風車を使ったソーシャルビジネスとは?先駆的な北海道のNPOファンドをご紹介。

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今回は、私たちの生活に必要不可欠なエネルギーのことを記事にしたいと思います。

再生可能エネルギー

最近よく再生可能エネルギーについて耳にしますよね。先日(2月21日)の新聞で、世界の風力発電の発電能力が原子力の発電能力を上回ったという記事を目にしました。日本においても、化石燃料の限界や地球温暖化の深刻化、東日本大震災における原子力発電の危険性などにより、ますます太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーに期待が寄せられていますが、日本は自然エネルギーの発電能力、新設共に遅れているそうです。

大口の企業などには電力の自由化が始まっていますが、来年の4月からはいよいよ一般家庭においても電力の自由化が始まり、消費者である私たちが電気を買う場所を選べるようになります。安定供給が望めるエネルギー、自然に優しいエネルギー、安いエネルギー、様々な場所から様々な目的で電気を買うことができます。

私もそうですが、多くの方々は家で電気をつけるとき、この電気がどこから来ているのか、どのような燃料から作られているのか、普段はあまり意識していないかと思います。私自身、東日本大震災により福島第一原子力発電所から大量の放射能が漏れ、原子力による電力の供給が止まった時、初めて福島から東京まで電気が来ていたことや原子力発電のリスクを知りました。

震災以降、ますます再生可能エネルギーの期待が高まり、政府もそれを後押しするように2012年から固定価格買い取り制度(FIT)を作りました。FITは再生可能なエネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で買い取ることを国が約束する制度です。電力会社が買い取る費用を電気利用者から賦課金として集め、今はまだコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えています。

クリーンなエネルギーを作れば、今までよりも高い値段で安定的に買い取ってもらえるわけですから新規参入の企業が増えるわけです。一方電力会社としては安定性が低い上に高いコストのかかる再生可能エネルギーの割合が増えすぎても収益が減るわけですから、困ってしまします。それが原因で電力会社が再生可能エネルギーの買い取りを拒否するケースも出てきてしまいましたし、政府も太陽光発電の固定買取価格を引き下げてしまうことも出てきました。

NPO法人北海道グリーンファンド(HGF)

次に、日本で自然エネルギーの普及に努める社会的企業であるNPO法人北海道グリーンファンド(以下HGF)を紹介したいと思います。HGFは、生活クラブ生活協同組合北海道の原子力発電所の反対運動から始まったNPOです。反対運動だけでなく、いっそのこと自分たちでクリーンなエネルギーを作ってしまおうと考え設立されたNPOで、現在では日本の先駆的な社会的企業の一つとなっています。

風車を使ったソーシャルビジネスとは?

(HGF代表取締役・鈴木さん)

風車を建設するには数億円もの資金が必要ですが、HGFは主に2つのユニークな資金調達の手法をとることで一億四千万円ほどの資金調達に成功しました。ユニークな資金調達の1つは、グリーン料金制度です。これは、会員の電気料金の5%を自然エネルギーによる市民共同発電所つくりのための基金(グリーンファンド基金)として積み立て活用するための制度です。HGF会員からは電気料金と電気料金の5%分の寄付を徴収。会員の電気料金は電力会社へ支払い、5%はグリーンファンド基金へ積み立てます。このグリーンファンド制度が、多くの市民が自然エネルギー共同発電所作りに参加する入り口となり、風車の資金を調達する仕組みができました。

もう一つは匿名組合出資です。今まで大口でしか使われてこなかった匿名組合出資を一口50万円という小口から募ることで、より多くの市民、投資家が風車建設に協力してくれるようになりました。また、市民風車を立ててからもHGFは市民とのかかわりを大切にしており、風車が作った電力を使いコンサートを開催したり、風車に自分や孫の名前を刻んだりして愛着のある風車を作っています。

今後の期待と課題

現在、日本は年に24兆円もの資源を中東から輸入していますが1割でも日本国内で賄えたら日本の雇用や地域活性化につながる可能性があり、現在深刻な問題となっている高齢化に伴った限界集落においても風車を利用した地域復興の利用が期待されています。NPOというと収益が出ないと考える人も多いかもしれませんが、HGFの代表である鈴木さんは収益を軽視してはいけないとおっしゃっていました。投資目的に風車に出資した人も投資後に環境に対する意識が変わったり、環境目的に投資した人が投資に興味を持ったりするからだそうです。このようなクロスオーバーが行われることで多くの人が環境に対する意識を変えるきっかけとなりえるのでしょう。

風車を使ったソーシャルビジネスとは?

現在ソーシャルビジネスの流れが日本でも徐々にでてきており、HGFはその一つといえます。ソーシャルビジネスの利益追求に走らないが収益は軽視しない、多様なステークホルダー(マルチステイクホルダ-)の存在、社会問題解決に向け取り組むという3要件をHGFは満たしています。HGFは今後も風車拡大を目指し、市民と協力して風車の拡大を目指していますが、政府は、電力会社による再生可能エネルギー接続容量の設定見直と、無制限無保証の出力抑制を求め、固定価格買取制度の見直しも議論されています。

しかしながら、HGFはFITや電力の自由化に対しては肯定的なとらえ方をしているので、今後は、自治体や電力会社といかに調和し、再生可能エネルギーの割合を徐々に増やしていくかが重要なのではないでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事を書いた学生ライター

Ryota Inoue
Ryota Inoue
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2017年に中央大学卒業。学生時代、言語や異文化交流、経営やソーシャルビジネスについて学ぶ。現在、株式会社パソナで働き、視野を広げている。好奇心旺盛で興味分野が広いため、将来、様々な分野を掛け合わせた面白いことがをしたいと考えている。

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