みなさま、こんにちは、糸賀です。
今回は、昨年12月に「特別養氏縁組あっせん法」が成立したことを受けて、この法律について記事を書く前に、多くの人にとって身近ではない「特別養子縁組」の基礎知識について、さらっと書いていきます!
養子縁組には、今回扱う「特別養子縁組」の他に「普通養子縁組」があります。
「普通養子縁組」は、離婚したパートナーとの間の子を、再婚して新しく形成する家族の子どもにすることです。テレビドラマなどで「連れ子養子」と呼ばれることも多いです。普通養子縁組で家族となった家庭をSTEPファミリーと言います。
養子が実親との親子関係を存続したまま、養親との親子関係をつくるという二重の親子関係となる縁組になります。
一方で「特別養子縁組」とは、様々な事情を理由に、生まれた家庭で育ててもらえない子供達が愛情を捧げてくれる別の大人と新たな家族を築くことのできる、児童福祉のための制度のことです。
現在、日本には児童養護施設や乳児院で生活し、何かしらの公的支援を必要としている子どもたちが約46000~8000人いるといわれています。
その中で、約8.5割の子ども達が乳児院や児童養護施設などに預けられる「施設養護」を受けており、里親や養子縁組を指す「家庭養護」を受けているのは残りの1.5割に限られています。圧倒的に施設養護での処置が多いというのが日本の児童福祉の現状です。
しかし、日本が採択している「子どもの権利条約」の第20条で、社会的養護下の子ども達にとって最善の利益とされているのは「永続的に愛情を注いでくれる、代替する家庭環境の提供」、つまり家庭養護です。よって、国が子どものために最初に確保しなければいけないのは家庭に代わる養護であって、施設入所は必要な場合の代替手段です。
現在の日本の児童福祉の現状は理想とは真逆の状態であるということです。
それでは、特別養子縁組は、どのようにして行われるのでしょうか?
(1)子供の紹介と面会
まずある夫婦が養子縁組を希望すると児童相談所から子どもの紹介が行われます。ほとんどの場合は、民間機関が児童相談所と子どもを育てたいと考えている夫婦の間を仲介し、職員の立会いの下で面会をします。
(2)交流期間
1〜3ヶ月ほどの交流期間の間に面会や1日お預かりを繰り返し、児童相談所や民間機関が子どもと夫婦の相性を総合的に判断します。これをマッチングと言います。
(3)子どもの委託期間
マッチングが良好な場合は、交流期間よりも長期のお泊まりをする「委託」という期間になります。この期間が半年を過ぎると、家庭裁判所への申し立てができるようになります。
(4)家庭裁判所への申し立て
養子縁組に法的な承認を得るため、家庭裁判所に審査を依頼します。
(5)家庭裁判所による調査
(6)審判確定
このように、時間をかけて子どもと、家族としての時間を重ねていくことによって、国からの許可を得ることができます。
また、特別養子縁組を行う際の夫婦の条件も多くの規定があり、成立した夫婦は離婚をすることができません。子どもにとっても、夫婦にとっても、今後の人生を決める選択となります。
ただ、特別養子縁組制度によって家族になることはゴールではなく、むしろ、そこからどのように信頼関係を築いていくのか、お互いに愛情を注いでいくのかが重要な課題です。この課題を解決するためには、解決しようとする強い気持ちと多大な時間が必要です。
特別養子縁組に限らず、子育てをする家族に周囲の人々が温かく見守る環境がもっと広がればいいな、と思います。
慶應義塾大学法学部に在学中です。名前は「きゆう」と読みます、純ジャパです。幼少期は日頃から「私にとっての家族とはなんだろう」と考えているような子でした。子どもの貧困と家族の多様性に興味があります。