現役北京大生が感じた、中国の「デジタル革命」と「ミレニアル(若者)世代」の実態とは?
「支払いはWechatで!」中国の首都・北京に2012年に移り住み、中国が物凄いスピードで進化していく様子を体感した樋口亜美さん。北京大学に通う樋口さんの視点から、中国のミレニアル世代の実態、そして変化する中国の今とこれからについて語ってもらいます。連載第1回目では、樋口さんが中国に移り住んだ理由や、中国で起きている「テクノロジー革命」を取り上げます。
私が中国の大学に進学した理由
co-media読者の皆さん、ニーハオ! 北京大学に通う、樋口亜美と申します。大学では、国際政治経済を学んでいます。はじめに、私が中国の大学に進学した理由について、皆さんに紹介します。
新しい人に会うと必ず、「なぜ中国へ?」「なぜ北京大学へ?」と訊かれます。私は日本人の父と中国人の母を持つハーフで、小さい頃は日本とアメリカで育ち、日本の小学校、中学校へ進みました。日本の中学校を卒業後、カナダの高校へ進学した私は、将来について考えるようになりました。その頃は、中国の大学への進学を選択肢に入れていませんでした。
高校2年生の夏、父親に連れられ、中国の大学を見学しに北京へ行ったことがあります。中国は発展の真っ只中、道の右側には現代的な建物が並ぶ一方で、道の左側には物乞いや、今にも崩れ落ちそうなレンガを積み上げたような建物がありました。
その様子を見た私は、「革命」を感じたんです。国家の「発展」というものを初めて目撃し、その変化を肌で感じました。衝撃を受ける一方で、「私は半分中国人なのに、この国のことを全く知らない」と悔しい気持ちになりました。「語学だけではなく、私のアイデンティティーを探しに行こう」と考え、中国の大学に進学することを決心しました。
中国にきて5年目。私は中国へ来て良かったと思ってます。最初は「自分探し」という目的でしたが、それ以上に、中国の革命を肌で感じられ、ダイナミックな環境に身を置けることに非常にワクワクしています。
中国のデジタル革命とミレニアル世代
「ミレニアル世代」という言葉は、本来はアメリカでの1980~2000年生まれの人々を指します。ミレニアル世代の特徴は、物心ついた頃からITデバイスやインターネットを使用していること。その意味では、アメリカより中国のミレニアル世代の方が、価値観や生活習慣が一気に変わり、デジタル浸透度も高いように思えます。理由は様々あると思いますが、私の意見では、中国のほうが「テクノロジーの面で白紙に近い状態からスタートしたから」だと思います。
アメリカや日本では、テクノロジーが徐々に進化していくことで、人々の生活は少しずつ便利になっていきました。例えば、先進国ではクレジットカードが普及していましたが、中国ではクレジットカードは先進国ほど普及していませんでした。なので、中国では「電子マネー」が爆発的に普及し、その市場を独占できたのです。この「白紙スタート」と「独占」が中国において人々の価値観が一気に変わった理由だと考えています。そんな中国のミレニアル世代がどういう風に考え、行動し、今後の中国を担っていくのか、この連載で皆さんにお伝えしていきます。
中国のデジタル革命は何がユニークなのか
中国国内で、GoogleやFacebookなどの世界的に普及しているサービスを使用できないことが、中国特有のデジタル環境を形成しています。私が中国へ移った2012年は、まだWechat(LINEのようなメッセンジャーアプリ)が出てから間も無く、そこまで普及していませんでした。2011年にリリースされたWechatは、2~3年で急成長し、現在は月間の利用ユーザー数が7.6億人にも達します。中国の人口が約13億5千万人なことを考えると、その普及率の高さがわかると思います。
この数年で、レストランでの会計、映画のチケット購入、タクシーの支払い、そしてガスや水道代などの公共料金の支払いも、スマホに入っているWechatのアプリでできるようになりました。Wechatは、ただのメッセンジャーアプリではなく、生活インフラの一部になったのです。なぜ中国のデジタル分野はこのように急速に成長できたのでしょう? この”革命”を理解するには、Wechatのように急成長した企業を分析するだけではなく、広い意味で中国社会や革命の中心にいるミレニアル世代について理解を深める必要があります。
連載第2回目では、中国の若者の恋愛観と、その背景にある教育について取り上げます。10代の教育環境は、中国の若者の恋愛観にどう影響を与えているのでしょうか。中国人学生にインタビューする中で、面白い事実が見えてきました。乞うご期待!
それでは皆さん、ザイジェン!
1995年1月東京生まれ。北京大学在学中。日中ハーフとして生まれ、日本、アメリカ、カナダ、中国で育ちました。人生の課題は、日本と中国、アジアの見えない国境をなくすこと。好きな中華料理は、トマトと卵の炒め物!中国のミレニアム世代、そして中国のこれからについて発信していきます!