みなさんこんにちは!ボストンへの留学から帰国した若尾和紀です。
留学に関してよく聞くのが「日本人は留学先で群れる」という話です。
先に断っておきますが、現地で日本人と全く交流するな、と言っているわけではありません。同じように夢や目標を持って留学しに来た者同士で刺激し合ったり励まし合ったりすることもあるでしょうし、現地での日本人との出会いも貴重な経験になるでしょう。
ただ私が言いたいのは、それが馴れ合いや逃げになってしまえば、わざわざ留学に来た意味がなくなってしまう、ということです。
私も実際に、キャンパス内の共有スペースで日本人学生が固まっている場面は何度も目撃しました。それは日本人だけに限ったことなのでしょうか。また、なぜ留学先で群れてしまうのでしょうか。今回は、「群れる」現象の実態や背景、その解決策を述べていきます。
日本人やアジア人同士で群れてしまうのはある程度仕方のないことだと思います。
留学先では同じ日本人同士、隣の国同士というだけで盛り上がる理由になります。一方、考え方も文化的背景も大きく異なるラテンや欧州の学生と話を盛り上げるというのはなかなか難しいことです。留学先で初めて会った相手に、
Where are you from?/どこ出身?
と定番のように聞いたとしましょう。
"I’m from Austria!"と返されるのと、
「東京出身だよ!」と返されるのと、どちらのほうが会話を続けやすいでしょうか?
決めつけるつもりはありませんが、おそらく多くの方が後者のほうがやりやすいと感じるでしょう。
「東京のどこ?」
「この前東京行ったときに…」
「観光するならどこがオススメ?」
など、いくらでも会話が続きますし、共通の知識や興味関心も多いので当然盛り上がります。
一方、同じような質問を外国人にしたとして、
“I’m from Salzburg!(ザルツブルグだよ!)”
“My city is known as the birthplace of Mozart.(モーツァルトの生誕地なんだ)”
なんて言われても、モーツァルト好きでもない限りいまいちピンと来ないでしょう。「ザルツブルグってどこやねん」ってなりますよね。
無理やり話題を見つけながら会話を続けるというのはストレスになりますし、そうなるとどうしても日本人同士で話したくなりますよね。気持ちはわかります。
それに、これは別に日本人やアジア人の間だけで起こることではありません。ラテンアメリカ勢はほとんどスペイン語が母語なこともあってラテンの生徒同士で固まりますし、ヨーロッパの生徒は言語や見た目の近いヨーロッパの生徒同士で固まりがちです。日本人の英語力の低さがそれに拍車を掛けているというだけで、何も我々だけが特別固まりやすい民族だというわけではありません。やはり言葉や文化の壁は厚い、それだけです。
しかし、ある程度仕方ないからと言ってぬるま湯に浸かり続けていてはわざわざ留学に来た意味はありません。自分を奮い立たせて壁にぶつかっていかなければ、語学力の面でも人間的にも何の成長も得られません。
その壁を丸腰で打ち破るのは並大抵のコミュニケーション能力では不可能でしょう。しかし、以下に紹介するような武器があればずっと簡単になります。
スポーツ・音楽は、文化の壁を破壊してくれる最たるものです。
アメリカ人やヨーロッパ人は、日本人よりスポーツに熱心なイメージがあります。私のクラスメイトだったオランダ人やベルギー人、イタリア人は、気が付けばいつもサッカーの話をしていました。共通のスポーツをしているというだけで、急に親近感が湧いたりしますよね。
また、地元のスポーツチームのファンになってしまうのも効果てきめんです。
実際に試合を見に行って一緒に応援したり、スポーツバーで観戦したりするだけで、強烈な一体感が生まれ、すぐに仲良くなることができます。
留学中に地元のフットボールチーム、ニューイングランド・ペイトリオッツがスーパーボウルを制して優勝したのですが、優勝した翌日や数日後のパレードの際の街の高揚した雰囲気はなんとも説明しがたいものがありました。
また、観戦するだけでなく実際にスポーツ大会や地元のチームに参加して一緒にプレーすることで育まれる仲もあるでしょう。
また、後でも述べますが、音楽の威力もあなどれません。ラテンの学生は特に、音楽に合わせて踊ったり歌ったりするのが好きなイメージがあります。彼らの好きな曲を、あなたも好きになってみましょう。一緒にリズムに合わせて体を動かすことで、心も見事に打ち解けることでしょう。
まずは、世界で最もユニークで洗練された言語のひとつである日本語を存分に活用しましょう。
日本語の文字に興味を持っている外国人はたくさんいます。私たちがアルファベットの入ったTシャツをかっこいいと思って着ているように、彼らも日本語の文字を”Cool!”と感じています。日本語には3種類の文字があるということを雑学として知っている人も多く、興味津々に質問をぶつけてきます。かなと漢字の使い分けや成り立ちの歴史などが英語で説明できるだけで話は大いに盛り上がるでしょう。「私の名前を日本語で書いて!」というお願いも何度されたか分かりません。
また、あえて日本語の本を読んでみるというのもありかもしれません。縦書きを標準的に使っているのは日本語とモンゴル語くらいのものなので、他の地域の学生にとっては本を縦に読んでいるというだけで驚愕です。通学のバスの中で日本語の本を読んでいるときに、「これどうやって読んでるの!?」と興奮気味に訊いてきたのがきっかけで仲良くなった友人もいます。
また、寿司を始めとする日本食も、健康的な美食としての人気が非常に高いです。現地の日本料理店や寿司バーに連れて行ってあげればきっと喜ばれるでしょう。箸に慣れない彼らに使い方を教えたりしながら仲良くなれるかもしれません。
幸運にも、日本という、独特の美しい文化を持ち世界から好意と信頼を集めている素晴らしい国に生まれてきたのです。その利点を活かさない手はありません。外国人たちの日本文化への関心に触れながら、あなたの日本人としてのアイデンティティと誇りもより強固なものになるでしょう。
私は留学中、「アナと雪の女王」のテーマソング"Let it go"をクラスメイト全員の言語でメドレーするというバカなことを思いつきました。それからしばらくは通学の時間は音源を何度も繰り返し聴き、歌詞をweb上で拾ってきて各言語の綴字法を覚え、必死になって歌を記憶しました。
ほぼ完璧に歌えるようになるまで1週間ほどかかったのですが、歌を動画にしてfacebookに投稿すると非常に大きな反響があり、クラスメイトにはとても喜ばれ、キャンパス内で微妙に有名になってしまいました。先生たちの耳にも入り授業中に歌わされたりもしていろいろと大変でしたが、"Let it go"で仲良くなった友達は数え切れません。
どこぞの大泥棒が言ってましたね。
留学という非日常的な時間だからこそできるバカなことに是非挑戦してみてください。その挑戦が言葉や文化の壁を破り、自信を深めるきっかけになることでしょう。
多くの時間や費用を投じて臨む留学です。ストレスを感じるからといって、日本人同士の居心地の良さに甘んじていては何の成長も得られません。
甘えたい気持ちに負けず、殻を破って様々な国の学生と交流してこそ語学力的にも人間的にも成長することができます。活発に動く分、上手く行かないこと、自信を失いそうになる場面もあるでしょうが、傷付いた分だけ大きくなれると信じて、アクティブに頑張ってください。
「英語教育を通してアンビシャスな人たちの夢を叶える力になりたい」という夢を実現するため、日本人に最適な語学教育のあり方を求め米国ボストンに留学。現在は日本に帰国し、語学教育事業に注力中。帰国後も執筆の機会を頂けたことに感謝しています。大阪大学4年生。