AI(人工知能)が人間社会を席巻する足音が日に日に大きくなってきています。
先日、ドバイ警察は世界初のロボコップを導入し、2030年までには警察官の25%をロボコップにするという計画を発表しました。このロボコップは、現時点では人間の警察官のように犯人の逮捕をしたり、銃器を使用したりすることはできません。しかし、それでも罰金を支払わせたり、警察官が到着するまで容疑者を尾行することは可能だといいます。
警察の職務は人間が行うものだという極めて当たり前の常識は既にそうではなくなりました。厚生労働省が発表した報告書「働き方の未来 2035」(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000133449.pdfより)には「2035年にはさらなる技術革新により、時間や空間や情報共有の制約はゼロになり、産業構造、就業構造の大転換はもちろんのこと、個々人の働き方の選択肢はバラエティに富んだ時代になるに違いない』と記されています。2035年に社会を支えている立場である今の大学生は、“人間にしかできない仕事”を考えることが就職活動にあたって一つのテーマになっていくと考えています。
そんな中、ソフトバンク株式会社が日本の就活のあり方を変えるかもしれない発表を行いました。
それは、2017年5月29日から新卒採用のエントリーシートにおける評価をAIが行うというもの。
今回、ソフトバンクが使用するAIは米IBMが開発した Watson。Watsonとは、人間と同じように投げかけられた自然な言語をそのまま理解し、学習済みの専門知識を基に推論し答えを出す、いわば人間の意思決定を支援する人工知能のこと。これに応募者のエントリーシートデータを読み込ませることでエントリーシートの内容を認識し、項目ごとに提示された評価を受け、合格基準を満たす項目については選考通過。それ以外の項目については人事担当者が内容を確認し、合否の最終判断を行います。
ソフトバンクは、このAIの活用により「統一された評価軸による公平な選考」「人事担当者がエントリーシートの確認作業に充てる時間を約75%削減し、創出された時間を応募者との対面コミュニケーションに充てる」ことができると発表しています。
このソフトバンクのAI活用は、人間とAIそれぞれが得意とする分野の能力を上手く融合したものだと感じます。
企業が採用基準を統一したところで、どうしてもそれぞれの人の主観や考え方がそこに入り込んでしまう。また、人間には労働力の限界があります。今回、AIは偏りのない「統一基準」でのエントリーシートの選別、そして、際限のない「労働力」として人間の弱点を埋めています。
そして、AIの弱点である「ソフト面」での対応。人が醸し出す雰囲気や人間性、コミュニケーション能力などは実際に人が対面しないと分からないこともあるでしょう。今回ソフトバンクは、AIの活躍によって限りある労働力を「対面コミュニケーション」に充てる時間に大幅に移行することができるのではないでしょうか。
また、就活生にとって、人間にではなくAIに不合格の烙印を押されることは納得のいくものではないはず。しかし、今回AIが単独で判断するのは「合格」の評価だけ。不合格の項目については人間が再度判断するといいます。
AIが人間社会の一端を担う世界はもはや避けることができないでしょう。AIをただ“異物”として捉えるのではなく、人間社会をより良くするための“パートナー”として捉えていく。そんな、AIに“抗わない”社会の道筋をソフトバンクは見せてくれたような気がします。
1996年生まれ 上智大学在学中 潔癖性にも関わらず東南アジアの自由さと陽気さの虜に 文章で人に何らかの影響を与えることが出来るよう鍛錬中