本記事は、田中教授が「大学の講義では教えてくれない学生にとって有益な情報」を寄稿する連載シリーズの第三弾です。今回は、スカイライト コンサルティング株式会社で採用マネジャーを務める石田澄恵さんと「就活と採用の未来」についての特集をお届けします。前半は採用の視点から、後半は就活の視点からみていきます。
スカイライト コンサルティング社では、新卒一括採用をこれまで一度も実施していません。採用マネジャーとして採用、育成、研修、配属までを担当されている石田さんに、独自の採用方法について伺いました。
スカイライト コンサルティング社が実施しているのは、経験者採用と未経験者採用という二つの採用です。
経験者採用というのは、コンサルタントとしての社会人経験がある人を対象とした採用です。未経験者採用は、コンサルタントとしての経験がない既卒から社会人5年目程度の人と、新卒学生を対象とした採用です。
スカイライト コンサルティング社では、新卒学生に広くPRするのではなく、マッチングの精度を高めることを重視しています。そのため、大手企業が運営するリクルーティング・ポータルサイトは利用せず、独自の方法で母集団形成をしています。
経験者採用、未経験者採用のどちらにおいても大切にしていることが、「自分の進むべき道を自分で考え選択すること」を後押しする採用だということです。より具体的に見ていくことにしましょう。
石田さんをはじめ、スカイライト コンサルティング株式会社の採用チームでは、
◼︎ 採用において個人と会社は対等な関係である
◼︎ 上から目線で候補者を選別するのではなく、同僚として一緒に働きたい人かどうか
◼︎ 入社して中長期的に幸せになれるかどうか
を選考の軸に据え、「採用して終わりではなく、入社後に成長し活躍できる姿を思い描けるかどうか」を見抜いているとのことです。
スカイライト コンサルティング株式会社が実施している採用は、母集団を広く形成し、そこからの大量のエントリーから選考を進める量的採用ではなく、個々人のキャリア形成に主軸をおいた質的採用です。入社を決定するまでの過程を大切にしながら、個々に向き合うことで、入社後に「こんなはずじゃない」というミスマッチを防ぐことができているのです。
スカイライト コンサルティング社の採用で力を入れているのが、参加者に実質的な成長をもたらすインターンシップです。次の図がスカイライト コンサルティング社の採用選考のプロセスです。この過程をみるとわかるように、キャリアセミナーの次に進んだエントリー者は基本的に、コンサル体験プログラムか、インターンシップに参加します。
コンサル体験プログラムやインターンシップは、「採用を狙いとするよりも、参加者のキャリア成長に軸を置いている」ことがポイントです。リアルな仕事体験を通じて、コンサルタントの仕事とは何かについて学んだり、自分の適性について知ることができます。また、面接で能力・素養の見抜きを行うことと同時並行で、社員との面談や座談会を通じて仕事や会社への理解を深めていきます。
このインターンに参加したもの同士が、アルムナイネットワークをつくり、他社で働くことになったとしても、その「つながり」が続いているそうです。短期的な採用を目的としているのではなく、体験プログラムやインターンを通じて、人と人とのつながりとキャリア成長を作り出す場を提供しているのです。結果的に、学生の時に、選考を受けて、ご縁がなかった人でも、数年後、社会人経験を積んで再度採用を受けてくれたり、家族や友人にぜひ参加したほうがいいとおすすめしてくれるとのことです。
さらに、採用選考プロセスの開始時期と内定時期を志望者のタイミングにあわせるところも、スカイライト コンサルティング社の独自採用の醍醐味があります。そのため、入社のタイミングも年に4回あります。一律のスケジュールで採用するのではなく、留学先から帰国したタイミングや、社会人を数年経験したタイミングでの第二新卒採用等も柔軟に実施しているのです。
スカイライト コンサルティング社で実施されている「個々のタイミングや成長ステージ」にあわせた採用方法は、就活ルール廃止後の新卒採用モデルの一つだといっても過言ではありません。
それでは、ここで採用から就活へと視点を移しましょう。石田さんから大学時代の過ごし方についてアドバイスをいただきました。石田さんは、「就活が始まる前に、働くことの意味についてじっくりと考えてほしい」と述べます。
「働くということは、何かを与えてもらえるのを待つことではありません。自分が仕事を通じて何を生み出していくのか。さらに、その先に、自分は社会にどう役立っていきたいのかを深く考えてみてください。」(石田さん)
与えてもらう側から与える側へ、そのことにできるだけ早く気がつくことで、大学の学びもより充実させることができます。ゼミやワーク形式の講義では、積極的に意見を発信し、何かを提案していく。誰かが用意した内容をこなすのではなく、自ら考え創り出していく練習を重ねることが、社会人への一歩にもつながるのですね。
1) 幹事、企画、協働体験:人と一緒に何かをやる。場をつくる機会を経験しておく。例えば飲み会の幹事をするでもいい。人数が集まらなかったり、ドタキャンがあったり、苦労の中で学べることがたくさんある。仕事は仲間とともに生み出していく集団行為。
2) 失敗に学ぶ:興味があること、やってみたいと思ったことにチャレンジする。情報が沢山ある中で、行動に対して過度に臆病にならない。勇気を持って、一歩を踏み出す。どんなに辛いことでも、大抵の場合、命まで取られることはない。失敗は財産。やらないで後悔するよりは、やって反省する。
3) 異質なコミュニティで自分を知る:同質なコミュニティから外に出て、ぶつかり合うこと。いろいろな人の中で、自分は何者なのかを感じること。違うコミュニティにいる人と、沢山話す。価値観や論理が違うところで、時に、理不尽な経験をしておく。
これらの経験を積みながら、「自らのキャリアを自分で考える。自分がどういう風に、人生を生きていきたいのかを考える。そこで納得感を持って、会社を選択する。その先に環境が与えられたら、一生懸命に取り組む。自らの判断を正解にしていくプロセスを踏んでいくことが大切です。社会の中で何を成すのかを考え、仲間を募り力をあわせて生み出していく。それがようやく形になったときに、結果成長できるのです。」(石田さん)
最後は、石田さんからの皆さんへの問いかけで今回の特集をまとめます。
幸せなキャリアとは何なのか?幸せは会社が与えてくれるのでしょうか。誰かが運んできてくれるのでしょうか。幸せは与えられるものではなくて、自ら生み出していくものです。
何が幸せかは個人によって異なります。あなた自身にとって幸せとは何か?何が喜びなのか。何が嫌なのか。自分の核となる生きる上での本質的な価値観を在学時に大切に育てていってください。
石田さん、貴重な対談ありがとうございました。
* スカイライト コンサルティング株式会社は、外資系ファーム出身者が立ち上げた少数精鋭コンサルティングファーム。マネジメントレベルの戦略策定や組織改革から、現場レベルの業務プロセス改善やシステム導入まで様々な経営課題の解決に向けて、企画から実現までを一気通貫で支援するプロフェッショナル集団として厚い信頼を獲得されています。