「ダメなら諦めてしまってもいい」フィンスイミング日本代表が語る、正しくチャレンジし続ける大切さ

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フィンと呼ばれる足ひれを装着する競泳「フィンスイミング」。フィンスイミングの日本代表をつとめる藤巻紗月さんと柿添武文さんにマイナースポーツゆえの魅力や、スポーツと学業・仕事の両立、そしてスポーツ選手のセカンドキャリア問題まで、幅広く語ってもらった。

1.フィンスイミングが持つ、マイナー競技ゆえの魅力

「ダメなら諦めてしまってもいい」フィンスイミング日本代表が語る、正しくチャレンジし続ける大切さ

───まず、フィンスイミングを始めたきっかけを教えてください。

◆藤巻

3歳から水泳をやっていて、手をつけると逆に遅くなるくらいドルフィンキックが得意だったんです。得意なことをもっと活かせる競技はないのかなと、フリーダイビングの選手だった父に相談した時に、フィンスイミングを教えてもらいました。それで自分で調べて、体験会に申し込んだのがきっかけです。

◆柿添

僕は2歳から大学4年まで競泳をやっていたんですけど、引退して就職したら太ってしまったんです(笑)。ダイエットがてら水泳をやり始めたらだんだん練習量が増えてきて、やるなら勝ちたいなと思うようになりました。競泳をしていた時に2枚のフィンを使う練習がすごく得意で、コーチに「引退したら、フィンスイミングやってみたら?」と言われたことを覚えていて、フィンスイミングの練習に参加させてもらいました。

───本格的にフィンスイミングをやろうと思ったきっかけは何でしたか。

◆柿添

1番になりたいという気持ちが強かったからです。たまたまフィンの代表選手の合宿に入れてもらって、皆の練習環境や練習時間などを聞いて正直これ本気でやったら勝てるなって思いました。

───競泳でも、フィンスイミングでも、一番になりたいというモチベーションの源はどこにありますか?

◆柿添

小さい頃からずっと何者かでありたい気持ちがずっとあったんです。みんなと一緒に扱われるのがすごく嫌で、埋もれてしまうのなら別に僕がやらなくてもいいと思ってしまう性格なんです。競泳は一生懸命やって高校ではそれなりに成績も残したんですけど、大学では全然勝てなくて。でも仲間はオリンピックに行って、すごくかっこいいなと思っていました。僕も、人生で一度でいいから日の丸を背負ってみたいと思ったのもひとつです。

───ではフィンスイミングの魅力を教えてください。

◆藤巻

私は短距離専門なので、やっぱり速さが魅力的だなと思います。水を切る音が聞こえたりして、イルカみたいに泳げるのはフィンスイミングだけだと思っているので、そこが魅力です。

◆柿添

すごいシンプルだな(笑)。僕もスピードが面白いという気持ちはあるんですけれど、それよりも、メジャーではない競技であるが故の大人としての役目が面白いなと。僕らは代表選手ですけど、そもそも抽選に当たらないとプールで練習ができない状態の時もあって、練習環境が整ってないんです。そういう面で、僕は年齢を重ねているし人脈もあるので、やれることが多いですね。

競技自体を広めるためにFacebookやブログで広報もしています。マイナーな競技なので、競技自体の面白さを語るよりは人の面白さを優先したほうが効果的だと思うんです。なので人の魅力を伝えることを優先しています。スポーツって、事前の情報があるかないかで面白さが変わりますよね。だから、大会の全レースに展開を予測したり、この選手が去年優勝していて、今年はこの選手が注目ですとか、選手のタイプが分かる冊子を作って、会場で配りました。そうすれば、誰かひとりだけを目当てに来た方でも、その人のレース以外も楽しめるようになるかと思ったんです。それを面白かったと言ってもらえた時は嬉しかったですね。

2.指導する側に立って、はじめて学んだこと

───では、次の質問です。おふたりはお互いにどのような印象を持っていますか?

フィンスイミング

◆藤巻

ストイックな方だなと。大人の選手の方は仕事しながら競技もやっている人がほとんどなので。その中で日本記録を目指すような目標を持って取り組んでいる姿はすごいなと思ってます。競技以外のところでは世界観が広い人だなと思っています。今話されてるときもそうですけど、すごい頭のいい人なんだなって思いながら聞いています。周りのことを敏感に観察して自分でチャンスを掴んでいくような人なのかなと。

◆柿添

僕が競技を始めたときに彼女は中2だったんですけど、その時にはもう日本のほぼ頂点にいて、最初から天才少女のような扱いでした。中学生とか高校生で競技を代表してメディアに出るとか、僕だったら到底できないので、そういうのも含めて尊敬ですね。しかも全然天狗にならないんですよ、本当に。それが心からすごいなって思います。トップに立ってから長いですけど、言っても高校生なんで・・・それと比べると自分が高校生のときは何も考えてなかったなと(笑)。

───お二方のチームは何人ぐらいいらっしゃるんでしょうか。

◆藤巻

私のチームは、東京で一緒に練習できる人は7人ぐらい、あとは地方で数人ですね。

───地方の方は、どのように参加するんですか。

◆藤巻

自分が住んでるところの近くのプールを使ってそれぞれ練習して、試合のときには一緒にチームとして出るという感じです。

◆柿添

もともと代表に入っていた人たちが、仕事の都合上で地方に行ったりしていて、そこでも競技を続けたいから、なんとかして自分で環境を作っているんです。そもそもプールに人がいない、あとは運営前とか後とかに泳いだりしているみたいですね。東京は若い子と大学生、社会人が一緒に練習しています。

◆藤巻

うちは今コーチがいない状態なので、400mで日本記録を持っている大学1年生の子と一緒に2人でメニューを考えたり、指導もしています。

───指導もされてるんですね。実際にやられてみていかがですか?

◆藤巻

大変。夏ぐらいからコーチがいなくなっちゃったんですけど、2人とも初めてなので、役割分担が全然できてなくて、喧嘩とかしたりしながら(笑)。

◆柿添

大変そうだね、知らなかった。高校生と大学生が選手やりながら、メニュー組まなきゃいけない、新しい子に教えなきゃいけないって、そう簡単なことではないですよね。

◆藤巻

これまではやらされているメニューという意識があったんですけど、今は自分でやりたいことやってる感覚が強くなったので、少し選手として次に続いていくのかなとは思います。あと教えるためには言葉にしなければいけないので、自分のフォームを見直すきっかけになったりして、教えている子を成長させたいなと思ったり、そういうのは楽しいですね。

───柿添さんのチームはいかがですか?

◆柿添

僕のチームは歴史のあるチームで、今年で20周年です。日本代表を目指す選手もフィンスイミングを楽しむことを目的とする人も一緒にやる方針なんですよ。50代の人とか60代の人とかも、同じ時間の同じコースの中で共存しています。だからチーム在籍者でいうと60人いて、実際に試合に出てくる人数だけでも30人弱はいますね。日本の中でも大きいチームだと思います。

たくさんの人が一緒にやるのは、「スポーツが社会に対して果たせる役割」とも関係していて、いろんな世代が一緒に何かすることは普通はないじゃないですか。僕と彼女は15歳違うんですけど、僕も楽しいし、彼女も学ぶ部分があると思うんです。みんなで集まるのが楽しいコミュニティをスポーツがもっと色々な形で作れると、スポーツの社会的な地位も上がるのかなと考えています。

3. スポーツ選手のセカンドキャリアにおける課題とは?

───学業や仕事との両立という面ではいかがでしょうか?

フィンスイミング

◆藤巻

勉強はそれなりに(笑)。でももっと勉強しておけば良かったと思ってます。受験するときに成績が足りないところもあって。夏過ぎから自分が行きたいところを調べて面接対策して受けました。でも、自分の世界観を広げられる環境という点で、慶応義塾大学のSFCに進学する予定です。志が高い人達の中で刺激を受けて、転がっているチャンスを掴みたいなと思っています。

───中学ではバレーボールとフィンスイミングを両立してたわけですよね。

◆藤巻

警察官になるのが夢だったので柔道もやっていました。競泳をやめようと思ったのも、もっといろんなことしたいと思ったからです。なので、柔道もフィンスイミングも、同じ時期に始めたんです。だから学業との両立というよりはスポーツとスポーツですね(笑)。

───自身の将来像は何かありますか?

◆藤巻

すごい漠然としているんですけれど、自分の一言でその人の人生を良くできる仕事ができたらいいなと思ってます。警察官だったら悪いことをしてしまった人を正しい方に導きますよね。一人ひとり、そういう小さい頃に受けた傷があって犯罪に繋がってることを考えると、気持ちの支えになって、その人の未来を明るくできたらいいなって。

───藤巻さんはよくメディアにも取り上げられていますね。そのことについてご自身ではどのように思われてますか。

◆藤巻

どう思ってるんだろう。自分で積極的に何かをするのは得意じゃないんですけど、そんな自分のところに来たお話はできるだけチャレンジしてみたいと思っています。

───藤巻さんを目標にしてフィンスイミングを始められる方もいらっしゃいますよね。

◆藤巻

嬉しいですね。でもこうしたいと思ってメディアに出始めたわけじゃなくて、出た結果そうなった感じです。

◆柿添

いろいろ難しいよね。彼女は勝っている時は私が取り上げられてもいいんだけど、負けたのに取り上げられるのは葛藤があるんだと思います。それは勝てば解決するのでモチベーションにもなるんですけれどね。フィンスイミングが取り上げられるのは嬉しいけど、彼女的には私じゃなくてもいいんですけどという感じだと思います。聞いている限りでは。

◆藤巻

基本は何も考えないですけどね(笑)。

───出版社は激務のイメージがありますが、柿添さんは仕事とスポーツの両立に関していかがですか? 

フィンスイミング

◆柿添

いわゆる出版社の激務なイメージなところは、週刊誌を作ってるとこなんだと思うんすよ。うちは参考書と問題集しか扱っていない会社なので、少し違うかもしれません。私自身は入社してからウェブの編集部でサイトの運営をやっていて、今は広告営業をやっています。営業になってからが少し大変でしたね。月に2〜3回、出張先の関西でもトレーニングしなければいけない。でも仕事が忙しくなってくると、練習との兼ね合いで夕方は会社に残れないので、朝6時半に1人で会社に出勤することもしています。

───現在競技をされている他の方も、何かと両立して活動されていますよね。そういう現状についてどのように思われていますか。例えば、スポーツにお金がもっと回るようになったら、競技に集中したほうがいいと考えますか?

◆柿添

そういう選手が出てきてもいいとは思います。けれども、一生競技者としてのスポーツで食っていくのは無理なんですよね。そう考えると、強いからスポーツだけやってればいいかというと、僕は違うと思います。若くて勝負できる時期に、そういう期間を与えられる環境があればいいとは思いますけど、それはすごく限られた、本当にそこまで努力ができて、そこまで才能がある人がやればいいことなのかなと思ってます。

スポーツ界がそもそも、人の人生にもう少し寄り添って考えるべきですね。とにかく指導者が、競技の結果のみを求めすぎです。中学や高校では、どのチームも県1番を目標にやりますけど、そんなことやったって人生は開けないんです、そう簡単には。日本一になったら、世界一になったら変わるとみんな思ってますけど、そう簡単には変わらないんです。だってマイナー競技の世界チャンピオンは日本に数十人いますけど、誰も知らないでしょう。当然競技は一生懸命やらなきゃいけないんだけど、辞めた後の人生のほうが長いですよね。スポーツを人生の楽しみのひとつとした上で、君は何をするのかということを、コーチや学校の先生が指導ができる環境をスポーツ界が作った方がいいと思います。

───今お話を聞いていて、藤巻さんいかがですか?

◆藤巻

その通りだと思います。私にとってスポーツは楽しい気持ちがあってやるものなんです。お金持ちになるのは無理だと思うんですけど、人生そのものを豊かにはできるのかなと思います。

───ご自身としても大学を卒業後、働きながら続けようと思いますか?

◆藤巻

続けるのかな。スポーツは好きだし、フィンスイミングも好きだから、趣味でになるのかな。

◆柿添

僕らを見ていて、一緒にやることの大変さを分かってる世代なんです。遠征や試合があったりすると、働きながら「1番になりたいです」なんてそう簡単な覚悟では言えないですよ。

───以前、柿添さんは「小さい頃からひとつのことだけに突っ走るのを良しとする日本の文化」を壊したいとおっしゃっていましたね。

◆柿添

日本人は諦めるな!ということが好きですがなんでもかんでも諦めるなというのは違うんじゃないかと思っています。諦めないことは、他の選択肢を捨てることなので、だめなものはだめで引いて、違うものにチャレンジすればいいんじゃないでしょうか。チャレンジすること自体はやめてはいけないんですけど、手段は変えてもいいですよね。しがみついてその競技にいる必要もないし、その世界にいる必要もない。だから本当にもうだめだと思ったら、そこから逃げてもいいんだよと言う人がいてもいいかなと思っています。僕は勝負する競技を変えた人間としてそういうことを伝える側に立ちたいです。

4.やりたいことの本質を見極める


フィンスイミング

───フィンスイミングの選手としての目標と、個人としての目標の2つを教えてください。

◆藤巻

選手としては2017年にあるワールドゲームズ(編集部注:オリンピックとの競技の入れ替え対象となっている大会)に出るために、今年の世界選手権で決勝に残ることを目指して頑張りたいです。個人としては、まだどういう大人になりたいとかも漠然としてるので、いろんな人と関わって、いろんなことを吸収して、自分が尊敬できるような人間になりたいなと思ってます。

◆柿添

僕は競技者としては、2017年のアジア大会で、去年逃したリレーのメダルを取りたいです。メダルなんて雲の上の話だったんですけど、みんなのレベルが上がってそこまできたから、2年後、メンバーの一員としてメダルを取ることが僕の一番の目標です。個人としては、仕事しかしてない人生も面白くないし迷ってますね。フィンスイミングを広げることをもう少しお手伝いしたいなとは思ってます。それがビジネスになるのかはまだ分からないですが。あとは普通に結婚して子どもが欲しいなとかそういうのはありますけどね。

───最後に、スポーツに関わらず何かを頑張ってる方にアドバイスをお願いします。

◆藤巻

自分が本当に楽しいと思えることをできる人生が1番楽しいし、やりがいがあると思います。なので、目の前にあるチャンスを逃さずに自分のセンサーに従って挑戦してみてほしいなと思います。

◆柿添

本当にあなたのやりたいことの本質をきちんと考えたほうがいいと思いますね。例えばみんな「オリンピックに出たいです」と言うけれど、猫ひろしさんみたいに国籍を変えればいいじゃないですかと言ったら、「それは違う」と言うんですよ。じゃあ、あなたがやりたいことはオリンピックに出ることじゃないじゃないですよねということになります。何が本当にやりたいのかを厳密に考えたほうがいいと思うんですよ。その奥にある自分の欲は何なのか、どうやって実現するか、その方法しかないのかを同時にちゃんと考えた方がいいなと思います。

この記事を書いた学生ライター

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