さてさて皆さんこんにちは!『フツーな私が国連職員になるために』という連載企画をやらせてもらっています、ダラム大学院で平和構築を学んでいるMisatoです!
就職活動が熱を帯びてくるこの時期、グループワークの大切さを身にしみている人も多いのではないでしょうか。それは海外も一緒。留学中の私もみなさんと同じように、グループワークに四苦八苦しています。今回の記事では、前回の記事「セミナーのディスカッションでどうしても活躍したい!」に引き続き、「グループワークでどうしても活躍したい!」をお送りします。みなさんのお役に立てたら幸いです^^
私のコースでは、レクチャー1時間、セミナー1時間からなる通常のクラスに加えて、1年に3クラスまで取れる、国際交渉、紛争調停、参加型開発、プロジェクトマネジメントなどのプラクティカルなクラスが用意されています!
これらのクラスではグループワークベースで進むものが多く、私の選んだ紛争分析のクラスもその中のうちの1つでした。
紛争分析のクラスでは、「紛争ツリー」「オニオンモデル」「紛争マッピング」などなど、紛争分析の理論とツールを学び、最後のクラスで15分間のプレゼンテーションを行います。
これらのツールは、紛争のメカニズムを可視化し理解する上でとても便利で、国連やNGOなど現場でも使われているものです。私自身も、以後紛争に関する文献を読む際は、Wordに文字でまとめるのと同時にマッピングするのが習慣になっています。
さて、私のグループは、3ヶ月かけてソマリアの紛争を分析することになりましたが、メンバーはイギリス人、フランス人、ドイツ人、アメリカ人と日本人の私の多国籍チーム。
留学開始1週間目だったこの頃は、チームメイトはみんな自分よりずっと年上で経験があって自信に満ち溢れているように見えました。(後になって、意外とみんな同年代だったことに気づくのですが…笑)この頃はどうしても自分をちっぽけに感じてしょうがなかったものです。
周りのメンバーに比べて、私は英語力も自信も圧倒的に足りませんでしたが、それでもせっかくやるんだから、正直言えばグループワークで思いっきり活躍したい!
前回も言いましたが、だってここで活躍できなかったら将来どこで活躍できるんでしょう!
というわけで前置きが長くなりましたが、以下どうしてもグループワークで活躍したい私のトライアンドエラーの軌跡とそこから得た教訓をお送りします!
これは以前アメリカに学部留学していたときにも思ったことですが、グループワークの時、メンバーから一定の評価を得るまでは、なかなか自分の発言が受け入れられにくいんです。
もちろんこれは日本でも同じことが言えるでしょう。言葉の拙い留学生と完璧な日本語で話すネイティブスピーカーとでは、同じ内容の意見を述べたとしても、後者の意見がより説得力を持って周りのメンバーに影響を及ぼすというケースは想像に難しくありません。
ただ、「パワーポイントの最後にReferenceを入れたほうがいい」「最初にプレゼンのコンテンツを示したほうがいい」など、当たり前のことを述べても「時間ないからカットしよう」「いらないと思う」と言われてしまう始末…。それにしてもひどすぎません??(結局、後に教授から同じ指摘を受け実行されました。ほら!言ったやん、私)
日本で所属していた学生団体などではどちらかといえばリーダーシップを発揮していた方の私にとって、自分の意見がグループに影響を与えられないことは、はっきり言ってストレス以外の何でもありませんでした。
留学生のみなさん、食事が合わないとか湯船がないとかいろいろあるけど、留学生活の最大のストレスってほんと、これに尽きません?(´・_・`)
とはいえ、そんなこと言ってても始まらないので、それでもグループワークで活躍するために必要なことを一緒に考えていきましょう。
こちらもアメリカ留学の時も実感したことですが、あなた自身が知識のソースであれば、どんなに拙い英語であろうとグループのメンバーはあなたの意見をリスペクトをもって聞いてくれます。
そして、一度「この人は知識がある」「この人の意見は鋭い」と評価を得てしまえば、グループにおけるあなたの発言への期待値が向上し、その後一気に意見しやすくなります。
私はアクター分析を担当し、中でもアルシャバーブやイスラム法廷連合などの分析を担当しました。このアクターについては誰よりも自分が知っているという状態を目指して勉強し、またそれを活かしてグループワークに貢献するように意識していると、自然と「アルシャバーブのことならミサトに聞けばいい」という空気になって(字面だけ見ると危ない人物そうですね)、グループのメンバーからよく関連する質問が飛んでくるようになりました。
中には「いや、それはわからんやろ(笑)」と唸ってしまうようなマニアックな質問もありましたが、そうやってグループのメンバーから頼りにされるのは嬉しいもので、アルシャバーブエキスパートであり続けられるように一層勉強したものです。
全ての分野でエキスパートになるのは難しいですが、せめて何かのエキスパートを目指すことから始めてグループの信頼を勝ち得ていくというのは、現実的な戦略だと思います。
当たり前だけど見過ごされがちなのが、クラスの外で個人個人と人間関係を築くことの重要性です。
こればっかりは人によるので、決して一括りにはできませんが、ヨーロッパ人は個人主義の人が一般的に多いと言われています。私のグループでも授業が終われば「じゃあグループでご飯たべようか!(´∀`)!」なんて話にはならず、「See you!」と言い残して颯爽とそれぞれの行先に散っていくことがほとんどでした。
そうやって散っていくメンバーを「ちょいちょい!」とつかまえて、授業とは関係ないおしゃべりをしたり、「今日の髪型ラプンツェルみたいやな!」なんて会話してみたりすると、クールに見えたメンバーが意外と話しやすかったり、新しい発見があったりするものです。私はちなみに、日本から母が送ってくれた大好きなハッピーターンを配り歩き、ハッピーターン外交を繰り広げたりもしました。
ハッピーターンの評価はちなみに人それぞれでしたが、(ハマる人はめっちゃハマる)それでも個人的な人間関係を築いていくことでグループ内での議論のしやすさは格段に違うと思います。
グループの中に、英語ネイティブでなくとも“ぶっちぎりのリーダーシップ”を発揮している女の子がいました。フランスの防衛省でのインターン経験があるという彼女は、私と同じく学部卒で直接大学院に来ていましたが、いつも自信に満ち溢れていて、かつカリスマ性のあるリーダーシップの持ち主でした。
彼女が他のメンバーと違ったところは、周りのメンバーがプレゼンの全体の方向性についてああだ、こうだと意見を言い合っている中、みんなの議論を受けてとにかく紙とペンを取り出し、アイディアを具体的に形にしていくところでした。
途中でもなんでもアイディアをカタチにしていく過程で見えてくるものがあり、カタチにしたからこそ、そこから改善することができます。そしてカンペキでなくとも、彼女がメンバーの意見のピースをつなぎ合わせてとにかくカタチにした瞬間から、議論がぐんと加速していき、グループがひとつの方向性に向かって走り出すのを感じました。
…でも実は、私は当初、彼女のアイディアに賛成ではありませんでした。
紛争の構造分析のツールを紛争のダイナミズムの分析やアクター分析としても使っており、根本的に使い方が違っているように感じたためです。
そこで私は意を決して、「みんなの方向性が固まっているなか悪いのだけれど…」と少し控えめに、でもしっかりと自分の意見を述べ、果たして彼女もメンバーも真剣に聞いてくれました。
一通り話終えると、「あなたの言っていることは分かった。正しいところもあると思う。でも、じゃあ逆にどうしたらいいと思うの?」と彼女。私の中になんとなく対案のアイディアはありました。しかしそれはまだアイディアにすぎず、私はそれをカタチにする前に議論の場に臨んでしまっていました。
「とりあえず中間発表はこのままで行こう、フィードバックで同じことを指摘されたら変えよう」という方針でその場の議論は終わりました。
私と彼女の決定的な違いは、途中だろうとなんだろうと、アイディアを他人にも伝わるように具体的にカタチにしてくるかどうかであって、その違いは思った以上に大きかったのだと思います。
他人に何かを伝えるということは、容器に入った水を手ですくって別の容器に移すことに似ていると思います。丁寧に丁寧に伝えたとしても、自分の意見を寸分の狂いなく理解してもらえるとは限りません。
母国語でなら両手で水をすくうことができても、外国語でなら片手しか使えないようなもの。何度も水をすくっては移さなければなりません。どちらにせよしっかりと言葉を紡がなければ手の隙間から水が零れ落ちてしまいますし、聞き手となる、水を移す容器の大きさも人それぞれです。
抽象的な議論の場において、母国語でなら、自分の意見を的確に相手に伝えるために最も適切な言葉を瞬時に取捨選択し、議論を組み立てて提示することができます。しかし、同じ内容の意見でも外国語で述べようとすれば、最適解ではない言葉を紡いでなんとか伝えようとするため、自然と発言は長くなって正確性も落ちます。
しかし、たらたら発言していたら最後まで聞いてもらえず、他のメンバーが自分の意見を述べ始めるのが常。最初の数秒で「そんなに大切なことじゃない」と判断されたらそれまで。最後までまともに聞いてもらえないこともしばしば。
プレゼンが数週間後に迫ったある日のこと、私はプレゼンの構成や話の順番がどうも整理されていないのではないかと気になっていました。現状の構成に問題がありそうだし、けど、何をどう変更すべきか、そしてその変更が具体的にどんなプラスのインパクトをもたらすのか…。この不安が解消されない限り、グループのメンバーに自信を持って説得できないように思えたんです。
「どうしたものか…」と頭を抱えながら、何気なく今までバラバラだった情報をツリーにまとめて、構成を可視化してみました。その時のノートがこちら。
そして「あれ、これもしかしてわかりやすいんちゃう?」と思い立ち、この図をメンバーに見せながら、「私たちのプレゼンは実はこのような構成になっていて…」と話してみると、みんな真剣に私の書いた図を見つめ、うんうんとうなずき、びっくりするくらい簡単に私の意見は受け入れられたのでした。
意見をビジュアル化することによって、1秒で相手に意見の要旨を伝える。あとは言葉で補足する。容器に入った水を隣の容器に移すために、事前にスーパーに行っておたまを購入しておくようなものでしょうか。(おたまの大きさは可視化のセンス次第!)とにかくこのビジュアル化するという方法によって、一気に言葉の壁が溶けていくのを感じたのでした。
結局このグループワークで私がめちゃくちゃ活躍できたかできなかったでいうと、「そこそこにしか」できなかったと思います。
今思えば、プレゼンの経験だってグループワークの経験だってみんなに負けないくらいたくさんあったんだから、誰かの土台に意見する人じゃなくて土台を作る人になればよかったと思います。
このリベンジはきっと、来る休み明け、紛争マネジメントの授業で必ず。
今日も最後までお付き合い頂きありがとうございました^^
イギリスのダラム大学で平和構築の修士課程修了後、パレスチナで活動するNGOでインターンをしています。”フツーな私が国連職員になるために。ギャップイヤー編”連載中。 [email protected]<⁄a>