3,000人を面接した元サイバー面接官が、必ず学生に質問していたこと

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各界のトップランナーを招き、学生と講師がインタラクティブに意見を交わし合う実践的な授業で人気を集める法政大学キャリアデザイン学部・田中研之輔教授。大学内の学びにとどまることなく、就活や卒業後のキャリアを実践的に結ぶ教育メソッドにより、法政大学ベストティーチャー賞を受賞されています。

本記事は、田中教授が「大学の講義では教えてくれない学生にとって有益な情報」を寄稿する連載シリーズの第二段です。2017年10月に創業された株式会社ZENKIGEN代表取締役 野澤比日樹さんとの「就活の未来」についての特集をお届けします。

メガベンチャー創業期に事業創出


野澤さん


野澤さんは、現在、WEB面接・動画面接プラットフォームである「HARUTAKA(ハルタカ)」を通じて<採用領域の変革>に取り組まれています。「HARUTAKA(ハルタカ)」は、いつでも、どこからでも、スマートフォン一つで利用できます。このプラットフォームにより、地方の学生が就職活動で不利になるという格差が解消されるという画期的な事業です。


新卒採用の未来を深掘りしていく前に、野澤さん自身のこれまでのキャリアについても見ていくことにします。


野澤さんは、1998年に株式会社インテリジェンスに新卒で入社します。ただ、入社日は10月1日でした。大学時代から内定者アルバイトで勤務経験を積んでいたので、大学の卒業式を終えると、海外に放浪の旅に出たのです。最近よく耳にするようになった「ギャップ・イヤー」を経験していたのですね。


その後、1999年にサイバーエージェントに転職します。その当時の社員は、10名以下でした。サイバーエージェント社の創業期メンバーの一人として、大阪支社を立ち上げ、事業責任者としてマザーズ上場を含む、会社の急成長を牽引してきました。


その間に、個人最高賞である社長賞、組織最高賞のCAJJ賞を受賞し、事業責任者としても当時最短での営業利益1億円を突破し、5年間の事業経営で最終年度、売上30億円超、営業利益5億円超を達成します。


野澤さんが創業期から関わったサイバーエージェントは、日本を代表する企業へと飛躍的な成長を遂げました。


野澤さんのキャリアは、さらに続きます。2011年6月には、ソフトバンクアカデミアに外部1期生として参加する中で孫正義会長から声がかかりソフトバンクグループに入社することを決意します。ソフトバンクグループでは、社長室の一人として、電力事業であるSB Power株式会社の設立、事業立ち上げを担当します。


営業責任者として電力小売事業を立ち上げるに関わりました。電力完全自由化となり個人向けの日本初の森林寄付型の「自然でんき」を発案から販売まで事業責任者として従事しました。


この電力小売事業をひと段落させると、現在経営している「ZENKIGEN」を起業したのです。


なぜ、人事領域で起業したのか?


野澤さん


ITから電力まで多領域の新規事業を生み出してきた野澤さんがなぜ、人事領域に着目したのかについて話を伺いました。


「この国の人手不足は、今後数十年は続く構造的な問題であり、何らかの抜本的な社会的なソリューションが必要であると感じていました。そのような関心を持って人事領域を分析していると、他業界よりテクノロジーの導入が遅れていることに気がついたのです。働き方改革を推進しなければならない中枢組織である人事部に仕事が集中し、疲弊している社員を沢山みてきました。そこで、人事×AIを主要事業に据え、人事部と働く人を元気にしていくことにコミットしようと決意しました。」(野澤さん)


社名に掲げた「ZENKIGEN(全機現)」という言葉は禅の言葉で、人がそれぞれ持っている力を元気に発揮する社会をつくっていきたいという思いが込められています。会社で働く社員が、それぞれ持っている力を発揮する元気な会社を、まずは、日本社会で一社でも増やしていく。そのための手段が、人事領域とテクノロジーを掛け合わせることだったのです。


新卒一括採用での「互いの忖度」


野澤さん


新卒一括採用について「企業側の論理として効率的に一括で採用できるというのは理解できる」と理解を示した上で、野澤さんは「企業は、個性のある人材を求めているというのに、新卒一括採用では、就活生全員が同じ格好をしているという没個性に違和感を感じます。いつも通りの服で来てくださいという企業側の本音の部分と、いつも通りの私を出しつつも型からはみ出てはいけないという就活生の「互いの忖度」の構造は、おかしい。」と語ってくれました。


続けて、「学生時代から働きたい人は、働き出したらいい。スタートラインは、一緒じゃない。学生時代に、1〜2年もインターンで働く現場に出ていた学生と、内定を取っただけで満足をした学生とは、仕事のパフォーマンスが一緒なはずはないのです。」(野澤さん)


これから就活を迎えるみんなは、この点はおさえておくべきポイントです。内定獲得を目指している人と、就職してからのキャリアを見据えている人とでは、成長のスピードや幅が違います。


現在の就活では、内定をもらうために、個人面接、グループ面接、集団面接、役員面接、最終面接、と5〜8回の選考をクリアしなければなりません。一社の選考期間が、数ヶ月に及ぶ企業もあります。数十社エントリーしている就活生の負担は、相当なものです。企業側も相当の採用コストをかけて、新卒選考をおこなっています。


野澤さんたちが手がける動画面接では、就活の無駄と格差を少なくすることができます。将来的にはAIを導入して、限られて時間の中で、ミスマッチを減らしていくことに取り組んでいかれるようです。


学生時代に何かをやりきる


野澤さん


さて、サイバーエージェント時代、事業責任者として3,000人以上の学生の面接をしてきた、野澤さんが面接で必ず聞いた質問があります。


「挫折経験は何ですか?」


この質問をしていた理由については、「失敗経験は誰にでもある。ただし、挫折経験というのは、本気で向き合い、取り組んだ証なのです。学生時代に特段本気で向き合うことなく器用にこなして社会に出た人は、ビジネスシーンでの負荷に弱いのです。その点を見極めていた」からです。


だからこそ、学生時代には、「何かをやりきったという経験が大切なのです。」


アルバイトでも、サークルでも、学業でもいいとのことです。


ビジネス始めると、誰もが挫折をします。その時に、折れてしまうのか。そこで耐えて、乗り越えてくるのか。挫折を乗り越えた経験があれば、耐えることができるのです。レジリエンス(復元力・生き延びる力)のある人材が求められています。


誰のため、何のために働くのか


複数社から内定をもらったときに、どの会社に就職しますか?大学から社会へと一歩を踏み出していくファーストキャリアは、「自分で決めるべきだ」と野澤さんは、アドバイスをくれます。


「親に就職先を相談するのではなく、これから世の中がどうなっていくのか、その変化を感じ取り、自分で判断しないと必ず、後悔します。自分の人生は、自らハンドリングするようにしてください。」


今、世の中はシンギュラリティに向かって、加速度的成長の歴史的入り口を迎えました。どのような社会になるのかを全て見通すことは難しいとはいえ、変化の兆しをつかまえるようにしましょう。


次世代を担うみんなに期待すること


野澤さんが大切にしているのは、自分一人の成功ではなくて、事業を通じて、働く社員を幸せにすること、事業を通じて、社会を良くすること、次世代のために仕事をしていくことです。野澤さんから学生のみんなへの4つのアドバイスです。


①  自己成長に貪欲であること。努力し、成長することは、誇らしいことだ。

②  世の中に対して、何ができるのか、どういう価値貢献ができるのかを徹底的に問う。

③  未来がどうなっていくのか、ということへの興味を常に持ち続ける。世の中の変化から目をそむけない。

④  テクノロジーベースで考えている人の情報をキャッチアップする。


最後は、野澤さんからの次世代を担うみんなへのメッセージを書いておきます。


「激しく変わる社会の中で、私はこうだと固執してしまう人は、市場から取り残されていきます。状況変化の時々で、自分を変化させていく、自らを変えることに躊躇しない、変化対応力を学生のうちから意識的に育てていってください。」


野澤さん、ありがとうございました。

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