「マーケティングやビジネスモデルは後付けでいい」 南場智子氏が語った、DeNAがデザインにこだわる3つの理由

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25歳以下の若手デザイナーのためのコミュニティ「UI Crunch U25」が2015年9月26日に開催された。「なぜ今デザインなのか?」をテーマにDeNA創業者の南場智子氏が登壇。これからのビジネスとデザインの関係、とりわけサービス開発におけるUX(ユーザーエクスペリエンス)の重要性について語っています。

前編はこちら
これからのビジネスで、なぜ「デザイン」が重要なのか? DeNA南場智子氏が語る、サービスづくりの新潮流。

まずはUX(ユーザーエクスペリエンス)を定義する

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もう1つの話をします。サービスを作るプロセスにおいて、若者に大ヒットするようなアプリ作りたいと。そうしたら「若者」だけじゃダメだよね、もっとターゲットセグメントをはっきりさせよう、そのために市場調査をやろう、競合調査をやろう、ニーズの調査をやろう、差別化ポイントはなんだっけ、ペルソナ設定をしよう、コンセプト設計をしようというようなプロセスがはじまる。

よくマトリックスを作って、コミュニティ型とネタ探し型、オープン型とクローズド型の軸を作って、他社のヒットしてるサービスを分類して、ここが空いてるから参入しよう。このような分析をよくやりますよね。結果として、オープンなコミュニケーションアプリ、動画系サービス、画像配信やりましょう、というアウトプットが出てきます。

次に考えるのは儲け方ですよね。収益モデルは成り立つの? サービスを作ったはいいけど、収益を上げなきゃ継続できないと。どのタイミングでお金を払ってもらうのか、どういう事業計画になるのか。KPI……何%のユーザーが使ってくれてそのうち何%がはまってくれて、何%がお金を払ってくれてという計算をして、数字がたくさんの事業計画がうまれます。それを見てから、設計ですね。要件定義、ワイヤーフレーム、そしてプロトタイピングをして、リリースするのが今までのフローだったと。

これはちょっとどうなのかという話ですね。ビジネスとしての成功は、どこに依存するんだろうかということです。誰にターゲッティングするかは、そこそこ重要ですね。これを間違えてしまうと、例えばIQ200以上の人を対象としたマスコミュニケーションをやりましょう……でも、ほとんどいないぞという世界になってしまいます。こんなふうに大きく外れてしまうと問題ですが、ある程度あたってたら良いよね、成功に対する貢献度は10パーセント程度じゃないかなと思います。

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ビジネスの成功として、サービスの成功としての9割はユーザーが使ったときのユーザーエクスペリエンスです。これが素晴らしければ9割は成功が保証されています。私たちが一番大事にしてるDelight。Delightはユーザーエクスペリエンスにあります。

従来までのフローにはDelightはほとんど関係ない部分、株主さんが期待しているビジネスの成功、コンセプト作り、市場調査、競合調査、ビジネスモデル、そういったあまり関係のないことに時間とリソース使いすぎていたということです。

だからちょっと考え直そうよということです。どう直すかというと、ユーザーエクスペリエンス、ユーザーへの感動から定義しよう。ユーザーに対して、どんなふうに何を届けるのか。だから驚きや喜びをまず定義しようよと。

「Strategy leads UI/UX」から「UI/UX leads Strategy」へ

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最近の事例だと、どんなゲーム、どんなアプリでもワンタッチで超手軽に友達に画面共有できる「Mirrativ(ミラティブ)というサービスです。あらゆるスマホ体験を生配信するコミュニケーションアプリという名前がついています。ミラティブを起動して、その上で別のアプリを起動してほぼワンタッチで、リアルタイムで画面を共有できるものです。

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今は20カ国語くらいに翻訳されて、1週間で1億インプレッションを叩き出しています。なかなかユニークで世の中にない驚きですね。LINEのメッセージとかが上にピョーンと出てくるのまで共有できてしまうので。これはちょっと設定で気をつけたほうがいいかもね(笑)。ゲームで楽しんでいる人が多いみたいですね。

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このMirativの開発プロセスは、まずUX。ユーザーエクスペリエンスを定義したんです。それをプロトタイピングして、良いものができてから、誰にマーケティングするのか、どこが競合なのかとか。マーケティングプランや事業計画を後からつくるんですね。

UXに納得のいくものが作れていなければ、そういった作業をしなくて良いわけです。納得がいく素晴らしいものができてから初めて、分析やターゲティング、マーケティングの準備をしていきます。

他のサービスも色々あります。例えばヘルスケアにおいて私が今考えているのは、がん患者と伴走したい。うちの旦那がある時がんになって、2011年に私は社長を投げ出して、丸2年間家にこもって家のことをやっていたという経験があります。

その時に思ったんですけど、がん患者って本当に自分の思うような意思決定ができないし、孤独だし、日本は医療が発達してるとはいえ、トータルで患者さんをケアする仕組みになってないなと思いました。

だからがんを告知されてから経済的なことを考えたり、治療法を決めること、そしてその治療を行ってる間に耐えること、頑張ること、せっかく頑張ったにも関わらず再発してしまった時に何をするのか、何を準備するのか、どんな心の支えが必要なのか、どんな医療の支えが必要なのか。そういったことを全部考えて、伴走するサービスを作りたいと思ってます。

ただ、私の知っているユーザーはひとりだけです。本当に全てをシェアできた患者はうちの旦那ひとりなので、サンプル1だと。サンプル1では足りないということで、今はがん特化型の専門病院の先生や患者とずっと対話をしながら、プロトタイプを作りながら、サービスを考えています。

抗がん剤が辛いと、服薬記録、副作用の記録をどうやったら簡単に記入できるの、その記入のインタフェースを用意して、体が辛くてもできますかと質問して、対話しながら作り込む。その副作用の記録をあとから見ても、自分のものを見れるだけじゃなくて、他の人の頑張っているものを見ると、すごく励みになる。だからシェアする機能があるといいな、とかね。

それから、かつらをどこで買ったら良いのかわからない。がん患者さん向けの商品の評価はないんですかとか、そういう話を患者さんとしながら、使ってもらいながら、今作り込んでいる。

それが終わってから初めて、これを使うがん患者さんはいったい何人いるんだろうか、これはがん患者さんがお金を使いたくない、だとしたらがん患者さんにマーケティングしたいと思ってる製薬会社の広告で何かできないのかなとか。そういったことが後で出てくるんだけど、まずそんなことを考える前に、患者さんが使い込んでくれるサービスを作れるのか、これを徹底的にやってみようよということで、プロトタイピングをしています。

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これまでは戦略からUXに向かって、戦略がUXを規定していた。そうじゃないよね、まずUXで、あとから戦略を考えていこうよ。別の言い方をすると「Strategy leads UI/UX」じゃなくて「UI/UX leads Strategy」。これが2つめのポイントです。

「セグメント最適化」から「個別最適化」へ

1個目が「パーミッションレス」、2個目が「UI/UX leads Strategy」。もうひとつ最後に、UI/UX、クリエイティブ、デザインをちょっと忘れて、マーケティングってなにっていうと、単純にこれですね。

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関心を持ってもらう、利用を初めてもらう、楽しみ続けてもらう。これをちゃんとやっていくってことをマーケティングと呼びます。関心を持ってもらうために広告を打ったり、利用を始めてもらうために初回無料キャンペーンをやってみたり、楽しみ続けてもらうために色んなことをします。

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例えば利用を始めてもらう。まだ利用していないユーザーさんに、初めて我が社のサービスを使ってもらうときに、すべての人に同じ刺激を与えるとか、同じ言葉を伝えるとか、同じコミュニケーションをするというのを比べると、年代や性別による最適化、すなわちセグメンテーション。セグメント別にコミュニケーションの仕方や刺激の仕方を変えたほうが、効果があります。

これが20年前の常識なんですね。しかし今この常識が急速に古くなっています。どうなってるのかというと、個々人に最適化する、当然だけどこの方が効果があるし、できる時代になってきた。特にネットサービスにおいてはですね。

実はセグメントによる最適化と比べると、利用を初めてもらう力は3.8倍に伸びるということなんですね。数字を言うともっともらしいから持ってきたんじゃなく、実は2014年、半年間かけて我が社はゲームでこれを実験しました。例えばゲームを並べて見せて、この人は35才男性で、こんなサービスが好きな人だからっていうセグメント。だからこういう順番ってやるのがひとつです。 もうひとつは、個別最適化です。例えばその人は、ソーシャル、ゲームコミュニティの中で誰の影響を受けているか、誰とつながっているのか、その人にとって難しすぎないか、その人は何に興味があるのか、何にインセンティブを感じるのかということを個別に最適化して、その人が反応したかどうかをリアルタイムで見て「これ見せたけど遊ばなかったな、じゃあ別のもの」という感じでダイナミックに変えていく。これを個別最適化と呼びます。

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マーケティングの3つ目の楽しみ続けてもらう力、これはどうなのかというと実に9.7倍。昨年の半年間で我が社のゲームで実験を繰り返して導きだした数字なんですが、セグメントによる最適化と個別最適化には、10倍の力の差があることがわかってきました。

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これがいわゆるセグメント最適化から個別最適化へということなんですが、これをクリエイティブにも応用できないだろうかと。世の中でデザインやクリエイティブにこれを取り入れようとしてるところが、まだないんです。

同じゲームでも、UI/UXを私向けにちょっとカスタマイズする。完璧に個々人に、例えば5千万人に向けて5千万通りの絵は用意できないけれども、UXは用意できないけども、無数の組み合わせから、いくつかの組み合わせの中からその人にベストなものをカスタマイズする。

あと10年くらいでそういうことをやらないと生き残れない時代がくるんじゃないのかなというのが、私の仮説なんです。ということで、今日は3つの話をしました。

1.パーミッション型からパーミッションレス型へ。
2.ストラテジードリブンからUI/UXドリブンへ。
3.セグメント最適化から個別最適化へ。

この3つが私が今大きいうねりとして感じているメガトレンドであります。クリエイティブ、デザインが我が社のサービス開発の中心になってくるというのは、ここから発想しているんです。この3つのトレンドに遅れずに、世界の最先端をきって極めていきたいと。それができないとDeNAという会社に将来はないというところから、経営会議じゃない、役員じゃない、ものを作る人たちだと。そしてその中でもクリエイティブ、デザイン、UI/UXだと。というところで、本来はこういうイベントに私はあまり出てこないんだけれども、お願いして出させてもらったというところです。

DeNAがはじめてDelightを届けた、一枚の写真

今まで私の個人的な理屈っぽい話をしたんだけど、やっぱり私はユーザーにどれほど喜んでもらえるのか、そして喜んでもらった瞬間が一番嬉しいんだよね。ユーザーにDelightしてもらった瞬間が、自分も一番Delightできると感じています。

企業は何のために存在するのか。色んな考え方があるだろうけど、やっぱりひとりの人間の人生は、80年や90年で終わってしまう。その中でも仕事をがむしゃらにやるのって真ん中の40年くらいかもしれない短い時間です。

長い長い地球の歴史の中でほんの一瞬なんですね。その時間を個々人の人間がどう過ごすのか。私が、みんなが、一人ひとりがどういう時間を過ごすのか、それを大切にしたい。ひとりでできる喜びよりも、みんなで集まったほうが大きな喜びをつくれるよね。それが、私がDeNAという会社を作って、今でもDeNAだけに一生懸命な理由なんです。

本当に言語化が難しいものなんだけど、それをうまくあらわしている一枚の写真があります。この写真はDeNAが何万枚と社員の写真を撮ってきた中でも、私が今まで撮った写真の中でも、最も好きな写真です。

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本当に多くのことを私に教えてくれた瞬間なんですね。これがDeNAなんだ、と。これが自分が仕事をしている喜びの源泉なんだ。それを一番感じた瞬間が写真に収まってたってことなんですね。それがこれです。

本にも載せたんだけどDeNAが会社を作ってリリースした一番最初のサービス「ビッダーズ」今はDeNAショッピングっていう形になってるんですけど、その前身がビッダーズっていうオークションだったんですね。

そのオークションサービスが世の中に出た瞬間です。その前まではステージングサーバーで開発環境の中で見ていたビッダーズが、はじめてインターネット上で公開された、その瞬間にインターネットから自分たちのサービスを覗いてみた。そうしたら、既に入札が1件入ったという瞬間なんですね。

ユーザーにサービスを初めてオープンして、ユーザーがそれを使ってくれた瞬間。その瞬間が写真に残っていました。1999年11月29日朝5時過ぎの写真です。

これはユーザーさんに使ってもらえた、Delightを届けた嬉しさもあるんだけど、チームがすごいDelightfulな顔をしている。実はこの4人はすごく個性豊かです。全員日本人の男じゃないかって思うかもしれない。最近はダーバーシティ……人材の多様性っていうと、いつも男性と女性の話になってしまいます。でも、日本人の男性だけでも実に多様なダイバーシティのある4人なんですね。

モチベーションの源泉が全然違いますね。1番右の人は何によってモチベートされるかというと、褒められたい。しかも何でそんなに一生懸命働くのと聞くと、「僕は自分の名前のついたチャプター、章を歴史書に残したいんだ」って言ってました。すなわち色んな意味で褒められたいんだ、それも素晴らしいなと思いました。

右から2番目、たまたままうちの社長の守安功。彼は当時も今も、勝ちたい。試合に勝つのが好きなんだと。だから何でも勝負事にして勝つ。負けず嫌いなんですね

右から3番目、彼も今でも我が社のサービスに関わってくれているけど、ユーザーのコミュニティに尽くしたい、貢献したい、ユーザーのコミュニティメンバーのためなら1週間でも徹夜をしても大丈夫ですと。誰も見てくれなくても、褒めてくれなくても、コミュニティに尽くしたいんだと。なぜならコミュニティが大好きなんだと。

一番左、歯だけうつっている人がいますよね。歴史的な写真に、もう少し屈んでいれば目まで写ったんですが(笑)。彼はエンジニアで、自分の技術力でチームや社会に役に立ちたい、貢献したい。技術力が役にたってる瞬間が一番幸せなんだそうです。

すなわち、この4人はばらばらです。みんなばらばらのモチベーションの源泉を抱えてるメンバーが、ものすごく心がひとつになって、同じことに喜んでいる瞬間なんです。この時に私は、組織をまとめるための評価システムがどうだとか、レポーティングがどうだとか、組織構造がどうだとか、そんなことは小さいことだと思ったんです。

そうじゃなくて、すごく高い目標を抱えて、ユーザーにこういったもので喜んでもらうんだと目標を掲げて、実際にそれをユーザーに披露した時に、反応をしてくれたかしてくれないか。それが喜びの源泉。そしてそれがチームをまとめる大きな力になる。そういう会社にしていきたいなと思いました。

だからDelightが大事。Delightは自分たちのDelightにとっても大事。そしてそのDelightを届けるために、いかにこれまでのような頭でっかちではなくて、UI/UXなどのデザインが中心的になってきたのか。だからDeNAも、この笑顔を維持するために変わらなきゃいけない。そんな挑戦をしているところです。私の話は以上で終わりです。

この記事を書いた学生ライター

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