黄色に赤字の看板、いつ行っても入れないほどの大繁盛。
そんな超人気焼き鳥チェーン店・鳥貴族を一代で築いた大倉忠司氏に、ビジネスに対する向き合い方、そのために「若者に必要なこと」 を伺いました!
───鳥貴族をオープンされた経緯をお話いただけますか。
大倉さん: 高2、高3と夏だけビアガーデンでアルバイトをした時に、お酒を飲む大人の世界を純粋におもしろいなと思ったのが始まりです。こういう仕事を将来続けたら楽しいなと思って、飲食の道に行くことを決めました。調理師専門学校卒業後は、洋食の方がかっこいいと思ったのでイタリアンレストランに就職しました。
その頃、通っていた近所の焼き鳥チェーンで店長をしていた方が独立して、人が足りない時にそのお店を手伝ってたんです。店長に「俺は大きなチェーン店を作りたい。片腕的なナンバー2の位置で会社に来てくれよ」と言われて、チェーン店という大きな夢に動かされて、その焼き鳥店に入ったわけです。
それから3年くらい展開する中で経営方針が合わなくなって、25才のときに鳥貴族を創業しました。大きなチェーン店とか大きな夢に心が動いたわけですから、最初から大チェーンを目指していました。当時決して焼き鳥屋が好きで行ったわけじゃなかったですが、自分でやろうとしたら目の前に焼き鳥しかなかったんですね。それで焼き鳥で大チェーンを作ろうと、鳥貴族を起業したわけです。
───アルバイトがきっかけだったんですね。
大倉さん:高校生だったのでいい意味で声をかけてもらえたし、そんなやりとりが楽しかったんでしょうね。ただ、今振り返ったら、おそらく飲食業界だから好きになったわけじゃないと思います。自分は目の前のいいところをどんどん見て行くタイプなんですよ。例えば、ユニクロみたいなお店でバイトしてたら、今頃そういう世界でやってると思います。
この「良いところを見つける」というプラス思考は、昨年発表したトリキwayにも入ってるんです。トリキwayというのは、これを持っていらた絶対成功するという資質をまとめたもので、正しい人間、利他の精神、プラス発想、自己責任の4つです。
───この4つに至られたのは?
大倉さん:自分を振り返ったときに、人よりこういう考えを強く持ってたから良かったんだなということに至ったんです。 特に、プラス発想と自己責任と思える子は強いですね。会社が悪い、景気が悪いってすぐ他責にする人が多いじゃないですか。でも本当は関係ないんですよ。うちにはいい社員が揃わないと言う経営者もいますが、良い社員が集まらない、育たないのは経営者の責任です。 プラス発想もそうです。人の良いところ見れたら仲間は集まります。いくら仕事ができても部下の欠点ばかり目に付く人にはやっぱり着いて来ないですよね。仕事は普通でも、部下の良いところを見てあげる人には、「あの店長のためにがんばろう」ってみんな言うんです。人間ってそんなもんですよ。
あと、絶対人の悪口は言わない。言うんだったら直接言います。味方を作るのではなく、敵を作らなかったらいいんです。
───独立された当時はどんなお気持ちでしたか。
大倉さん: 感慨みたいなものは全然なかったです。むしろ、2軒目をどう出していこうかについて考えていました。今もまだまだ全然です。登り始めたところなんですよ。
仲間と鳥貴族を経営していることが楽しいので毎日が小さな幸せですが、上を目指すことは果てしないと思うんです。やはり世界にも進出して行きたいですし。大ほら吹きと言われるかもしれないですが、この鳥貴族を世界中に出店することで、世界平和にも貢献できればと思います。
もう1つの幸せは社員の成長ですね。会社には社員に報酬を渡すことと成長させるという責任があると思うんです。一番社員を成長させるのは、やはり大きな場を任せるということなんですね。だから、もっと大きな責任を与えてあげられるように企業は成長しなきゃいけない。社員の成長は見てても非常に嬉しいです。
───不安はありませんでしたか。
大倉さん: 創業時、絶対に成功するんだと思ったのは、それまでの仕事上の延長の自信でしょうね。手前味噌なんですけど、どこへ行っても認められたんです。それはおそらく自分がその仕事を好きになるからだと思うんですよね。好きだからもっといい仕事をしたいとか、楽しくできる。そういった成功体験、認められ体験が自信に繋がっていたと思うんです。
私は創業前に結婚して息子もいて、全てを背負って始めました。だから「結婚したら冒険はできない」というのは言い訳だと思います。やれる人間には結婚しようが独身であろうが関係ない。やれる人間はリスクはもちろん考えるんだけど、成功イメージを描いていけるんです。
───東京に広げる際に気をつけたことはありますか?
大倉さん: 東京1号店が11年前なんですけど、その時、毎週東京に行って、出張という感覚を無くそうと決めました。自分がアウェイではだめだと思ったんです。それは今も続けています。どの社長さんも最初はみんなよく東京に行きますが、時間が経つにつれて行かなくなります。そうすると東京にいる社員からしたら疎外感があるんですよね。自分はそういう思いを絶対させたらいけないと思いました。これは社長の本気度の問題です。
───焼き鳥を始められたときは、それが目の前にあったからとおっしゃっておられましたが、焼き鳥以外に広げないのはなぜですか。
大倉さん: お金ではなく、夢を追いかけているからです。焼き鳥屋が好きで、価格破壊ができる焼き鳥で全国の方に喜んでもらいたい。もし途中でラーメン屋にしようとなったら、理由は「儲かりそうだから」という邪な考えになるわけですよ。トップがそういう考えでやると、社員、従業員、お客様、誰の心も動かないです。 でも、焼き鳥屋に関しては本当に志を持っているので、従業員も、その先のお客さんも心動いてくれますよね。利益を求めすぎると、お客様のニーズから離れて、うまくいかなかったらすぐに辞めようってなるんです。でも焼き鳥に関しては本当に心入れてやってるので、諦めない。
───株主様との関係はどのように考えておられますか。
大倉さん: 株主を含めたステークホルダーを幸せにすることが会社経営の目的だと思っていて、そこは王道の経営をしたら達成できると思ってるんです。お客様も社員も株主さんも、もちろん取引業者さんも、すべてが幸せにできる経営があると思ってる。だから企業価値を高めることにちゃんと視点を置くんです。
─── 今の若い世代の「夢」に対する姿勢を大倉さんはどのように見ていらっしゃいますか。
大倉さん:環境もあるとは思うんですが、満足してるんでしょう。投票率に関しても、本当に国に怒ってたら「国を変えたい」と思って、若者ももっと投票に行きますよね。よく投票率が低いって言いますけど、逆にそれだけいい国なのかもしれないと思ってるんです。
───ハングリーさや、満ちたりなさを感じるためにはどうするべきでしょうか。
大倉さん: 一番いいのは、そういう大きな志を持つ人間を絶えず近くに持っていることだと思います。私の場合は本でしたけど、本の中で出会った経営者にはすごく感銘を受けました。せっかく生を受けたかぎり、この世の中で大きな社会貢献、世の中をいい方向に少しでもできるような事業をしたくなりました。
───学生に対して、就職する前にこれだけはこういうことをしといたほうがいいというのはありますか。
大倉さん: すべての愛を知ったほうがいいです。いなかったらしょうがないんですけど、両親、おじいちゃん、おばあちゃん、兄弟、それから動物もね。
特に親との関係は大事です。親子関係って人間関係の基本なんです。もし親子関係が良くなければ親が悪いんですが、やっぱり親を愛し、親を尊敬してなかったら他人となんか上手くやれないです。 私は採用選考でも最後に、あなたにとってご両親はどんな存在ですかと聞きます。「感謝で…」とか、「親のありがたみ…」とか言う子は実際間違いないです。良い仕事してくれる子は、ご両親にお会いすると、この親だからあの子なのかと思いますね。
あとは、やはり社会への貢献性という志を持つということですよね。例えば起業しても、目指すものがフェラーリに乗りたいとか、大きい家住みたいとかだったら弱いですよ。無いよりはいいんですけど、どこかでそれがちゃんとした志に変わって社会貢献できないと、社会から必要とされない事業になっていくんです。そういう人間はお金に使われているんですよね。でも、お金は使うものなんです。自分が作った事業の社会への貢献に合わせて利益がついてくるという感覚でなかったらだめですね。
───志をしっかりと持って愛を感じることですね。ありがとうございました。