【麻野耕司】HR Techを牽引する事業開発者は、いかにして“人と人を紡ぐプロ”になったのか

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「授業とバイト先を往復する毎日。あとは、たまにサークル」——あなたの大学生活、思考停止状態になっていませんか?

「とりあえず」「なんとなく」で大学生活を過ごした先に待っているのは、自分への後悔と他者への羨望です。

若いうちに生まれた差分は、取り返すことができない。あなたは、「今が一番楽しい」と笑える毎日と、「あのときは楽しかった」と後悔する毎日、どちらを選びますか?

本連載では、社会の第一線で活躍する経営者・ビジネスパーソン・クリエイターの方々に、学生時代の過ごし方についてお話を伺っていきます。

今回編集部が注目したのは、国内HR Techを牽引する「モチベーションクラウド」の事業開発者・麻野耕司さん。

麻野さんは、組織人事コンサルティング事業を手がける株式会社リンクアンドモチベーションに新卒入社。現在は取締役を務められています。国内初の組織改善クラウド「モチベーションクラウド」の立ち上げに参画し、2018年には転職クチコミサイト「Vorkers」を運営する株式会社ヴォーカーズの副社長にも着任。さらに、各界の著名人により連続講義がされる「NewsPicksアカデミア」で講師を務めるなど、社内外で幅広くご活躍中です。

組織人事の領域で華々しい実績を誇り、過去には新卒採用も担当してきた麻野さんは、「自分探しではなく、自分創りに励むべき」と語ります。自分が心からやりたい仕事を見つけるコツから、戦略的な進路の選び方まで、キャリアを考えるうえでのポイントをお伺いしました。


「やりたいこと」なんて探さなくていい。とにかく行動し、「心の針」に従おう


—— 麻野さん、本日はよろしくお願いします!ズバリ、キャリアを選んでいく際に心がけるべきポイントを教えてください。

【麻野耕司】HR Techを牽引する事業開発者は、いかにして“人と人を紡ぐプロ”になったのか


麻野耕司さん(以下、麻野さん):とにかく行動すること。そして、「心の針が振れた」ものにチャレンジすること。その2点に尽きると思います。無理して「やりたいこと」を探す必要なんてありません。

キャリアには、「山登り型」と「川下り型」の2パターンがあると思っています。前者は「XX銀行の頭取になる」といった明確な目標に向かって突き進んでいくスタイル、後者は目の前の仕事に全力で取り組み続けていくうちに自然と自己実現が果たされるスタイルです。


環境の変化が激しい現代は、山の頂上を見渡す–––すなわち、「やりたいこと」を見つける–––ことが前提の「山登り型」は難しくなりつつある。したがって、「あの岸まで全力で漕ごう」と行動を繰り返すことで、気がついたら河口に辿り着いている「川下り型」のキャリア形成が主流となっていくはずです。


—— 「山登り型」にとらわれてしまい、「やりたいこと」が見つからず悶々としている学生さんも多いですよね。


麻野さん:僕も学生時代には、自分の人生がどこに向かっているかが分からず、悶々とする時期がありました。部屋に閉じこもっては、将来への漠然とした不安にさいなまれていましたね。そんな苦悩の日々を脱出する契機となったのが、「行動」だったんです。思い切って行動してみることで、世界が広がり、次の行動の機会も生まれていきました。


—— そうして行動を繰り返すうちに、「心の針が振れる」ことに出会えたと。


麻野さん:心の針が振れたものに、躊躇せず手を伸ばすことも大切です。心が動かされる体験をしても、何かと理由をつけて行動をためらう人が多いですが、勇気を持って飛び込まないと何も変わりません。


特に、周りの人の意見を気にして、行動を躊躇してしまうのはやめましょう。心の針に従わないことも問題ですし、戦略的に考えても賢いとはいえません。


空虚な“大学デビュー”の日々から抜け出せたきっかけは、たった一つの「行動」だった


—— 「川下り型」のスタイルで、ブルーオーシャンのキャリアを選び取っていく...戦略的ですね。学生の時から、そういった戦略的なキャリア形成を図っていたのでしょうか?


麻野さん:先ほど「悶々していた時代があった」とお話ししましたが、実は僕の大学生活はまったく戦略的じゃなくて(笑)。大学進学を機に上京した直後は、ただただ街の雰囲気に圧倒されていました。その反動で、負けじと髪を染め、日焼けサロンに通って“イメチェン”し、合コンやサークル活動に明け暮れるようになったんです(笑)。


—— 麻野さんも、普通に「大学生」を楽しんでいたのですね(笑)。

【麻野耕司】HR Techを牽引する事業開発者は、いかにして“人と人を紡ぐプロ”になったのか


麻野さん:見かけの楽しさとは裏腹に、心の中は空虚でした。悶々とした日々を過ごすなかで、「なにか自分にできることはないだろうか」とインターネットをさまよっていると、議員秘書のインターンの募集を発見しました。その瞬間、世界平和へ憧れを抱いていた幼少期の記憶が呼び覚まされた–––まさに「心の針が振れた」のです。「政治の世界であれば、世界平和に貢献できるのではないか」と思い、応募することを決めました。


無事インターンの選考に通り、2ヶ月間、毎日のように国会議事堂に通う日々が始まりました。するとそこでも、心の針が振れた瞬間に巡り会えた。政治献金の依頼のためにお会いしたベンチャー経営者の話があまりにも面白く、「政治家になる前に、まずはビジネスをやってみたい」という気持ち生まれたんです。それ以降、ビジネスの世界に飛び込むべく、就職活動に取り組むようになりました。

このままだと、一生「可能性と選択肢を広げ」続けて終わる。周囲の反対を押し切り、「心の針」に従った理由


—— 就職活動は、どのように進められたのでしょうか?


麻野さん:もともと、商社が第一志望でした。小学生のときの海外経験の影響もあり、漠然と「グローバルな仕事をしたい」と思っていたんです。その軸で就活を進めた結果、とある総合商社から内定をいただくことができました。

【麻野耕司】HR Techを牽引する事業開発者は、いかにして“人と人を紡ぐプロ”になったのか


麻野さん:そんな折、友達から「リンクアンドモチベーションという会社がお前に合っていそうだから、受けてみたら?」と勧められたんです。

当時はまだ知名度が低かったこともあり、全く興味が湧かなかったのですが、「減るものでもないし、行ってみるか」と軽い気持ちで説明選考会に参加してみたら……衝撃を受けましたね。

代表の小笹が「組織の運営で大事なのは、人自身ではなく、人と人の“間”。リンクアンドモチベーションでは、その人と人の“間”を良くするためのコンサルティングを行なっている」という言葉に感動し、「これが自分のやりたかったことだ!」と、雷に打たれたようになりました。

そこで初めて、自分が国際政治や世界平和に興味を持っていたのは、「人と人の間を紡ぐ」ことに関心があったからだと腹落ちしました。子供の頃によく読んでいた手塚治虫監修のマンガ『世界の歴史』には、悪役がほとんど出てきません。にも関わらず、人類の歴史のなかで凄惨な戦争や革命が繰り返されてきたのは、人と人の間がうまく紡げていないからだ–––幼少期から漠然とそう考えていたことに気付き、思考が整理されたんです。

自分がやりたいことは、世界平和の実現そのものではなく「人と人の間をうまく紡ぐ」ことだと、言語化することができました。

—— そこでも、心の針が振れたということですね。


麻野さん:幸い、リンクアンドモチベーションからも内定をいただくことができました。ただ、総合商社の内定を辞退するときは、先輩や両親から、かなり強く反対されましたね。「お前は社会のことが分かっていないから騙されている」、「そんなよく分からない会社に入れるためにお前を育てたんじゃない」など、散々に言われたので、さすがに気持ちに迷いが生じてしまいました。


しかし、結局は、心の針に従ってリンクアンドモチベーションに行くことを決断したんです。きっかけは、とある先輩から言われた一言でした。


「商社からリンクアンドモチベーションへの転職はいつでもできるけど、逆は難しい。将来の可能性や選択肢を広げるために、商社へ行くべきだ」


先輩の言っていることを頭では理解できたのですが、心では怖いと思ってしまったんです。それまでずっと、両親や学校の先生に言われるままに、「可能性と選択肢を広げるために」進路を選んできました。


しかしこのままだと一生、可能性と選択肢だけを広げ続け、本当にやりたいことをやらずに死んでしまうのではないかと不安を覚えました。


「そんな人生は嫌だ」と思い、間違っているかもしれないけれど、心の針に正直に従うことにしたんです。結果、現在までものすごく楽しく働けていて、「自分の人生において、あんなに良い決断はなかった」と思えています。


私は“人と人との間を紡ぐ”ために「モチベーションクラウド」というプロダクトを開発しています。「会社の社員の間」「上司と部下の間」「部門と部門の間」などデータとテクノロジーによって紡ぐ国内初の組織改善クラウドです。このプロダクトを通じて、多くの人を幸せにできると信じてやっていますが、この幸せなミッションに出会えたのは、あの時の決断のおかげです。

「自分探し」ではなく、「自分創り」を。できることが増えれば、楽しいことにも出会える


—— 最後に、キャリアに悩んでいる学生の読者に向けて、メッセージをお願いします。

【麻野耕司】HR Techを牽引する事業開発者は、いかにして“人と人を紡ぐプロ”になったのか


麻野さん:やりたいことが見つからなくても、あまり思い詰めないでください。「自分探し」よりも「自分創り」を頑張りましょう。どんな仕事でも、できることが増えるにしたがって、面白さも増していきます。「今の仕事はやりたいことではなかった」と転職していく若手ビジネスパーソンの大半は、「やりたくない」のではなく「できない」んです。


僕はいつも、自転車でたとえています。「目的地まで早くたどり着ける」「風を切って走るのが気持ちいい」「景色がひらけて見えて綺麗」といった自転車の良さは、自転車に乗れるようにならないと分かりませんよね。


仕事も同じです。「やりたいことが分からない」と嘆くのではなく、まずは自分のできることを一つひとつ増やしていきましょう。できることが増えてくれば、「楽しい」と思えることにも出会えるはずです。「自分創り」に励むことが、最強の「自分探し」になるんです。



麻野耕司さん:プロフィール

慶應義塾大学法学部卒業後、株式会社リンクアンドモチベーション入社。 2010年、中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング部門の執行役員に当時最年少で着任。同社最大の事業へと成長させる。2013年成長ベンチャー企業向け投資事業立ち上げ。HR Techを中心にビズリーチ、ネオキャリア、あしたのチーム、Fond, Inc.(旧AnyPerk)など20社近くに投資。

2016年組織改善クラウド 「モチベーションクラウド」立ち上げ。国内HR Techの牽引役として注目を集めている。2018年株式会社リンクアンドモチベーション取締役就任。同年、国内最大級の社員クチコミサイト 「Vorkers」を運営する株式会社ヴォーカーズの取締役副社長にも着任した。その傍ら、各界の著名人により連続講義がされる「NewsPicksアカデミア」で講師を務めるなど、社外での講演活動も精力的に行なっている。著書に『すべての組織は変えられる 好調な企業はなぜ「ヒト」に投資するのか』(PHPビジネス新書)。


 


製作協力:株式会社モメンタム・ホース
構成:川尻疾風、編集:小池真幸、撮影:岡島匠

この記事を書いた学生ライター

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