅力ですね。たとえば「大企業の部長」というと「なんか偉い人」くらいのイメージしか持っていない人も多いと思いますが、人によって持っているスキルや考えていることが全然違うと実感できました。
そもそも、役員や本部長クラスの方からのプレゼンを「受ける」側の視点を体験できることが貴重だったと思います。結局社長が知りたいことは、「今うまくいっているか」「今後うまくいくのか」の2つしかないんだなと分かりました。
——たしかにそれは、CEOという立場だからこそ見えてくることかもしれません。
土井:組織を全体像で見られるようになるんですよね。どんなに大きな会社にも、大事にしている価値観や戦略があります。そういった視点から、日常的にさまざまな会社の決算書を読んだりするようになりました。
あと少し毛色が違う話ですが、他国のCEOインターンの人たちと交流できる点も魅力だと思います。世界48か国の優秀な学生とコミュニケーションを取り、カルチャーの違いを知りながら、刺激を受けられるんです。
——そもそも、どういった経緯で「CEO for One Month」に参加することになったのですか?
土井:最初は「ノリ」ですね(笑)。
ちょうど大学もあまり忙しくない時期に、Facebookでプログラムの存在を知り、「面白そうだし応募してみるか」と。長期インターンに参加したことはあったのですが、現場での実務経験を積むタイプのものだったので、「これだけ大きな集団を率いるって、どういうことなんだろう」と気になったんです。
——選考ではどういった点に苦労されましたか?
土井:最後のプレゼンが一番大変でしたね。書類選考、ワークショップ、面接などを経て、最後に社長や本部長の前で「2030年のアデコジャパンの戦略」をプレゼンするのですが、資料作りに苦労しました。ここでも徹夜した記憶があります(笑)。
——そうしたご自身の経験も踏まえ、どんな学生さんにこのプログラムをオススメしたいか、お伺いしたいです。
土井:自分の得たいものや課題が明確で、プログラムに貪欲に時間を割ける人にオススメしたいです。自由度が高い分、前のめりに目的意識を持ってコミットしないと、何も得られずに終わってしまうかもしれません。プログラムを通じて身につけたいものを高い解像度でイメージできている人の方が、これからの自分に大限生かせる体験ができると思います。
——最後に、読者の学生の方に向けてメッセージをいただけますか?
土井:いち早く行動して、失敗することが大事だと思います。大抵のことは、自分で経験してみないと分からない。たとえば「クリエイターになりたい」と思っている人が、実際にコンテンツ制作に関わってみたらストレスフルで、実は作ったコンテンツをお金に変えていくマーケティングの方に適性があった、といったケースもあるでしょう。だけど一度コンテンツ制作を体験してみて「自分には適性がない」と分かったなら、それで良いじゃないですか。
できるだけ早く小さく失敗することが、納得のいくキャリアを切り拓いていく最善の方法。もちろん僕も失敗は怖いですが、失敗の痛みは意外にすぐ消えます。周囲の人だって、自分が失敗したことなんてすぐ忘れてしまう。だったら早く失敗して、自分の進む道を明確にしていくのが良いのではないでしょうか。