ストリートアートと聞くと、悪いイメージを持っている人も居るかもしれません。壁などに書かれた文字や絵などを思い浮かべる人も多いと思います。
しかしストリートアートとは幅広いもので、単なるラクガキとして書かれている時もありますが、意図や意思、伝えたいメッセージを画家が絵や文字に込めて書いている場合もあります。
TED2015に登場したエル・シードもそのうちの一人です。(出典:http://theculturetrip.com/)
彼はチュニジア出身のアーティストで、専門は「カリグラフィティ」という新しいジャンルのアートです。
カリグラフィティとはカリグラフィ(日本でいう書道のようなもの)とグラフィティを融合させたアートで、名言や詩などを絵や背景に載せて書くのだそうです。
そんな彼は、2012年にチュニジア南部にあるジャラ・モスクのミナレットに絵を描きました。 彼は書いたとき彼のアートが有名になるとは全く思っていなかったそうですが、このミナレットに描かれた作品を発端に彼の絵や、またジャラ・モスクも有名になったそうです。
この絵を描く前、彼は単に故郷であるチュニジアで作品を作りたいという思いで場所を探していました。 そんな時に見つけたのがこのミナレット。18年間もただの灰色の壁だったそうです。
モスクという厳かな場ですが、「スケッチを見せてくれだとか、何を描くのだとか聞かれたことが無かったのは本当に最高だった。好きなものを描かせてくれるのだから。」と語りました。
そこで彼がモスクにふさわしいと思い描いたのがコーランからの一節で 「人々よ 我は一人の男と一人の女からあなたがたを創り 民族と部族にわけ隔てた 互いを知りあうようにさせるためだ」 という部分を描きました。
世界中にいるたくさんの人への理解、寛容、そして平和を訴えるメッセージで、彼は「メディアではなかなか伝えられないイスラム教の善い一面」が表現できたのではないかと語っています。
それから現地の人を始め、世界中のメディアが集まるようになりました。 メッセージはとてもありきたりなことなのに、それが実現できていない今の世界。そしてチュニジアの政治背景も同時に注目されることを期待していたのだそうです。
そして彼が文字を取り入れること以外にこだわっていることはアラビア語を使う事。 メッセージを描くとき必ずアラビア語を使うのだそうですが、アラビア語を話す人でさえ読むのが難しい事もあるのだそうです。
それに対して彼は「アラビア語は読めなくても美しさがあります。魂に伝わるものがあります」と語り、「アラビア語は万人に訴えかけることが出来ると信じている」と自信を見せました。
彼は作品を作るとき取り入れるメッセージについて、必ずその場所に関わること、そして万人に共通するメッセ―ジを描くようにしているとのこと。
そんな彼も生まれ育ったのはフランスのパリ。アラビア語を実際に書き始めたのは18歳の頃だったそう。
しかし彼のアートはすべてアラビア語が使われています。そこまでアラビア語にこだわるのは世界中の色んな人から受ける反応が影響しているのだそうです。
リオデジャネイロで作品を作った時もアフリカのケープタウンで作った時も「なぜアラビア語なんだ」「なぜ英語で書かないんだ」といったように、アラビア語で作品を作ることに対して疑問の声があったそうです。
しかしそこで、カリグラフィの意味を教えると読めないながらに人々が作品とその意味とを繋げようとしているのを見て、その姿に感銘を受けたのだそうです。 彼の「スタイル」としてアラビア語を使うこと、そして言葉を理解するというよりも感じてもらうためにアラビア語を使っているのですね。
彼は「自分の文化に誇りを持っているし、それを作品を通して伝えようとしている」と語りました。 「違う国の音楽のように、言葉が分からなくても楽しんで、感じられるようなものを作りたいです。他の文化を拒否しているのではなくて、私の言葉で、私の文化で、私のアートで伝えたいのです。」とコメント。
グローバル=世界共通=英語 という認識がある現代。だからこそ自分自身の文化やルーツを大切にすべきですね。
・Street art with a message of hope and peace By eL Seed 「希望と平和を訴えるストリートアート」 By エル・シード
海外ドラマ・映画に影響されて15歳でアメリカ留学へ。現在大学では海外から来た生徒と一緒に授業を全て英語で受けています。最近はイベントで通訳をしたり、韓国語を勉強したりと忙しい日々を送っています!主に海外の記事を参考にオリジナル記事を作成していきたいと思います!