—— ツイッターで小林さんを拝見したのですが、「Wantedlyお兄ちゃん」って何ですか……?
小林宥太(以下、小林):その名の通り、求人情報SNS「Wantedly」の運用が趣味のお兄ちゃんです(笑)。本業はバイトルでご存知の方も多い会社かなと思うのですが、ディップという事業会社の新規事業開発部門でWantedly運用を通した採用や広報を担当しています。本業とは別で複業でもWantedlyの運用代行や採用のコンサルティングをしています。
—— 運用代行とは具体的に、どのような仕事をするのでしょうか?
小林:クライアントの認知度向上や、確度の高い人材獲得を目的とした情報発信を仕事としています。「どうやったら認知を得られるのだろう…」と考え、ハックするのが大好きなんです。仕事とはいうものの、あくまでゲーム感覚ですね。
—— ちなみに、小林さんって新卒ですよね。本業とは別に、複業で仕事をするの、大変じゃないですか?
小林:本業とは別に10社とお仕事をしているのですが…
—— ちょっと待ってください。10社ですか。
小林:はい、10社です。
—— 10社。
小林:10社。
—— 仕事が大変なのはもちろんですが、やることが多すぎて錯綜しそうです。
小林:正直、そんなに忙しいと感じたこともないんですよね。Wantedlyの運用は、ディップの内定者時代から1年以上続けてきたことです。経験が地続きになってお仕事になっているので、難しさを感じることもない。
もともと性格がドライなので、どのクライアントさんに肩入れをすることもないんです。本業に特別な感情を持っているわけでもありません。「ここで働きたい!」という“エゴ”がないので、自分の所在に迷いがなく、淡々と仕事を続けていられるのだと思います。
—— なかなかドライですね…。しかし、社名ではなく仕事内容にこだわりを持つのは、これからの時代に必要な“戦略”だと思いました。
小林:会社の名前にこだわってもなにもメリットはないと思っています。学生時代にせっかくスキルを磨いても、就職によってリセットされてしまうなんて“負け戦”じゃないですか。
僕は、自分の価値が最大限発揮される現場で“勝ち馬”に乗りたい。アブノーマルであろうが、同期よりもいい仕事ができる位置にポジショニングすることが、生存戦略として正しいと思っています。
実際ディップでも内定者時代から1年半でWantedlyをうまく活用してインターン生50人以上、新卒の社員10名以上、中途でも数名採用することができていますし、同期の中でも目立てているという自負があります。
また「Wantedlyお兄ちゃん」と自らにタグをつけることで「Wantedlyならディップの小林ってやつがうまく活用しているらしい」というブランディングが社外にも育ってきたなと感じますし。
—— 「学生時代にスキルを磨いた」とのことですが、小林さんは大学生活についてもお話を聞かせてください。
小林:最初の2年間は、いわゆる“普通の大学生”でした。サークルに所属し、飲み会に行き……。それこそネームバリューを意識して「大企業に行きたい!」と思っていましたし。“THE慶應生”でしたね。
今の自分につながる転機は、大学3年生のときでした。友人から、就活向けの学生団体の立ち上げに誘われたんです。それから約半年間、学生と社会人の“交流の場”を設けるイベントを主催していました。
しかし、イベントを重ねるなかで「団体でやる意味」を見失っている自分に気づいたんです。自分が頑張って集客・運営したにも関わらず、団体全体に成果を奪われてしまう。本気でやればやるほど、バカを見る構造になっているなって。
—— 学生団体だと、メンバーのモチベーションにギャップがあることも多いですよね。
小林:そこから団体を辞め、友人2人に誘われ原宿でバーを週1で営業していました。すると、バーテンとしてカウンターに立つなかで、さまざまな社会人と縁が生まれて。SNS運営やイベントの立ち上げなど、個人で5社から小口の案件をもらって仕事をするようになりました。この経験が、今につながる原点でしたね。
—— なるほど。その経験が地続きになって今に至るなら、就職をせずともフリーランスで活動する選択肢もあったと思います。なぜ、就職されたのでしょう?
小林:クライアントがいたとはいえ、それは「学生」という身分があったからこそのもの。賞味期限のある「若さ」をコンテンツに仕事を続けることへの不安がありました。いろいろ考えて1度会社に入り、基礎力をつけることにしました。
—— お話を聞いていると、非常に多岐にわたって仕事をされているなと思います。小林さんが興味を惹かれるポイントはどこにあるのでしょうか?
小林:Wantedlyもイベントもバーも、多くの人の人生に影響を与えている感覚が楽しいのだと思います。求人サイトもバーも、人びとが出会い、人生に変化が生じる場。誰かの“ターニングポイント”に黒子として参加することに、楽しさを感じていますね。
—— 若者のキャリアが多様化するなかで、これから就職活動を始める大学生に伝えたいことはありますでしょうか。
小林:自分の身の丈に合った“ちょうどいい会社”を選ぶ選択肢に気づいてほしいですね。今も昔と変わらず、多くの学生が“ビッグネーム”に憧れを抱いています。しかし、すべての若者が大企業で成功できるわけではない。僕は「大企業で頑張れない」若者の1人として、身の丈にあった活躍の仕方を自らがロールモデルになって伝えていきたいんです。
—— 小林さんにとっての“ちょうどいい会社”とはどんな会社なのでしょう?
小林:僕は、一般的な会社員のような定時出社・定時退社ができないタイプでした。また、1つの会社にコミットすることも苦手です。多くの会社から小さな案件をもらうやり方が自分に合っている。そんな僕のスタイルを許してくれるのが“ちょうどいい会社”ですね。
ディップはまさにその“ちょうどいい会社”だし、なかなか稀有な会社だと思います。手前味噌ですがオススメな会社ですよ(笑)。
—— 「複業10社」という肩書だけを見ると、がむしゃらに働いていそうですが、実は自分の居心地のいい働き方をしているだけなんですね。
小林:よくめちゃめちゃ頑張っている意識高い人だと思われがちなんですが、全然そんなことはなくて(笑)。自分にとって省エネで効率的な働き方が「新卒1年目だけど複業10社」なんですよね。
これからの時代、新卒で大企業に入社できないことよりも、大企業の名前やブランドに左右され、20代を無駄にしてしまうことのほうがリスクが大きいと思っています。
大切なのは「自分自身の価値が最大限発揮されるポジション」をしっかりとること。自分は朝起きれるのか、満員電車は平気か、人と会うのは苦手か…。自分自身を見つめ、自分に合った「最適解」を見つけてほしいですね。
—— 「ワーク」と「ライフ」を分けず、自分の気持ちいい「ワーク」を見つけるべきだと。
小林:労働なんてただの暇つぶし。どうせ暇をつぶすなら、自分に合ったやり方で楽しくやりたいじゃないですか。僕は気分に波があるので、今のような働き方をしています。そうしたように、ひとりひとりに合った「ワーク」との関わり方があるはずです。“いい会社”に固執するよりも、自分のことを知り、“ちょうどいい”キャリアを選ぶことが、最終的に成果に結びつくのではないでしょうか。