勤務地:長野県伊那市、下伊那郡松川町
事業内容:障がい者自立支援
ーーどんなことをやっている会社?
「親なきあとも自立の人生」「障がい者の仕事を通した社会参加」の2つの目標を掲げて障がいを持った人たちが自立した楽しい人生を送るための支援をしています。障がい者の皆さんが農業に参加し、スイーツを事業化したり、カフェで働いたり、薪割りや畳づくり(特許を取得しました)を行って中国に輸出したりと、それぞれの特性を活かせる職場を提供しています。
具体的には、障がい者の方は4万円以上が手元に残るように生活モデルを設計し、親からの持ち出し金がゼロでも暮らせるようにしています。さらに働けなくなる老後のことを考え、今の生活が維持できるよう全額法人負担で「老後生活支援基金」を作り「親亡き後」という課題の最終的な解決を法人内で制度化しました。
ーー創業のきっかけは?
創業者の小椋さんは、学生のころから学生運動に関わっていた意識の高い方だったようです。大学中退後、10年間東京でサラリーマンをやっていましたが、ある時躁鬱病になってしまい、療養の目的で見ず知らずの信州の山の中に家族を連れ転居しました。
小椋さんには知的障がいをお持ちの娘さんがおり、転居後14年が経ってからその娘さんが養護学校の高等部に進むことになりました。それは娘さんが、3年後に卒業を控えたタイミングでした。小椋さんは、最初はお子さんを知人が運営している施設に連れて行きましたが、「こんなところ嫌だ」と言って帰ってきてしまったそうです。話を聞いてみると、どうやらその施設の環境があまり良くない様子。そこで立ち上げたのが、『アンサンブル会』です。
小椋さんはもともと福祉の世界に興味を持っていたわけではありませんが、「調べれば調べるほどこの業界の問題に気づき、自分がやらなくてはいけないという義務感が芽生え始めた」と仰います。なかでも一番気になっていたことが世の中に気安く流通する「障がい者の自立」という言葉でした。小椋さんは「自立」の定義が無限定であり、定義なしに障害者が幸せになることはないと感じました。アンサンブル会が掲げる「親なき後も自立した人生」は、小椋さんを含め実際に障がいのあるお子さんを持つ親御さんたちの「自分が死んだ時が一番心配だ」という声に応える形で立てられた目標なのです。
そして、もう1つの「障がい者の仕事を通した社会参加」は、昔一部の障がい者が山奥の施設に隔離されていた事実を踏まえています。いわゆる「ノーマライゼーション」という考え方ですが、障がいがあっても普通に市民社会で生きることは当然のことだ、という思いから立てられました。
ーーco-mediaの読者に向けて一言!
世の中には助成金で成り立っている福祉系の企業や団体、「障がい者にとって良い事業」をしていても赤字で苦しんでいる企業は多く存在しています。しかし、アンサンブル会の理事長である小椋さんは他にはない経営能力を持っており、そのおかげもあってか一般の福祉系企業や団体よりはお給料も高いです。また全員正規職員で雇用形態の格差を設けていません。生涯にわたる知的障がい者の町の中での自立とその裏付けや、畳の中国への輸出に見られる積極的な社会参加など、全国に例のない先駆的な福祉事業を実践しながら、それをビジネスベースでも両立させるのはとても難しいことだと思います。
それを成し遂げる経営者の下で働くことは皆さんにとって大きな財産となるはずですし、このような組織に熱意を持った良い人材が集まれば世の中がもっとよくなるでしょう。社会貢献に関心があり、社会を変革したいというパッションを持った学生は是非こちらの社会福祉法人をオススメしたいです!