「こうあるべき」の檻から抜け出せば、人生は楽しくなる。BI編集長が著書『働く女子と罪悪感』に込めた想い

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各界のトップランナーを招き、学生と講師がインタラクティブに意見を交わし合う実践的な授業で人気を集める法政大学キャリアデザイン学部・田中研之輔教授。大学内の学びに止まることなく、就活や卒業後のキャリアを実践的に結ぶ教育メソッドにより、法政大学ベストティーチャー賞を受賞されています。

本レポートは、12月12日に行われた田中教授のゼミの様子です。ゲストには、AERAの元編集長で、現在はBUSINESS INSIDER JAPAN統括編集長を務める浜田敬子さんが招待されました。浜田さんは今冬、『働く女子と罪悪感』を上梓。本書で語られているのは、働く女性の今までとこれから。メディア業界の第一線で戦いを続ける浜田さんから次世代へ、メッセージが込められています。

授業を企画するのは、法政大学キャリアデザイン学部に在籍する学生たち。法政大学からは今後のキャリアを考える大学1年生〜すでに内定を獲得している大学4年生や卒業生、そして、女性キャリアに強い関心を持つ他大学の生徒や、社会人の方々も参加しました。

浜田さんは、これから社会に出る学生たちに何を伝えるのか。——co-media編集部が、本イベントの様子をダイジェスト形式でお届けします。


“幻の赤ちゃん”を抱く女学生たち


まず最初に浜田さんが話し始めたのは、現代の女性を取り巻く環境と、若い女子大生たちの不安について。どうして今、ご自身が歩んできた30年間を本に記そうと思い立ったのか。浜田さんが筆をとった理由が語られました。

「こうあるべき」の檻から抜け出せば、人生は楽しくなる。BI編集長が著書『働く女子と罪悪感』に込めた想い


浜田 「きっかけになったのは、今年4月に起きた財務省事務次官のセクハラ事件です。前職の『AERA』では、女性の働き方を多く取り上げ、女性が働きやすい世の中を作るため精一杯働いてきたのにも関わらず、現在も国のトップが古典的な親父のセクハラをしてしまう。これが日本の現状なのです。私たち“均等法世代”が就職してからおよそ30年が経った今、女性を取り巻く環境は、何が変わり、何が変わっていないのか。この機会にしっかり記録しておこうと思い、筆をとりました」


さらに、浜田さんは現代の若者の多くが抱えている「将来への不安」について語ります。特に女学生は、結婚や出産などのライフイベントによって人生が左右されることもあり、その多数が将来に大きな不安を抱えているそうです。


浜田 「皆さんは、“幻の赤ちゃん症候群”という言葉を聞いたことがあるでしょうか?将来出産するかどうかもまだ分からないのに、学生時代から子育てと仕事の両立のことで頭がいっぱいになり、未来を心配する若者たちを指します。


私が話を聞いたある女子学生さんは、「育児と仕事の両立はしたいが、先輩たちを見ているとあまりに大変そうでどうしたら良いかわからないので、もはや就職しない」と。これではあまりに本末転倒ですよね。

また近年の若者は、『何歳までに結婚しないと』『何歳までに出産しないと』という脅迫概念にとらわれたり、キャリアプランを熟考しすぎたりと、全体的に生き急ぎすぎているイメージがあります。

未来に対して過剰な不安を抱えたり、生き急ぎすぎてしまっていると、きっと苦しくなってしまいます。学生さんがこの本を読むことで、もう少し現実的な側面に触れ、地に足のついた状態で未来を考えてほしい。『働くことは楽しそうだ』と思ってほしい。『働く女子と罪悪感』には、そんな思いが込められています」

若くから将来を見据えて完璧な「キャリアプラン」を熟考し、大学1〜2年生からインターンに勤しんでスキルを身につける。情報過多の現代で、このような学生生活を送るうちに、若者たちが生き急いでしまうのは無理もないことかもしれません。

続いて、「浜田さんが就職活動を行っていた頃、学生たちはキャリアプランに不安はなかったのでしょうか」との問いを受け、浜田さんの新卒時代の話が始まります。

浜田さんが就活を行なっていた30年前は、そもそも「キャリアプラン」という言葉もない時代。当時の就職活動には、非常に大きな格差が存在していました。地方、浪人、文学部の女子には、バブルの時代ですら仕事がなかったのです。

また就活面接では、結婚の意思の有無や出産後の働き方など、現代ならセクハラで訴えられるような内容にも言及されたそうです。

今以上に女性のライフイベントが、キャリアを大きく左右していた時代だったとも言えるようでしょう。

停滞ではなく、充電——逆境は、武器に変えられる


講義を受ける女子学生の中には、浜田さんの指摘の通り、生き急いでしまう生徒も少なくない様子。そんななか、一人の女学生が浜田さんに尋ねました。

現在祖母の介護と弟の育児を一手に任されている彼女は、就職後も現在の環境が続いていきそうな事に不安を覚え、学生のうちに多くのことを詰め込もうと生き急いでいるそうです。

そんな彼女に向けて、浜田さんは語りかけます。

「こうあるべき」の檻から抜け出せば、人生は楽しくなる。BI編集長が著書『働く女子と罪悪感』に込めた想い


浜田 「私の知人にも、祖母の介護のために大学を辞めて故郷に帰ってしまった女性がいました。彼女はそのまま大学を中退してしまったため、就職が難しくなってしまいました。しかしメディアで働く夢を諦めず、その後上京し、過酷なテレビ局の現場で力をつけたそうです。

人出の少ないテレビ制作局だったので、彼女は1000万円の予算を任されて番組を製作していました。卒業後のファーストキャリアという点からは、マイナスからのスタートでしたが、結果的には新卒で大手のテレビ局に入社するよりも、ずっと力がついたでしょう。

大変な状況に身を置かれることも、仕事とそれ以外のことを天秤にかけなくてはいけないときもあると思います。でもそれで人生は終わりじゃない。

今は空前の人手不足ですから、いくらでもやり直しがききます。そして何より、辛い経験をした人の方がずっとハングリー。私だったら、むしろ苦労している子を採用したいと思っています。苦労することもプラスになる時が必ず来るはずです」

困難を武器に変えるには、“充電期間”に、「自分が何を身につけられるのか」を意識して働くべきだと浜田さんは話しました。

さらに、また別の生徒から質問が挙がります。彼女は、さまざまな「べき」に囚われて、就職活動や仕事について考えるのが憂鬱だといいいます。

「これからの時代女性は働くべき」「好きを仕事にするべき」——時代や環境が変わっても、多くの「べき」が多くの人を苦しめます。

浜田 「近年は『女性も働くべき』と叫ばれていますが、子供が大好きな人は、一時期子育てに専念することもいいのではないかと思います。多様な生き方があってしかるべきですよね」


その上で、「仕事における楽しさも味わってほしい」と浜田さんは付け加えます。

「こうあるべき」の檻から抜け出せば、人生は楽しくなる。BI編集長が著書『働く女子と罪悪感』に込めた想い


浜田 「仕事は本当に面白いです。自分でやりたいと思ったことをして、成果が出て、この仕事によって誰かが喜んでくれる。このカタルシスは何事にも代えられません。仕事の面白さを得られると、非常に充実した人生になると思います」

仕事を楽しものにするためには、やはり好きなことを仕事にするのが1番でしょう。しかし、「好きなことがわからない」「やりたいことがない」若者が巷に溢れているのが現状です。


浜田「好きなことを見つけることは非常に難しいと思います。ただ好きなことは、働き出してから見つかるものです。だから、食わず嫌いをせずにとにかくやってみる。また、他人からの評価は的確なので、行動することで得意が見つけやすいと思います。実践を繰り返すことで、自分の中で少しずつ答えが見つかっていくはずです」

環境改革の最後の砦は、自分の意識改革


さらに生徒から、働く女性を取り巻く環境の変化について質問が挙がります。メディア業界の最前線で長年働いてきた浜田さんから見て、この30年で何が変わったのでしょうか。

「こうあるべき」の檻から抜け出せば、人生は楽しくなる。BI編集長が著書『働く女子と罪悪感』に込めた想い


浜田 「私が出産した12年前と比べると、子育ての環境はずいぶん改善されたと感じます。保育園の数もずいぶん増えました。また、現在全労働人口の45%を女性が占めているため、会社側が女性の勤続を望むようになったことも間違いありません」

しかし、環境は整ってきたものの、完璧ではない。「自分自身で環境を変えることも必要」なのだそう。

浜田 「一番身近な環境改革だと、夫の教育ですかね。出産前から、『将来子供が欲しいのならちゃんとやろうね』と家事分担をデフォルトにすることが大切です。

他にも、私の知人は、仲良くなった近所のおばちゃんに子供の世話を頼んでいました。自分が働きたいのなら、周りを巻き込んでいきましょう」

また、「最も変化できていないのは、環境ではなく当事者の意識なのかもしれない」と続ける浜田さん。本の題名に『働く女子と罪悪感』と冠し、『もう罪悪感を持たなくていい』と発信してきた浜田さんですら、お子さんに対しての罪悪感はなかなか消えないと言います。

浜田 「いつか分かってもらえると思いながら、今を頑張るしかありません。娘たちの時代は、必ず女性も働く時代でしょう。どうしてあのときママが家にいなかったのか、いつか分かってくれる日が来ると信じています」

浜田さんのおっしゃる通り、女性が当たり前に働く時代はすぐそこまで、いや、もうすでに到来しています。浜田さんは、そんな時代を生きていく学生たちに向けて、働き続けるためのアドバイスをしてくださいました。

浜田 「働き方が自由で復帰しやすい職場を選ぶことや、そういった雰囲気を自分たちでつくることも大切ですが、最も重要なのは『この人に帰って来てほしい』と思われるような人材になること。『こんなにも頑張っているのだから、協力してあげよう』と思われるような存在になってほしいと思います」


最後に、著書のサブタイトル「『こうあるべき』から離れたら、もっと仕事は楽しくなる」に浜田さんが込めた想いを紹介します。

「こうあるべき」の檻から抜け出せば、人生は楽しくなる。BI編集長が著書『働く女子と罪悪感』に込めた想い


浜田 「『こうあるべき』という呪縛が、現代には多く存在します。『キャリアはこうあるべき』『母親はこうあるべき』——女性だけではありません。男性もまた『こうあるべき』の呪縛に囚われています。

だけど、一度自由になってほしい。もっと楽しく生きてほしい。そんな想いで、この本のサブタイトルを決めました。

人生は予想外のことばかりです。みなさんも、『こうあるべき』に囚われてがんじがらめにならないで、人生を歩んでいってほしいと思います」

「こうあるべき」の檻から抜け出せば、人生は楽しくなる。BI編集長が著書『働く女子と罪悪感』に込めた想い



浜田敬子さん:プロフィール

1989年に朝日新聞社に入社。1999年からAERA編集部。記者として女性の生き方や働く職場の問題、国際ニュースなどを中心に取材。2004年よりAERA副編集長。編集長代理を経て、AERA初の女性編集長に就任。2016年5月より朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして、「働く×子育てのこれからを考える」プロジェクト「WORKO!」や「働き方を考える」シンポジウムなどをプロデュース。 2017年4月より現職。「羽鳥慎一モーニングショー」や「サンデーモーニング」などのコメンテーターも務める。2018年11月26日、初の著書『働く女子と罪悪感』を刊行。


田中研之輔教授:プロフィール

大学院で社会学を専攻し、「集団と組織のエスノグラフィ」について学ぶ。その後、オーストラリアのメルボルン大学にて「若者文化とエスノグラフィ」について研究する。客員研究員として2年間在籍した後、カリフォルニア大学バークレー校に拠点を移す。2008年に法政大学に着任。着任した当時から所属しているキャリアデザイン学部では、大学生から社会人への移行にフォーカスをあて、2009年から独自の授業「キャリアヒストリーアーカイブ」を開講。著書に『先生は教えてくれない大学のトリセツ』、『先生は教えてくれない就活のトリセツ』など。

この記事を書いた学生ライター

Nozomi Sasaki
Nozomi Sasaki
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1998年生まれ 山口県出身 横浜国立大学経営学部在学中。家族や性愛、ジェンダーに興味があります。

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