仕事は社会の問題を解決するチャレンジ、手段は「福祉」。若者と福祉を繋ぐ、FACE to FUKUSHIの挑戦。

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「社会に貢献しているという実感のある仕事をしたい人達に、福祉がきっかけ作りになればいいと思う」 

福祉にかかわる・はたらく・そだつ・つながる仕掛け作りに取り組むFACE to FUKUSHIの思いとは。

仕事は社会の問題を解決するチャレンジ、手段は「福祉」。若者と福祉を繋ぐ、FACE to FUKUSHIの挑戦。

<プロフィール>
一般社団法人FACE to FUKUSHI 
日本の“FUKUSHI”を、世界最高の“welfare”に。誰もが当たり前に生きることができる社会をつくる。」をビジョンに掲げ、福祉にかかわる・はたらく・そだつ・つながる仕掛け作りに取り組んでいる。かかわる仕掛けとしてボランティアマッチングサイト「MIRA-SAPO」の運営サポートや職場見学ツアーの企画・運営、はたらく仕掛けとして福祉就活フェアの開催や求人情報サイトの「フクシゴト」による情報発信などを実施。また福祉を目指す人以外に向けて、福祉の人事担当者に向けた「人材確保戦略フォーラム」や福祉のリーダーを育成する「FUKUSHI CAMP」など福祉の質向上のための仕掛け作りを行っている。

岩本恭典さん
大阪市立大学食品栄養学科を2008年に卒業。大学在学中にNPO法人み・らいず*にてボランティア、インターンを経験し福祉と出会う。卒業後は一般企業に就職したが、2010年にみ・らいずに就職し2012年全国若手福祉従事者ネットワーク(現FACE to FUKUSHI)の法人化に携わる。現在はFACE to FUKUSHI事務局長として、日本の福祉力向上に取り組んでいる。

*FACE to FUKUSHIの共同代表である河内崇典氏が代表を務めるNPO法人。その人らしく望むかたちで地域で生きること、「LIVELOCAL」をスローガンに、障がいや発達障害のある子どもやひきこもりへの支援を行っている。

仕事は社会の問題を解決するチャレンジ、手段は「福祉」。若者と福祉を繋ぐ、FACE to FUKUSHIの挑戦。

上:み・らいず代表の河内さん、下:岩本さん

福祉で社会課題を解決する。


――福祉にかかわるきっかけを教えてください。

岩本:大学の新歓時期に友達に誘われてたまたま入ったのが手話サークルだったんです。それまでは、福祉には興味関心はなかったです。 ボランティアを始めたのも、サークルの先輩に「夏休みにみ・らいずでボランティアしてみない?」と誘われたからでした。み・らいずで4年間活動を続けたモチベーションは、自分を始めとする学生が中心となって、不登校の子どもたち向けのお出かけのイベントやキャンプ、運動会などの企画をやらせてもらえたことが楽しくて刺激的だったからです。

――介護や障害者のイメージが強い「福祉」の分野でボランティアをすることに躊躇はなかったですか?

岩本:躊躇とか戸惑いは無かったですね。み・らいずに出会うまではそれこそ小中学校の時に介護体験に行ったくらいで、福祉が全然身近になかったから、「福祉」ってどういうものだろうって考えることも、こういうものだろうってイメージすることも無かったですし。
最初に出会った福祉がみ・らいずだったので、福祉に対して障害とか介護っていうイメージよりも、困っている人を支えるというか、「地域で暮らす全ての人を幸せにすること」かな、という認識です。多分そういう認識があったから、不登校や障害がある方の支援をしても、地域の子ども向けのイベントも違いはなくて、自分の中の福祉のイメージとの違和感は無かったです。確かに障害のある人は自分とはちょっと違う部分はあるから気持ちを理解するのが難しいなって思うことはありますが、現場でその人と出会ってしまったら一人の人と人でしかないので。

――一度一般企業で働いた後に、なぜ福祉に戻ろうと思ったのですか?

岩本:大学では栄養学を専攻していて、就職って考えたときに、自分の興味が強いのは「食」でした。福祉で仕事をしようっていうイメージが無かったですね。み・らいずに新卒の枠も無いときだったので、選択肢にはいれてなかったです。 飲食店を経営する一般企業に就職したのですが、そこでずっと働くことが、自分らしい人生なのかなって考えた時に、違うと思ったんです。学生時代にイベントを企画してやっていたみたいに、小さいことでもいいからどんどんチャレンジをしていく刺激的な毎日を送れる方が自分の人生にとって楽しいんじゃないかと。その時に、み・らいずから声が掛かったので、「よし、行こう」と思いました。
 大阪にどうしても戻りたかったというここでは、伝えにくい他の理由もあるんですが(笑)

――福祉を仕事にしてご自身の中で変わったことはありますか?

岩本:あんまり変化はなかったです。自分のミッションの大きなところに「人の幸せ作り」というのがあって、飲食店に入ったのも食を通して色んな人の幸せ作りをしたいというのを漠然と思っていましたし。それが食なのか福祉なのかという変化だったので。今改めて福祉って何だろうって考えると、人を支える仕事というか、困っている人であったり、ちょっと課題を抱えた人を支えていって、笑顔に幸せにしていくのが福祉なんだろうなって。究極突き詰めると、地域で暮らすすべての人を幸せにしていくような。なので仕事を福祉って見ているというよりも、自分の中ではNPOとか社会企業的な目線で見ていて、社会の課題を解決するためのチャレンジをしているような感じです。手段は福祉だけど、やっていることは「社会を良くすること」だ、みたいな認識です。

仕事は社会の問題を解決するチャレンジ、手段は「福祉」。若者と福祉を繋ぐ、FACE to FUKUSHIの挑戦。

これからの福祉と若者。福祉は社会をよくする仕事の真髄。


――なぜ若者に福祉に関心を持ってもらいたいと思っているのですか?

岩本:5年、10年後になると、福祉という業界がますます発展していくというか、社会にとってもっと必要となってくるので、この業界にチャレンジしてほしいというところが一つ。
もう一つは、社会を変えていく仕事、良くしていく仕事にやりがいを持ってくれる人が増えてほしいし、福祉はその真髄だと思うからですね。実際に、時代の変化の中で、大きい企業で安定的な仕事を求めるというよりも、もっと自分が社会に貢献しているという実感のある仕事をしたい人が増えているように感じています。福祉がそういう人達に、何かできるきっかけ作りになればいいと思うし、今後必要になってくるからこそどんどん若い人たちを巻き込んでいかないといけない。若い人たちがやっていかないと、これからの福祉を担う人材がいないと、5年後10年後にこの業界が破たんしていく可能性があるので。
それに実は福祉は幅広いので、働くところは障がい者や高齢者の施設だけではないです。でも、一般的には福祉というと介護で、高齢者の施設でというイメージがどうしても強くなってしまっていて、就職を考えるときに、「福祉は介護でしょ、高齢者施設で働きたくないな」のようなロジックが成り立っている。このイメージをまずは変えていかないといけないなと思っています。だんだん広がってきている福祉の世界をもっと学生とかに知ってもらって、1個の働くっていう選択肢の中に入れてもらうことが大事かなと思っています。でもまずは、そういう働き方があるんだよというのをいっぱい知ってもらわないといけないと思っています。

仕事は社会の問題を解決するチャレンジ、手段は「福祉」。若者と福祉を繋ぐ、FACE to FUKUSHIの挑戦。

2016年7月に開催された福祉就職フェアの様子。33法人が出展し約150人の学生が訪れた。

――団体のスローガン「日本の“FUKUSHI”を、世界最高の“welfare”に。誰もが当たり前に生きることができる社会をつくる。」に込められた思いを教えてください。

岩本:もっと日本の福祉の質を高めていくことで、世界トップクラスになるくらいの福祉を作り上げていきたいという意味を込めています。世界から見ても「日本の福祉ってすごいよね」と言われるのを目指しています。そのために大事なのは人という資源なので、そこをどう確保して育てていくかというところが、自分たちが取り組んでいく課題です。

――目指す「人材」のイメージ像はありますか? 

岩本:今後の福祉を牽引していけるような、リーダー的な人材。これからの社会は、色んな社会課題が色んなところで出てきたりとか、社会課題と社会課題が絡み合って多様化・複雑化したりしていく。その中で新しい課題が出てきたときに取り組んで解決できるような人材をどれだけ輩出できるかが大切になってくると思っています。
人材育成は2軸でやっていこうと仕込んでいます。ひとつは高齢者や障害といった縦割りの専門性を横軸で繋いで考えられる、広域的な知識とか経験とかを持ったジェネラリストですね。ジェネラリストは今も必要なんですけど、5年後10年後にはより社会に必要とされる人材になっていくので、それをどうやって育てていくのかを考えていていますね。もう一つの軸は組織を運営する経営者のような人材をどう育てていくか。支援者だけでは組織は回らないので、ジェネラリストの支援者をまとめてマネージメントしていく人ですね。

仕事は社会の問題を解決するチャレンジ、手段は「福祉」。若者と福祉を繋ぐ、FACE to FUKUSHIの挑戦。

2016年7月に開催された福祉人材戦略フォーラムの様子。行政、社会福祉協議会の人事担当者、福祉法人の経営者・人事担当者など約230名が集まり、福祉の将来について6時間のセッションが行われた。

日本の福祉を変える。その鍵は新卒採用。


――日本の福祉力を上げるために大切だと思っていることは何ですか?

岩本:新卒採用です。福祉力を高めるためにも、今はいかに多くの人を福祉という業界と多くの人をマッチングしていく(関心を持ってもらう)のか、採用していくのかが課題です。自分たちとしては、福祉という人を支える仕事をしている団体がもっと発展していくことを目指していているからです。組織が強くなっていくことで、より安定したサービスとか質の高いサービスができるようになっていくと考えているんです。福祉の現場には中途採用とかパートタイムの方も多いのですが、組織を安定させることを考え5年後、10年後を見据えたときに、若い時から理念を共有して長期的に働けるような、組織を守ってくれる次世代の経営を担っていくれる人材を入れていかないといけないなと思っています。そのためには、新卒採用を積極的にすることが一番効果的です。なので、自分たちは新卒にこだわっているんです。

――FACE to FUKUSHIのイベントでは障害のある方や高齢者の分野が多いようですが、新卒採用はこれらの分野に限っているのですか? 

岩本:まだまだ、自分たちもネットワークが狭く、自分たちの周りのネットワークが障害や高齢に強いだけで。まったく自分たちがそこにこだわっているわけではないんですよね。不登校やひきこもり、貧困問題も福祉の一部ですし。
ただ自分たちが打ち出している「新卒採用」にマッチしている分野が限られていることは難しい問題だと感じています。福祉業界の多くは基本的に補助金で成り立っています。高齢者の施設や障がい者の支援は制度が比較的しっかりしていて国の補助金があるけれども、不登校とかひきこもりの支援になってくるとまだ制度が整っていない。だから、「新卒採用」という自分たちが打ち出している形にマッチするのは制度が整っていて組織が大きい高齢者や障がい者の分野になってしまうんですよね。
せっかく若い人が福祉いいなーと思っても、不登校の子どもの支援など、地域の困っている人を助けるといった、障害や介護以外の分野で働ける人は本当に少ないのが現状です。このままではせっかく盛り上げても、結局働けないじゃないかってなってしまうので、このミスマッチ感をどうなくしていくか、が課題です。これから他の分野が大きくなって、新卒採用もやっていきますとなれば、巻き込んでいきたいです。

仕事は社会の問題を解決するチャレンジ、手段は「福祉」。若者と福祉を繋ぐ、FACE to FUKUSHIの挑戦。

2016年2月に開催されたFUKUSHI MAKERS SUMMITの様子。社会活動家の湯浅誠氏をゲストスピーカーに迎え、福祉に関心のある学生30人が集まりディスカッションを行った。

――最後に読者にメッセージをお願いします。 

岩本:「百聞は一見にしかず」なのでメディアのイメージなどに惑わされず、自分で現場を見てもらいたいです。1つの経験として今の福祉を体験してもらったら、イメージが変わるのではないかなと思います。今は地域×福祉みたいな感じで、まちづくりを絡めた福祉の団体もあるので、ボランティアとかインターンを経験したら面白いと思う。自分たちも、FUKUSHI MAKERS SUMMITという福祉に興味のある学生が集まるイベントや、ボッチャというパラリンピック競技の体験会といった色々なイベントやって、福祉にかかわるきっかけ作りをしています。直近では、11月10日に介護男子スタディーズと合同で介護の日のイベントを企画しているんです。介護男子スタディーズというのは、介護の仕事の理解を促すためのプロジェクトなんですけど、このイベントを通じて「介護は新しい科学であり、とてもクリエイティブな仕事」というメッセージが伝わるよう準備してます!少しでも興味があったら参加してみてください!

この記事を書いた学生ライター

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