長期休暇を利用してまとまった旅行を考えている方は少なくないと思います。
みなさんはどのような旅行スタイルを持っていますか?
交通機関を乗り継いで名所をくまなく見て回ったり、自分の足で隠れた名所を発掘したり、逆に一箇所に留まってのんびりと過ごしたり 。旅のスタイルは人それぞれだと思いますが、今回みなさんにオススメするのは、「スケッチ旅」です。
筆者がカバンにスケッチブックと色鉛筆を入れて国内外を旅行する中で気づいた、スケッチ旅の6つの魅力をご紹介します。
どの景色をスケッチブックに切り取ろうか常に考えているため、景色を見る目が違ってきます。
こうして普段から記事を書いていると、日常的に記事になるようなトピックを探しながら生活するようになるので、情報への感度やセレンディピティが高まります。同じように、スケッチにする風景を探しながら旅をしていると、感性が研ぎ澄まされてただ歩いているだけでは気付かないような街の魅力に気付いたり、良い景色を求めてちょっと脇道にそれるような好奇心や冒険心が生まれます。
また、普通の旅なら「綺麗だなあ」と少し眺めて終わってしまうような建物や景色も、スケッチの対象になることで細部まで細かく眺めることになります。そうして初めて気付く観光地の特色や魅力がたくさんあります。カナダ・ケベック州 ロレンシャン高原
観光名所や街中でスケッチをしていると、通りすがりの人が一言声をかけてくれたり、立ち止まって作業を眺めていたり、横に座って話しかけてくれたりします。
一人旅の醍醐味の一つが、現地住民や他の旅行者とのコミュニケーションですよね。スケッチはその機会を量産してくれます。英国ロンドンのテムズ川沿いで国会議事堂(Big Ben)をスケッチしていると、観光客たちが各々の訛りの英語でたくさん声を掛けてくれました。「絵を売ってくれ」と迫ってきたイタリア人男性もいましたし、一緒に写真撮ろうと言ってきたオマーン人女性もいました。「その絵を売るのか?」と訊かれて「値段次第だね」と調子に乗って答えると、「許可なしの商売は禁止だから立ち去れ」と言われ、よく見ると制服っぽいものを着た強面のおじさんで商売してる人を取り締まっている最中だったようです。「あ。。。う、売りません!売りませんから!」と必死の形相で難を逃れました。旅先ではスケッチブックを広げるたびにコミュニケーションが生まれます。見知らぬ土地でのコミュニケーションは、やはりきっかけがないと難しいもの。スケッチが最高のConversation Starterとして機能してくれることでしょう。
スケッチをしていると、いかに私たちがバイアスに囚われて生きているのかに気付かされます。 山に生える木々を塗ろうとしてふと自然に緑の色鉛筆に手が伸びる。これも固定観念です。よく見てみると、遠くの山々は青く見えたり、季節や光の当たり方によっては茶色く見えたり赤味がかったりしています。スケッチとは「ありのままに写し取ること」ですが、これが案外難しいものです。水面が青いとは限らず、雲は必ずしも白や灰色であるというわけではありません。季節や時間帯、対象物との距離によって変化する見え方を正確に捉えてスケッチブックの上にアウトプットすることで、固定観念に囚われずに本質を見出す力を養うことができます。
スケッチは、最初にあたりをとってから描き進めていきますが、細部を書き込んでいくときに、複雑で細かい箇所や目立ちやすい部分はつい大きく描いたり、鉛筆に力が入ってタッチが強くなったりしがちです。そうして細部にこだわるあまり全体的な視野を失うと、誇張された箇所が生まれアンバランスなスケッチになってしまいます。逆に、ときどきスケッチブックを手元から離して遠くから眺め、均整が取れているかをチェックしながら描いていると上手く仕上がります。細かい作業をしながら、随時全体的な視点で見る必要があるので、物事を俯瞰する癖が身につきます。カナダ・ケベック州 ケベック旧市街の街並み
目的地に着くと、見どころを見て回り、写真を撮って次の目的地へ向かう、という観光の仕方の人が多いように思いますが、効率よく回ろうとするあまり、旅先で同じ場所に長時間留まるということはあまりないのではないでしょうか。 スケッチをしていると、自然とその場に2、3時間とどまることになります。そうして初めて見えてくる観光地の雰囲気や特色もあります。
イギリス南部の村・ライに行ったときの話です。街の中心に教会があり、鉛筆を走らせながら、時折教会から流れてくるミサの美しい旋律にゆっくりと耳を傾けることができました。普通に観光しているだけでは、のんびりと音楽を聴くこともなかったでしょう。また、住民の暮らしも垣間見ることができました。犬の散歩に出たおじさんがスケッチが書き終わる頃に散歩から帰ってきて「まだ描いてたの?」と会話に発展したり、宿屋さんが店先のお花に水を遣っていたり、レストランのウェイトレスさんが昼時に慌ただしくテーブルを回っていたり。こうした現地の人たちのありのままを見られるのも、スケッチの魅力の一つです。イギリス・サセックス州 ライ
自分が時間と手間をかけたスケッチブックは、何よりも思い出深い最高のお土産になります。スケッチブックを紐解くたびに、スケッチがきっかけで生まれた現地での出会いやその人との会話、その日の天気、街の雰囲気を思い出すことができます。これも、現地の時間の流れに身を置いていたからこそ生まれる記憶です。家族や友人とスケッチブックをめくりながら旅先での思い出話をするもの楽しいものです。
また、絵葉書を自作することもできます。旅先での印象深い風景を絵葉書にして大切な人に送れば、趣深いプレゼントとして喜ばれるでしょう。
学生のうちだからこそ、長期休暇などを活かして自由なスタイルで旅行を楽しむことができます。どこかに旅行やバックパックを計画しているのなら、カバンにスケッチブックを入れてみてはいかがでしょうか。
「英語教育を通してアンビシャスな人たちの夢を叶える力になりたい」という夢を実現するため、日本人に最適な語学教育のあり方を求め米国ボストンに留学。現在は日本に帰国し、語学教育事業に注力中。帰国後も執筆の機会を頂けたことに感謝しています。大阪大学4年生。