銀座のママが見抜いた、成功者の共通点。イチを極めるプロフェッショナルは“多動力”を持っている

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昼間の”戦うビジネスマン”が、憩いの場として粋なあそびを楽しむ夜の街、銀座。この街にはたくさんのクラブが存在していますが、その平均寿命は6ヶ月といわれています。

そんな銀座の街で20年間『クラブ稲葉』を経営し、今では複数の系列店舗をとりしきる凄腕ママがいます。

先日NHKの放送番組、『プロフェッショナル 仕事の流儀 』にもご出演された白坂亜紀さんです。

学生時代は早稲田大学文学部に在籍し、いわゆる普通の学生生活を送っていた白坂さんですが、あるとき知人から誘われたホステスのアルバイトをきっかけに、水商売の世界で経営者になることを決意しました。

昨年3月に発売された書籍『銀座の流儀』には、夜の蝶として長年銀座を生き抜いてきた白坂ママの生き様が描かれていますが、今回はその中でも、経営の“プロ”であるご自身の経験、また、あらゆる分野の“プロ”と関わってきた経験にフォーカスしたお話を聞かせていただきました。


ホステスは常に“IQ500”ーー白坂ママが考える「社会で評価される人間」の共通点


—— まずは、白坂さんが“ママ”になった経緯をお伺いできますか?

銀座のママが見抜いた、成功者の共通点。イチを極めるプロフェッショナルは“多動力”を持っている


白坂亜紀さん(以下、白坂さん)
:私が学生だったころは、いわゆる“バブル”の時代です。就職先はいくらでもありました。ただ、女性が前面に出て活躍できる時代ではなかったのです。1986年に男女雇用機会均等法が制定されましたが、女性が会社に入っても、補助的な仕事ばかり回ってくるのが実情でした。


また25歳くらいになると、いわゆる“肩叩き”をされます。「そろそろ結婚したらどう?」と、遠回しに寿退社を勧められるんです。ビジネスの場に女性の出る幕はなく、ましてや「仕事」と「家庭」の両立は非常に困難でした。

—— そうはいっても、仕事と家庭を両立できる働き方が理想的ですよね。

白坂さん:おっしゃる通りです。ワークライフバランスが取れる働き方を考えていたのですが、その当時にたまたまクラブのアルバイトのお誘いが舞い込んできました。当時は景気の良さも相まって、水商売のアルバイトをやっている人も多く、とりあえず始めてみることにしたのです。


そうして働くうちに、あるとき「この仕事なら仕事と家庭、どちらも諦めなくていいかもしれない」と閃きました。水商売は女性が活躍できる仕事ですし、経営者になって自由に仕事が出来る立場になれば、家庭を持つことも出来るんじゃないかと思ったのです。


今では女性が活躍する場も増えてきましたが、それでも働きながら家庭を持つのは大変です。一般企業に勤め、9時から17時まで働くのは難しいでしょう。でも経営者になれば、自分のスケジュールに合わせて仕事ができます。


—— 学生時代にしていたホステスのアルバイトでは、どのような経験をしましたか?

白坂さん:私が学生だった時代のホステスは、単なる接客だけでなく、後日接客したお客様に自分で請求書を書いて代金を回収しなくてはいけませんでした。一生懸命呼び込んでいたお客様が、代金未払いのまま急に姿を眩ましてしまうこともありました。

その場合、損失分はホステスが責任を取らなくてはいけません。細やかな気配りでお客様を満足してもらうだけでなく、お金の回収まで見込んで商売をしなくてはいけないんです。この経験が経営者としての基礎力になっていますが、「お客様をもてなしながら商売をする」難しさは今も変わりません。


たとえば旅館だとあらかじめ料金が決まっていますが、クラブでは自分たちのサービスによって売上が変わります。ただ売上を上げてもお客様には満足してもらえませんし、ただお客様を満足させるだけではホステスとはいえません。

全席の様子を見ながらうまく空気を読み、お客様に満足してもらい、売上を上げなくてはいけないんです。私たちは、営業中は常にIQ500の状態です。またホステスに限らず、社会で評価される人間はそうやって「自分が今一番すべきこと」を考えて動ける人だと思います。

銀座のママが見抜いた、成功者の共通点。イチを極めるプロフェッショナルは“多動力”を持っている


—— それに、銀座のクラブといえば、企業の社長さんや政治家といった、いわゆる”大物”のお客様も多いですよね。


白坂さん
:そうです。クラブには、ビジネスに限らずあらゆる業界のトップ層のお客様がいらっしゃいます。そういったお客様と対等に会話をするため、さまざまなことに関して勉強づくめの20代を送っていました。

まずは最低限の時事問題を知るため、日経新聞は毎日欠かさず読んでいました。新聞に書いてある内容は、どのようなお客様と接する上でも必要最低限な知識だと思います。また、クラブは飲みの席なので、ビジネスに限らずテレビや漫画、スポーツなどのエンターテイメント性の強い話題に関しても、自分から話題を振って会話を広げられるレベルにしておく必要があります。

ただ、幅広くとはいっても、全ての情報を最大限のレベルまで身につけるのは難しい。なので、5〜6個ほど自分の得意分野を持っておくことをオススメしています。意なジャンルが5〜6個あれば、大抵の人とはコミュニケーションが取れるようになるからです。

名刺には、賞味期限がある。若者が知らない、人間関係のつくりかた


—— あらゆる分野のプロフェッショナルと付き合ってこられたと思いますが、成功者に共通する点はありますか?

白坂さん:私は、「全ての仕事は人間関係で成り立っている」と思っています。なので、前提として「真っ当な人間」でなければ成功はできないと考えているんです。

—— 人間関係が大事なんですね。良好な人間関係を築くには、どうしたら良いのでしょうか?

白坂さん:よく「人間関係が大事だ」と話をすると、名刺交換だけのつながりを強調する人がいます。ただ、そうした打算的な考えではいけません。名刺交換をして、自分の得になる人だけに連絡をする人がいますが、これはとても勿体ないことだと思います。

銀座のママが見抜いた、成功者の共通点。イチを極めるプロフェッショナルは“多動力”を持っている


もしかしたら自分が連絡をしなかった一枚の名刺に、大きなチャンスがあったかもしれないですよね。どんな出会いが、どのような未来につながるかは誰にも分かりません。だからこそ、出会った全ての人に誠実でいることが大切なのです。


—— 白坂さんは、どういったことを心がけておられるのでしょうか?


白坂さん
:私であれば、名刺をいただいた方には、すぐに自分から連絡をします。ところが、たとえば100人と名刺交換をしても、先に連絡をくれるのは1人いるかいないか。返事をくれるのも、3〜4割程度です。おそらく多くの人が、「名刺交換をする」という形式だけに価値を見出しているのでしょう。


名刺をもらって1〜2年経ってから、何か必要性に駆られて慌てて連絡を取っても、もう遅い。相手はもう自分のことを覚えていないかもしれませんし、そもそも連絡先が変わっているかもしれません。名刺には、賞味期限があることを覚えておくべきですね。


良い人間関係の基本は、“細く長く”。そして、信頼を裏切るようなことは絶対にしない。「この人は私を助けてくれそうだ」など、打算的に動くのではなく、出会う人全てに対して真摯であることを心がけていれば、困ったときに必ず誰かが助けてくれます。


—— なるほどですね。先ほど、前提として「真っ当な人間」であることが成功者の共通点だとお伺いしました。他にも、白坂さんが考える成功者のポイントはありますか?

白坂さん:情報感度が高く、時代の流れに敏感な人は出世できると思います。今は時代の流れの変化が激しいので、常に先を見据え、日本国内だけでなく世界を舞台に新しいことをしていかなくてはいけません。

めまぐるしく変化する今の社会において「この会社に入れば絶対に大丈夫」ということはないので、今後は二足のわらじを履いて生きることをオススメします。私のお店で働いているホステスにも、全く異なる業種の仕事を掛け持ちしている子がたくさんいます。価値観もどんどん変わっていき、どのような仕事がどう生き残るかもわからないので、色々な事に挑戦して可能性を広げた方がいいと思います。

その際は、ただ闇雲に挑戦するのではなく、100年の人生設計を決めておくといいですね。そこから「何十年後までに何をする」という目標を立てるんです。今はインターネットが発達し、情報収集もしやすくなったので、昔よりも将来の選択肢が増えているはずです。是非若いうちに色々な選択肢を知り、その目標に向かってさまざまな経験を積んでほしいです。

選択肢を持つからこそ、イチを極めるプロフェッショナルになれる


銀座のママが見抜いた、成功者の共通点。イチを極めるプロフェッショナルは“多動力”を持っている


—— 今は色々な企業で副業を推奨する流れが出てきたりと、働き方の多様化が進んでいますよね。その一方で、選択肢が増えた分、何か1つのものを極めることが難しくなってきているようにも思えるのですが…。


白坂さん
:何か1つのことを極めるプロフェッショナルは、色々なことをやった上で自分の極めたい物事に戻ってきます。他の選択肢を体験したからこそ、価値観が研ぎ澄まされるんです。

その上で大切なことは、「まずは3年続けること」です。「3年」は、物事を1つの形にするまでに必要な時間です。そこに問題意識を持てば、立派な「プロフェッショナル」になります。そして、プロのレベルに達した人材は、どこにいっても重宝されます。

たとえば黒服の仕事に就いた場合、3年間続ければ、掃除やグラス洗浄、シャンパンを開けて注ぐ、店内の様子を見て気配りをする…といった具合に、それなりのスキルが身につきます。最初は乗り気じゃなかったとしても、黒服として「お酒」について学んだ結果、「ソムリエになりたい」という明確な夢を持てるようになるかもしれません。

ところが、3ヶ月しか続けなかった人はどうでしょうか。お酒の知識もない、シャンパンも抜けない、だったら「経験していない」ことと同じですよね。

—— 今やっていることが何に役立つかは分からなくても、そこにかける時間と熱量が大切なんですね。

白坂さん:そうです。よく「自分には向いていない」といって数ヶ月で仕事を辞める人がいますが、私はその話を聞いて「自分に合っていないことがたった数ヶ月で分かるのか」と思います。

一方で、成功した人は自分が出会ったものを「やり倒した」と表現します。たとえ自分の望んだことではなくても、出会ったものに一生懸命取り組めば、必ず次の道が見えてきます。どんな場所にでも学ぶことはありますし、それがマイナスになることは絶対にありません。本気で取り組んだことなら、人生に無駄はないんです。

「同属性で群れていても、脳は動かない」ーー出会いで“化学反応”を起こせる人になれ!


銀座のママが見抜いた、成功者の共通点。イチを極めるプロフェッショナルは“多動力”を持っている


—— 今日は素敵なお話をありがとうございました。最後に、読者にメッセージをお願いします!

白坂さん:今の若い世代には、賢く、しっかりとした子が多いと思います。ただ、よく「今の若い世代はガッツが足りない」といわれるように、野心が足りない印象はあります。堅実的なあまり、夢をみない子が多いんです。しかし、失敗が許されるのは若いうちだけですから、失敗を恐れて挑戦することを諦めるのはとてももったいないと思います。

また、私はあえて世代が違う人と交流するのも良いと思います。同世代、同じ大学、同じ学部、同じ性別の人と関わっていても、脳は動きません。世代が違い、価値観が違い、育った環境が違う人たちと喋っているときに、脳が一番活発に動き、化学反応を起こします。

先日、大阪の「新地」という、東京でいう銀座のような街から、一番有名なクラブのママが私に会いにきたんです。83歳のママですよ。「白坂さんに会いたかったから」と会いにきて、たったの10分で帰っていきました。その行動力って、素晴らしいですよね。


特に若いうちは、年上に「会いたい」と言って拒絶されることはそんなにありません。絶対に会えないと思っているような大企業の社長でも、意外と会ってくれます。年下から頼られることを嬉しく感じる人は多いですから、甘え上手になって、自分より何十年も長く生きている年上の人から色々なことを教わるといいですね。

この記事を書いた学生ライター

倉益りこ
倉益りこ
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早稲田大学文学部3年 co-media編集部です。 バンドと服と食べ物が好きです

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