アボリジニの聖地”ウルル”。重要なのは観光客が先住民の文化を理解すること。

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皆さん、こんにちは!早川るいです。 先週、テストが終わり、ようやく休み期間に入りました。次の学期まで約3週間の休みがありますので、私の友達やルームメイト達は、実家や国へ帰り始め、今いるシェアルームは私しかいません(涙)

ですので、無事に学期を終了したご褒美に、先日、ウルルへ行って来ました! ウルルは子供の頃から行きたかった場所で、履修していた授業“Resistance & Revival: 20th Century Indigenous Australians”で身に付けた「アボリジニ文化への興味と配慮」と「その科目で学んだ知識」をこの小旅行で活かしてみたかったので、実際に行って来ました。

ということで、今回の記事は、ウルルで体験した事をご紹介したいと思います。オーストラリアへ行く予定の方、今住んでいるけどウルルへ行こうと考えている方、長々と書きましたが、是非とも読んで下さい。また、最後の方にウルルに関する大事な事を書きましたので、それだけでも読んでほしいです。

 

ウルルについて

ウルル7ウルル(Uluru)とは、ノーザンテリトリーにある世界遺産「ウルル・カタジュタ国立公園」(旧:エアーズロック・マウントオルガ国立公園)にあるメイン観光スポットの1つで、世界で2番目大きい一枚岩です。

実際はマウント・オーガスタス(オーストラリア)が1番で、メディアなどでウルルの方が知名度高かくなったため、ウルルを一番大きい一枚岩として人々に広まりました。ちなみに、ウルルの高さは348mで、東京タワーより15メートル高いです(ちなみに、マウント・オーガスタスの高さは、858mあります)。 ※移動手段としては、飛行機と車です。

飛行機の場合、国立公園から車で30分の所に空港があります。 車でも行けますが、一番近い街(アリス・スプリングス)からウルルまで5時間ぐらい掛かります。

さて、先ほどノーザンテリトリーと書きましたが、これはオーストラリアのある州の名前です。どこかと説明しますと、オーストラリアの真ん中あたりからその北の所までの州の事です。州都はダーウィンで、色々な鉱石が採取できるため、この州は鉱業が有名です。

ノーザンテリトリーの他にオーストラリア人はウルル周辺の事を「アウトバック(Outback)」と呼んでいます。アウトバックとは、オーストラリアの辺境・乾燥地帯であり、大雑把に何かと説明しますと・・・赤い大地が先から先まで届く所ですね(笑)

「どういうこと?」かと思いますが、それがアウトバックです。上の写真を見るとわかりますが、本当に土が赤く、水たまり場があまりありません。そこで育っている植物や動物は独自の進化を遂げてアウトバックの中で生きております。

では、白人たちはいったいどうやってウルルを発見したのか?それはラクダのおかげです。現在、アウトバックへ行きますと、野生のラクダがいます。元々いた訳ではなく、白人たちがアウトバックを探検する際、水をあまり必要とせず、暑く、乾燥した場所を耐え抜く動物がほしいと思い、ラクダを中東から連れてきました。その後、白人たちが探検を終わらせた事で、今まで飼っていたラクダを放し、野生化しました。今アウトバックで見るラクダはその子孫なのです。

ウルル周辺では、アナングというアボリジニ部族がいます。彼らは、ピンチャチャチャラ族とヤンクンチャチャラ族を掛け合わせて「アナング(Anangu)」と呼んでおります。彼らの先祖は今から1万年以上前からウルルへ来て、狩り、採取を繰り返して暮らしていました。ウルルは彼らにとって聖地なため、あらゆる儀式をウルルで行っております(現在でも行っております)。

また、この辺りはあまり雨が降らなく、ウルルの麓でしか水たまり場が出来ません。アナングや動物にとって水は大切な資源であるため、水たまり場は飲み場として使い、狩りするための重要なポイントとしても使います。ウルルを近くで見ると分かりますが、長い年月をかけて雨水が水たまり場へ流れていくため、黒い太線がウルルに所々についております。 ※ウルルへ行く際は、水を用意することをおすすめします。1年中乾燥しており、ほとんどのツアーは水(最低1ℓ~最大3ℓ)が無いと参加できないので、常に持っておいた方が良いです。

古来の日本と同じように、アボリジニも神話があります。ウルルへ行くと、表面が風食や浸食などの原因で巨大なくぼみや穴を見当たりますが、彼らはそれらの痕や岩などを使い、 “Dream time”(ドリームタイム)という神話と関連し、様々なお話を残しています。

例えば、ウルルにまつわる「蛇のクニヤと毒蛇のリユ」(“Liru and Kuniya”)伝説がその1つです(英語しかないのですが、非常に興味深いお話ですので、是非とも検索して読んでみて下さい!)。

また、ウルルでは、アボリジナル・アートが沢山あります。彼らはDreamtimeの他に自分達の日常生活などを壁画にアボリジナル・アートとして残しております。実際に麓へ歩き回りますと、1万年前のアボリジナル・アートが壁画に残っていたりします。

昔、彼らは読む、書く文字を持っていないため、絵を使い、コミュニケーションをとっていました。現在は、細かい点描を使っているため、世界ではアボリジナル・アートをドット・ペインティングとして認識しております。 ※エアーズロック・リゾートやカルチャー・センターなどでアナングの人達によって描かれたアボリジナル・アートが販売しているため、お越しした際に見て下さい。

ウルル以外の見所

ウルル6ウルルも良い場所かと思いますが、中央オーストラリアはウルルの他に観光する所が沢山あります。これから私が行った場所2つ紹介したいと思います。

この国立公園では、ウルルの他に「カタジュタ」という岩山もあります。ウルルから車30分の所にありますが、ウルルと同じく見どころに溢れる場所です。ここでは、往復約1時間のウォルパ渓谷ルートや一周約3時間の風の谷散策ルートがあります。また、サンセットはウルルに匹敵するぐらい非常に綺麗らしいです。

カタジュタ(Kata Tjuta)とは、36個の大岩が集まって出来た奇岩群です。カタジュタという言葉は、アナングで「たくさんの頭」といい、英語だと「マウント・オルガ」という別名を持っております。オルガ(The Olgas)という名は、ヨーロッパ探検家アーネスト・ジャイルズがキングス・キャニオンを登頂した際に、そこからカタジュタを見つけ、ドイツのヴュルテンべルク王妃オルガにちなんで名づけました。

カタジュタもまたユネスコの世界遺産に登録されていますが、ウルルとカタジュタを合わせた「複合遺産」として登録されております。また、ここもまたウルルと同じくアナングーの聖地なため、見る事や写真を撮ることは出来ませんが、アナング達の儀式が現在も続いております。

ウルル・カタジュタの他にもう一つおすすめスポットがあります。「キングス・キャニオン」です。 キングス・キャニオン(Kings Canyon)とは、ワタルカ国立公園(Watarrka National Park)にある場所で、ウルルとアリス・スプリングの中間にあります(距離だと、ウルルから北300キロぐらいあります)。ご存じある方は分かりますが、キングス・キャニオン渓谷は「世界の中心で愛をさけぶ」のロケ地としても有名です。

ここでは、様々なルートがありますが、私は3時間ルートを試して来ました。最初は辛かったですが、それを乗り越えると非常に楽になり、あとはコマ目に水分補給をすれば、大丈夫です(笑)

ここは、はるか昔、海があったため、現在もその痕が残っております。例えば、海に生息していた化石や海によって浸食した波の跡を歩く途中に見かける事が出来ます。あと、ワタルカという変わった木をキングス・キャニオンへ行く途中に沢山見かける事が出来ます。ワタルカはアボリジニの言葉で、「傘のように枝を広げた木」と言います。とにかくキングス・キャニオンへ行きますと、色々な見所や冒険ができるため、非常におすすめします!

 

“Welcome to Anangu land”に込められた意味

先ほどから「ウルル」と書いていますが、皆さんには「エアーズロック」の方が馴染みあるかと思います。エアーズロックは、ウルルの別名で、1873年、イギリス探検家ウィリアム・ゴスが発見した時に南オーストラリア植民地提督ヘンリー・エアーズにちなんで名付けた名前です。しかし、ウルルはアナングがはるか昔から付けた名前で、意味は特に持っていませんが、彼らは聖地として崇めてきました。

白人たちに発見されて以降、土地を奪われ、エアーズロックという名で広まり、観光地化されましたが、1980年代(アボリジニに対するreconciliationが始まった時)に、政府から返還された同時に、正式に「ウルル」となりました。観光地化した事で、アナングは政府に「この土地をオーストラリア国立公園、および野生動物サービス(現オーストラリア自然保護団体)に99年間賃貸する」という条件を作ったことで、観光客が今でもウルルへ訪れることができるのは、この条件の期限がまだ終わっていないからです。現在、アナング達の管理のもとでこの国立公園を監視しております。

アナングは、「ジュクルパ(Tjukurpa)」という掟の基にウルル周辺に住み、国立公園を管理しているのです。 ジュクルパは行動のきまりや集団生活の掟であり、自然や生活を支える基盤となる規律でもあります。国立公園もまたこのジュクルパによって管理されているため、空港の荷物受取所にいる際に分かりますが、ウルルのPVとして、“Welcome to Anangu land(ようこそアナング国へ)”という言葉が何回か繰り返されます。 つまり、空港へ降りた時、車からウルルを見え始めた時、アナングの土地へ入ったという意味です。

“Welcome to Anangu land”とは、白人たちから解放された故郷を観光客に主張した意味であり、彼らの土地であるため、観光客に自分達の故郷だと再確認をしている意味なのです。

最後に!大事なお話があります。

ウルル8

さて、最初の方にも書きましたが、ここからウルルに関する「大事なお話」があります。これは必ず読んで下さい。

ウルルは実際に行きますと、凄く綺麗な場所で、本当に感動します(どう表現すればよいのかわかりませんが、それぐらい凄いです!)。ただ、先ほどから何回か書いておりますが、ウルルはアナングにとっては「聖地」です。

写真を撮ることに関しては特に大丈夫ですが、もしウルルを登る予定がありましたら、彼らの文化を見て、登るのを考えてみて下さい。一応、ウルルへ登れることは可能ですが、彼らの先祖が築き上げてきた文化を守っていきたいため、彼らは登ってほしくないのを伝えています。また、登頂までの道が斜めっており、辺りは何も無いため、山頂の風が地上の7倍の強さがあり、命に関わるくらい危険です。

しかし、天候の状態や強風でない限り、登頂する事を完璧に無くすことはできないのです。なぜなら、国立公園へ入る入園料は、彼らの大事な収入源になっているのです。もし彼らがウルルの登頂を禁じれば、観光客数が減り、今まで通りの生活できなくなるのです。だから、登山口の所に「登頂しないで下さい」という看板しか置くことができないのです。

アボリジニは大変苦しんでいます。現状、一部の部族は未だにしっかりとした教育を受ける事ができないため、良い仕事を得る事が出来ません。「引っ越せば、良いじゃねえ?」かと思いますが、彼らなりの考え(ジュクルパだと思います)がありまして、自分の故郷から離れたくないのです。

だから、自分達の故郷で働くことしかできないのです。実際に行きますと、サービス精神とお金を得るため、エアーズロック・リゾート内で働いている者がいます。また、他の人はリゾート内やカルチャー・センターで彼らが作ったアボリジナル・アートや木彫りを観光客に売っている人もいます。

旅行者がウルルへ来て、お土産を買ってくれる事は、彼らにとって大変ありがたい事なのです。ただ、彼らがもっと求めているのは、それよりも自分達の先祖が築き上げ、守ってきた文化を理解してほしいことです。ウルル登頂は一部の旅行者にとって、ある意味人生最大の挑戦であり、メインアトラクションかと思います。しかし一度、彼らの視点から見て、考えて下さい。

私の場合、この旅行で彼らの訴えが少しだけ理解する事が出来ました。 ちなみに、私は事前にウルルについて知っていたため、登る事は一切考えておりませんが、なぜ登ってほしくないのか実際に行くまで分かりませんでした。ただ、ウルルの麓の近くにあるカルチャー・センターへ行った所、その理由が分かりました。それは、段階を作って登っているのです。

アナングは、ウルルを登る際、儀式を行ってから登ります。どういった目的でウルルを登るか詳しい理由は分かりませんが、儀式を行わない限り、登ることはできません。つまり、それぐらいウルルは彼らにとって神聖な場所なのです。

仮に登頂が環境・宗教条件によって行われなくても、麓散策がまだあります。ここでは、アナングの先祖たちがどうやってウルルを使ってきたのかを理解する事ができ、太古のアボリジナル・アートを見ることもできます。また、ウルルにまつわる神話についても聞くことができます。登頂するより、遥かに安全で、楽しいので、是非とも参加してみて下さい。

この小旅行を体験して、自分自身が求めていた「自分の知らないオーストラリア文化を探求し、人々を知る」という目標に一歩近づいた気がします。前回書いたANZAC Dayの記事でも感じましたが、今回の旅行がそれ以上に感じるとは予測しておりませんでした。

将来、ウルルへ旅行することを考えておりましたら、私が書いた記事を一度思い出して下さい(また読んでいただくと、もの凄く嬉しいです 笑)。そして、そこで学んで、知った事を家族や友達に伝えて下さい。海外旅行はもちろん楽しい事であり、一息をする時間でもありますが、他国の文化を知る時間でもあります(つまり、フィールド・トリップですね)。ウルルは条件上、2085年まで貸し出すようになっておりますが、観光客が彼らの文化を理解し、登るのをやめる事で、アナング達の中で変わるかもしれません。ウルルを「旅行」として行くのではなく、「異文化交流」として行ってみて下さい。

今回の記事は、ウルルについて色々と書きましたが、まだ書きたい事が沢山あります。ただ、実際に行ってみないと分からないので、ここまでにします。 次回の記事は、メルボルンでの楽しみ方について書きたいと思います。まだ休み期間に入っているので、旅行は続けたいと思います!という訳で、次回もお楽しみ下さい!! Palya!!!

この記事を書いた学生ライター

Rui Hayakawa
Rui Hayakawa
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「The Long but short journey」の記事を書いている国際教養大学3年生のるいです。これから1年間、「自分の知らないオーストラリア文化を探求し、人々を知る」という広く深い目標で皆さんにDeakin大学での生活やオーストラリアでの旅について紹介していきたいと思います。

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