キャリア教育とは、簡単に言うと子供や学生に職業の知識を身につけさせるもので、彼らが主体的に自分の進路を開拓できるよう教育していくことです。なぜ働くのか、なぜ自分はこの仕事をするのか、そういったことを主体的に考えられる人間を増やそうというビジョンのもと、キャリア教育が政策として推進されているのですが、まだまだ施策段階と言わざるをえない現実があります。
我が国日本にはキャリア教育の文化がまったくないと言っても過言ではありません。小中高の義務教育では一環して勉学の基礎を教わり、大学では将来の自分を見据えて専門的な分野を学ぶこととなります。
現在就職予備校と揶揄される多くの大学機関は、実際には肩書きだけを得るためのツールに過ぎません。大学側は学生が社会に出ていくということについてずいぶん無頓着なのです。
そのため大学生は自分自身で情報をキャッチアップして足を動かさなければ、サークル漬けの日々を送り、周りに流されるがままに就職活動をしてそのまま社会に飛び出していくことになってしまいます。
大手企業に新卒で入っても2割以上の人が3年以内に離職しているのは、自分自身のキャリア形成について考える機会が就職活動の時期ぐらいしかなかったからでしょう。
公立中学校では98.6%の学校で職場体験が実施されています。
(出典 : 2015年 国立教育政策研究所http://www.nier.go.jp/)
一方国立中学校では62.3%,私立中学校では25.8%と、まだまだ低い実施率となっています。
高等学校では職場体験ではなくインターンシップと称されますが、公立高校では80.8%の実施率となっており、近年では大学でもインターンシップを単位認定しているところも増えてきています。
このように徐々に実社会と学生が接点を持つ機会を増やそうとする動きは出ていますが、中高の職場体験はその多くが非常に短期もので、正直その程度の機会では子供はキャリアについて考えるには至りません。せいぜい「へー、流通ってこういう風な仕組みがあったんだ」等ちょっと知らなかったことを知る機会ができただけです。
モノと情報が溢れる現代社会では、平和ボケしすぎて子供達のモラトリアム期間が間延びする傾向にあります。これを解決するためには目的意識なく漠然と大学へ進学するというあり方を変えなければなりません。
そのための施策として、1日や数日単位の職場体験、ワークショップを打つというのはあまりにも物足りない気がしてなりません。もっと長期的に子供達が社会と関わる機会が必要でしょう。
多くの学生は年次が進むにつれて、どうやったら良い企業に入れるのだろうかということを考え始めます。しかし、自らが積極的に動かない限りは、大学が提供しているキャリア教育には気づきもしないまま就職活動の時期を迎えてしまいます。
そこで初めて自身のキャリアについて考え始めても、それまで社会と関わってこなかった(少なくともあまりにもその時間が少なかった)学生にとってそれは未知の世界。ユートピアにいた学生がいきなりディストピアの世界に飛び込もうと思っても、どこに向かって踏み出せば良いのかわからないのです。
現実問題として学生は楽をしようとすればいくらでも楽をすることができます。そういう社会になった今、彼らが自主的に何かを求める原動力を掻立てる教育がこの国には必要なのではないでしょうか。
大学は学問をする機関という認識はもう時代遅れです。
どっぷりと学問に浸かっているだけでは、たったの4年間で浦島太郎のような状態になってしまいます。これからは学生がより実社会と関わり合っていける機会を大学側が積極的に、半ば強制的に提供しなければ、日本はモラトリアム帝国となりやがて生産が追いつかなくなってしまうのではないでしょうか。
そして大学だけでなく、もっと早い段階から若者が国のことを考えられる仕組みづくりを可及的速やかにしなければ、このままでは日本はただただ潰れる未来を待つのみです。
慶應義塾大学商学部。圧倒的モラトリアムを満喫するために4年間日吉キャンパスへ通う(通常2年間,3年生から三田キャンパス)。 豊富な大学生活を活かして社会貢献できないか模索中。