こんにちは、東京大学文科三類1年の東崎悠乃です。最近本当に寒くなってきましたね。街でも暖かそうなコートを着た人をたくさん見かけるようになりました!
私の前回の記事『大学生が”今”美術館に足を運ぶべき理由』では、ぜひ美術館に行きましょう!というメッセージをお伝えさせていただきました。
実は私が美術館に興味を持ったのは、「美術論」という授業を取ったことがきっかけなんです。中でも西洋絵画の面白さに驚きました!
海外ではもちろん、日本でもしばしば企画展などが開かれている西洋絵画。でも実際、何枚もの絵を見ていると、どの絵にも「すごい」や「綺麗」という感想しか出てこない。そういう方も多いと思います。私もそうでした。
ところが、すこし背景知識があるだけで、絵画の面白みは格段に変わることがわかったんです!私が授業で経験した驚きと面白さを皆さんにも知っていただきたい!というわけで、今度は美術館に行ったときに、さらに絵画を楽しめるコツを伝授いたします。少しでも予習してから絵画を鑑賞すると、楽しさは倍増しますよ!今回は西洋の伝統的な絵画にピックアップしてご説明いたします。
「そもそも、“西洋の伝統的な絵画”って何?」と思う方、よい質問です!西洋はわかるとして、「伝統的」がいつの時期を指すのかがわかりませんよね。
“西洋の伝統的な絵画”には19世紀の半ばより以前に描かれた絵画が多く含まれ、神話、宗教が扱われるものが代表的です。文字による解説だけでは、わかりづらいので、どんどん具体例を見ていきましょう!
例えば、下の《ヴィーナスの誕生》(ボッティチェリ)は教科書で見覚えがある人もいると思いますが、これは伝統的な西洋絵画の代表例です。この絵はギリシアの神々をモチーフにした〈神話画〉というジャンルに分類されます。
絵画にはジャンルあるいはカテゴリーが存在しますが、そのなかにもヒエラルキーがあります。
古典的な西洋絵画の世界では、ギリシア・ローマ神話を扱う〈神話画〉や、旧約・新約聖書の題材を扱う〈宗教画〉がトップに位置し、それらより下位のジャンルに馴染みのある肖像画、風景画、人々の営みを描く風俗画や静物画などが含まれます。やはり、面白みがあるのは〈神話画〉や〈宗教画〉でしょうか。
題材を知っていると、「綺麗な絵だなぁ」だけではなく、「なるほど、だからこんな構図なのか!」と思いながら鑑賞できますよ!
では、さっそく〈宗教画〉の具体例を見てみましょう。
この絵はカラヴァッジョ(1573-1610)による《イサクの犠牲》という主題の絵画です。この主題はユダヤ教とイスラム教の教典である旧約聖書から引用されたものですが、どのような場面に見えるでしょうか?
右から順に羽の生えた天使、ナイフを持つ老年の男性、殺されてしまいそうな青年、羊が描かれていますよね。それぞれ、とても精巧に描かれており、大変緊迫感のあるシーンであります。
人々が動いている一瞬を見事に切りとった美しい絵画ですが、これを見て「すごいなぁ」だけではない感想を抱けるよう、解説いたします。
この絵画の中の老年の人の名はアブラハム、青年の名はイサクといいます。そして、イサクはアブラハムの息子です。
あるとき、神はアブラハムの信仰心を試すために、息子のイサクを殺して神である自分に捧げよと命じます。アブラハムは神に従い、ナイフで息子を殺そうとしますが、その瞬間に天使がその手を止めました。そこで神は彼の信仰心を認め、息子は殺されずに救われた。という話です。
どうでしょうか。この話を知ってからこの絵を鑑賞すると、実の父親に殺されかけている青年の絶望の表情、信仰のために息子を殺そうとする老年の苦悩の表情がより鮮烈に見えてきませんか。また、この話自体に天使は出てこないのですが、神の声を可視化する存在として、天使が登場するのです。
では、この羊はなぜ登場するのでしょうか?気になる方は調べてみてください!
いかがでしたか?今回は、西洋の伝統的な絵画の見方について解説をしてみました。
では、最後に来年に東京都美術館で企画展が行われるティツィアーノの絵画を紹介いたしますね。
こちら、ティツィアーノ(1488-1567)による《女の肖像》です。
この絵が表しているものは…一体何なのでしょうか?
興味を持ってくださった方は、ぜひご自分で調べてみてくださいね!
最後に、美術館の展覧会スケジュールを簡単に調べられるサイトのURLを紹介します。
こちらのartscapeというサイトでは地域や日程を絞り込むだけで、簡単に展覧会の会期を調べることができます。
年明けでも春休みでも、思い立った日に美術館を楽しんできてください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。