大検、学生結婚、そして起業––レールから外れた生き方を、早稲田出身のベンチャー経営者が語り合う

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早稲田大学のOB/OGが集うホームカミングデー「稲門祭」にて開催されたトークセッション「次世代ベンチャーのトップランナーたち」。早稲田出身のベンチャー経営者である、舛田淳氏(LINE株式会社取締役CSMO)、村上太一氏(株式会社リブセンス代表取締役社長)、宇佐美進典氏(株式会社VOYAGE GROUP代表取締役)そして、大冨智弘氏(株式会社ティルス代表取締役社長)の4名に対し、田原総一朗氏が鋭い切り口で質問を投げかけていきます。

大検、学生結婚……レールから外れたベンチャー経営者の人生

田原氏:こんにちは、田原総一朗です。今日は4人の経営者にお話いただきます。まず最初に舛田さんから、自分の会社の特徴や、なぜ大企業に就職しないで会社を作ったのかというお話をうかがっていきます。

舛田氏:私はLINEの前は中国の百度(バイドゥ)にいて、その後は韓国のネイバーに行き、LINEを日本で立ち上げていますので、いわゆる一般的なレールと少しずれております。もっとさかのぼっていきますと、高校中退で大検をとって早稲田に入りました。その時、一般的なレールというものが目の前にあまり存在していなかった。なので、なぜ普通の会社に就職しなかったというと、そもそもそういう決められたルートが私の選択肢にはなかったからです。

村上氏:会社設立は2006年の2月。私が早稲田大学1年生の時に、校舎の教室の1室でスタートしました。現在提供しているサービスは、創業事業でもあるアルバイト求人サイト「ジョブセンス」です。人材系のサービスで、このサービス最大の特徴は、採用決定でお祝い金がもらえる仕組みです。

宇佐美氏:私自身は、どうして起業家という人生を選ぶことになったのか。私は大学1年生の時に学生結婚をしました。すぐに子どもも授かりまして、非常に両親に心配をかけながら学生生活を送ったんですけど、そのときに思ったんですね。「これでもう普通の人生を歩めないな」と。先ほど舛田さんの「レールからはずれる」という話がありましたけど、明らかにレールからぽーんと脱線しちゃったと思ったんですね。その時に色んな人から言われたんです。「学生結婚なんてするもんじゃない、絶対にうまくいかない」と。両親にも友人にも相談して、色んな人に反対されました。でもやってみたら、なんとかなったんですね。意外とやってみたらなんとかなるもんだ、というう原体験が学生の頃にありました。だったら自分の人生を、レールからはずれた人生の中でどうやってもっと楽しく生きていこうかと、そう思うようになったんです。その延長線にある結果として、起業する人生が出てきました。

大冨氏:ずばり、スタートアップの立ち上げが非常に好きです。本当に困難なことをどうやったら解決できるのかな、どうやったら良くなるのかなということをずっと考えて、行動して、失敗してまた考えて、こういうプロセスが大好きなんです。今やっている会社で創業4社目。変化が激しいところに身をおきたいなと思っているので、会社も変えていいと思っていますし、事業内容もいくらでも変えてもいいなという考え方でやっています。

LINEが圧倒的に成功した理由

田原氏:まず、なぜLINEは圧倒的に成功したんですか? 成功の要因って何なんでしょう?

舛田氏:今までのインターネットというのは、テクノロジーを使って、地球の裏側にいる知らない人たちともコミュニケーションがとれるということをやってたんですね。しかし、 LINEはそうじゃない。身近な人、例えば家族、恋人、友達とコミュニケーションをとるツール。そこを明確に区別したんです。

3.11の震災を受けて、社会的トレンドが、遠くの知らない誰かと新しい関係をつくるよりは、身近な人たちと肩と肩を寄せ合って距離を縮めて、家族や恋人をもっと大事にすることに変化しました。そのような背景があったので身近な人たちとのコミュニケーションツールであるLINEが、ヒットしたのかなと。

田原氏:でも、そのコミュニケーションが無料ですよね。LINEは何で稼いでるんですか。

舛田氏:使ってくださるユーザーの中から、ある一定割合のユーザーは、もっと自分を表現したい、もっと違うサービスを使いたいと思い、スタンプなどに皆さんが課金をしてくれるというのがひとつ。

あともうひとつは世界に何億人というユーザーがいますので、企業からすると、マーケティングに最良の場なんです。そういった企業のための商品を用意して、お金をいただいている、これがふたつ目です。

LINEというサービスは長続きするか?

田原氏:宇佐美さん、VOYAGE GROUPは何をする会社ですか。

宇佐美氏:総合商社と似ていると思います。自分たちでビジネスを企画して、それを開発して、投資もして、プロモーションして、さらに大きくしていく。 今は13個くらいの事業があります。

田原氏:せっかく事業を作って、うまくいったのならば、そんな次々に作らなくたって、うまくいってる事業だけでやっていけるのでは?

宇佐美氏:インターネットのビジネスというのは、3年から5年くらいのライフサイクルで沈んじゃうんですね。つまり会社として継続的に成長していこうとすると、小さな山をどうやって積み重ねていくかが重要になってきます。

田原氏:長持ちしない?

宇佐美氏: 長持ちしないんです。

田原氏:LINEも長持ちしませんか?(笑)

舛田氏:なかなかショッキングなことを先輩に言われてしまいました(笑)。LINEは別として、実は本当です。インターネットのサービスは、世界的に見ても4~5年、短くて3年。モンスター級のもので10年。10年もすれば、勢いが落ちてしまうんですね。各社何をするかというと、例えばサービス名は一緒だけれども、サービスの中身は毎年、毎月変えて、気がついたら違うサービスになっているということをやる。あとはもともとあったサービスをベースに、また違うことをやる。

田原氏:大冨さんの企業が何をやっているのかさっぱりわからなかったです(笑)。

大冨氏:今はモバイルのゲームを作って、ユーザーに課金していただいて収益をあげているという事業をやっております。

田原氏:最初に大冨さんは楽天に入社されたんですよね。なぜ楽天やめたんですか。三木谷に限界を感じた?(笑)

大冨氏:いやいや、素晴らしい経営者でいらっしゃると思っています。実は学生の時から、楽天でインターンという形で働いていたんですけど、その時は300人くらいの規模で、新卒で2006年に入った時には1300人まで規模が拡大していたんですね。そうすると、数字を出して数字を達成するために追いかけるような経営方式になってしまって。それを実行するだけよりは、企画する立場にもっと早くなりたいなと思ったので、自分で会社をつくりました。

スマホゲームは社会の役に立っている?

田原氏:ここで、質問がある方いらっしゃいますか?

質問者:やった仕事が世の中の役に立っているのか、教えていただきたいです。要するに、橋を作るとか、物を運ぶとか、食べ物を作るとか。そういうふうな生活の役に立っている達成感が、ゲームをつくってもうまれないんじゃないでしょうか。だって、ゲームは基本的に余暇時間を潰すというようなものですよね。

大冨氏:世の中の役にたつという概念を、どう捉えるかだと思っています。例えば食料生産は誰かやってくれてしまっているし、人を運ぶという部分においても鉄道網は恐ろしいほど発達しています。そうすると、人間はこれからどんどん余暇時間が増えていくなと思ってるんですね。必要なことだけで過ごすのに、人生は長過ぎる状態になっているのかなと。その時間を埋めるためのサービスを提供するという部分においては、非常に役に立ててるんじゃないかと思います。

質問者:宇佐美さんに質問です。社員から「これがやりたい!」という意見が上がってきて、やってみようとなる会社としての判断軸を教えてください。

宇佐美氏:大きくふたつあります。「この人がやりたいと言っているんだったら、任せてみよう」という人の軸で考えるのがひとつ。ふたつ目が、事業領域。最初の事業プランが微妙でも、その市場が伸びていたらやってみようかと。そういうふうに判断しています。

10年後にLINEやリブセンスはどうなっているか

田原氏:まず舛田さんにお伺いしたいんですが、10年後にLINEはどうなっていますか。

舛田氏:おそらく形が大きく変わっていると思うんですね。ただ、LINEというもののコンセプトである「身近な人たちのコミュニケーションを促進する」ことは変わらない。今は文字で伝わっているものが、動画になったり、音になったり、今度はVR(ヴァーチャル・リアリティ)になってくる。

もともとLINEは、言語に依存しないコミュニケーションができるんですね。昔、象形文字でやりとりしてた時代と同じで、スタンプでコミュニケーションをとれるので。インドなどの識字率が低い国でも、LINEを使っていただいていて、コミュニケーションがとれる。その延長線上に10年後のLINEもある。と言いたいところですが、10年後は分からないので、それを想像しながら毎日、ワクワクしています。

田原氏:10年後に、労働力が足りないという問題が出てきますけれども、人材系のサービスをやられている村上さんはどうする?

村上氏:私が問題に思っているのは、就活して新卒で入った会社を、3年で30%がやめるという話です。まだまだ適切なマッチングができてない。リブセンスは従業員や元従業員による転職クチコミサイト「転職会議」を運営しているんですが、実際に働いた方の様々な意見を事前に見た上で会社選びができるようにすることで、入社前後のギャップをなくしていきたい。自分自身が働いて本当にマッチする、いきいきと働ける会社に出会えることによって、まだまだ日本の力は上げれるだろうと思ってます。

あとやりたい事業として「就活塾」というものがあります。例えば、商社に行きたい人がいたら、「ビジネスやってみなよ」という形で指導したり。就活という形でインセンティブを作った上で、人間力や社会性を身につける、そんな教育の仕組みはまだ伸びしろがあるのかなと。人口減少の中で、一人ひとりがしっかりと成長し、良い職場に出会うことがすごく大切だなと思っています。

田原氏:少し話かわってしまうんですが、村上さんって大学1年年の時に起業したんですよね。あなたにとって、早稲田大学はどういうものだったの?

村上氏:早稲田付属の学校に通っていて、その頃から事業アイディアを考えていました。大学1年生の時に、ベンチャー起業家養成講座という授業を受け、講座の最後に行われるビジネスプランコンテストで優勝して起業しました。オフィスを1年間無料で提供していただいたり、先生が指導してくださったりと、色々ときっかけを与えてくれた存在でした。 なぜ大学に通おうと思ったのか。会社をつくるのならば、行かなくてもいいという考え方もあるんですけど、大学時代に出会える人たちはすごく重要だなと、今でも思ってます。

田原氏:宇佐美さんは卒業して、一回トーマツに入社してるんですね。なんでやめてしまったんですか?

宇佐美氏:もともと起業したいという思いはあったんですが、まずはいろんな会社を見てみたくて、コンサルティング会社で働きました。でも、コンサルティング会社って大企業相手のビジネスが多くて、0から何かを生み出すのはなかなか経験できないなと。それならば、0から何かを生み出そうとしているベンチャーに自分の身を置いたほうが学べるものが多いと思って、転職をしました。

田原氏:大企業の何がつまらなかったの?

宇佐美氏:つまらないことはないんです。色々と学ぶことも多かったんですけれども、ただ仕事の進め方が違うんですよね。0から1を生み出すのは、ロジックだけではなく情熱や、気が狂うまで働き続けるとか、そういった部分が必要なんです。しかしそれは、大企業の中では経験できないと思っています。

今の世の中、インターネットに関することだけではなくて、新しいことにチャレンジするハードルは下がっているんですよね。ですので、新しいことが生まれてくる世情は、今後5年から10年で更に進んでいくんじゃないかなと思います。

日本からバイオや宇宙分野のスタートアップが出てこないのはなぜ?

田原氏:この辺であらためて質問を受けたいです。

質問者:ご自身がやられているサービスの中で、ここが問題と思っている箇所。そして、それに対する施策を教えてください。

舛田氏:我々起業家や事業家は、課題をみつけて課題を潰していくのが好きなんですね。ですので、10年後を見ても楽観的なんです。課題があったら潰す、まさに「進取の精神」です。

課題は沢山あるんですけど、ひとつ挙げるならば、インターネットのトレンドははやいので、どんどん企業はいなくなってしまう。新陳代謝が激しいんです。LINEで思っているのは、どうやったら皆さんの生活にもっと密着して、もっとリアルな生活の中に私たちが入っていけるのか。例えば、NTTさんやトヨタさんみたいに、末永く皆さんに愛していただける構造をどうやったら作れるのか。通常の事業やサービスを考えるのとは別のレイヤーの課題として、日々思っていますね。そのために決済サービスだったり、タクシー配車サービスやアルバイト求人情報サービスなど色んなことをやっているんですね。

質問者:舛田さんに質問です。日本はIT企業がたくさんあると思うんですけど、例えばアメリカでは宇宙やバイオエネルギーに力を入れてる会社があります。日本はまだまだそういうベンチャーが少ないと思っていて、日本はなぜその領域で弱いのかということを教えてください。

舛田氏:バイオも宇宙の分野も、日本のスタートアップにいい会社はたくさんあります。ただ目立ってこないのは、起業家自身のPRが弱かったり、メディアの問題だと思います。身近なものじゃないとメディアは取り上げてくださらないので。基礎研究もたくさん日本でされてますから、もっとフォーカスするべきです。更にお金の集まり方の話をすると、日本でバイオ、宇宙、バーチャルリアリティをやりますと言っても、シリコンバレーで集める額と二桁三桁違うわけですよ。その中で世界で戦おうとすると、まず勝てないですよね。バーチャルリアリティもハリウッドがお金をつぎ込んでしまえば、日本のスタートアップで歯が立つかというと、歯が立たないんですよ。そこのお金の集まり方は、まだまだ不十分だと思うので、いま成長してる企業は未来のために投資をするべきですし、お金はまわりつつあります。

田原氏:宇佐美さん、IT業界で新しいものを作るとなると、GoogleであったりAmazonであったり、みんなアメリカ発なんですね。どうして日本からは出てこないんですか?

宇佐美氏:諸説あるんですが、日本の市場は中途半端に大きいんです。人口も1億2千万人いますし、ゲームの世界にしても広告の世界にしても、日本をベースにやろうとすれば、そこそこの規模にはすぐできる。なのでそれが逆に、世界に目を向けるハードルになっているんじゃないかと思います。一方でLINEもそうですけれど、スマホのアプリや、インターネットのサービスは、必ずしも日本人だけが対象にはならないんですね。会社を海外に作らなくても、グローバルに展開することは、簡単にできるようになってきているんじゃないかなと思います。

田原氏:もしかするとLINEは、GoogleやAmazonに匹敵する会社になるんですか?

舛田氏:「はい」と言うしかないですね(笑)。 

この記事を書いた学生ライター

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