—— ジョニーさん、こんにちは!学生に向けて、就職活動のアドバイスをお願いします。
西川ジョニー雄介さん(以下、ジョニーさん):僕が強く感じているのが、「キャリア選択における正解なんて、誰にも分からない」ということ。ある程度目指したい方向性が決まっているなら、自分の気持ちを信じて飛び込むべきです。合理的に選択しようとしても、意思決定が遅れてしまうだけ。
「この人がいるから」、「なんとなく面白そう」といった直感を信じましょう。たとえ思うような結果にならなくても、一生懸命取り組んでいれば、次の挑戦で活かせるスキルや人とのつながりを得られるはずです。行動を躊躇したり、自分の気持ちに反する進路を選択することが一番良くないと思います。
—— 「やりたいこと」が分からない学生はどうすればいいのでしょうか?
ジョニーさん:「本当にやりたいこと」は、目の前の仕事に全力で取り組んでいくなかで、自ずと見つかっていくものです。事実、僕がそうでした。
最短距離でゴールを達成する方法を考えるのが、ビジネスの基本です。しかし、ことキャリアに関しては、必ずしもそうではなくてもいいと思っていて。寄り道がない人生は、つまらなくなってしまうと思うんです。
「こういう人になりたい」「こういう生き方をしたい」という方向性だけ定めた後は、時には「自分が何をやりたいか」を振り返る機会を設けつつも、自分の直感を信じて行動し続けてみる。そうすることで、自分が想像もしていなかった人生の扉が開けてくるのではないでしょうか。
—— ジョニーさんは、どんな学生だったのですか?
ジョニーさん:大学時代は、遊びや飲み会、デートに明け暮れる普通の学生でした(笑)。
起業家ブームの影響もあり、「自分もいつかは起業家になりたい」という想いをもって入学。しかし就職活動をする頃には、僕以外のほとんどの人が帰国子女で構成されている慶應義塾大学のPCP(Professional Career Programme:全ての経済に関する授業を英語で実施するゼミのような特別プログラム)に在籍した経験もあり、周りに流されるまま「なんかすごそう」な外資系の金融機関やコンサルティングファームを受ける学生になっていました。
幸い人事の方に気に入ってもらえ、思いもよらず内定をいただくことができたんですけどね。
ジョニーさん:ただ、「起業したい」という想いも心のどこかに残っていました。そんな折、知人に「ベンチャー企業に興味がある人が集まる場所があるから、紹介したい」と誘われ、「Goodfind」の「起業志望者のためのキャリア論」をテーマにしたセミナーに足を運んでみることに。
そこでスローガン(Goodfind運営企業)代表の伊藤が話していた言葉が、転機になりました–––「皆さんは勘違いしている。いま著名な経営者の経歴をなぞって、その人たちと同じ外資系の金融機関やコンサルティングファームに入社しても、10年、20年前と同じ経験ができるわけがない。なぜなら、会社のフェーズが変わっているから。起業したいなら、まだ著名でない会社を、自分の手で、5年後に学生が行きたくなるような有名な会社に変貌させる経験ができる環境で修行すべきではないですか」と。
「起業するなら外銀か?コンサルか?商社か?」と考えていた自分にとって思いもよらなかった言葉に衝撃を受けつつも、「自分で考え、やりたいことを早くやれる」仕事がしたかった僕は、「たしかに300人のサークルの会議よりも、友達3人での相談のほうが、自分の意志を通しやすいな」と直感したこともあり、考えを変えたんです。
「規模の小さいベンチャー企業の方が、裁量が大きくて、楽しいのではないか」と。思い立ったが吉日、セミナーの帰り道で内定先に電話をして入社を辞退し、再び就職活動をはじめたんです。
—— なんと…!意思決定までのスピードが早いですね。
ジョニーさん:仕事において自分が最重視することが、明確に整理できていたからかもしれません。そこで「Goodfind」に、いくつか企業を紹介してもらったんです。しかし、ベンチャー企業の面接では「3年後の自分の姿」を聞かれることが多く、それまではフェルミ推定やケース面接の対策ばかりやってきて、キャリア構想なんて考えたこともなかった自分は、上手く答えられなくて面接に落ちまくりました(笑)。
泥沼にはまりつつあるなかで、人事担当の方と心から意気投合できた会社がありました–––新卒で入社することになる、モバイルファクトリーです。面接で「未来の自分の姿をうまく語れなくて、面接に落ちてしまう」と人事の方に正直に告白すると、「そんなこと、自分だって答えられない。目の前のことを全力で頑張りさえしていれば、良い偶然が起きるはずだよね」と言ってもらえたんです。
それまで感じていたもやもやが氷解し、内定をいただいてもいないのに、「入社するならここだろうな」と思いましたね。僕の動き出しが遅く、その年の総合職の募集枠は埋まってしまっていたのですが、人事の方の計らいもあって、ビジネス職として採用してもらうことができました。
—— モバイルファクトリーでは、どのようなキャリアを?
ジョニーさん:ソーシャルゲームプランナーとしてキャリアをスタートしたのですが、姉の結婚式が転機になり、結局一年半ほどで辞めることになりました。相手のご家族に職業を聞かれた時に、「このゲームを作ってます!」と自信持って言えなくて。自分の仕事に胸を張れなかったんです。
ソーシャルゲームは変化のスピードが早くさまざまな試行錯誤ができるため、仕事自体は面白かったものの、「自分がゲームを作る意義」を見つけることができませんでした。思い悩んだ結果、「いまの自分が心から意義を感じられる事業を手がけよう」と、退職することを決めました。
退職後はもともと関心が高かった飲食領域の事業に関わりたいと思ったのですが、起業ブームの真っ只中だったこともあり、「まずはやってみよう」と起業してみることにしたんです。しかし、約4ヶ月間グルメ系のメディア事業に奮闘したものの、全く売上が立たなかった。
今振り返ると、そもそものマーケット選定に失敗していただけなのですが、当時は営業の方法も分からず、資金も尽きてきたので、「どこかの会社で一度修行しなきゃダメだ」と思い、会社を畳むことに。
ジョニーさん:起業の失敗理由をエクセルにまとめながら内省してみると、戦略立案能力や目標達成志向が弱いという結論が出たので、そうした資質が身につけられそうな会社に転職しようと思いました。当時コネクションがあり、その条件に当てはまりそうだったのが、学生時代に自分の人生を変えてくれたスローガンと、知人経由で経営者と知り合っていたアッションの2社。
どちらも魅力的でしたが、まだ社員が3名、かつ海外展開もはじめているアッションの方が「グローバルで戦える起業家」に近づけそうだと思い、入社の意向を固めました。思い立ったその場で社長に電話して入社したい意志を伝え、翌日ランチしながら直談判した結果、採用してもらえることになったんです。
—— アッションでのキャリア遍歴も聞かせてください。
ジョニーさん:はじめは、Webマーケティングのコンサルタント兼セールスとして、SEOやデータ解析、リスティング広告まで、Webマーケティング支援のサービスをなんでも売っていました。はじめての営業職でしたが、これといった研修はあまりなかったですね(笑)。
社長から「とりあえず3ヶ月でこれだけ売ってね。3回だけ営業同行するけど、それ以降は自分一人で」といったミッションを課されました。最初は、営業に行こうにも、メールの送り方も、テレアポの方法も分からず、手を震わせながら電話を繰り返すことに。書籍でインプットしながら必死で食らいついたことを鮮明に覚えています。
—— 過酷ですね…。セールスとしての思い出深い経験はありますか?
ジョニーさん:がむしゃらに仕事に取り組むなかで、ある日偶然、海外で著名なWebマーケティングツールを見つけました。自分で使ってみたところ製品の品質は良かったので、試しに日本企業に売り込んでみたところ、予想外に多くのリアクションをいただけました。順調に売れはじめたので、独占ライセンスをとって専属代理店として販売していく新規事業にしようと思い立ったんです。
社長に提案したら「いいんじゃない?」と言ってもらえたので、交渉をはじめましたが、日本の無名のベンチャー企業が相手にしてもらえるはずもないですよね。「このままだと頓挫する」と思い、社長に相談したところ、「じゃあインドへ行くか」と。インドにある運営会社まで直接足を運びました。すると、熱意を買っていただき、無事に独占ライセンス契約を結ぶことができたんです!
—— すごい行動力ですね…!ジョニーさんは、そのまま事業責任者に…?
ジョニーさん:結果的に振り返るとそんなイメージでしょうか。営業、マーケティング、広報、採用…あらゆる領域をカバーしていました。そうして事業が軌道に乗ってきたタイミングで成果が認められ、これまた直訴したこともあり、執行役員に加えてもらいました。
ですが、さまざまなクライアントのサポートを重ねるうちに、「成長を目的にしてきたけど、結局僕は何がしたいんだろう」と自問自答するようになって…。
—— 成功に向かって、アクセルを踏んでいる段階なのに…。
ジョニーさん:振り返ってみると、自分の人生は「Goodfind」によって大きく変わったことを思い出しました。「『Goodfind』に恩返しをしたい」という気持ちがありましたし、スタートアップに飛び込むきっかけをくれた伊藤は、アッション時代に数ヶ月に一度事業相談にのってもらうメンター的な存在だったため、「この人が描く世界を一緒に実現していきたい」という気持ちも持つようになっていました。
ジョニーさん:そこで、伊藤本人に直談判したんです。
結果、熱意が認められたのか、受け入れてもらえました。とはいえ、執行役員という立場や、自分が作ってきた事業をうまく引き継ぐ責任もあったため、まずは先にアッションの社長と相談し「次の半期で売上を4倍にできたら辞めてもいいんじゃないか」と無茶な目標を設定したんです(笑)。
メンバーの数が増えたわけでもなかったので「どうやって達成するんだ」と途方に暮れましたが、インターン生の業務範囲を拡大することで、なんとか目標達成も見えてきました。最後の1ヶ月ほどは、引き継ぎに向けて社長にも寛容に対応いただき、半期が終わったタイミングでアッションを退職。翌日からスローガンに入社することができました。
—— スローガンに入ってすぐ、「FastGrow」を立ち上げられたのですか?
ジョニーさん:いえ、最初は、新規事業の傍ら、既存事業にも全力で取り組んでいました。入社前から、アッションでの事業立ち上げ経験を活かして新規事業を創りたい気持ちは強かったものの、「まずは社内での信用を獲得すべきだ」と当時の役員から教わったんです。そこで成果を出すことを目指しつつ、並行して新規事業の立ち上げも任せてもらえました。
最初はコンサル就活に特化したメディアである「FactLogic」を立ち上げ、軌道にも乗ってきたのですが「スローガンのミッションを実現させるためには、新卒領域ではない大きなマーケットも新たに開拓せなばならない」と思うようになりました。そこで目をつけたのが、スタートアップやベンチャーにおける中途領域。世間ではあまり知られていない優良な起業家や経営陣と、優秀な若手ビジネスパーソンをつなげるメディアをつくりたい–––そんな想いのもと立ち上げたのが、「FastGrow」でした。
—— 現在に至るまで、波乱万丈のキャリアを歩まれてきたんですね。
ジョニーさん:改めて振り返ると、すべて結果論に過ぎないと思っています。最初からスローガンに入社していても、今の「FastGrow」の姿まで成長させられていなかったでしょうし、あらゆる経験の掛け合わせでいまの僕があると感じます。ソーシャルゲームのプランナー、Webマーケティングコンサルタント、新規事業立ち上げ、学生向けの面談にセミナー講師。これまで一生懸命やってきたことの一つひとつが、現在の仕事で有機的に結びついて、活きているんです。
—— 最後に、学生へ向けて一言お願いします。
ジョニーさん:やりたいことの解像度を上げる努力を、怠らないようにしましょう。中途半端な気持ちではじまった学生起業で成功している例が少ないように、目指しているものがボンヤリしていると、何事も上手くいきません。
たとえば起業家になりたいとしても、目指している時価総額が1億円か1,000億円かどうかで、取るべき進路が変わります。企業規模は二の次で「起業」そのものを目的とするのであれば、創業期のベンチャー企業で立ち上げ経験を積むのが良いでしょうし、時価総額1,000億円規模の会社をつくりたいなら、大企業の仕組みを学ぶため上場企業に行った方がいいかもしれない。
また、やりたいことの解像度は「人に会いに行く」ことで高められます。学生時代から、領域やタイプを問わず、自分が普段接しなかったり、苦手だったりするタイプを含めたさまざまな人に会っておくと、視野が広がり、キャリアの選択肢を広げられるんです。
その際に気をつけたいのが、会いたい人に会ってもらえるようにするため、日頃からSNSで情報発信をしておくこと。見知らぬ人から「会ってください」と連絡が来て、無条件に「じゃあ会おうか」と応じてくれる人はいません。コンタクトを取って来た人がどんな人物なのか、知りたいはずです。その際、SNSに情報が蓄積されていれば、信頼できる人か否かが分かり、会ってもらいやすくなりますよ。
西川 ジョニー 雄介:プロフィール
慶應義塾大学卒業後、株式会社モバイルファクトリーに新卒入社。 2012年12月、社員数3名の株式会社アッションに転職し、A/BテストツールVWOを活用したWebコンサル事業を立ち上げ、同ツール開発インド企業との国内独占提携を実現。営業、コンサル、マーケティング、広報と職種を問わず事業拡大に尽力し、2014年8月には同社執行役員に就任する。2015年7月よりスローガン株式会社に参画。現在は、 若手経営人材を支援するビジネスコミュニティ『FastGrow』事業部の部長に就任し、同媒体の編集長を務めている。
Twitter:@ywestriver
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